悪性リンパ腫とは?原因、症状、治療法について解説
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悪性リンパ腫とは?原因、症状、治療法について解説
悪性リンパ腫とは
血液腫瘍の一つであり、血液中や身体中を流れている白血球の成分の一つである「リンパ球」という細胞が異常に増殖してがん化し、身体の一部にしこりができる疾患です。
「悪性リンパ腫」と言ってもさらに細かく病型は分かれており、頻度の高いタイプから非常にまれなタイプまで、進行の速さや発症部位も異なるため多岐(100種類近く)にわたります。そのため症状や治療法も様々なものがあります。年間10万人あたり30人程度の発生ですが、日本の成人の中では最も頻度が高く、やや男性に多い血液腫瘍です。正確な診断に基づき適切な治療を行うことで、種類によっては根治できる可能性があります。
悪性リンパ腫の原因
悪性リンパ腫はリンパ球の遺伝子異常によって起き、明らかな原因ははっきりしていません。種類としては大きく非ホジキンリンパ腫(B細胞リンパ腫、T/NK細胞リンパ腫)と、ホジキンリンパ腫の2種に分けられます。日本人の75%以上が非ホジキンリンパ腫であり、病理組織分類に加え悪性度(進行の早さ)によって年単位で進行する「低悪性度」、週から月単位で進行する「中悪性度」、日から週単位で進行する「高悪性度」の3つに大きく分けられます。
進行の遅いタイプには、マルトリンパ腫、濾胞性リンパ腫(比較的多い)、有毛細胞白血病、菌状息肉腫などがあります。進行が早いタイプには、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(非常に多い)、末梢性T細胞性リンパ腫などがあります。さらにすぐに治療を要するタイプとして、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫などがあります
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悪性リンパ腫の症状
悪性リンパ腫の症状は、初期段階では痛みを伴わないリンパ節(首やわきの下、足の付け根などリンパ節が集まっている箇所)の見た目や触診できる腫れが出現するのが特徴的です。ホジキンリンパ腫では、頸部のリンパ節が腫れやすく、非ホジキンリンパ腫では、腋の下や足の付根のリンパ節が腫れやすいという特徴もあります。
症状が進行するとB症状(発熱、体重減少、寝汗を合わせて専門的にB症状と呼ぶ)、皮膚の発疹、嘔吐など様々な症状が現れてきます。
造血を司る骨髄の機能が抑制されてしまうため、貧血なども現れます。自覚のないものでは脾臓の腫脹なども見られます。
また、悪性リンパ腫がほかの臓器や器官へ広がっていくと、それぞれの転移先特有の症状が出現し、肺や気道など胸部では呼吸困難や気道閉塞、咳、肝臓では黄疸や腹水、骨では骨痛などが起こります。腫れやしこりが大きくなり、尿管(腎臓から膀胱への尿の通り道)や静脈、脊髄せきずいなどの臓器が圧迫されると、水腎症(尿管がせき止められて、腎臓に尿がたまって広がった状態)、むくみ、麻痺まひなどの症状があらわれ、緊急で治療が必要な場合もあります。
悪性リンパ腫の検査方法
まずは既往症、治療中の疾患、合併症、初発症状、症状の出現時期、全身症状(発熱、体重減少、盗汗など)の有無を問診し、腫れているリンパ節の触診を行います。
一般検査をし、悪性リンパ腫であるかどうか、また病型や診断を確定するためには生検が必須であり、腫れているリンパ節の組織を採取して顕微鏡で観察する病理検査、骨髄の中にリンパ腫の細胞があるかどうかを確かめる骨髄検査・髄液検査などの検査を行います。
一般検査には以下のような項目があります。
- ・末梢血血球算定,血液像(白血球数,好中球数,リンパ球数,腫瘍細胞数,赤血球数,ヘモグロビン値,血小板数)
- ・生化学検査(TP,Alb,ALT,AST,LDH,ALP,γ-GTP,Na,K,Cl,Ca,P,BUN,Cr,FBS,UA)
- ・血清学的検査(CRP,IgG,IgA,IgM,蛋白分画,可溶性IL-2R,β2ミクログロブリン)
- ・ウイルス検査(HBs抗原,HBs抗体,HBc抗体,HCV抗体,HIV抗体,HTLV-1抗体)
- ・尿検査(糖,蛋白,潜血,沈渣)
- ・画像・その他の検査〔胸部X線検査,十二誘導心電図,頸部・胸部・腹部・骨盤Computed
Tomography(CT),(必要に応じ)上部・下部消化管内視鏡,骨髄穿刺・生検,心エコー,必要時にはPositron Emission Tomography(PET),頭部CT・Magnetic Resonance Imaging(MRI),髄液検査,動脈血ガス分析〕
病理検査とは採取した組織をH-E染色や免疫染色をし、染色体異常があるか、細胞表面のタンパク質をみてどの病型であるか確定をしていく検査で、以下のような項目を検査します。
- ・CD45
- ・細胞質内CD3ε,CD5
- ・CD20,CD79a,CD10,免疫グロブリン(細胞質内免疫グロブリン)
- ・CD56
- ・CD15,CD30,cyclin D1,BCL2,BCL6,MIB1(Ki-67),IRF4/MUM1,MYCなど
骨髄検査とは、皮膚を消毒し局所麻酔をした後に、一般的には腸骨(腰の骨)に針を刺して、骨髄組織を採り、骨髄へのリンパ球の浸潤をみる検査です。
必要であればエコー検査にて腫れているリンパ説の形や大きさ、数を調べることもあります。診断が確定した後には病気が広がっていないかどうかを調べるためにCTやMRIなどの画像診断検査やPET検査(陽電子放射断層撮影)などを行います。脳や脊髄に広がっていると疑われるときは、腰椎の間に細い針を刺して脳脊髄液を採取する検査を行います。胃や腸に悪性リンパ腫が広がっていないかどうかを確認するためには、消化管内視鏡検査を行うこともあります。
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悪性リンパ腫の治療方法
悪性リンパ腫に対する治療には、薬物療法、放射線治療、造血幹細胞移植などがあります。悪性リンパ腫の種類と進行度によって治療法が異なります。外科切除、放射線照射の適応は限られ、抗がん剤治療による根治療法を基本とすることが多いとされています。
非ホジキンリンパ腫の治療方針は、主に病理組織型(悪性度)、病期(ステージ)、発生部位などの要素により決定します。抗がん剤治療はCHOP療法が標準的な療法であり、病期に関係なく本治療法が使用されることが多いようです。しかし、巨大腫瘤を伴うときは放射線療法と併用され、再発時など抗がん剤の感受性が悪い場合には、より強力な抗がん剤が選択されます。
一方、ホジキンリンパ腫に対してはABVD療法と呼ばれる抗がん剤治療が行われます。限局期では4〜6コース、進行期では6コースの治療を行った後、病変があった部位を中心に放射線療法を行う事が、一般的となっています。ホジキンリンパ腫は抗がん剤が効きやすいタイプのリンパ腫であり、約75%が治癒するといわれています。
悪性リンパ腫は抗がん剤治療や放射線治療が効きやすいとされますが、これらの治療だけで完治できないこともあり、治癒する可能性を高めるためには造血幹細胞移植を行った方が良い場合があります。患者さん自身の造血幹細胞を用いる場合や健康な“ドナー”より提供された造血幹細胞を用いる「造血幹細胞移植」や、出産時に臍帯血から採取する「臍帯血移植」などが方法としてはあります。
まとめ
悪性リンパ腫とは、病型のタイプによって治療の経過は異なるので、どのようなタイプの病気であるのかをしっかりと理解することが重要です。
種類によっては、完治を期待できる場合もあります。悪性リンパ腫が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師