顎関節症とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/30

顎関節症とは?原因、症状、治療法について解説

顎関節症とは

顎関節症(Temporomandibular Arthrosis)は、顎関節や咀嚼筋(そしゃくきん)の痛み、顎関節の雑音や開口障害、顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名であり、下記の症状が含まれている。
 

  • ・咀嚼筋痛障害:顎を動かす筋肉に痛みを生じるもの。
  • ・顎関節痛障害:顎関節に痛みを生じるもの。
  • ・顎関節円板障害:顎関節の関節円板のずれが生じるもの。
  • ・変形性顎関節症:顎関節の骨に変形が生じるもの。

 
これらの症状のうち1つ以上有しており、同じような症状の出る顎関節症以外の病気がないことが顎関節症の診断基準とされている。
また、痛みには身体的な障害だけでなく、心理的・社会的な因子も強く関連することからこれらの状態は心理テストなどを用いて検査する場合がある。
顎関節症は男性より女性に多く、20代から50代で発症することが多い。ほとんどの場合、症状は一時的で、歯科医師による標準的な治療や自己管理(セルフケア)により快方に向かうことが知られている。


 

顎関節症の原因

顎関節症の原因は一つに絞ることができず、関節や筋に負担のかかる要因が幾重にも積み重なり負担が増大することによって発症するといわれている。
関節や筋に負荷のかかる要因には下記のもの等が挙げられる。
 

1.解剖要因

顎関節やその筋肉の構造的脆弱性
 

2.咬合要因

かみ合わせ不良
 

3.精神的要因

精神的緊張や不安感の持続
 

4.外傷要因

交通外傷、打撲、転倒等
 

5.行動要因

1)日常的な習癖

※TCH (Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)、頬杖、爪噛み、筆記具噛み、
うつぶせ読書、猫背
 

2)食事

硬固物咀嚼、ガム噛み、片方での噛み癖
 

3)睡眠

歯ぎしり、就寝時の姿勢(うつぶせ寝)
 

4)スポーツ

競技者間の接触のあるスポーツ(コンタクトスポーツ)、球技
 

5)音楽

楽器演奏(特に吹奏楽器)、歌唱、発声練習(演劇等)
 

6)社会生活

緊張が持続する作業、コンピューター操作、重量物の運搬
 
※TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)とは上の歯と下の歯を日中無意識に接触させる癖のこと。
 
普段、私たちの上の歯と下の歯の間には隙間があり、意識していない場合接触していない事が普通とされている。ところが緊張が持続する作業や、姿勢が悪い状態でのPC操作やタブレット等の画面を見る際にも無意識に上の歯と下の歯が接触している場合があり、この癖がある人は癖のない人と比べるとはるかに長い時間接触させている事が知られている。
このように無意識下で上の歯と下の歯が接触することにより顎関節に負担が蓄積され、顎関節症に悩む8割の人にこの癖があるとされている。
 

  • ・精神的要因はTCHの原因となるとともに、筋肉の緊張を引き起こし顎関節や咀嚼筋の負担を増加させる可能性がある。
  • ・スポーツでは競技者間の接触のあるコンタクトスポーツ(ラグビー・柔道・サッカー・バスケットボール・野球等)やゴルフやテニスなどの球技等も含め、強く噛みしめる事があるスポーツは顎関節への負担が増加する。
  • ・楽器演奏(特に吹奏楽)では主にチューバやトランペットなどの管楽器の演奏や歌唱は過緊張となり炎症や筋痛(咀嚼筋への大きな負担)が懸念される。

 

  

顎関節症の症状

顎関節症の主な症状は、
 

  • ・口の開閉時に顎関節から「ゴリッ」「カクッ」というような音がする
  • ・口の開閉をうまく行うことが出来ない。
  • ・口が左右に上手く動かせない事や、顎が外れる事がある。
  • ・食べ物を噛むときの痛みや顎関節とその周囲に違和感がある。
  • ・口を動かしたり噛みしめると顎関節が痛む。

 
などが挙げられる。
また、上記の主な症状の他に顎関節症が原因とされる副症状が知られており、顎周囲だけでなく全身に様々な症状が現れる場合がある。
 

  • ・歯や舌の痛み
  • ・嚥下困難や四肢のしびれ
  • ・めまい、耳鳴り、難聴
  • ・頭痛、肩こり、腰痛
  • ・眼の疲れ、充血

 
などが挙げられ、その症状は多種多様である。

 
 

顎関節症の検査方法

一般的には、症状がどのように始まり変化したかをヒアリングする。
顎関節やその周辺筋肉をエックス線検査にて診断する場合が多い。
顎関節症で出現する症状は他の病気で出現することもあり、それらの病気を否定することも重要である。
厚生労働省より具体的には診断手順と他疾患の鑑別について記載がある。
以下【e-ヘルスネット(厚生労働省)】より抜粋。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-05-001.html
 


 

顎関節症の治療方法

治療方法は『生活指導』『理学療法』『薬物療法』『アプライアンス療法』の4つが挙げられる
 

生活指導

顎関節症は日常生活や本人が無意識に行っている癖が関係している場合がある。特に最大の原因とされるTCH(Tooth contacting habit:歯列接触癖)に気づき、それを改善することが重要である。
その他具体的には、
・顎関節や咀嚼筋への負担を減らすため肉やバケットなどの硬い食べ物を避け、おかゆやそばなどの食事に切り替える。
・頬杖やコンタクトスポーツ
・心理的ストレスを避け改善する
などが挙げられる。
 

理学療法

筋肉のストレッチやマッサージ、ホットパックによる血行を促進し、筋肉をほぐす。そのほか下顎可動化訓練や筋力増強訓練などがある。
 

薬物療法

主に顎関節や咀嚼筋の痛みに対して痛み止め(消炎鎮痛剤)を用いる。
 

アプライアンス療法

マウスピースやスプリントによる治療のことで、最も一般的なものは上顎又は下顎の全歯列を覆い、睡眠時の歯ぎしりやくいしばりによる顎関節への負担を軽減するものがある。

 
 

顎関節症の予防方法

顎関節症の予防は原因を取り除く事が重要である。上記で述べた通り、顎関節症の原因は生活習慣によるものが多く、頬杖や片側での噛み癖、噛みしめをしている自覚がある場合はなるべく意識して辞めるよう心がける。
また、TCH(Tooth contacting habit:歯列接触癖)は顎関節症と診断された患者の8割以上に見られる習慣とされ、この習慣を意識して減らすだけで症状が改善する場合が多く、顎関節症の最大の要因と考えられている。
 
寝ている間の歯ぎしりや噛みしめなど、自分の意思で制御しにくい原因に対してはマウスピースを使用することで、顎関節にかかる負担を軽減することが期待できる。すでに顎関節や筋に痛みがある場合は、安静にし、症状の悪化をさせないよう大口を開けたり顎の使いすぎに注意する。また、クリック音が鳴っているが痛みが無い。という場合は無闇に音を鳴らすことや、顎関節を動かしていると症状の悪化につながるので、顎の不快感や痛みなどの症状がある場合は、無理をせずかかりつけ医に相談する。

 
 

まとめ

顎関節症の代表的な症状は
 

  • ・顎の痛み(顎関節痛・咀嚼筋痛によるもの)
  • ・口が開かない(開閉障害:25mm未満)
  • ・顎を動かすと音がする(顎関節雑音:「ゴリッ」「カクッ」など)

 
の3つが挙げられる。
そのため『硬いものが噛めない』『大きなものが食べにくい』『音が煩わしい』などの症状が現れることがある。一方で、顎関節症は命を脅かすことや、日常生活が満足におくれなくなるような恐ろしい病気ではなく、多くは適切な診察・治療、自己管理(セルフケア)により改善する病気であることから、症状が現れた際には無理をせず、かかりつけ医や歯科医に相談する事が望まれる。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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