摂食障害とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/30

摂食障害とは?原因、症状、治療法について解説

摂食障害とは

食事量や食べ方などの食行動の異常が続き、体重や体型の捉え方など、こころとからだ両方に影響が及ぶ病気をまとめて摂食障害と呼びます。
摂食障害は女性の割合が高く、10〜20代の若者がかかることが比較的多いですが、年齢、性別、社会的、文化的背景を問わず誰でもかかりうる病気です。
摂食障害は、必要な量の食事を食べられない、自分ではコントロールできずに一度に大量に食べてしまう、一度飲み込んだ食べ物を意図的に嘔吐したり、下剤を大量使用したりするなど、さまざまな症状があります。
 
症状の内容によって、細かく分類されます。代表的な病気に①神経性やせ症②神経性過食症③過食性障害があります。
 

①神経性やせ症

食べることを極端に少なくし、体重や体型の感じ方が障害され、周囲から見るとやせすぎているのに体重が増えることを恐れ、低体重を維持しようとする行動が目立つ病気です。
 

②神経性過食症

食のコントロールができなくなり、頻繁に過食をしてしまい、その後後悔し、嘔吐や下剤を使ったりすることで、体重を増やさないように、食べたものを外に排出する行動が目立つ病気です。
 

③過食性障害

自分自身では食べ過ぎをコントロールできず、通常より速く食べる、お腹が苦しくなるほど大量に食べる、空腹を感じていなくてもたくさん食べるなど明らかな食べ過ぎを繰り返し、本人が苦痛を感じる病気です。その後、自己嫌悪に陥ったり、抑うつ気分や強い罪責感を感じたりする、などの特徴があります。食べすぎた後の過度な運動や、嘔吐、下剤使用などの“埋め合わせ行動”を伴わない点で②神経性過食症とは区別されます。


 

摂食障害の原因

明らかな病因は現在のところ不明ですが、脳も含めた生物学的要因、心理的要因、環境も含めた社会的要因が絡み合っていると考えられています。
また、無理なダイエット、職場・学校の環境や人間関係などからくるストレス、対人関係のストレス、母・父子関係(両親の別居や離婚などの家庭環境によるストレス)などさまざまなことがきっかけとなると考えられています。

  

摂食障害の症状

 

〈食べることに関する症状〉

  • ・絶食または食の量やカロリーを制限する、食欲がない
  • ・食べ物のカロリーばかり気になる
  • ・嫌なことやストレスがあると大量に食べてしまい、自分ではコントロールできない
  • ・食べ物のことが頭から離れず、勉強・仕事が手に付かない
  • ・食べ終わった後の罪悪感がある、過剰に運動してしまう
  • ・食べた後トイレで嘔吐する、下剤を決められた量以上に使う、利尿剤ややせ薬を使う

 

〈こころの症状〉

  • ・体重や体形への不満、強いやせ願望、体重が増えることへの恐怖心がある
  • ・自尊心が低い(生きている価値が無いと思う。他人を見ると自分よりも細いかどうか気になる。)
  • ・精神的な苦痛がある
  • ・抑うつ気分や情緒不安定、気分の浮き沈み・変化が大きい、こだわりが強くなる、イライラする(体重次第で自己評価が変わる。孤独感が強くなり、カッとする、生きていることをつらく感じる。こだわりが強くなり、悪循環から抜け出したいと思っても、こだわりから抜けられず自分がだめな人間に思えたり、生きている価値がないように思えたりする。)
  • ・周囲や社会から孤立していると感じる
  • ・集中力の低下や仕事効率の低下がある
  • ・性欲が低下している
  • ・人との交流を避ける

 

〈からだの症状〉

  • ・吐きだこがある
  • ・極端な体重の増加や、減少がある
  • ・栄養失調状態により、やせすぎ、貧血、低血圧、月経が止まる(無月経)、月経が不規則、疲れやすい、寒がり(低体温)、胃もたれ(肝臓・腎臓・胃腸の障害)、腹部不快感、便秘、むくみやすい・しびれ等がある
  • ・骨折しやすくなる
  • ・手や足の黄色化
  • ・睡眠障害がある
  • ・嘔吐が続くことで唾液腺が腫れたり、歯の表面が溶けたりする
  • ・低体重が長期間続くことによる脳萎縮
  • ・徐脈
  • ・高コレステロール血症
  • ・脱毛
  • ・体毛の密生化
  • ・皮膚の乾燥
  • ・嘔吐や下痢(下剤乱用など)でカリウムが失われ、体内のナトリウム・カリウム・塩化物といった電解質のバランスが崩れ、不整脈の出現、深刻なときは心不全を起こし死亡することもある

 
 

摂食障害の検査方法

 

身体測定

体重÷(身長×身長)で求められるBMI指数で低体重・重症度を判断する
BMI 17kg/㎡を下回ると軽度、15kg/㎡を下回ると最重度の拒食症(入院の可能性もあります)と判断される。

 

血液検査

電解質異常(不整脈の原因である低カリウム・ナトリウム血症)、内分泌系(低血糖や甲状腺機能異常)、貧血(過食や嘔吐)、脱水(栄養障害)、白血球減少、肝機能異常、低タンパク血症、高コレステロール血症の確認
 

心電図(不整脈の確認)


 

脳波異常、CTやMRI(脳萎縮の判断)


 

全身状態の観察

むくみ(浮腫)、腹部膨満、皮膚状態、無月経、低身長、虫歯、吐きだこ、唾液腺の腫れなど
 

精神症状についての問診

痩せ願望、肥満恐怖、ボディイメージの障害(自分の身体についてどう感じているか)、病識の欠如、活動性の亢進、抑うつ気分や不安、強迫症状、失感情症(感情の認知や表現がうまくできない障がい)など
 

行動異常についての問診

摂食行動異常(過食や嘔吐など、食べることに関して異常な行動など)、排泄行動異常、活動性異常、問題行動異常(自傷行為、自殺企図、万引き、薬物乱用など)


 

摂食障害の治療方法

体重や食事、栄養だけの問題ではなく、心理面(こころ)、身体面(からだ)、行動面への治療が必要です。心理教育や、栄養療法、認知行動療法・家族療法などの心理療法が有効とされています。症状の重さ、他の病気の有無や、背景の問題などを多面的に評価して、それに応じた治療をしていきます。からだに異常がみられるときはそれに対する身体的治療や薬物療法を組み合わせて治療が必要になることもあります。
 
心理教育では病気に対する正しい知識を身につけ、健康的な食生活改善に向けての助言などをします。
栄養療法では、栄養士による助言や、必要に応じて食事以外の補助的な栄養補給などが行なわれます。
心理療法では一般的に専門家による支持的精神療法が行われ、摂食障害に焦点化された認知行動療法や家族療法などが行われることがあります。家族やケア提供者の摂食障害に対する理解と協力があると治療を進めやすくなるため、家族への説明や助言をしたり、環境の調整や社会的資源の利用などを勧めたりすることもあります。
 
治療は基本的に外来で行いますが、外来治療では体重の回復が難しい場合、著しい低体重や身体合併症がある場合、家庭環境が治療に適していないような場合や精神的に不安定な場合などは入院治療が必要となることもあります。

 
 

まとめ

摂食障害は、心身の成長・発達と健康、人間関係、日常生活や、学業・職業などの社会生活に深刻な影響をあたえる疾患です。栄養障害、嘔吐などの症状によって、身体への合併症も生じ、時には生命の危険がある場合もあります。また、うつ病や不安症、強迫症など精神疾患を合併することもあります。
 
摂食障害は回復することが期待できる病気です。早く治療を開始できたほうが、回復が早いともいわれていますので、重症化する前に、早期に適切な治療を受けることが望ましいです。摂食障害のサインや症状に気付いたら、できるだけ早く受診し、専門家に相談して治療を受けることが大切です。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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