膠原病とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/05/25

膠原病とは?原因、症状、治療法について解説

膠原病って何?

全身に炎症が見られる病気の総称で、シェーグレン症候群、若年性関節リウマチ、成人スチル病、ベーチェット病、サルコイドーシスなどが挙げられます。

膠原病について関連記事はこちら

詳しくはこちら

Ⅰシェーグレン症候群

シェーグレン症候群とは

中年女性に多い自己免疫疾患です。

原因

自分自身を、免疫系が攻撃してしまう病気です。遺伝的要因やウイルスなどの環境要因、免疫異常、女性ホルモンの要因が関連して発症すると考えられています。
 

症状

目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマウス)、鼻腔の乾燥、唾液腺の腫れと痛み、息切れ、発熱、関節痛、毛が抜ける、肌荒れ 、夜間の頻尿、紫斑 、皮疹 、レイノー現象、アレルギー 、日光過敏 、膣乾燥(性交不快感)、疲労感 、記憶力低下 、頭痛、めまい、 集中力の低下 、気分が移りやすい、うつ傾向などがあります。
 

検査方法

唾液分泌量の低下はガムテストやサクソンテスト、シンチグラフィーまたは唾液腺造影、涙の分泌低下はシルマーテストで確認されます。ローズベンガル試験または蛍光色素試験で角結膜の上皮障害がある場合や、抗SS‐A/Ro抗体か抗SS‐B/La抗体が陽性である場合でも診断されます。
 

治療方法

症状を軽快させることと悪化を防ぐことが目的です。
 

(1)眼乾燥

涙の分泌を促進するために、ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬やジクアホソルナトリウム点眼薬、レバミピド点眼薬などがあります。涙の補充には人工涙液や、自己血清を採取してこれを薄めて使用する方法もあります。また、涙の蒸発を防ぐために、眼鏡の枠にビニール製のカバーをつけたモイスチャー・エイド(ドライアイ眼鏡)があります。涙の排出を低下させるためには、鼻側の上下にある涙点を涙点プラグで塞ぎます。
 

(2)口腔乾燥

セビメリン塩酸塩やピロカルピン塩酸塩で唾液分泌量を増加させ、口腔乾燥症状を改善させます。ブロムヘキシン塩酸塩や人参養栄湯、麦門冬湯なども用いられます。唾液の補充はサリベートや口腔の保湿用のジェルやスプレーなども用いられます。また、虫歯の予防や口内の真菌感染、口角炎を予防するものとして抗真菌薬などが用いられます。
 

(3)膣の乾燥

エストロジェンの内服やエストロジェン入りのクリームなどを使用します。
 

(4)全身病変

重要な臓器の活動性病変を伴う場合には、ステロイドや免疫抑制薬を使用します。関節痛・関節炎に対しては、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)を用い、皮疹に対しては、ステロイド外用を用います。いずれも効果不十分あるいは関節炎が高度の場合にはステロイドを考慮します。
 
 

Ⅱ.若年性特発性関節炎

若年性特発性関節炎(JIA)とは

16歳未満で発症し、6週間以上続く関節の炎症です。国際リウマチ学会(ILAR)の分類基準により7つの病型に分けられていますが、全身型と関節型に大別され、さらに関節型は少関節炎と多関節炎などに分かれます。

原因

原因は不明です。
 

症状

(1)全身型

関節炎を伴って、高熱(突然出現し、短時間で自然に下がる)と発疹(鮮やかな紅色で、通常盛り上がりや痒みはなく、短時間で消失したり移動したりする)が出ます。関節痛も発熱に伴い強弱がみられます。また、全身のリンパ節や肝臓、脾臓が腫れたり、漿膜炎(胸膜炎、腹膜炎)による腹痛や胸痛などを伴ったりすることもあります。長引くと、心臓や肺を包む膜に水が貯まったり(心嚢水・胸水)、血液の固まり方が悪くなったり(播種性血内凝固)、臓器の機能障害が出る(多臓器不全)など重篤な状態になる場合もあります。
 

(2)関節型

関節炎が起こります。関節痛は朝に強く、こわばり感を伴い、腫れや痛みのため関節を動かさなくなったり、ぎこちない歩き方になったりします。関節痛を訴えることができない小さな子どもでは、午前中は機嫌が悪い、抱っこをせがむ、触られるのを嫌がるなどの様子がみられます。
 

検査方法

関節の評価にはレントゲン検査や超音波検査、MRI検査があります。
 

(1)全身型

血液検査では、白血球やCRP、フェリチンなどの炎症反応が上昇します。全身状態が悪くなる際には血小板やフィブリノゲンが急激に減少し、中性脂肪などが増加します。
 

(2)関節型

血液検査では、CRPや赤沈値などの炎症反応やMMP-3が上昇したりすることがあります。リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性を示すことがあります。
 

治療方法

関節の痛みや腫れに対しては、非ステロイド抗炎症薬を使用します。
 

(1)全身型

ステロイドによる治療が中心ですが、病勢が落ち着かない例、ステロイドが減るとその度に病気が再燃する例、ステロイドの副作用のため増量・継続が難しい例、関節炎が長引く例では、トシリズマブやカナキヌマブなどの生物学的製剤を使います。
 

(2)関節型

抗リウマチ薬であるメトトレキサートによる治療が中心ですが、関節炎が落ち着かず、関節破壊が進行する可能性がある例や、副作用で継続が難しい例では、トシリズマブやエタネルセプト、アダリムマブ、アバタセプトなどの生物学的製剤を使います。
 
 

Ⅲ.成人スチル病

成人スチル病とは

子どもに発症するスチル病(全身型若年性特発性関節炎)に似た症状を示し、16歳以上で発症する病気です。

原因

原因は不明ですが、白血球の一部の単球やマクロファージという細胞が活動して、炎症性サイトカインという炎症を起こす物質を大量に産生することで、体中に強い炎症が起きるとされています。
 

症状

特徴的な症状は、リウマチ因子陰性の慢性関節炎(関節が痛み、腫れて熱感を持つ)と、痒みを伴わない移動性の淡いピンク色の皮疹(発熱とともに出現し解熱すると消失する)、午前中は平熱で夕方から夜にかけて起こる高熱(間欠熱)です。喉の痛みやリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の肥大などもあります。また、薬によってアレルギーが起きやすくなることもあります。
 

検査方法

血液検査では、炎症反応や白血球、肝臓機能、血清フェリチンの増加がみられます。
 

治療方法

通常は副腎皮質ステロイドを用いますが、効果が不十分な場合や再燃する場合、副腎皮質ステロイドの減量が困難な場合には、ステロイドパルス療法やトシリズマブなどの抗リウマチ生物学的製剤、免疫抑制薬を併用することもあります。
 
 

Ⅳ.ベーチェット病

ベーチェット病とは

慢性再発性の全身性炎症性疾患です。

原因

病因は不明ですが、何らかの内因(遺伝素因)に外因(感染病原体やそのほかの環境因子)が加わることで白血球の機能が過剰になり、炎症を引き起こすと考えられています。内因の中では、ヒト白血球抗原 (HLA)という白血球の血液型のうちHLA-B51というタイプがあり、健常者に比べ比率が高いことが分かっています。外因では、虫歯菌を含む細菌やウイルスなどの微生物の関与が想定されています。
 

症状

主症状として、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍(口唇、頬粘膜、舌、歯肉、口蓋粘膜にできる円形の境界鮮明な潰瘍)や皮膚症状(結節性紅斑様皮疹、座瘡様皮疹、血栓性静脈炎、皮膚過敏症)、外陰部潰瘍、眼症状(虹彩毛様体炎:眼痛、充血、羞明、霧視、網膜絡膜炎:視力低下)があります。副症状として、関節炎や血管病変:血管型ベーチェット病(深部静脈血栓症、動脈瘤)、消化器病変:腸管型ベーチェット病(腹痛、下痢、下血)、神経病変:神経ベーチェット病(髄膜炎、脳幹脳炎、片麻痺、小脳症状、錐体路症状、認知症)、副睾丸炎があります。
 

検査方法

針反応(痕が残る)が特徴的ですが、鑑別方法にはならず、血液検査などでも特徴的なマーカーは見つかっていません。
 

治療方法

関節の痛みや腫れに対しては、非ステロイド抗炎症薬を使用します。
 

(1)眼症状

発作時の治療として、虹彩毛様体など前眼部に病変がとどまる眼炎症発作の場合は、副腎皮質ステロイドの点眼や結膜下注射による治療を行い、虹彩癒着防止のため散瞳薬を用います。視力予後に直接関わる網膜脈絡膜炎での発作の場合は、ステロイドの局所および全身投与で対処します。また、発作予防には、コルヒチンやシクロスポリンを使用します。これらの治療でも発作が起きる場合には、TNF阻害薬であるインフリキシマブ、アダリムマブを使用します。
 

(2)皮膚粘膜症状

基本的な治療は、副腎皮質ステロイド外用薬の局所療法とコルヒチンです。さらに、口腔内アフタ性潰瘍にアプレミラスト、結節性紅斑にミノサイクリンやジアミノフェニルスルホン、毛包炎様皮疹に抗菌薬を使用し、難治例にはステロイドや免疫抑制薬を用いることもあります。
 

(3)関節炎

急性炎症には消炎鎮痛薬、ステロイド内服を、発作予防にはコルヒチンを用い、無効の場合は、アザチオプリン、メトトレキサート、さらにはTNF阻害薬を考慮します。
 

(4)血管病変

ステロイドとアザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサートなどの免疫抑制療法を主体とし、難治例にはTNF阻害薬を考慮します。深部静脈血栓症には 抗凝固療法を使用しますが、肺血管からの出血には注意が必要です。大動脈病変、末梢動脈瘤では手術を考慮しますが、この際も免疫抑制療法を併用します。
 

(5)腸管病変

軽症〜中等症にはサラゾスルファピリジンなどの5-アミノサリチル酸製剤、中等症〜重症例には副腎皮質ステロイド、TNF阻害薬の使用や栄養療法を行います。難治例にはチオプリン製剤の併用を考慮し、腸管穿孔や高度狭窄、膿瘍形成、大量出血では外科手術を行います。
 

(6)中枢神経病変

脳幹脳炎、髄膜炎などの急性期の炎症にはステロイドパルス療法を含む大量のステロイドが使用され、再発予防にコルヒチンを用います。精神症状、人格変化などを主体とした慢性進行型にはメトトレキサート投与を行います。いずれも難治性の場合や再発を繰り返す場合はインフリキシマブを考慮します。
 
 

Ⅴ.サルコイドーシス

サルコイドーシスとは

類上皮細胞やリンパ球などの集合でできた肉芽腫という結節が、全身の様々な臓器にできる病気です。

原因

何らかの物質がリンパ球、特にT細胞の活動を活発にし、この細胞がつくりだす物質によって、マクロファージ細胞が刺激されることで肉芽腫病変ができます。
 

症状

(1)臓器特異的症状

:進行して肺線維症という状態になり、咳や息切れが出てくることがあります。
 
:眼の虹彩や毛様体、脈絡膜に炎症(ぶどう膜炎)が起こることが多いです。目のかすみ(霧視)や飛蚊症、充血や眩しさ、視力低下といった症状が出ることもあります。黄斑浮腫や白内障、緑内障などの合併症により、視力低下や視野の障害をきたすこともあります。
 
皮膚:皮膚病変は皮膚サルコイド、瘢痕浸潤 、結節性紅斑に分類され、皮膚サルコイドには結節型、局面形成型、皮下型、びまん浸潤型があります。
 
心臓:心臓病変は、刺激伝導系が侵されて不整脈が起こる場合(心臓のポンプ機能が低下し、意識消失となることもある)と、心臓を収縮させる筋肉が侵されて心不全に至る場合(放置すると心臓の拍出力が低下し、息切れや動悸、足の浮腫といった慢性心不全に至る)に大別されます。他の臓器に病変がなく、心臓病変のみが存在する場合を心臓限局性サルコイドーシスと言います。
 
神経:神経サルコイドーシスは部位によって様々な神経症状をきたします。顔面神経麻痺で口が歪む、下垂体に腫瘤ができて尿崩症が起こる、多量の尿がでる、脊髄に痛みが出る、手足の痺れや体の痛み、自律神経障害などです。
 
筋肉:ふくらはぎなどの筋肉を侵した場合には、腫瘤が形成されることが多いです。
 
:手指骨や足趾骨が侵されやすいのが特徴で、多くが痛みを訴えます。握手をしたときにボキッと指の骨が折れて気がつく場合(握手徴候)が多いです。
 
表在リンパ節:表在のリンパ節が痛みもなく腫れてくることがあります。
 
上気道:鼻腔内に病変ができる場合が多く、鼻づまりが起こります。上咽頭腫瘤、副鼻腔炎、歯肉病変などもあります。
 

(2)非特異的全身症状

疲れ、息切れ、痛み、発熱、耳鳴、難聴、手足などの痺れ、温痛覚の低下、自律神経障害などがあります。
 
 

検査方法

血液中のアンギオテンシン変換酵素(ACE)やリゾチームという酵素が増え、蛋白分画中のガンマグロブリンや血中・尿中カルシウムが高値になるというということがあります。ツベルクリン反応が陽性であったのが、陰転化することもあります。病変の広がりや活動性をみるためには、ガリウムシンチグラム(罹患している部分に集積する)で全身の検査を行います。さらに感度の高いFDG- PET検査も同じ目的で行われます。また、気管支鏡で肺胞洗浄を行うと、洗浄液中の総細胞数やCD4陽性Tリンパ球が増加している所見が認められ、診断の参考になります。確定診断には、生検によって病巣の組織の中に類上皮細胞肉芽腫を見つける必要があります。
 

治療方法

自然に改善することが多い疾患のため、症状の軽い場合は経過をみるのが一般的ですが、強い症状がある場合や病状が進行する場合、検査値で大きく異常がある場合には、ステロイドと免疫抑制薬で治療するのが一般的です。

 

 

膠原病の予防方法は?

膠原病を予防することはできません。膠原病に罹る方は感染症に罹りやすい体質と考えられるので、風邪などの感染症に注意しましょう。日常生活では、十分な睡眠やバランスの良い食事など、規則正しい生活を心がけることが大切です。また、病気にもよりますが、発症や悪化の誘因となる紫外線は避け、肉体的・精神的なストレスも症状を悪化させる恐れがあるため、回避する必要があります。

 

 

まとめ

膠原病は現在のところ原因不明なものが多く、治療も症状を改善させる方法が中心ですが、様々な患者会や研究会が開かれ、世界中で膠原病の原因の解明と治療の開発が確実に進んでいます。

 

当院での膠原病の検査・治療方法はこちら

詳しくはこちら

 
  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
一覧に戻る