PMSとは?月経前症候群の症状・原因・対処法を解説
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PMSとは?月経前症候群の症状・原因・対処法を解説
「PMSはホルモンバランスの影響だから治らない」
「つらいけど、仕方のないことだから諦めるしかない」
と思っている方も多いかもしれません。
確かに、ホルモンバランスの変化は生理的な現象ですが、適切な対処を行えばつらい症状を和らげることは可能です。
以降では、PMSとはどのようなものなのか、原因や対処法などを解説します。
また、「更年期障害との違いが分からない」とお悩みの方に向けて、その違いについても解説しています。
ぜひ参考にしてください。
PMS(月経前症候群)とは?
PMSとはどのようなものなのか、症状と併せて解説します。
PMSとは?
月経前症候群という名前のとおり、月経が始まる前に起きる心身の不調です。
症状が始まる時期は月経の3~10日前であり、月経が始まると次第に症状が和らいでいきます。
症状には個人差があります。
また、その時々で症状が異なることもあり、強く出る場合もあれば、軽く済むこともあります。
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PMSの症状とは
下記の表のように<身体的症状><精神的症状><社会的症状>に分けられます。
個人差もあり、PMSの症状には200種類の症状があると言われています。
- 身体的症状
- 乳房緊満感、乳房腫脹、腹痛・腰痛、腹部膨満感、頭痛 、関節痛、食欲不振・過食、筋肉痛、体重増加、手足の腫脹・むくみ、肌荒れ・ニキビができやすい、疲れやすい
- 情緒的症状
- 抑うつ、怒りっぽくなる、集中力の低下、 いらだち、不安、混乱 、無気力
- 社会的症状
- いつもの通り仕事ができない、面倒くさくなる、月経がいやになる、他人と口論する、家に引きこもる
また厚生労働省研究班のホームページ【女性の健康推進室 ヘルスケアラボ】の調査では、PMSやPMDDの症状は、「疲れやすく、気力がわかない」「感情が不安定になる」「身体的症状」「食欲増進」を感じている人が多かったです。
また同調査でも、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)があるときの対処方法について調査した結果、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害 (PMDD)があるときの対処方法をみると「いつもしている」と「たいていしている」の合計が最も多い のは、「症状が出ても我慢している」、次いで、「市販の痛み止めを服用している」でした。
加えて、現れる症状の傾向は妊娠・出産経験の有無や子育て、仕事の状況にも影響されることが分かっています。
妊娠や出産の経験がある方は、PMSを発症するとイライラする、怒りっぽくなる、攻撃的になる、または自己否定的な気持ちになるなど、精神的な症状が出やすい傾向があります。
一方、妊娠や出産の経験がない方は、頭痛や腰痛、腹痛などの身体的な症状が現れやすい傾向があります。
また、仕事をしている方は、集中力が散漫になってミスが増えたり、攻撃的な態度から口論が増えたりすることもあります。
専業主婦の方では、家族に対して八つ当たりをしてしまうケースも見られるようです。
PMS(月経前症候群)の原因
症状が月経周期と同期して出現するため、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)が関わっていると考えられますが、PMSとPMSではない方で比べると血液中のホルモン濃度には差がないことが確認されています。
原因は不明で、考える要因として下記の3つが挙げられます。
①女性ホルモンの変動
水分代謝に影響し、むくみや乳房の張りなどの身体症状を引き起こします。
女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」は、卵巣からの指令で分泌されます。
これらのホルモンの分泌量が変動することで、心身が反応し、さまざまな症状が現れると考えられています。
例えば、プロゲステロンは胸の発達や子宮内で胎盤の準備を進める働きに加え、水分を体内に保持しやすくする作用や、抑うつ状態に陥りやすくする気分の変動を引き起こす作用があります。
そのため、分泌量が増えた際にPMS症状として乳房の張り、むくみ、気分の落ち込みなどが現れるのです。
②女性ホルモンと神経伝達物質(セロトニンとGABA)の関係
プロゲステロンの急激な減少は、脳内のホルモンや神経伝達物質に異常を引き起こすと考えられています。
プロゲステロンは排卵直後から分泌量が大量に増加し、月経が始まる1週間前あたりで急激に分泌量が減少します。
これにより、気分を落ち着かせたり不安を取り除いたりする神経伝達物質の【セロトニン】や【γアミノ酪酸(GABA)】の働きが低下する可能性があります。
さらに、女性ホルモンとセロトニンの分泌は連動していますが、女性は男性に比べてセロトニンの分泌量が少ないため、これがPMSに影響していると考えられます。
セロトニンは「幸せホルモン」として知られており、不足すると疲労感、イライラ、気分の乱れが起こりやすくなります。
③交感神経、副交感神経の乱れ
PMSを発症する原因の一つに交感神経、副交感神経の乱れが関係していると考えられています。
PMSに悩まれている方は月経前に交感神経が優位になり、副交感神経の働きが弱まることが知られています。
交感神経は気持ちの緊張度や興奮度を高め、副交感神経は心身をリラックスさせる役割があります。
交感神経優位の影響と、PMS症状で見られる症状が一致するため、関連性が高いとされているのです。
PMSの改善方法とは?
PMSを改善する方法は以下があります。
- ●カウンセリング
- ●薬物療法
- ●生活改善
- ●食事
では、一つずつ解説します。
カウンセリング
カウンセリングによる治療は有効な手段とされています。
PMSはストレスや精神的な負担が関係していることが多いため、カウンセリングで心に抱えている悩みを話すことで、対策を一緒に考えることができます。
また、共感してもらうことで気持ちが楽になることもあります。
女性は共感を得ることで安心感を得やすいため、話を聞いてもらうことで症状が軽減される可能性があります。
加えて、カウンセリングは自分自身を見つめ直す機会にもなり、対処法を見つけるきっかけになります。
根本的な改善を目指すためには、ご自身のPMSの傾向を理解し、分析に基づいて対処することが大切です。
カウンセリングは自己分析のきっかけを与えてくれるため、一度受けてみてはいかがでしょうか。
薬物療法
薬物療法では、ホルモンバランスを整える薬や痛み止めなどが処方されます。
具体的には以下です。
ホルモンバランスを整える薬
- ●漢方薬
- ●低用量ピル
漢方薬は、体質改善をして症状の改善を目指す薬です。
ホルモンバランスを整える代表的な漢方薬には「加味逍遥散(かみしょうようさん)」があり、これにより眠気やイライラなどPMSの症状を抑えます。
ただし、個々の体質に合わせて使われるため、すべての方に適しているわけではありません。
例えば、冷えがあり体力が虚弱な方には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が用いられることもあります。
低用量ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの両方を配合した医薬品です。
毎日同じ時間、一定期間飲み続けることで効果を発揮します。
低用量ピルには、精神的な症状のほか、肌荒れや過食などの症状を緩和する効果があります。
ただし、血栓ができやすくなるなどのリスクもあるため注意が必要です。
痛みを軽減する薬
- ●鎮痛剤
頭痛や腹痛、腰痛がつらい場合は鎮痛剤で対処します。
しかし、鎮痛剤は一日の服用量を守らないと胃潰瘍などのリスクがあるため、適切な量を心がける必要があります。
精神症状を落ち着かせる薬
- ●漢方薬
- ●向精神薬
漢方薬の中には、精神症状を改善するものがあります。
例えば、先ほど紹介した加味逍遥散をはじめ、抑肝散(よくかんさん)などがあります。
精神不安や興奮による不眠にも効果的です。
向精神薬は、中枢神経に作用して、うつ状態や不安感などを緩和・改善します。
ただし、さまざまな副作用があるため、体調の変化に注意しながら使用しましょう。
もし異変を感じたら速やかに相談し、薬の変更を検討しましょう。
便秘・下痢を落ち着かせる薬
- ●整腸剤
PMSで便秘や下痢に悩む方も多くいます。
便秘によるおなかの張りや肌荒れ、または下痢による腹痛や急な便意に悩んでいる場合は、整腸剤の処方を相談してみるとよいでしょう。
生活改善
症状を改善するためには、生活習慣の見直しも大切です。
生活のリズムや食事、睡眠もホルモンの分泌や自律神経の乱れに影響するためです。
具体的には、以下の内容を見直してみましょう。
- ●栄養バランスが良い食事を心がける
- ●血糖値を急上昇させない
- ●睡眠と休息を確保する
- ●刺激物を避ける
- ●軽い運動をする
- ●むくみ対策をする
栄養バランスが良い食事を心がける
欠食や偏ったバランスの食事はホルモンバランスを乱します。
その結果、PMSの頭痛や腰痛を引き起こすことにつながるため、5大栄養素をバランスよくとれるように意識しましょう。
血糖値を急上昇させない
血糖値の急上昇を抑えることで、イライラや過食を軽減できるとされています。
食事の際はゆっくりかんで食べ、糖質が高いものを食べる際は食物繊維もしっかりとるようにして工夫しましょう。
また、食後に軽い運動をすることでも、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
睡眠・休息時間を確保する
疲労やストレスがたまると気持ちが不安定になりやすくなります。
十分な睡眠と休息を確保し、メンタルの安定を図りましょう。
寝る前に気持ちが落ち着くアロマをたいたり、部屋の温度を適切に保ったりすることで、睡眠の質を向上させることができます。
刺激物を避ける
刺激物は交感神経を活発化させるため、イライラや興奮を引き起こしやすくなります。
PMSの発症時にイライラしやすいと感じている方は、コーヒーや紅茶などのカフェインの摂取を控えてみるとよいでしょう。
軽い運動をする
軽い運動は、リフレッシュ効果によりストレスを解消するのに役立ちます。
また、体を動かすことにより筋肉がほぐれ血行が改善されることで、腰痛や肩こりの緩和にもつながります。
ストレッチやヨガ、散歩を15分程度行ってみましょう。
むくみ対策をする
PMSや生理中にむくみやすいと感じる方は、塩分の摂取量を見直すとよいでしょう。
また、きゅうりなどの利尿作用のある食べ物をとることもおすすめです。
食事
PMSの症状ごとにおすすめの食材を紹介します。
肌荒れを予防・改善する
肌荒れの予防には、ビタミン類の摂取がおすすめです。
ビタミン類が豊富な食材は緑黄色野菜です。
- ●ほうれん草
- ●にんじん
- ●ブロッコリー
- ●ピーマン など
特にほうれん草は鉄分が豊富で、貧血になりやすい女性にとっては特におすすめの食材です。
PMSを緩和する
PMSの緩和にはイソフラボンを含む食材がおすすめです。
- ●豆腐
- ●豆乳
- ●大豆
- ●納豆 など
イソフラボンは女性ホルモンに似た働きを持ち、PMSの症状を軽減することが期待できます。
精神不安を緩和する
精神的な不安を和らげるためには、ビタミンB6、カルシウム、マグネシウムが含まれる食材が効果的です。
- ●ビタミンB6:マグロ・カツオ・バナナ、鶏ささみ
- ●カルシウム:牛乳、チーズ
- ●マグネシウム:魚介類・海藻類
むくみが気になる方は、カリウムが豊富なバナナ、ダイエット中でカロリーを気にする方にはヘルシーな鶏ささみが特におすすめです。
女性ホルモンの分泌を調整する
女性ホルモンのバランスを整えたい場合は、ビタミンEを含む食材が有効です。
- ●ブロッコリー
- ●アーモンド
- ●全粒の食品
ビタミンEには抗酸化作用があり、美容にも良いとされているため、積極的に摂取することをおすすめします。
検査や診断について
アメリカ精神医学会の定義(DSM-Ⅲ-R)によると、
①月経前1週間に下記の症状のうち⭕️印の4個のうち一つは存在
②月経とともに消失するという周期性があること
③あてはまる項目の合計が5つ以上になる
④これらの症状が日常生活に支障をきたす場合に診断されます。
⭕️抑うつ気分や落ち込みがひどい
⭕️突然悲しくなったり涙もろくなる
⭕️不安、緊張
⭕️いらいらしたり、怒りっぽくなる
⏹️仕事・趣味などへの興味消失
⏹️いつもより疲れやすく、活動性が低くなる
⏹️集中力低下
⏹️同じものを食べ続けたり、甘いものを食べたくなる
⏹️睡眠不足や睡眠過多
⏹️その他の身体症状がある(乳房緊満感・体重増加・むくみ・頭痛・肩こりなど)
検査項目
PMSかどうかは、以下の検査で診断可能です。
- ●問診
- ●血液検査
- ●尿検査
- ●超音波検査
問診では、症状の詳細を確認することでPMSかどうか、または他の精神疾患なのかを見極める手助けになります。
血液検査や尿検査では、ホルモンや貧血、肝機能などを詳しく調べ、他の疾患との鑑別に役立ちます。
超音波検査では、妊娠の有無やその他婦人科系の異常がないかを調べられます。
PMSと症状が似ている疾患
PMSと症状が似ている疾患には、PMDDとうつ病があります。
以下で解説していきます。
PMDD(月経前不快気分障害)
PMDDは月経前不快気分障害といいます。
PMDDは、月経前に発症する精神的・身体的な不快感が特徴の疾患で、PMSと症状が似ているため混同されがちです。
PMDDの症状やPMSとの違い
PMDDの主な特徴は、精神症状が非常に強く出る点です。
PMSでも精神的な症状がありますが、身体的症状も伴い、精神的な症状は比較的自制が可能です。
一方、PMDDでは身体的な症状は少ないものの、激しい精神的な症状が現れ、日常生活や仕事、家事が困難になるほどです。
PMDDの原因
PMDDの原因はPMSと同様に不明ですが、女性ホルモンの変動が関与していると考えられています。
PMDDの治療法
PMDDの治療には、抗うつ薬や低用量ピルの処方がメインで行われます。
加えて、生活習慣の見直しも必要とされます。
うつ病
PMSには精神的な症状も見られるため、うつ病かもしれないと不安に思う方もいます。
うつ病とPMSの違いについては以下のとおりです。
うつ病の症状やPMSとの違い
うつ病は、気分の落ち込みや希死念慮が常に続くのが特徴です。
対してPMSは月経前に限られた期間に気分の落ち込みが見られます。
発症のタイミングをチェックすることで、PMSとうつ病の違いを判断できます。
うつ病の原因
うつ病はストレスの蓄積によって引き起こされます。
精神的・身体的なストレスが積み重なり、心が疲弊した状態です。
イメージとしては、コップに水を注ぎすぎてあふれてしまった状態です。
うつ病の治療法
うつ病の治療には、心身の休養、向精神薬、認知行動療法などがあります。
うつ病にはさまざまなタイプがあり、症状に応じた適切な治療が必要です。
まとめ
月経前に出現する症状は個人差があります。
「痛みを我慢するのが当たり前」など無理せず、PMSやPMDDは治療の対象になる疾患で、様々な治療法があります。
お困りのことがあれば、ぜひ当院の婦人科にご相談ください。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師