梅毒とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/05/18

梅毒とは?原因、症状、治療法について解説

梅毒とは

梅毒とは、梅毒トレポネーマという細菌が、性的に接触することで感染する疾患です。他人の皮膚や粘膜に直接触れることでうつります。または、産まれる前に母親から感染することもあります。
近年、国内で梅毒患者が急に増えているのが問題となっています。そして、梅毒に感染している方は、HIV(エイズウイルス)への感染リスクが高くなるとされているため注意が必要です。産まれる前に母親から感染した梅毒(先天梅毒)については、症状があらわれずに経過することもありますが、産まれる前に命を落としてしまったり(流産、早産)、乳児期に症状が出たり、学童期以降に症状が現れる場合もあります。



 

梅毒の原因って?

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌に感染すると発症します。目に見えない傷のある皮膚や粘膜から身体の中に侵入します。入ってきてから数時間で血液や所属リンパ節(鼠径リンパ節など)に広がっていきます。梅毒トレポネーマは、一定の湿度や温度下にいなければ死んでしまうので、皮膚や粘膜からはがれると数時間で死んでしまいます。

 

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梅毒の症状って?

梅毒は、梅毒トレポネーマに感染してからどれくらいの時間が経過しているかによってさまざまな症状が出ます。症状は第1期から第4期までに分けられます。
第1期は、梅毒トレポネーマが感染してから3週間程度で発症します。この時期には、梅毒トレポネーマが身体に入ってきた部位に、小さな赤く腫れたしこりができます。部位としては、陰部の近くにできることが多いです。痛みはなく、無痛性初期硬結と呼ばれます。初期硬結は崩れて硬性下疳となり、潰瘍のような傷を創ります。しこりの近くのリンパ節が腫れることもありますが、こちらも痛みを感じません。これらの第1期の症状は、痛みもなく数週間で自然に消えるので気づきにくいです。 

第1期の後に、感染してから平均3か月程度で第2期に入ります。この時期には、バラ疹と呼ばれるピンク色の小さな発疹やしこりが手のひらや足裏、顔など全身にあらわれます。痛みやかゆみは伴いません。また、毛が抜けたり、全身のリンパ節が腫れたり、陰部か肛門部に扁平コンジロームというできものがあらわれたりします。これらの症状は数週間すると自然になくなっていきます。全身に特徴的な皮疹が出るので、この時期に気づかれることが多いです。
第2期を過ぎると、しばらくの間は何も症状が出ないことが多いです。4人に1人程度の割合で第2期の症状が再燃することがあります。 

感染してから約3年後以降に第3期に入ります。これまでに梅毒の治療をしていなければ、3人に1人が発症してしまいます。10年を過ぎ治療を行っていないと第4期に入り、神経梅毒、心血管系梅毒、梅毒性ゴム腫の大きく分けて3種類に症状が分類されます。神経梅毒は、5〜10%の方に発症し、脳梗塞、手足の神経麻痺、記憶力低下、妄想など、脳全体が梅毒にやられるので神経のさまざまな症状が出ます。心血管系梅毒は、約10%の方に発症し、大動脈に瘤ができて破裂したり(大動脈瘤)、血管がせまくなったり、心臓の弁が不調になり心不全などにより命を落とす場合もあります。梅毒性ゴム腫は、約15%の方に発症し、肝臓や皮膚、骨などにゴム腫と呼ばれる特徴的な腫瘍ができます。現在では、梅毒に対する治療薬が発達しているので、第3期にまで至ることは少ないです。

 

検査方法と検査ができる時期/潜伏期間

梅毒を検査して診断するには、感染してからの時期が大切です。初期の梅毒を診断するには、第1期にできた初期硬結や硬性下疳の分泌物を暗視野顕微鏡で観察するしか診断方法がありません。つまり、初期硬結に気づかなければ梅毒の症状は進行していってしまいます。
血液検査でも梅毒を診断できます。一般的に3種類の血液検査があります。いずれの方法も、梅毒トレポネーマに感染してから4〜6週間程度経ってから検査すると有効です。感染してから3週間以内であれば、感染していたとしても陰性という結果になりますが、最近では検査法が鋭敏になっているので、感染後3週間以上経過していれば陽性にでます。第1期の症状に気づいたとしても血液検査では判明しないことが多いですが、念のため血液検査をお勧めします。第2期の症状が出る頃には、必ず陽性になります。

 


梅毒の治療は?

梅毒の治療は、ペニシリンという抗菌薬を内服または注射するのが標準的な治療方法です。ペニシリンは比較的アレルギーが多い抗菌薬ですが、アレルギーがある場合にはテトラサイクリンやセフトリアキソンといった別の抗菌薬を使用します。
梅毒にかかった場合には、自分だけでなくパートナーの方にも検査を受けてもらうようにしてください。お互いにうつしあっている可能性があり、発見が遅れると重症化してしまいます。また、梅毒に感染してしまった妊婦さんは、点滴でペニシリンを投与すれば胎盤から赤ちゃんに感染するのを防げます。そのためには、妊娠早期から妊婦検診を受け、母子手帳を貰うことが肝心です。

 

性器ヘルペスの予防方法は?

梅毒に感染しないようにするには、性行為をする時にコンドームを使うようにしてください。ただし、コンドームで覆われていない部位の粘膜や皮膚に梅毒の症状があると、そこから感染する場合もあります。口や肛門などからも感染する可能性があるので注意が必要です。
特定のパートナーだけではなく、不特定多数と性的な関係を持つと感染リスクが高くなります。
感染したかもしれないと思った時には早めに検査をしてください。また、粘膜や皮膚に、皮疹やただれ、しこりがある時などには性行為は控えるようにして、早めに医療機関を受診してください。

 

まとめ

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が感染することで発症します。皮膚や粘膜を介して、性行為や、口や肛門から感染することもありますし、産まれる前後に血液を介して母親から子どもにうつる場合もあります。
梅毒は、感染してからの期間に応じてさまざまな症状がでます。一時的に症状がおさまったと思っても、また再燃し、ほかの症状が出てくることがあります。しこり、皮疹、潰瘍やリンパ節が腫れたりして気になれば必ず医療機関を受診してください。放置すると、神経や心臓、血管や内臓に影響を及ぼして命に関わることがあります。
梅毒の検査には、時期に応じて、顕微鏡検査か、血液検査が有効です。感染初期には血液検査では陽性にならないことに注意してください。
治療には、抗菌薬を使うのが標準的な治療法です。しっかりと治療することで梅毒は治りますので心配な場合は早く受診するようにしてください。
梅毒の予防としては、コンドームを使った性行為や特定のパートナーとだけ関係を持つのが大切ですが、完全には予防できません。早めに症状に気づいて治療することで、周りの方を梅毒の感染から守ることができます。

 

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MYメディカルクリニック顧問 北村 唯一医師

監修:MYメディカルクリニック 顧問

北村 唯一 Dr. Sasakura Wataru

略歴

  • 1973年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 1998年 東京大学医学部附属病院泌尿器科 教授
  • 2006年 財団法人 性の健康医学財団 理事
  • 2008年 東京大学 名誉教授
  • 2008年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 院長
  • 2011年 財団法人 性の健康医学財団 理事長
  • 2013年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 名誉院長
  • 2014年 自靖会親水クリニック 院長
  • 2014年 光靖会北村記念クリニック 名誉院長
  • 2018年 医療法人社団裕志会 理事長
  • 2022年 医療法人社団MYメディカル 顧問

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