胃潰瘍とは?症状や診断、治療について解説

  • クリニックブログ
2023/05/09

胃潰瘍とは?症状や診断、治療について解説

「胃潰瘍は胃に穴があくって本当?」
「胃がんの前兆だったりする?」
このような不安や疑問はありませんか?
 
胃潰瘍はよく胃がんとの関係性に不安を持つ方がいらっしゃいます。
がんは治る病気になってきたとはいえ、亡くなってしまうイメージが拭えず、不安になるのは仕方ありません。
 
以降では、潰瘍とはどのような病気なのか、胃がんとの関係性などを解説します。

 
 

胃潰瘍って何?

胃潰瘍とは、胃の壁の筋層まで深く傷ついた状態です。
胃の壁は何層にもなっており、一番上の層である胃の粘膜層(2~3mm程度)までの欠損を「胃びらん」と呼びます。
 
そして、粘膜筋板が断裂し、さらに深いところにある粘膜下層(2~3mm以上)まで欠損した状態を胃潰瘍と呼びます。
胃潰瘍

胃潰瘍には急性と慢性の2タイプがあります。
急性の場合はびらんや潰瘍が複数見られ、慢性の場合は単発で見られるのが特徴です。
多くは治療を受ければ早期に改善されますが、中には再発を繰り返す方もいます。
なお、50代前後の方が発症しやすい傾向があります。
 
胃潰瘍には良性と悪性があるのも特徴です。
良性の場合は通常行われる胃潰瘍の治療で完治できます。
一方の悪性の場合は、胃がんであることが認められるため、がん治療が必要です。
悪性かどうかは胃の検査で分かります。

放置するとがんになる?

胃潰瘍と胃がんはまったく別物の疾患であるため、放置してがん化することはありません。
しかし、潰瘍やびらんが見られるといった、臨床症状がよく似ています。
 
そのため、どれだけ熟練した医師でも鑑別が難しく、細胞を取り出して生検で判断する必要があります。
胃がんの治療で胃潰瘍が治るわけでもなければ、胃潰瘍の治療で胃がんが治るわけでもありません。
正確な治療を行うためにも、検査を行いはっきりさせることが大切です。
 

胃炎との違いは?

胃潰瘍と胃炎の違いを結論からお伝えすると、胃炎が進行したものが胃潰瘍です。
 
胃炎の症状は、急性か慢性かで異なります。
急性の場合、突然の激しい胃痛や吐き気、膨満感といった症状が見受けられます。
胃痛の激しさに動けなくなる方もいるほどです。
一方の慢性タイプでは、激しい胃痛などがありません。
炎症が起きていることには間違いありませんが、長期にわたって炎症を起こした結果、常になんとなくの不調を感じる状態になっています。
 
胃炎を起こす原因はたくさんあります。
ウイルス感染やストレス、お酒の飲みすぎ、暴飲暴食、ピロリ菌、アニキサスなどです。
寝不足が続いていたり、仕事や家庭内のストレスが長く蓄積されたりして、突如発症する方が多くいます。
 
治療法は、急性か慢性かで異なります。
急性の場合、生活の改善を行いながら胃を保護する薬を処方し、内服をして様子を見ます。
慢性タイプの場合、ピロリ菌が原因の場合が多く、もし検出されたら除去する方法が効果的です。
 
一方で胃炎と潰瘍の共通点は、激しい胃痛と、時に下血やタール便が出ることがある点です。
胃炎もひどい場合は出血を起こしているケースがあります。
潰瘍も同様で、ひどい場合は出血しており、血便や下血の症状を引き起こすことがあります。
 
 

胃潰瘍の原因って?

胃潰瘍を引き起こす原因には、以下のようなものがあります。
 

  • ●ストレス
  • ●ピロリ菌
  • ●暴飲暴食
  • ●刺激が強い食べ物や飲み物のとりすぎ
  • ●抗血液凝固薬の継続的服用
  • ●解熱鎮痛薬の継続的服用

 
上記が胃潰瘍を起こす理由とともに解説します。
 

具体的な原因1:ストレス

まず発症の原因として挙げられるのはストレスです。
ストレスの蓄積は自律神経を乱し、胃腸機能の低下を招きます。
 
自律神経は、体温調節を行ったり、心身を興奮またはリラックスさせたりするだけではありません。
胃腸機能にも関わっているため、自律神経のバランスが崩れると、胃腸機能をうまくコントロールできなくなります。
その結果、胃酸が過剰に分泌され胃潰瘍につながることがあります。
 
発症を予防するためには、日頃からストレスケアをすることが大切です。
胃潰瘍に限らず、ストレスはさまざまな病気の要因になります。
ストレス発散方法が分からない方もよくいらっしゃいますが、ご自身が癒やされるセルフケアの方法を知ることが大切です。
 

具体的な原因2:ピロリ菌

ピロリ菌とは、らせん状の形をした棒状の細菌です。
胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する働きがあり、アンモニアによって胃酸を中和させることで、胃の中で生きられるようになっています。
 
ピロリ菌の感染源は主に食べ物です。
食べ物を介して感染し、長年胃の中で生き続け、炎症を起こし続ける厄介な細菌です。
 
ピロリ菌に感染すると、除去するまでは常に胃に炎症を起こし、やがて萎縮が見られるようになります。そして、胃潰瘍に進行するのです。
 
ピロリ菌は潰瘍だけでなく、がんのリスクを高めることでも知られています。
一度胃の検査をしてもらい、いないかどうか確認してもらうべきでしょう。
 

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具体的な原因3:暴飲暴食

暴飲暴食は、発症原因として知られる中の一つです。
 
暴飲暴食は胃酸を過度に分泌させるため、潰瘍をつくるリスクを高めます。
加えて、さまざまなものをたくさん食べると消化に時間がかかるため、胃に負担がかかることも原因の一つです。

習慣化してしまうと常に胃に大きな負担をかけ続けることになるため、胃の機能が低下していきます。
弱った状態にさらに胃酸過多が加わると粘膜が傷つきやすくなり、悪循環に陥ってしまいます。
 
友達と食事をしているときなどは、楽しくてついつい食べすぎたりすることもあるかもしれません。
そのような状態は除き、普段の生活では気を付けるべきです。
暴飲暴食は肥満や生活習慣病のリスクをも高めることも分かっているため、習慣化しないように気を付けましょう。
 

具体的な原因4:刺激が強い食べ物や飲み物のとりすぎ

発症原因の一つに、刺激が強い食べ物や飲み物のとりすぎが挙げられます。
これらも、胃酸過多につながるためです。
 
コーヒーをたくさん飲んだり、辛いものをたくさん食べたりすると、胃粘膜が刺激されます。
胃痛を引き起こす原因になるほか、習慣化されれば慢性的に炎症が起き、胃潰瘍を引き起こしかねません。
 
辛いものが好きな方、コーヒーが好きな方にとって、たくさん食べたり飲んだりするのは普通のことかもしれません。
しかし、胃にとっては大きなダメージであり大病を患う原因にもなるため、胃を労る気持ちを忘れないようにしましょう。
 

具体的な原因5:抗血液凝固薬の継続的服用

発症原因として、抗血液凝固薬の継続的服用も挙げられます。
 
抗血液凝固薬とは、血栓ができやすい方が予防のために飲む薬です。
血液をサラサラにする効果があり、血栓ができにくくなります。
心筋梗塞や脳梗塞、狭心症などではとても大切な薬ですが、継続的な使用により、出血性潰瘍の発症例が増加傾向にあります。
 
薬剤出血性潰瘍の発症を予防するため、現在はアスピリンなどと併用することが主流になっています。
重篤な副作用であるため、できる限り発症させないよう対策することが重要視されています。
 

具体的な原因6:解熱鎮痛薬の継続的服用

解熱鎮痛剤の継続的使用も胃潰瘍を引き起こす原因の一つです。
胃の粘膜を荒れさせてしまう副作用があるためです。
 
頭痛持ちで毎日数回使用している方もいらっしゃいますが、非常に危険です。
出血性消化器潰瘍は重篤な傾向にあります。
 
もし頻繁に使用しているのであれば、頭痛の原因をはっきりさせ根本的改善を目指すべきです。
鎮痛剤はあくまで痛みを感じる神経をブロックしているだけであり、症状の改善にはなっていません。
 
将来的なリスクも考えて、解熱鎮痛薬の継続的服用は避けるべきです。
 
 

胃潰瘍の症状って?

胃潰瘍の症状は、原因や胃の壁の欠損具合で異なります。
 
主な症状としては、以下のような症状が見られます。
 

  • ●空腹時のみぞおちの痛み
  • ●胃もたれ・胸やけ、げっぷ、吐き気・嘔吐、口臭、食欲不振など
  • ●吐血
  • ●下血
  • ●背中痛

 
では、一つずつ解説します。
 

みぞおちの痛み

胃潰瘍を発症していると、みぞおちに痛みを感じる傾向があります。
 
胃の痛み
 
みぞおちが痛むタイミングはある程度決まっており、食事をとり始めた頃から食後までの間です。
食べ物が入ることによる刺激や、消化による刺激を受けているためと考えられます。
 
もし空腹時に痛みを感じる場合は、別の疾患が疑われます。
胃潰瘍では基本的に見られない症状であるため、そこで違いが判断できるでしょう。
 
なお、空腹時にみぞおちが痛くなる原因は「十二指腸潰瘍」が濃厚です。
 

胃もたれ・胸やけ、げっぷ、吐き気・嘔吐、口臭、食欲不振など

胃潰瘍になると、胃もたれや胸やけ、げっぷ、吐き気、嘔吐、口臭、食欲不振といった症状が見受けられます。
 
これらは胃酸過多によって発生する症状であり、胃潰瘍特有のものではありません。
別の疾患が隠れている可能性もあるため、正確に知るためにも検査を受けることが大切です。
 

吐血

胃潰瘍が悪化している場合に吐血が見られます。
吐血とは、消化器からの出血が原因によって起こるもので、胃や食道からの出血の可能性が考えられます。
吐血では血が赤黒いのが特徴です。
 
よく似たものに喀血(かっけつ)がありますが、こちらは呼吸器から出血している場合に見られる症状です。
血が泡交じりであることが特徴です。
 
出血が少ない場合、コーヒーの残りかすのような茶色もしくは黒色のような色をしています。
出血量が多い場合は鮮明な赤色で、重篤であることが見受けられます。
 
もし、このような症状が現れた場合は、速やかに消化器科へ受診してください。
 

下血

下血とは、いわゆる血便です。便に血が混じっていると黒くなります。
 
なお、鉄分のサプリメントを飲んでいる場合も便が黒くなります。
鉄分のサプリメントによるものなのか、消化器からの出血なのか判断するのは難しいため、医療機関で検査を受けるか、しばらく飲むのをやめて色の変化を見ましょう。
 

背中痛

背中の痛みは放散痛として現れています。
 
背中の痛みを発するのは、すい臓や肺、心臓に問題がある場合です。
胃潰瘍が原因の場合は、潰瘍の症状がすい臓近くまで進行していることが考えられます。
すい臓がんでも同じく背中痛を感じるため、鑑別するために検査は必要です。
 
 

胃潰瘍の検査方法について

胃潰瘍を調べる方法は主に2つあります。
カメラを口または鼻から入れて直接胃見る方法の胃内視鏡検査と、造影剤であるバリウムを飲んでX線を照射し、胃粘膜に異常がないかを見る胃X線検査(胃バリウム検査)です。
 
胃内視鏡検査では、検査中に粘膜の採取をすることができるので、もし異常があった場合は詳しく調べることができます。
 

1: 胃内視鏡検査

チューブ状のカメラを口または鼻から入れて、胃の様子を直接観察する検査です。胃以外にも、食道や十二指腸の様子を一緒に観察することができます。
医師が検査を行います。
検査中に異常が見付かった場合は、組織を採取し、生検することができます。
胃内視鏡検査は、つらいと言われることがよくありますが、それを緩和するために、麻酔を使って眠っている間に検査を行うこともできます。


胃カメラ
 

2: 胃X線検査(胃バリウム検査)

造影剤であるバリウムと、炭酸の粉薬である発泡剤を飲んでいただき、胃を膨らませて検査を行います。胃の壁にバリウムを付着させ、そこにX線を当てることによって、胃の粘膜やひだが観察できるようになります。
また胃の形を把握することもできます。こちらは放射線技師が検査を行います。
内視鏡検査に比べ苦痛が少なく、検査時間も短いので手軽に受けることが可能です。
ただ、放射線を浴びる検査であること、既往歴によってはご受診いただけないこと、便秘に気を付けないといけないなど、デメリットもあります。
胃X線検査で異常が見付かった場合は、胃内視鏡検査で精密検査を行います。

3: ピロリ菌検査

以下の方法で、ピロリ菌への感染の有無を調べることができます。
・血液検査、尿検査
ピロリ菌に感染することで、人間の体内では菌に対する抗体を作ります。血液や尿を調べることで、ピロリ菌に対する抗体の有無がわかります。
・便検査
糞便中のピロリ菌の抗原を調べます。
・尿素呼気検査
診断薬を飲んでいただき、服用前と後の吐いた息を集めて行う検査です。ピロリ菌に感染していると、服用前に比べて、服用後の二酸化炭素排出量が増えます。

当院では、胃バリウム検査や胃内視鏡検査を行うことができます。
また血液検査や尿素呼気検査などでピロリ菌の有無を調べることもできますので、胃の症状でお困りの方はぜひご受診をご検討ください。

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胃潰瘍の治療は?

胃潰瘍の治療方法は、ピロリ菌除去と内視鏡手術です。どのように行われるのかなど、詳しく解説します。
 

治療法1:ピロリ菌除去のための薬物療法

有効的な治療法は、ピロリ菌除去のための薬物療法です。
胃酸過多の症状を落ち着かせる治療ももちろん行いますが、ピロリ菌がいる場合は除菌治療を行います。
 
薬を飲む
 
順番としては、胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカーと一緒に服薬治療を行います。
期間は1週間で、一日朝と夕方の2回服用します。
この段階で9割がピロリ菌を除菌できますが、もし残っていた場合は異なるメニューを再度1セット行い除菌するのが基本です。
 

治療法2:内視鏡手術

内視鏡手術では、止血するための手術を行います。
クリッピング術といい、ステンレスでできたクリップで出血している箇所を締めて、血を止めます。
 
潰瘍が出血性だった場合、放置すると命にも関わり危険です。
重度の貧血を起こすこともあるため、出血が見られる際は内視鏡による止血を行います。
 
 

胃潰瘍の予防方法は?

発症を予防するための方法は以下のとおりです。
 

  • ●暴飲暴食せず腹8分目にする
  • ●栄養バランスに気を付けてみる
  • ●飲酒・刺激物は適量を心がける
  • ●禁煙を心がける

 
では、一つずつ解説します。
 

予防法1:暴飲暴食せず腹8分目にする

胃潰瘍にならないようにするには、まず暴飲暴食はしないようにしましょう。
食べる量の目安は、腹8分目です。
胃への負担を少なくできる上に、肥満も予防できます。
 
もし、暴飲暴食の原因がストレスである場合、ストレス過食に効果が期待できる漢方薬の服用も検討してみてください。
 
ただし、漢方薬を使用する際は、必ずかかりつけ医や薬剤師、登録販売員に相談してから購入してください。
人によっては避けるべき生薬が含まれていたり、体質に合わず副作用を起こしたりする可能性があります。
 

予防法2:栄養バランスに気を付けてみる

栄養バランスに気を付けるといっても、なかなか難しいかもしれません。
どのようにすればバランスがよくなるのかも分かりにくいでしょう。
 
簡単な献立の指標として、和定食を思い浮かべて用意してみてください。
和定食は、味噌、副菜、主菜、ご飯とバランスの良い組み合わせになっています。
 
定食をイメージすれば、おのずと野菜も取り入れられ、栄養バランスの大きな偏りは防止できるでしょう。
 

予防法3:飲酒・刺激物は適量を心がける

飲酒や刺激物となるものは、適量を心がけましょう。
 
適量の目安が分からない、想像しにくいという方は、350mlのビール缶を一日1つだけにし、週に2回休肝日をつくると飲みすぎは避けられます。
 
刺激物においては、例えばコーヒーの場合を考えましょう。
WHOは、カフェインの影響を考慮して、一日3~4杯を限度目安としています。
それ以上に飲んでいる方は、この目安まで減らしてみましょう。
 

予防法4:禁煙を心がける

喫煙習慣は、胃潰瘍のリスクを高める可能性があるとされています。
喫煙は胃酸過多を引き起こす原因の一つであるためです。
タバコを吸えば吸うほど胃は影響を受けますので、本数を減らすところからスタートしてみましょう。

 
 

まとめ

現在、胃潰瘍で悩まされる人は少なくないです。放置することで悪化してしまう場合や、完治しても再発してしまうケースもあります。
少しでも胃に違和感や不安、症状がある場合は、専門の医療機関にご受診いただければと思います。


  

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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