糖尿病とは?原因、症状、治療法について解説
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糖尿病とは?原因、症状、治療法について解説
自覚症状もほとんどなく、なかなか意識しにくい「糖尿病」
よく耳にはするけど詳しくは知らないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
「健康診断で血糖値が高いと言われた・・・」という方はぜひご一読ください。
糖尿病とは?
糖尿病とは血液中のブドウ糖が多い状態、すなわち高血糖になる病気です。
高血糖はインスリンが十分に働かないために起こります。インスリンは血糖値を下げる作用のあるホルモンで、膵臓から分泌されます。高血糖を放置すると全身の血管が傷つき、狭心症や心筋梗塞・脳梗塞・腎不全・失明・足壊疽といった合併症が起こるとされています。また著しく高い血糖は、それだけで緊急治療を必要とする意識障害が起こることがあります。
まとめると、『糖尿病は、インスリンが十分働かないために高血糖の状態が続き、重篤な合併症を起こし得る病気』なのです。
ここからさらに糖尿病について、以下の順で詳しく見ていきましょう。
・糖の役割は?
・血糖値はどうやって決まるの?
・インスリンはどうやって血糖値を下げているの?
・どうして糖尿病になるの?
・糖尿病の症状は?
糖尿病って何?
1: 糖の役割は?
糖は私たちが生きていく上で欠かせない大切な栄養源です。
糖は細胞の中に取り込まれて分解されると、エネルギーを生み出します。
2: 血糖値はどうやって決まるの?
食物は、まず胃や十二指腸の消化液でバラバラに分解されます。分解された糖・蛋白質・脂肪・その他様々な栄養素は小腸で吸収されます。
糖が小腸で吸収され、血液中に移動すると血糖値は上昇します。人の身体は血糖値をある一定の幅で保つようにできているため、血糖値がグッと上がったらインスリンが出て、血糖値を落ち着かせます。逆に寝ている時など、食事をしない時間が続く時には、主に肝臓が糖を作り血中に放出する事で血糖値を保ちます。
グルカゴン・成長ホルモン・コルチゾールなどの様々なホルモンは、この糖新生を促進して血糖を上げる方向に働きかけます。
3: インスリンはどうやって血糖値を下げているの?
グルコース輸送体というタンパク質は血液中のグルコース(ブドウ糖)を細胞内に取り込む機能があります。インスリンが標的臓器(骨格筋・脂肪組織・肝臓)の細胞にあるGLUT4というグルコース輸送体に働きかけると、血液中の糖が細胞内に取り込まれます。こうすることで血液中の糖はどんどん減っていき、血糖値が下がっていきます。
4: どうして糖尿病になるの?
インスリンによる細胞内へのブドウ糖の取り込みがうまくいかなくなると、高血糖になり糖尿病が発症します。高血糖になる原因として「インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)」と「インスリンが減る(インスリン分泌低下)」の2つがあります。
せっかくインスリンが血糖値を下げようとしても、内臓脂肪が増えると脂肪細胞からインスリンの効きを邪魔する物質が分泌されます。このようにインスリンの効きが悪くなることをインスリン抵抗性といいます。肥満によって内臓脂肪が増えることは血糖値に悪影響を与えるのです。また、膵臓からのインスリン分泌の低下によってインスリンが足りなくなると、血糖値はうまく下がりません。
インスリン分泌の低下には遺伝的体質や加齢が影響すると考えられています。もともと体質的にインスリンをうまく出せない人が、さらに食べ過ぎや運動不足で肥満になりインスリンの効きが低下することで糖尿病を発症する、というパターンが多くみられます。中高年に多いこのタイプの糖尿病は2型糖尿病とよばれ、糖尿病の90%以上を占めます。(肥満の方が多いですが、肥満を伴わない場合もあります。)日本ではその疑いがある人は成人6人に1人程度との報告があります。
一方で1型糖尿病は比較的小児に多く、本来は身体を守るためにある免疫システムが、誤って自分の膵臓にあるインスリンを作るβ細胞を壊してしまい、インスリン分泌低下を起こすことで発症します。
糖尿病の症状について
高血糖の場合、喉が渇く・水分をよくとる・尿の回数が増える・体重が減る・疲れやすくなるなどの自覚症状がみられます。しかしながら症状があまりみられず、糖尿病になっていることに気がついていない場合も多いため、年に1度は健康診断を受けて自分の血糖を確認することをお勧めします。
糖尿病が引き起こす合併症について
糖尿病になり高血糖状態が長く続くと、様々な合併症が出てきます。中でも、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」は、糖尿病の三大合併症と呼ばれるものです。これらの代表的な合併症以外にも、糖尿病になることで「糖尿病性包茎」を引き起こす危険性があります。
「糖尿病性包茎」は、糖尿病の影響で後天的に包茎になってしまうものです。糖尿病になると皮膚がもろくなり、炎症を起こしやすくなります。そして包皮の炎症を繰り返し続けると皮膚が硬化し、包皮口が狭くなります。その結果、亀頭が露出できなくなり包茎になってしまうのです。
糖尿病の治療は?
糖尿病の治療には「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つがあります。
食事療法では摂取カロリーの見直しだけでなく、栄養素をきちんと摂取することや、脂肪や塩分の過剰摂取を避けるといったことに対しても配慮が必要です。1日に必要な摂取カロリーは標準体重をもとに計算されます。標準体重にはbody mass index(BMI)が22となる理想体重を用いることが多いです。標準体重にそれぞれの患者さんの職業や労作の強度を考慮して、実際に必要な摂取カロリーを算出します。
運動療法では肥満を改善し内臓脂肪を減らすことで、インスリン抵抗性の改善が期待できます。また、エネルギー源としてブドウ糖が消費されることで血糖値を下げたり、筋肉が糖を取り込むことで血糖値を下げたりと、血糖降下の効果もあります。血圧を下げたり、善玉コレステロールが増えたりと、動脈硬化リスクの軽減も期待できます。しかしながら、合併症がすでにある場合や血糖コントロールが不十分な場合は運動を控えた方が良い場合があるため、主治医とよく相談してから運動療法を開始する必要があります。
薬物療法には大きく分けて内服薬と注射薬があります。内服薬には、インスリンの分泌を促す薬・インスリンの効きをよくする薬・血糖を上げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑制するのを助ける薬・尿中に糖を排泄する薬・小腸での糖の吸収を遅らせる薬など、様々な種類の薬があります。必要に応じて複数組み合わせます。注射薬にはインスリン製剤とGLP-1受容体作動薬とこの2つを配合した薬があります。
インスリン製剤は、不足しているインスリンを補うことで血糖値をさげます。GLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げるインスリンの分泌促進と、血糖値を上げるグルカゴンの分泌抑制をすることで血糖値を下げます。
糖尿病性包茎の治療法は?
糖尿病性包茎は包茎手術により改善できます。しかし糖尿病の場合、クリニックによっては手術を断られることもあります。事前に糖尿病でも包茎手術を受けられるのかを必ず確認しましょう。
まとめ
内服薬も治療薬も、病型や病状にあわせて適切なものが選択されます。糖尿病は発症したら一生つきあっていかなければならない病気です。
適切な治療を行わないと、三大合併症だけでなく、糖尿病性包茎・亀頭包皮炎・性感染症などの合併症に悩まされてしまいます。本記事でご紹介した「食事療法」「運動療法」「薬物療法」を適切に行い、血糖値を良い状態に保ちましょう。そうすれば、生活に支障をきたすことなく、合併症を予防することもできます。
早期発見のために、症状がなくても検査を是非うけましょう。また、糖尿病になるリスクを減らすために、食事や運動を中心に自己管理に努めましょう。そして糖尿病の診断をうけた場合は、かかりつけ医のもとでの経過観察や治療を継続して下さい。
職歴
- 平成02年 田中クリニック 開院
- 平成13年 東京ノーストクリニック 開院
- 平成24年 東京ノーストクリニック 総院長就任
- 平成27年 東京ノーストクリニック 梅田院 非常勤就任