気管支喘息の特徴や治療法、気管支炎との違いについて

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2023/03/09

気管支喘息の特徴や治療法、気管支炎との違いについて

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 山本康博

ビジネス街にも近いMYメディカルクリニック。
大人になってから発症することも多い「気管支喘息」で、当院を来院される方も多いです。
 
本日は横浜みなとみらい院・院長の山本医師が呼吸器内科の専門医として気管支喘息についてご説明します。

 
 

気管支喘息って何?原因や症状について

気管支喘息とはどのような疾患であるのかをはじめ、原因や症状について解説します。
 

気管支喘息とは?

気管支喘息は、気管支に慢性的な炎症が起こることで収縮し、息苦しさや咳、喘鳴を引き起こす疾患です。
小児喘息はよく知られていますが、実際には40〜60歳代に発症することもあります。
なお、小児喘息を患った方の30%程度が成人喘息に移行するといわれています。
 
この病気は、さまざまな要因によって悪化と寛解を繰り返すことが特徴です。
 

気管支喘息の原因

発症原因には、遺伝的要因やアレルギー、薬やアルコールなどさまざまなものが挙げられます。
 
特に原因として大きく占めるのは遺伝です。
家族の中で喘息疾患を持つ方がいる場合、その遺伝を引き継いで発症する可能性が高いです。
 
また、アレルギーでは、ハウスダストやダニなど特定のアレルゲンが関連します。
これらのアレルゲンを吸い込むことでアレルギーを発症し、喘息につながるケースがあるのです。
 
ほかにも、煙を吸い込み気管支が収縮して発症する職業性喘息があります。
 
 

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気管支喘息の症状って?

主な症状は、呼吸困難を伴う咳で、特に夜から明け方にかけて頻繁に見られます。
そのため、睡眠中に発作が起こり、目が覚めることも多いのが特徴です。
重症になると、酸素不足によりチアノーゼや意識障害を引き起こす可能性もあります。
 
喘息の症状は、季節の変わり目や悪天候、風邪で悪化する傾向が強いため、これらのタイミングに差し掛かった場合に悪化しないよう、医師と相談して対策していくことが大切です。
 

診察を行う山本医師

 

気管支炎との違い

気管支喘息と気管支炎が混同して違いがわからない方に向けて、どのように異なるのかを解説します。
まず、気管支炎について概要、原因、症状、診断・検査方法、治療法にわけて一つずつ解説しますので、ぜひ参考にしてください。
 

気管支炎とは?

気管支炎は特定の疾患ではなく、気管支の粘膜が何らかの原因で炎症を起こしている状態を指します。
一般的な風邪と異なり、上気道炎と呼ばれている風邪よりもさらに奥の気道で炎症を起こしているのが気管支炎です。
 
喘息も慢性的に気管支が炎症を起こしている状態であり、その点においては気管支炎と同じといえます。
しかし、気管支炎は原因となる疾患が完治すれば炎症が鎮まるのに対し、喘息は無症状の状態でも炎症が継続されている点が異なります。
 
また、急性タイプと慢性タイプがあるのも気管支炎の特徴です。
 

急性気管支炎について

急性気管支炎とは、症状の発症が突然で悪化する速度が早い気管支炎です。
症状の程度も激しいのも急性気管支炎の特徴ですが、免疫力が高い場合には重症化することは少なく、適切な治療により比較的短期間で治癒する傾向があります。
 

慢性気管支炎について

慢性気管支炎とは、長期間にわたって気管支の炎症が続く気管支炎です。
急激な悪化はないものの、長期にわたって症状が持続するため、治療には根気が必要で、継続的な管理が求められます。
 

原因

気管支炎の発症原因は、急性と慢性で異なります。
 

急性気管支炎の場合

急性気管支炎の原因は、主にウイルスや細菌による感染です。
インフルエンザやライノウイルス、アデノウイルス、肺炎球菌などが代表的な例です。
ほかにも、スプレーなどにより化学物質を大量に吸い込んだ場合に発症することがあります。
予防には、手洗いやうがいを徹底してウイルス感染を防ぎ、スプレー使用時にはマスクを着用することが有効です。
 

慢性気管支炎の場合

慢性気管支炎は、長期間にわたって有害物質を吸い込むことが主な原因です。
排気ガスや工場の煙などで汚染された空気、あるいは喫煙の継続が原因となります。
これらの有害物質は、気管支だけでなく肺にも炎症を引き起こすことが多いです。
 
対して、気管支喘息はアレルゲンの吸入や遺伝的要因によって引き起こされるため、気管支炎とは発症のメカニズムが異なります。
 

症状

気管支炎で見受けられる症状の特徴は、急性と慢性で異なります。
 

急性気管支炎の場合

急性気管支炎の症状は風邪に似ており、発熱、倦怠感、咳、痰、喉の痛みなどが見られます。
乳幼児は気管支が細く丈夫でないため、重症化しやすいです。
また、喘息のような「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音がすることもあります。
もし、横になって咳が悪化して息苦しくなったり、不眠が続いたりする場合は速やかに医療機関を受診してください。
 

慢性気管支炎の場合

慢性気管支炎では、特に粘り気のある痰が目立ちます。
冬になるとより症状が強くなることが多いです。
 
このように、急性・慢性の気管支炎はいずれも風邪に似た症状が見られる一方で、気管支喘息では主に息苦しさと咳が主な症状であり、その違いは明確です。
 

診断・検査方法

 

聴診器で肺の音を聴く山本医師

気管支炎かどうかを診断するには、以下の検査をベースに行います。
 

  • ●胸部レントゲン
  • ●血液検査
  • ●呼吸機能検査
  • ●パルスオキシメーター(経皮動脈酸素飽和度)

 

胸部レントゲン

胸部レントゲンは、肺炎を起こしていないか確認するために行います。
検査対象となるのは主に高熱が続いている方です。
 

血液検査

感染症が起こると体内で炎症が発生し、それに伴って血液検査の数値が上昇します。
このため、白血球数や血小板の数値を調べて炎症の有無やその程度を確認するために行うのが血液検査です。
しかし、白血球数や血小板の数値は腫瘍疾患や自己免疫性疾患でも上昇することがあるため、他の疾患との鑑別が必要です。なお、マイコプラズマ感染が疑われるケースでは、マイコプラズマの抗体や寒冷凝集反応も併せて検査で調べます。
 

呼吸機能検査

呼吸機能検査では肺の空気を取り込む能力や、呼吸の速度を測定します。
約5分程度で終了し、肺炎、COPD、喘息などの状態や機能の評価に役立ちます。
 

パルスオキシメーター(経皮動脈酸素飽和度)

動脈血中の酸素濃度を測定する検査です。数値が低い場合は慢性的な肺や心疾患が疑われます。
また、健康な状態で酸素濃度が低い場合、深刻な病状が潜んでいる可能性があります。
 

治療方法

気管支炎の治療は、症状を和らげるための対症療法が中心です。
発熱がある場合は解熱剤を使用し、痰の症状がある場合には去痰薬が処方されます。
感染原因がウイルス以外の細菌である場合は、病原菌に応じた抗生物質の服用が効果的です。
また、「ヒューヒュー」といった喘鳴が見られる場合には、気管支を広げる薬が用いられます。
 
 

気管支喘息の検査や診断について

気管支喘息を診断するためには、まずアレルギーの有無や生活環境、症状が強く出る場面などを問診で確認します。
問診だけで判断することもありますが、確定診断のために以下の検査が行われます。
 

  • ●肺機能検査(スパイロメトリー)
  • ●呼気NO検査 (FENO)
  • ●血液検査
  • ●喀痰検査
  • ●胸部X線・胸部CT検査

 
では、一つずつ解説します。
 

1: 肺機能検査(スパイロメトリー)

スパイロメーターを使用して、強く息を吸ったり吐いたりすることで喘息の診断や状態の確認ができます。
特に重要なのは、息を吸ったり吐いたりする際の最初の1秒間のデータです。
喘息の患者様はこの1秒間の空気量が低くなるため、この数値で重症度を把握することができます。
 

2: 呼気NO検査 (FENO)

呼気中の一酸化窒素(NO)を測定する検査です。
喘息の患者様は気管支に慢性的な炎症があるため、NOの生成が増加します。
ただし、喫煙者はNOの数値が低く、鼻炎の患者様は数値が高くなるため、これらの要因も考慮することが大切です。
 
nioxveroの画像
 

3: 血液検査

血液検査では、アレルギーに関与する細胞や抗体の量を測定します。
喘息では好酸球やIgE抗体の数が増加するため、これらの数値を確認することで喘息の診断がしやすくなります。
検査結果が出るまでの時間は検査の種類によって異なり、最短20分、最長1週間です。
 

4: 喀痰検査

痰の顕微鏡検査を行い、喘息の患者様に特徴的な好酸球や気管支の上皮細胞の数を調べます。
喘息の診断に加えて、結核など他の疾患の有無を確認するのにも役立つ検査です。
 

5: 胸部X線・胸部CT検査

胸部X線検査では、肺や喘息の状態、または肺がんなどの肺疾患の有無を確認します。
 
CT検査は、X線では見えにくい病変や微細な変化を検出する検査です。
特に中高齢の方は肺疾患の合併症を起こしているケースがあるため、CT検査は有効的です。
 

気管支喘息の治療について

気管支喘息の治療には、飲み薬や貼り薬などのタイプがありますが、最も効果的とされるのは吸入薬です。
吸入薬は気道に直接作用し、全身に吸収されないため副作用が少なく、妊婦の方でも使用可能です。
吸入薬にはパウダーを吸い込むタイプとミストを吸い込むタイプがあり、患者様の状態に応じて使い分けます。
 

診察する山本医師

治療に加えて、ダニ、動物のフケ、カビなど発作を引き起こす原因物質が分かっている場合には、それらを避ける対策が不可欠です。
部屋の掃除や枕や布団などの寝具の洗濯が基本ですが、布張りの家具やぬいぐるみ、カーペット、カーテンを少なくとも寝室からは除去し、ペットの飼育は避けるのが理想です。
 
 

まとめ

気管支喘息は、小児期だけでなく大人でも急に発症することがあるありふれた病気です。
きちんと治療をすればしっかり治すことのできる病気ですが、放っておくと悪化してしまうこともあります。喘息かな?と思ったら、早めに呼吸器内科を受診して治療を始めましょう。
 
MYメディカルクリニック横浜みなとみらいでは専門医が在籍しており、呼気NO検査や呼吸機能検査などをはじめ、喘息の検査・治療を得意としておりますのでぜひお気軽にご相談ください。
 
 

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 山本康博医師

MYメディカルクリニック横浜みなみとらい 院長

山本 康博 Dr. Yasuhiro Yamamoto

「世界一患者様に愛されるクリニック」を目指し、「安心・癒し・快適な医療」の実現を図っています。困ったことがありましたら、どういったことでも誠実に対応させていただきますので、お気軽にご受診いただければと思います。

学歴

  • 私立麻布高等学校 卒業
  • 東京大学理科三類入学 東京大学医学部医学科 卒業
  • 東京大学医学部大学院博士課程内科学専攻 修了 (医学博士)

職歴

  • 独立行政法人国立病院機構東京医療センター呼吸器内科
  • 東京大学医学部附属病院呼吸器内科 東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野 (水島昇教授)
  • 株式会社SPLENDID 共同創業者・CMO(Chief Medical Officer)
  • 医師が作る医療メディアmedicommi 主任監修医
  • 医療法人社団MYメディカル 理事

資格

受賞歴

  • 独立行政法人国立病院機構東京医療センター ベストレジデント賞 2015年 1位
  • 独立行政法人国立病院機構東京医療センター ベストレジデント賞 2016年 2位
  • 第93回日本生化学会大会若手優秀発表賞
  • 難病指定医
  • 第13回オートファジー研究会最優秀発表賞
  • 第20回東京大学生命科学シンポジウム優秀賞
  • 船越龍太賞

専門

内科全般 / 呼吸器内科 / 分子生物学

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