運動していないのに息切れするのは病気?息切れの原因について解説します

  • クリニックブログ
2024/09/13

運動していないのに息切れするのは病気?息切れの原因について解説します

運動もしていないはずなのに「なぜか息切れや動悸がする」という経験は無いでしょうか?
安静時や日常生活の中での息切れは、もしかすると病気のサインかもしれません。
 
この記事では、息切れの症状や息切れの原因となる病気について詳しく解説していきます。受診すべきタイミングについても触れているので「息切れが気になるけれど受診するべき?」と不安に感じている方もぜひ参考になさってください。

 
 

息切れとは?どのタイミングで受診するべき?

そもそも、息切れとはどのような状態で、なぜ起こるのでしょうか。
まは、息切れの概要と病的な息切れについて解説します。

息切れとはどんな状態?

息切れとは病名ではなく症状です。
呼吸が苦しい・息がしにくい・呼吸が速いなどの状態をまとめて息切れと表現します。
 
 

 
体内の酸素が不足しているときにみられ、健康な方でも運動後などに息切れが生じることがあります。
 
しかし、通常であれば苦しさを感じない安静時・ゆっくりとした歩行などでも息切れの症状を感じる場合は病気のサインかもしれません。

 
 

 「息苦しさ」についてはこちら

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息切れのメカニズム

私たちの血管や筋肉・脳などには、酸素の濃度を感知するためのセンサーがあります。
このセンサーを通して「酸素が不足している」と感じると、十分な酸素を取り込もうとして呼吸が速くなるという仕組みです。
 

「MRC息切れスケール」と受診のタイミング

以前は息が切れなかった場面で苦しさを感じても「体力が落ちたのだろうか」と認識して病気とは考えない方もいるでしょう。
このようなときに、症状の程度を客観的に評価することで受診のタイミングをつかみやすくなります。
 
息切れ・呼吸困難感の評価基準として、使用されるのが「MRC息切れスケール」という基準です。
グレードは下記の6段階に分かれます。
 

グレード 評価基準
0
息切れを感じない
1
強い労作(運動)をすると息切れを感じる
2
平地を急ぎ足で移動、またはゆるい坂を上がる際に息切れを感じる
3
平地を自分のペースで歩いても息切れをするまたは同年齢の方と比べて歩行が遅い
4
約100メートルの歩行、または数分間の平地歩行のあと息を整えるために休息を要する
5
息切れがひどく外出が困難または着替えなど日常的な動作で息切れをする

このスケールでグレード2以上に該当する場合は、受診が推奨されます。
 

どんな息切れに警戒すべき?

息切れにはさまざまな原因があり、ときには命にかかわる重大な病気のサインとして息切れがみられることもあります。
警戒が必要な症状とは、どのようなものなのでしょうか。
 
まず、症状が強い・日常生活に支障を感じる場合は原因となっている病気の状態が悪化している可能性があります。
 
また、息切れ以外にむくみ・胸痛・倦怠感・長引く咳や痰・呼吸音の異常などを感じた場合は大きな病気になっている可能性もあるため注意が必要です。

 
 

息切れの原因①心臓の病気

酸素は赤血球によって運ばれているため、心疾患により全身に十分な血液が行き届かなくなると、体内が酸欠状態になるでしょう。
ここからは、原因となる主な循環器疾患について紹介します。

狭心症・心筋梗塞

 

 
狭心症・心筋梗塞は、心臓に血液を供給する血管が狭くなることで心筋が酸欠を起こす病気です。
症状としては息切れのほかに胸痛がみられることが多いでしょう。
危険因子としては、高血圧症・糖尿病・高脂血症・動脈硬化などが挙げられます。
 

不整脈

不整脈とは心臓の脈が正常な拍動とは異なるリズムになることで、徐脈(遅くなる)・頻脈(早くなる)・期外収縮(不規則になる)・心房細動(心筋が痙攣する)などの種類があります。
 
危険性のない不整脈も多いですが、うまく送り出されなかった血液が血栓になったり全身に送り出される血流が不十分になる可能性がある病気です。
 

心不全

心不全は、狭心症・心筋梗塞・心筋症・心臓弁膜症など振動の病気を長く患うことで心臓の機能自体が徐々に低下した状態です。
 
心不全になると、心臓が十分な血液を送り出せないだけでなく、肺に水が溜まりやすくなるため息切れが頻繁に見られるようになります。

 
 

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息切れの原因②呼吸器の病気

呼吸器の病気により空気中の酸素をうまく取り込めなくなると、通常通りの呼吸では体内の酸素が足りずに呼吸が速くなります。
原因となる呼吸器疾患は、気管支喘息・換気障害などです。

気管支喘息

気管支喘息になると、気管の炎症が頻繁に起こることで過敏になり発作的に気道が狭くなるります。
症状としては発作的な咳のイメージが強いかもしれませんが、空気の通路である気道が狭窄することで呼吸困難感を覚える患者が多くいらっしゃいます。
 

換気障害

肺には酸素と二酸化炭素を交換する働きがありますが、何らかの原因で交換が障害されている状態が換気障害です。
 
換気障害には、気管支喘息のように酸素がうまく取り込めないことによるもののほか、ガス交換を行っている肺胞が機能不全に陥って起こるものがあります。
 
肺胞の機能を低下させる代表的な病気はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)・肺炎・肺線維症・肺癌などです。

 
 

息切れの原因③血液・血管の病気

肺から取り込まれた酸素は、肺動脈から血液に運ばれて全身に届きます。
そのため、酸素を運ぶ血液や肺動脈の病気によって酸欠状態になることがあります。
原因となる血液・肺動脈の病気は貧血・肺塞栓症などです。

貧血

貧血は、酸素を運ぶ赤血球が足りないため体内が酸欠状態になった状態です。
貧血の原因としては鉄分の摂取不足のほか、腫瘍などにより体内で出血が続いていること、白血病などの血液疾患が挙げられます。
 

肺塞栓症

肺塞栓とは、心臓から肺につながる動脈に血栓がつまる病気です。
肺から酸素を受け取るはずの血液が肺動脈を通ることができないため、肺塞栓になると十分な酸素が全身に届かず息切れが起こります。

 
 

息切れの原因④そのほかの病気

心臓・肺・血液の病気のほかにも、いくつかの病気で息切れがみられることがあります。
その一例として挙げられるのが神経筋疾患・甲状腺機能障害・自律神経の乱れなどです。
どのような病気なのか確認していきましょう。

神経筋疾患

肺自体には筋力が無いため、肺が空気を吸い込むためには肺の周囲にある横隔膜・呼吸筋の動きが必要です。
 
しかし、筋ジストロフィーなど筋肉がうまく動かなくなる神経筋では、呼吸筋がうまく動かせないため息切れが起こります。
 

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの量が異常に多くなる病気です。
甲状腺機能が亢進されると、筋肉や心臓の動きも高まり代謝が上がった状態になります。
そのため、健康な方よりも多くの酸素が体内で消費され息切れが起こると考えられます。
 

自律神経などの乱れ

ここまで紹介した内臓・内分泌・血液の疾患のほかに、自律神経の乱れ・精神的ストレス・過換気症候群などでも息切れを自覚する方がいます。

 
 

息切れの対処法と治療

ここまでは、主な原因疾患について紹介してきました。
最後は、強い息切れが起きた際に自分でできる対策と、受診をした場合の検査・治療方法について解説します。

自分でできる息切れの対処法は?

強い息切れが起きたときは、まず筋肉や循環器・呼吸器の負担を和らげることが大切です。椅子に座ったり何かにもたれたりして、なるべく楽な姿勢を探しましょう。
締め付けの強い服を着ている場合は、少し服を緩めることも有効です。
 
落ち着いて楽な姿勢をとったら、腹式呼吸や「口すぼめ呼吸」など、楽な方法で呼吸をします。
持病により息切れを起こしやすい方は、医師などにも相談して楽な呼吸法についてあらかじめ情報を得ておくのも良いでしょう。
 

受診をしたらどのような検査をする?

最初に確認するべきは心臓や肺の緊急を要する病気になっている可能性です。
そのため、問診などから原因の予測を立てたら血液検査・呼吸機能検査・心電図・心エコーなどで原因を探します。
このような検査で原因疾患と疑われる病気があれば、CTやMRIなどでさらに詳しい検査を行う場合もあるでしょう。
 

息切れの治療方法は?

原因が分かったら、原因疾患に対する治療を進めていきます。
 
心疾患に対してはカテーテル治療・冠動脈バイパス手術などが有効です。
そのほか、原因によって投薬・輸血を行うなど原因が分かれば改善できる息切れもあります。
 
ただし、COPD・肺線維症などの病気は手術で直すことが難しく、薬による治療も病気自体の治癒ではなく炎症・繊維化を抑えることが治療の中心となります。

 
 

まとめ

息切れは、健康な方でも運動をしたり重い荷物を持った時に感じることがあるものです。
そのため、息切れが気になっても「体力が落ちただけかも」と我慢してしまう方もいるかもしれません。
 
しかし、さまざまな病気のサインとして息切れが現れることもあります。
原因を知ることで早期に治療を始めることもできるため、息切れが気になったらまず医療機関を受診することをおすすめします。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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