線維腺腫はがんではない!原因や治療、類似疾患との違いを解説

  • クリニックブログ
2024/07/22

線維腺腫はがんではない!原因や治療、類似疾患との違いを解説


 

 

「線維腺腫とはどのようなもの? 悪性腫瘍の可能性は?」
「経過観察と言われたが本当に大丈夫? 治療は要らないの?」

このようなお悩みや不安はありませんか?
 
線維腺腫とは簡単にいうと腫瘍です。乳がんを連想させ、不安になる方もいらっしゃるかもしれません。結論からお伝えすると、良性ですので安心してください。治療はできなくはありませんが、あまりにも大きくなった場合にのみ切除するのが一般的です。
 
本記事では、原因や症状、治療法の詳細に加えて、乳がんや類似疾患についてもご紹介します。気になっている方、不安になっている方はぜひ最後までご覧ください。

 
 

乳腺線維腺腫の特徴・症状・原因・治療法について

ここでは、乳腺線維腺腫の特徴や症状、原因、治療法について解説します。
 

乳腺線維腺腫とは?

15〜35歳の女性によく見られる良性腫瘍です。乳がんとよく間違われることがありますが、がん疾患ではありません。そのため、リンパや血液に乗って転移したり、寿命を削ったりすることはありません。
 
基本的に線維腺腫が乳がんに発展することはありませんが、嚢胞や瘢痕組織があるなど線維腺腫が複雑なケースでは、わずかですががんの発生リスクを高めるとされています。
 
経過としては、徐々に消える傾向にあります。10代で発症した場合は成長が止まらず肥大化が進みますが、30代に入ると徐々に小さくなり、やがて消えます。小さいまま残る方もいるため一概にはいえませんが、残ったとしても害は及ばないため摘出せずそのままにするのが一般的です。
 

どのような症状がある?

 

 
触ると硬いしこりを感じる程度で、痛みはありません。小さいうちは外見の変化もなく気付かない程度ですが、肥大化したサイズによっては胸の変形が見られます。
 
乳腺線維腺腫はがんとは違い、周囲の組織との境界が分かりやすいのも特徴です。また、癒着性のしこりではないため、触ると動くのも大きな特徴です。
 

発症する原因について

発症の原因は、実はまだよく分かっていません。しかし、関係があると見当が付いているものがあります。それが「女性ホルモン」です。
 
女性ホルモンの変動に伴い発現や肥大、消失が見られることから、エストロゲンやプロゲステロンのホルモンバランスによって発症すると考えられています。
 
詳しいことは分かっていないため、まだ研究段階です。
 

治療法について

乳腺線維腺腫が確定した場合は治療は行わず、6カ月〜1年に1回程度の頻度で診察をして、経過観察します。しかし、中には過度な肥大化により胸が変形する事例もあり、そのような場合は外科手術による切除を行います。

 
 

再発や乳がんなどの類似疾患との違いについて

 

 

再発や乳がんなどの類似疾患との違いについてお伝えします。
 

再発の可能性

厄介なことに、乳腺線維腺腫はきれいに切除しても再発するケースが多いです。
 
良性の腫瘍とはいえ、気持ちが良いものではないでしょう。原因がはっきりと分かっていないため再発を予防することは難しく、何度も手術をして摘出する方もいます。
 

乳がんとは異なるため丁寧な鑑別が必要

乳腺線維腺腫はがんではないため、しっかりと鑑別せず乳がんと間違えて治療してしまうと大変です。どちらも検査の結果、しこりがあることが明確に分かります。
 
しかし、乳腺線維腺腫の場合はがんとは違い、しこりと周辺の組織との境目がはっきりと分かるという違いがあります。またがんの場合しこりは動きませんが、乳腺線維腺腫は動く点においても違いがあるため、基本的に間違えることはないでしょう。
 

乳がんとの違い

先ほど、しこりの触れ方や在り方について触れましたが、症状や原因、治療法も大きく異なります。そもそも乳がんとは、11人に1人がかかるといわれているがん疾患です。リンパに乗って全身に転移すると命に関わります。
 

症状

乳がんが乳腺線維腺腫と違うのは、見た目の変化や硬さがあることです。
 
無症状のケースも見受けられますが、基本的に乳がんはただれや乳房皮膚のくぼみ、異常な分泌物の発生が見られます。また、しこりは梅干しの種のように硬く、柔らかく弾力のある乳腺線維腺腫とは感触が大きく異なります。

 

原因

乳がんの原因には女性ホルモンが関係しています。女性ホルモンのエストロゲンが含まれるピルを飲むことで、乳がんの発生リスクが高くなることが分かっています。

 

治療法

治療法は、主に外科手術、薬物療法、放射線治療です。がんのサイズが大きい場合は、一度薬物療法でがんを小さくしてから手術で取り切ることがあります。

 
 

 乳がんについてはこちら

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乳腺悪性葉状腫瘍との違い

乳腺悪性葉状腫瘍とは、上皮細胞と結合織が混ざって腫瘍化した悪性腫瘍です。葉状腫瘍そのものは良性であることが多く、悪性であるのは16〜30%の確率です。発生しやすい年齢は35〜55歳で、特に40代でよく見受けられます。
 

症状

葉状腫瘍は、乳腺線維腺腫と同じようにしこりと周囲組織との境が明確で、触ると動きます。しこりができ、2~3カ月で急激に大きくなりやすいのが特徴です。悪性の場合は転移を起こします。

 

原因

発生原因は、未だ判明していません。遺伝性の可能性や線維腺腫が転じた結果ともいわれていますが、まだ研究段階です。

 

治療法

治療法は外科手術による腫瘍の摘出です。乳房の完全切除か、広範囲切除が推奨されています。
 
再発リスクがあり、もし再発が認められた場合は緩和ケアや抗がん剤治療で対応するのが一般的です。なお、ホルモン療法は効果が期待できないため行いません。

 

乳腺症との違い

線維腺腫とよく似たものに乳腺症があります。発症しやすい年齢は30〜40代です。がんに変わることはないため、診断が下っても不安になる必要はありません。
 

症状

乳腺症は痛みを訴える方が多いです。しこりや乳房の痛みは生理前に強くなり、生理が来ると次第に落ち着いていく傾向にあります。

 

原因

原因は女性ホルモンバランスの乱れです。排卵前後や生理前後、ストレスなどでホルモンバランスが乱れると発症します。

 

治療法

治療法として、漢方薬の「葛根湯(かっこんとう)」や女性ホルモンを安定させる低用量ピルが効果的であるとの報告があります。ホルモンバランスを整えることが大切なので、生活習慣を見直す、ストレスをためすぎないといった日々の過ごし方で改善や予防ができます。

 
 

まとめ

 
線維腺腫は胸にしこりができ大きく成長することがありますが、がんではありません。
また、がんに変わることもないため安心してください。

 
ただし、成長のし過ぎで見た目が変わってしまうことが懸念されます。
そのような場合には、一度受診し切除を考えてもいいでしょう。

 
 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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