思春期から若い女性に多い「過換気症候群」。発作が起きた場合の対処法は?

  • クリニックブログ
2024/04/30

思春期から若い女性に多い「過換気症候群」。発作が起きた場合の対処法は?

過換気症候群とは、不安や緊張が高まったときに急に息が吸いにくくなったり、胸が苦しくなったりする症状です。過換気症候群は、思春期から20代程度の若い女性に多く見られます。
 
過換気症候群は、発作が起きても数時間以内に症状が改善または消失しますが、急に苦しくなってしまうことでパニック状態になってしまうケースが少なくありません。あらかじめ対応方法を知っておけば、自分や周りの人に過換気症候群の発作が起きた場合でも落ち着いて対応できる可能性があります。
 
今回は、過換気症候群の症状や過換気症候群が起きた場合の対処法などについてご説明します。

 

過換気症候群とは

精神的な不安や極度の緊張などの精神的なストレスがきっかけとなり、何度も繰り返し、息を吸ったり吐いたりする過呼吸の状態になることで招かれるさまざまな症状を過換気症候群といいます。
 
過呼吸の状態となると、二酸化炭素を吐きすぎることになるため、血液中の二酸化炭素の濃度が低くなります。血中二酸化炭素濃度が低くなると、脳にある呼吸中枢が呼吸を抑制する指令を出します。そのため、より呼吸をしにくくなってしまい、不安感から息苦しさを感じるようになります。その結果、さらに呼吸をしようとし、速くて浅い呼吸を続けてしまうのです。
 
また、血中二酸化炭素濃度が低くなると血液はアルカリ性に傾き、血管が収縮します。血管が収縮すると血中カルシウム濃度が低下するなどの変化が表れ、体にさまざまな症状が起きます。

 
 

過換気症候群の原因とは

過換気症候群は、不安や恐怖、緊張などの心理的なストレスがきっかけとなり発症します。そのため、心配症な人や不安を感じやすい人、几帳面な性格の人などは過換気症候群の発作を起こしやすいといわれています。また、激しい運動をした場合や疲労がたまっているとき、睡眠不足のときなど、肉体の疲れが引き金となり、過換気症候群を発症するケースもあります。

 
 

過換気症候群の症状

過換気症候群では、次のような症状が見られます。
 

  • ● 呼吸が困難になる
  • ● 手足や指先、口の周りなどがしびれる
  • ● 頭が痛くなる
  • ● めまいが起きる
  • ● 動悸がする
  • ● 脈が速くなる
  • ● 胸が圧迫されているように感じる
  • ● 冷や汗が出てくる
  • ● 手や指、顔の筋肉が痙攣したり、こわばったりする
  • ● 失神する

 
一般的に、このような症状は30分~数時間程度で消失します。過換気発作が起きている場合、実際に血中酸素が低下していることはありません。ほとんどの場合、血中酸素濃度は正常値を示します。したがって、過換気症候群は不安感から息苦しさを感じるようになっている状態であり、命の危険に関わることはありません。

 
 

過換気発作が起きた場合の対処法

過換気発作が起きた場合、まずは冷静になり、気持ちを落ち着かせて呼吸を整えることが大切です。正常な呼吸に戻すため、ゆっくりと時間をかけて呼吸をするように心掛け、息を吸うことよりも吐く時間を長くします。1回の呼吸に4秒くらいかけてゆっくりと息を吐くようにするとよいでしょう。
 
過換気発作を起こした人がいた場合には、周囲の反応が気になることで不安感が強くなり、かえって過呼吸になってしまう場合があります。過換気発作を起こした人がいたときには、冷静に対処をし、人が少ない場所や気持ちを落ち着かせることができる場所に移動させるとよいでしょう。そのうえで、安心できるような声がけをし、背中をゆっくりさすってあげます。また、ゆっくりと息を吐く仕草を見せて真似をしてもらうと、正しい呼吸を誘導しやすくなります。
 
かつては、ペーパーバック法と呼ばれる方法が過換気症候群の対処法として推奨されていました。これは、紙袋を口に当て、吐いた空気を再度吸わせるというものです。しかし、この方法では、二酸化炭素濃度が過剰に上昇したり、血中酸素濃度が低下してしまったりする恐れがあります。医療機関以外ではペーパーバック法は避けるようにしましょう。

 
 

過換気症候群の検査・診断

過換気症候群の場合、過呼吸になる症状が表れたり、過呼吸の改善によって症状が消失したりすることなどをもって、診断をします。また、動脈血ガス検査で血中二酸化炭素濃度が低下し、血液がアルカリ性に傾いていることも診断の一助となります。しかし、過換気症候群の明確な診断基準があるわけではありません。
 
気管支炎喘息や気胸、肺血栓塞栓症、大動脈解離などでも過換気症候群のように、息苦しさや呼吸困難などの症状が表れます。そのため必要な診察や検査を行い、これらの病気でないことを判断するケースもあります。


 
 

過換気症候群の治療法

過換気発作は、多くの場合、精神的なストレスで発症します。発作を繰り返す場合には、ストレスを取り除くようにリラックスできる環境に身を置いたり、カウンセリングを受けたりするとよいでしょう。また、パニック障害やうつ病、不安症などの精神疾患がある場合には、心療内科や精神科で治療を受けることも大切です。抗不安薬を服用することで、発作を軽減することもできます。
 
その他、心臓や呼吸器の疾患が原因で過換気発作が起きるケースもあります。その場合は、原因となる病気の治療を受けるようにしましょう。


 

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過換気症候群の予防法

病気が原因ではなく、不安や緊張といった精神的なストレスから過換気症候群が起きている場合には、日頃から自分なりのストレス解消法を身につけ、リラックスできる時間を作ることも必要です。また、肉体的な疲労が蓄積しないように規則正しい生活を送るなど、体調管理にも努めましょう。
 
発作が起きそうなときには、ゆっくりとした呼吸を心掛けることで発作を予防できる場合もあります。


 
 

まとめ

過換気症候群では、不安や緊張などから過呼吸の状態となり、呼吸困難や手足のしびれ、頭痛、めまいなどの症状が表れます。息苦しさからパニックに陥るケースもありますが、ほとんどの場合、30分から数時間のうちに症状は治まり、後遺症が残ることはありません。
 
過換気症候群の発作で血中酸素濃度が低下することはないため、死に至るケースはないことを理解し、発作が起きたときは、まず気持ちを落ち着かせることが大切です。ゆっくりと息を吐くことを意識し、呼吸のリズムを整えるようにしましょう。周囲の人が過換気症候群の発作を起こした場合にも、声がけをしながら、安心させ、背中をさすってあげたり、ゆっくりと息を吐く仕草を見せたりすると落ち着いて呼吸しやすくなります。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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