ヘモグロビン値が低い場合に起きる「貧血」の症状と治療法

  • クリニックブログ
2024/04/30

ヘモグロビン値が低い場合に起きる「貧血」の症状と治療法

健康診断をする際、血液検査の項目にヘモグロビン値が含まれるケースがあります。ヘモグロビンには全身に酸素を運ぶ役割があり、ヘモグロビンが基準値よりも低い場合は貧血が疑われます。
 
今回は、ヘモグロビンの基準値や貧血の原因、貧血の治療法などについてご説明します。

 

ヘモグロビンとは

ヘモグロビンとは、ヘム鉄とたんぱく質(グロビン)が結合したもので、赤い色をしています。健康診断ではヘモグロビン量は「血色素量」や「Hb」と記載されることもあります。血液内のヘモグロビンは、肺で酸素と結びつき、血管を通して体中の細胞に酸素を運搬し、細胞から二酸化炭素を受け取って肺に排出するという重要な役割を担っています。
 
ヘモグロビンが基準値よりも低い場合、貧血となります。

 
 

ヘモグロビンの基準値

日本人間ドック学会では、ヘモグロビンの基準値を次のように定めています。
 

表は横にスクロールします

異常なし 軽度異常 要再検査・生活改善 要精密検査・治療
男性 13.1~16.3 16.4~18.0 12.1~13.0 12.0以下、18.1以上
女性 12.1~14.5 14.6~16.0 11.1~12.0 11.0以下、16.1以上

 
参照元:日本人間ドック学会「判定区分2023年度版」
https://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/hanteikubu2023_03-1.pdf


 
 

ヘモグロビンが低い場合に疑われる「貧血」

ヘモグロビンが低い場合、貧血と判断されます。貧血とは何らかの原因で、赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減っている状態を指します。ヘモグロビンが少ない場合、細胞に酸素が行き渡りにくくなるため、頭痛や疲労感、めまい、息切れなどの症状が表れます。

貧血の種類

貧血にはいくつかの種類があります。
 

鉄欠乏性貧血

最も多いタイプの貧血です。鉄の摂取量の不足や過剰な鉄の損失、鉄の吸収阻害などが原因で鉄が不足することによって、ヘモグロビンが合成できず、貧血となります。若い女性に多い傾向があります。
 

再生不良性貧血

血液は骨髄で作られますが、骨髄で血液を作る機能が低下することにより血液内の赤血球や白血球、血小板が減少する病気です。
 

巨赤芽球性貧血

ビタミンB12または葉酸が欠乏することで、赤血球の元となる赤芽球の合成が阻害され、赤芽球が巨大化する病気で、赤血球が作られないためそれが原因となり貧血を起こします。血の中でも、胃壁細胞で作られる内因子が不足することによってビタミンB12の吸収が低下し、貧血となる状態を悪性貧血といいます。
 

腎性貧血

腎障害によって、赤血球の生産に関わるエリスロポエチンが作られなくなることで生じる貧血です。慢性腎不全や急性腎不全、ネフローゼ症候群などの腎疾患が原因となります。
 

溶血性貧血

赤血球の寿命は120日程度ですが、120日よりも早く赤血球を包む膜が破れ、血液内にヘモグロビンなどの成分が流れ出してしまうことを溶血といいます。溶血性貧血は、免疫異常や遺伝などが原因で起こりますが、衝撃が過度にかかるスポーツをしている人に起きるケースもあります。
 

二次貧血

血液の病気以外の腎不全や膠原病、悪性腫瘍、内分泌疾患などが原因で発症する貧血です。二次貧血は高齢者に多く発症します。
 

貧血の症状

貧血の場合、酸素を運搬するヘモグロビンが低下するため、酸素が行き渡らず、全身が酸素不足の状態となります。そのため、貧血になると次のような症状が表れます。
 

  • ● 立ちくらみ
  • ● ふらつき
  • ● 息切れ
  • ● めまい
  • ● 頭痛
  • ● 動悸
  • ● 全身の倦怠感
  • ● 強い疲労感


 

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貧血の原因

貧血が起きる原因は、血液中のヘモグロビンが低下することです。ヘモグロビンが低下する理由には、赤血球を生産する能力が低下しているケースと赤血球数が減少するケースの2つのパターンがあります。

赤血球の生産が低下するケース

赤血球を生産できなくなれば、ヘモグロビンも低下するため、酸素を運搬する能力が低下します。赤血球の生産が低下する原因には、血液を作る鉄やビタミンなどの材料が不足している可能性、血液を合成する造血細胞に異常が起きている可能性が考えられます。鉄やビタミンが不足している場合は、ダイエットや偏った食生活などが影響しているケースが多くなっています。
 

赤血球数が減少するケース

女性の場合、月経の量が多い方や子宮筋腫といった婦人科疾患があった場合、出血によって赤血球が失われ、貧血になるケースが少なくありません。また、男性の場合は、胃がんや大腸がん、胃潰瘍などの消化器疾患が原因の慢性的な出血で貧血になるケースもあります。
 
そのほか、赤血球を包む膜の異常が原因で赤血球が早く破壊されてしまうことも貧血の原因となります。


 
 

ヘモグロビンが低い場合の治療法・対処法

ヘモグロビンが低い場合には、次のような治療法や対処法を行います。

原因となる病気の治療

婦人科疾患や消化器疾患などによる出血が原因でヘモグロビンが低下している場合など、病気が原因なっている場合は、病気の治療を行います。
 

薬物療法

血液を作る材料が不足しているためにヘモグロビンが低い場合には、鉄剤を処方し、複数ヶ月服用することで鉄分の補給を行います。
 

食事の栄養バランスの見直し

ヘモグロビンはたんぱく質と鉄が結合したものです。そのため、ヘモグロビンを高めるためにヘモグロビンの合成に必要となる鉄やたんぱく質、ビタミンB12、葉酸、亜鉛などを摂取しなければなりません。レバーやホウレン草、牡蠣、鰹節、海藻、しじみ、大豆、あさり、さんま、イワシ、チーズ、卵黄などをバランスよく摂取するようにしましょう。

 

生活習慣の改善

食事の前後にコーヒーや紅茶、緑茶などを飲む習慣があると鉄の吸収が阻害されるケースがあります。食事の前後にこれらを飲む習慣があれば、この習慣を見直し、鉄の吸収を高めるようにします。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進する働きがあるため、食事の際にはビタミンCを多く含む野菜や果実などを、鉄を含む食材と一緒に摂取するとよいでしょう。


 
 

まとめ

ヘモグロビンとは、赤血球に含まれる赤い色のたんぱく質です。ヘモグロビンには、肺から酸素を全身に運搬する役割があります。そのため、血中のヘモグロビンの量が下がると、全身が酸素不足の状態になり、めまいやふらつき、息切れ、頭痛などの症状を引き起こします。この状態を貧血といいます。
 
ヘモグロビンが低下する理由には、過多月経や子宮筋腫、胃潰瘍、大腸がん、胃がんなどの慢性疾患による出血でヘモグロビンが失われるケースと、血液を作る材料が不足しているケースがあります。貧血と軽く考え放っておくと、重大な病気が隠れているケースもあります。健康診断でヘモグロビンが低かった場合には、医療機関に相談し、貧血の原因を探ったうえで適切な治療を受けるようにしましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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