乳房の痛みの原因とは?痛みの種類別、時期別に徹底解説!

  • クリニックブログ
2024/03/07

乳房の痛みの原因とは?痛みの種類別、時期別に徹底解説!

乳房の痛みを感じると、「もしかして乳がんなのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。乳がんは現在がんの部位別罹患率1位になっているということもあり、女性にとっては関心の深い病気ではないでしょうか。しかし乳がんで乳房の痛みを感じることはまれだといわれています。
 
では乳房の痛みの原因は何なのでしょう?
痛みの種類、時期別に解説していきます。

 

乳房の痛みの原因・考えられる病気

乳房の痛みの原因と、痛みが出た時に考えられる病気について解説していきます。

乳房の痛みの原因

乳房に痛みが出る原因として以下の2つがあげられます。
 

  • ● ホルモンの変化
  • ● 感染症

 
ホルモンとは女性ホルモンであるエストロゲン、プロゲステロンのことです。それらが変化することによって痛みが生じます。
ホルモンの変化、感染症、それぞれについて解説していきます。
 

ホルモンの変化

乳房の痛みに関係するホルモンは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンです。この2つのホルモンは月経や妊娠、出産などをきっかけに濃度に変化が生じ、乳腺に働きかけて乳房が張ったり、乳腺組織を増殖させて授乳を行う準備をします。ホルモンの変化から生じる痛みは部分的なものではなく、乳房全体に痛みがあらわれることが多いとされています。
 
また、更年期障害のホルモン補充療法や経口避妊薬の服用によっても女性ホルモンの濃度の変化が生じて痛みを感じることがあります。

 

感染症

乳房の感染のほとんどが、産後の授乳期にあらわれる乳腺炎です。特に産後に授乳を開始してから3週間ほどは注意が必要です。乳腺炎には母乳が乳房内に留まることで起こるうっ滞性乳腺炎と、細菌が侵入することで起こる化膿性乳腺炎の2種類があります。
 
その他に乳房周囲の手術後に感染することもありますが、それ以外の感染はまれだといわれています。

 

乳房の痛みから考えられる病気

乳房に痛みが出たときに考えられる病気について解説していきます。

 

乳腺炎

乳腺炎は授乳期の女性が発症する病気で、特に授乳を開始した産後2〜3週間は注意が必要です。
 
乳腺炎にはうっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎の2種類があります。
それぞれ解説していきます。

うっ滞性乳腺炎

特に初産婦の方に多く、母乳が外に出るための道がきちんと出来ていなかったり、母乳が作られる量と赤ちゃんの飲む量のバランスが合わない状態が続くと、母乳が乳房の中に長時間留まってしまいます。このことが原因で乳腺が炎症を起こした状態を、うっ滞性乳腺炎というのです。
 
痛みを伴いますが、授乳を続けて溜まっている母乳を外へ出すことで乳腺炎が解消されます。痛みが強い場合は鎮痛消炎剤を服用したり、氷で冷やす、乳房マッサージを行うなどの方法がとられます。
 

化膿性乳腺炎

授乳を開始してすぐは赤ちゃんもまだ母乳を飲むことが上手でないため、乳頭が傷ついてしまうことがあります。この傷から細菌が侵入し、乳房の中にある母乳が感染した状態を化膿性乳腺炎といいます。原因である細菌は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌で、乳房の腫れ、熱感とともに高熱が出ることが特徴です。
 
化膿性乳腺炎と診断された場合、直ちに授乳は中止します。医師の診察の結果、排膿や切開などの外科的処置や、抗生剤の服用をおこなうことがあります。

 

乳輪下膿瘍

乳輪下腫瘍は、非授乳期に乳輪の下の乳管が細菌感染してしまった状態です。乳輪のあたりの痛み、しこりが主症状で、抗生剤にて治療をおこないます。膿がたまってしまった場合は、切開して排膿を行うこともあります。一度治療をしてもくり返し感染を起こす方が多いことが特徴です。

 

乳房の繊維嚢胞性変化

乳房の良性腫瘍で、多くの方が乳房の外側上部にしこりや痛みを感じることが多いです。初潮年齢が早い方、第一子出産年齢が30歳以降の方、出産経験がない方に発生しやすいといわれています。治療の必要はないといわれていますが、がんの可能性を否定するために生検を行うことがあります。

 
 

乳房の痛みの種類

乳房に痛みが出る場合、どのような痛みがあるのでしょうか?
それぞれ解説していきます。

乳房が張って痛い

乳房が張って痛い原因としては、女性ホルモンが関係している場合と、乳房になにかしらの病気がある場合が考えられます。女性ホルモンが関係している場合、生理前や妊娠、成長期、更年期に胸が張って痛いことがあります。また、睡眠不足などの不規則な生活が原因でホルモンバランスが乱れてしまい、胸の張りや痛みが出ることもあります。
 
胸の張りが症状として出る病気は、高プロラクチン血症、乳腺炎、乳腺線維腫、乳がんです。

 

高プロラクチン血症

プロラクチンとは母乳を作る役割をする乳腺刺激ホルモンです。出産後に母乳分泌を促すために分泌されますが、高プロラクチン血症では出産をしていないのにプロラクチンの数値が高い状態になります。自覚症状は乳汁の分泌、胸の張りやしこり、月経不順、排卵障害です。高プロラクチン血症、不妊の原因になるともいわれています。

 

うっ滞性乳腺炎

授乳期の女性で、母乳が乳房の中にたまってしまうことが原因で起こる病気です。乳腺が炎症を起こし、乳房が張って痛みがでます。痛みが強い場合はクーリングや沈痛消炎剤や使用することもありますが、基本的には乳房マッサージを行い溜まっている母乳を外に出すことで痛みが解消されます。

 

乳腺線維腫

10~30代の女性に多い、乳房に良性の腫瘍ができる病気です。しこりを感じても、半数くらいの方は自然にしこりが消失するといわれています。診断のためにおこなう検査は、細胞診や針生検です。検査の結果、乳腺線維腫と診断されたら定期的に超音波検査をおこない経過観察をしていきます。
 

乳がん

乳がんで張りや痛みを感じることはほとんどないと言われています。しかし張り・痛みで検査して乳がんが発見されるケースもあります。張りや痛みがあるから乳がんじゃないだろうと安心はせず、乳がん検診を受けたり、医療機関に受診をしましょう。
 

 乳がんについて詳しくはこちら

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乳房が腫れて痛い

乳房が腫れて痛い場合、一番に考えられるのは感染です。乳房が感染することは少ないといわれていますが、授乳期に乳頭が傷つき細菌が侵入することで起こる化膿性乳腺炎があります。化膿性乳腺炎では直ちに授乳は中止し、排膿や切開、抗生剤の服用をおこないます。その他にその他に乳房周囲の手術を受けた後に感染することもあります。

 

チクチク、ズキズキする痛み

乳房がチクチクするような痛みは、女性ホルモンの影響を受けていることが多いとされています。生理前にホルモンバランスの変化からこのような痛みを感じることが多く、痛みとともに胸の張りを感じたことがある方も多いのではないでしょうか。乳房の張り、痛みに関係するプロゲステロンの分泌は排卵後7日目にピークを迎えます。月経開始3~4日前から胸の張りを感じはじめ、月経終了ごろには痛みがおさまります。
 
ズキズキする痛みは、授乳期に乳腺が炎症を起こす「乳腺炎」の際に感じることが多いとされています。
しかし、他の乳房の病気でない可能性もあるため、痛みが続く場合は受診を検討しましょう。

 
 

時期別乳房の痛み

時期別に乳房の痛みについて解説していきます。

生理期間

生理が起こる仕組みには、エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが関与しています。排卵後に分泌されるプロゲステロンは乳腺に働きかけ、胸の中に水分を蓄える働きをするのです。このことで乳房に張りや痛みが生じます。
 
プロゲステロンは排卵後7日目頃に分泌量がピークとなり、その後分泌量は減少していきます。乳房の張り、痛みは生理の3~4日前から感じ始め、生理がくると徐々に痛みは軽減していきます。

 

妊娠中

妊娠するとエストロゲン、プロゲステロンというホルモンが増えます。そのうちプロゲステロンは乳腺や乳管の成長を促し、乳房の血液量を増やす働きがあります。その結果、乳房のサイズが徐々に大きくなるのです。この時に乳房に張りや痛みを感じたり、乳首に痛みを感じる方がいます。

 

授乳中

授乳期に乳房に張りを感じるのは、母乳が十分に作られている証拠だといわれています。しかし張りだけでなく痛みを感じてしまうと乳腺炎の可能性があります。授乳開始してすぐは赤ちゃんの飲む量と作られる母乳の量に差があり、母乳が乳房の中に残ってしまうのです。また授乳開始直後は乳頭が傷つきやすい状態のため、そこから細菌が侵入してしまい感染してしまうことがあります。

 

更年期

更年期は閉経前後10年の期間といわれており、40代頃より始まるとされています。更年期に乳腺症にかかりやすいといわれており、その原因は不明ですがこの時期に急激に減少するエストロゲンが関与しているのではないかともいわれています。
 
乳腺症は乳房の痛み、張り、しこりが生じる良性の病気です。治療の必要はなく、経過観察を行うことが多いとされています。
ほかにこの時期の乳房の痛みには、更年期障害の症状の一つである不定愁訴の可能性もあります。

 
 

乳房の痛みをきっかけに乳がんのセルフチェックを行おう

乳がんでは乳房の痛みを感じることはまれですが、痛みを主訴に受診し乳がんが発見されたケースもあります。乳がんは女性の部位別がん罹患数で最も多いがんです。

乳がんを早期発見するには

市町村で実施している乳がん健診の対象年齢は40歳以上となっています。受診の間隔は2年に1度で、検査項目は問診と乳房エックス線検査(マンモグラフィ)となっています。
 
しかし、乳がんの発症年齢は20代から増え始め、40代がピークとなっています。そのため、市町村で実施している乳がん検診以外での早期発見が必要です。医療機関で自費で受けられる乳がん検診もありますが、自宅でおこなうセルフチェックがあります。乳がんはセルフチェックで見つけることができる唯一のがんです。定期的に自分の乳房をチェックすることで、異変に気づきやすくなるでしょう。

 

セルフチェック方法

セルフチェックをおこなうタイミングは、月経終了後の胸の張りがおさまった時期がよいでしょう。
 
チェック項目は以下のとおりです。
 

  • ● 乳房にくびれやふくらみ、ただれなどの皮膚の変化はないか
  • ● 指をそろえて「の」の字を書くように、しこりがないか
  • ● 乳頭を軽くつまんで分泌物はでないか
  • ● 仰向けの状態で乳房、わきの下にしこりがないか

 
セルフチェックで異常を見つけたら、すぐに乳腺外科を受診しましょう。


 

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まとめ

乳房の痛みは、発生する時期や痛みの種類により原因が違ってきます。痛みを感じた場合、どのような痛みなのか、自身のおかれている状況を考えて痛みの原因を考え、必要があれば医療機関受診を検討しましょう。特に「乳がん」を心配される方はセルフチェック、がん検診を定期的に受けることで早期に発見ができます。
 
乳がんはセルフチェックで発見ができる唯一のがんとなっています。
自身の体と向き合うことで健康管理をおこなっていきましょう。


 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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