白血病とは?原因、症状、治療法について解説
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白血病とは?原因、症状、治療法について解説
白血病とは
白血病とは、血液のガンといわれています。細かく言うと血球を作る細胞に異常が発生しガン化して無制限に増殖することを指しています。
そもそも血液とは?という解剖生理から説明していきます。血液は成人の場合、体内に約8%(13分の1)くらい、量に換算すると約5L あります。ほとんどが血管の中を流れていますが、10%程度(約500ml)は肝臓や脾臓に溜まっています。白血球・赤血球・血小板の3種の血球と血漿という成分によって血液が成り立っていて、働きは以下の6つです。
- ①栄養分の運搬
- ②酸素や二酸化炭素の運搬
- ③ホルモンの運搬
- ④体温調節
- ⑤不要になった老廃物の運搬
- ⑥免疫による生体防御
そして、この血液たちはどこで作られているかというと、生まれる前の胎児のときと生まれた後では場所が違ってきます。
生まれる前の胎生期において、造血は骨髄以外の組織で行われます。胎生第2週頃に卵黄嚢で造血が始まり、第5週頃に肝臓造血へと移行します。
骨髄造血は第11週頃から鎖骨で始まり、その後大腿骨や上腕骨が続き、第14週頃に脊椎など全身の骨へと広がります。
生後は骨髄と呼ばれる骨の髄腔を埋める組織であり、成人で重さ2,600g に達します。
通常その約半分(1,200 g)が造血を行う赤色骨髄であり、胸骨、肋骨、脊椎、鎖骨、肩甲骨、骨盤および頭蓋などに分布します。
白血病は主にこの骨髄での細胞生成の異常によるものとなります。白血病の分類としてFAB分類やWHO分類というものがあります。どちらも使用することがありますが、遺伝子レベルでの治療も可能で、より病気の経過を予測することができるので、現在はこちらのWHO分類が用いられることが多くなっています。とても細かいものなので詳細は国立がん研究センターが提示している以下のサイトをご参照ください。
どの細胞ががん化したかによる分け方となりますが、主に急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)の4つがあります。
この他に、急性骨髄性白血病の一種である急性前骨髄球性白血病(APL)、HTLV-1(human T-lymphotropic virus type-Ⅰ)というウイルス感染が原因で発症する成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、赤血球、血小板、白血球の3種類の血液細胞のもとである造血幹細胞が異常をきたす骨髄異形成症候群(MDS)等があります。
白血病の原因
白血病を含む「がん」は、細胞の分化・増殖・維持をコントロールしている遺伝子が傷つき病的な細胞の発生して増殖してしまうことが起因すると考えられています。
ただ発病する原因は不明です。白血病は種類によりますが他のがんと同じ様に遺伝子に異常をきたして発生した病気です。
また、白血病における遺伝子の異常は、生まれながらに持っているものではなく、後から何らかの原因でおこってしまう後天的なものです。
そのため親子間での遺伝はないといわれています。また、普通に生活していて伝染する可能性もないと言われています。
発症率としては、国立がん研究センターの2019年調査で新たに診断された人は男性8,396人、女性5,922人でした。全人口比率は10万人対して男性13,7人、女性9,1人となっています。1万人に1人なる病気となりますので少ない比率と考えられます。
白血病の症状
症状としては血液の解剖生理で説明した6つの働きが阻害されることでおきるものが挙げられます。
発症する種類・病態により個人差があります。大きく分けて急性・慢性での症状を説明したいと思います。
1.急性白血病の症状
発症から早い段階で症状が現れてきます。正常な血球機能を失うことによるものと、他の臓器や中枢神経への浸潤による2つの原因による症状が挙げられます。
1つ目の正常血球機能を失うことによる症状として
- ①貧血症状(動悸・息切れ・疲れやすい・顔色が悪くなるなど)
- ②感染症状(すぐに高熱や風邪様症状がおこって長引くなど)
- ③出血症状(鼻血や歯肉出血が増える、アザができやすくなるなど)
となります。
正常な血球が失われていくスピードが速いため、症状の発現も速くなります。
2つ目の他の臓器や中枢神経への浸潤による症状としては白血細胞が他臓器に浸潤して起こる
- ①脾臓や肝臓の腫れやしこり
- ②お腹が張る、腹部のしこり、痛み
- ③腹部や胸部に水がたまる
- ④歯肉の腫れや痛み
- ⑤骨痛
- ⑥腰痛、関節痛
- ⑦頭痛や吐き気
- ⑧急な嘔吐
などが挙げられます。
2.慢性白血病の症状
血球不足の症状より先に、主に白血球の異常な増加による症状が出現してきます。無自覚のことも多くあります。
- ①全身倦怠感
- ②脾臓の腫れ
- ③寝汗
- ④体重減少
- ⑤皮膚のかゆみ
- ⑥胃潰瘍
このような症状が見受けられます。ただ、自覚症状がないからといって軽い病気ではありません。
急性転化といって、病気の進行とともに治療効果が得られにくくなって急性骨髄白血病と同じように急速に進行してしまうことがありますので、放置してはいけないものです。
白血病の検査方法
検査方法は健康診断などによる採血検査異常や、リンパ節の腫れや不明熱から疑われます。
病院やクリニックで再度採血検査を行い、白血病が疑われた場合は専門性の高い血液疾患専門の施設へと紹介になります。
末梢血の血液検査で白血病細胞が確認される場合もありますが、初期には検出されない場合もあります。
確定診断として骨髄検査が必須となります。骨髄検査には2種類あり、骨髄穿刺と骨髄生検です。
骨髄穿刺は骨髄液を注射器で吸引するものです。骨髄生検は特殊な太い針を刺して骨髄組織の一部を採取するものです。
診断をするために必要な情報のほとんどは、骨髄穿刺で得られることが多いのですが、骨髄液を注射器に吸い込む過程で、壊れやすい骨髄組織が破壊されてしまいます。
そこで、骨髄細胞の正確な解剖学的関係と組織の構造を調べる必要がある場合には、骨髄生検も行われます。どちらも採取場所は骨盤にある腸骨稜という場所から採取します。
検査は医師が行い、採取する部分の皮膚を消毒して、局所麻酔を行って感覚を麻痺させてから、骨に針を穿刺して採取します。検査時間は数分程度です。痛みは個人差がありますが、穿刺時や吸引中に不快感を感じる方がいます。
また、採取したサンプルを使用して、細菌、真菌、ウイルスなどの培養や、染色体分析、細胞表面タンパク質の分析など、特殊な検査を併用することもあります。
白血病の治療方法
白血病と診断された方の治療方法は、抗がん剤による化学療法が基本です。
また、染色体異常や遺伝子異常が認められるような慢性骨髄性白血病や、急性リンパ性白血病では分子標的薬による治療も行われます。症状や病態によっては造血幹細胞移植も検討されます。
治療の基本は増殖しているがん細胞をできる限り減らし、血液機能や全身状態を回復させ、その状態を維持していくことです。
治療によるメリット・デメリットや患者さんの希望や予後なども踏まえ、患者さんの生活の質を重視した緩和療法を選択することもあります。
多種抗がん剤治療をする場合は入院して数日〜1週間程度を1セットとして何サイクルか点滴を投与します。
そしてがんの根絶化を図ります。多種の抗がん剤を使うことで病態や使用する薬剤、全身状態にもよりますが、様々な副作用が出現する可能性があります。
1番注意していることは、白血球減少による免疫力や抵抗力の減退から易感染となり肺炎や敗血症が起こることです。そこで、治療中は感染対策を徹底して行います。また、症状により対症療法もおこなわれます。
敗血症についての内容はこちら
白血病の予防方法
原因がはっきりしていないため、予防効果のあるものもほとんど挙げることができません。
ただ、南九州、沖縄や五島列島に風土病的に存在する成人T細胞白血病・リンパ腫 HTLV-I というウイルスによる白血病があります。こちらはウイルスと断定されており、母乳を介しての感染が確認されているので、与えなければ予防が可能です。
まとめ
白血病の歴史を振り返ると19世紀後半にドイツの病理学者ルドルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョーが発見しました。
当時脾臓の腫れに伴い、血液が白く見えたことから「白血病」と名付けられました。ただ、発見されてから約100年有効な治療手段が見つからず、不治の病とされてきました。
1960年代以降から徐々に抗がん剤の種類や研究開発がされ少しずつ治療が進歩してきました。社会生活へ復帰できる方もいらっしゃいますが、発症した型や治療が本人にとって納得ができるものかによるので医師や治療に関わるすべての人と綿密なすり合わせが必要です。そのため個人差が大きいと思います。現在の治療から治るものと断言することはできません。生存率をみると、過去に比べてみれば上がったのは事実です。そして治療方法や研究開発が進んでいることも事実です。
ただ、一概に治る病ですとはいえません。予防方法も原因も不明で不安に思うこともあると思いますが、健診の定期的な受診や、体の不調を感じたときにそのまま放置しないことが大事かと思います。
白血病についての詳しい内容はこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師