水頭症について
- クリニックブログ
水頭症について
水頭症とは
水頭症(すいとうしょう)は、脳脊髄液(脳内液)の流れが妨げられ、脳内に蓄積されることによって起こる病気です。脳内液は脳と脊髄を包み、栄養や酸素を運び、代謝産物を排出する重要な役割を果たしています。
しかし、何らかの原因で脳内液の流れが妨げられると、脳室内の圧力が上昇し、脳や神経にダメージを与えることがあります。
水頭症の原因は、先天的なものや後天的なものがあります。先天的なものでは、脳や脳脊髄液の形成や流れに異常がある場合があります。
後天的なものでは、脳出血、脳腫瘍、外傷、感染症などが原因となることがあります。
水頭症の原因
髄液は体の中で一番きれいな液体(99%は水・無菌)で1日に約450mLが産生されます。
普通の髄液の総量は大人で約150mL、小児で100mLといわれていて、髄液を産生から吸収まで1日に約3回循環して入れ替わっています。
ところが、この髄液の循環経路において、何かしらの原因で流れが悪くなると水頭症を起こします。髄液の生産過剰、髄液循環路の閉塞、髄液の吸収障害などがあります。
・非交通性水頭症
小児に多い水頭症で脳室内にある脳脊髄液の流れが悪くなることによって引き起こされる水頭症です。
第三脳室と第四脳室の通り道である中脳水道が生まれつき狭窄している場合や、脳室内部の腫瘍や出血が原因としてあがります。
・交通性水頭症
成人に多い水頭症で脳脊髄液の循環経路のなかで脳や脊髄の表面を覆うくも膜下腔が狭くなっていたり脳脊髄液の吸収が上手くできない場合に引き起こされる水頭症です。
頭蓋内出血や髄膜炎、脳腫瘍、生まれつきの脳の形態異常が原因としてあげられます。
水頭症の症状
水頭症の症状は、脳の中にある脳室が大きくなり頭が痛くなったり、吐いてしまったりするなど様々な症状があります。
・非交通性水頭症
脳囲の拡大、前頭部の突出、頭痛、嘔吐、意識障害などの症状が現れます。
・交通性水頭症
非交通性水頭症と同じように脳室内の拡大は起こりますが、脳室内の脳脊髄液の循環経路自体は正常であるため脳圧が上昇せず正常値である場合も少なくありません。そのため、頭痛や嘔吐の症状が少ないです。
・突発性正常圧水頭症の三大症状
1.歩行障害
小刻み、すり足、歩幅の開大、転倒
2.認知機能障害
集中力、自発性、意欲の低下
3.排尿障害
頻尿、尿意切迫、尿失禁
加齢によって現れる身体的変化と症状が似ています。
水頭症の検査方法
水頭症の検査方法は、以下のようなものがあります。
1.症状や体格検査
頭部の腫れや、視力障害、嘔吐などの症状を確認します。また、頭部のサイズや形、脳神経の機能を検査することもあります。
2.脳画像検査
脳の状態を確認するために、以下のような画像検査が行われます。
・CT:X線を使って脳内の様子を撮影する検査。
・MRI:磁場と電波を使って脳の様子を撮影する検査。
・脳血管造影:造影剤を使って脳血管の様子を撮影する検査。
これらの検査によって、水頭症の原因となる異常があるかどうかを確認することができます。
3.脳脊髄液検査
脳脊髄液を採取し、異常があるかどうかを調べることがあります。異常な脳脊髄液の色や量、細胞やタンパク質の異常を調べることができます。
4.脳圧測定
脳脊髄液の圧力を測定することができます。脳圧が高い場合には、水頭症の可能性があります。
これらの検査を適切に行い、水頭症の原因や程度を正確に診断することが重要です。専門医の指導のもとで検査を受けることをお勧めします。
水頭症の治療方法
水頭症の治療方法は、原因に応じて異なります。以下に一般的な治療方法をいくつか紹介します。
1.手術治療
・シャント手術
脳内の脳脊髄液の流れを改善するために、脳室内にチューブを挿入して脳脊髄液を排出する手術があります。
脳室内に埋め込み、皮膚の下を通して別の部位に排出させます。
・ドレナージ術
体の外と髄液のたまっている部分をつなぎ、排泄する経路を作る手術です。
チューブが外気に触れることになる為ウイルスや細菌が体内に入り込む可能性がある。術前術後の管理に用いられる手術です。
・第三脳室開窓術
脳室とくも膜下腔をつなげて過剰な髄液を排出して髄液が吸収されるようにする手術です。
別の経路を作ることで過剰な経路を分散させることです。シャント手術のように異物を入れておく必要がないためリスクも少なく済みます。
2. 薬物療法
水頭症の原因が感染症の場合には、抗生物質や抗ウイルス薬などの薬物療法が行われます。
また、炎症を抑えるためにステロイド剤の投与が行われることもあります。
治療方法は症状や原因によって異なりますので、専門医の指導のもとで適切な治療法を受けることが重要です。また、治療後も定期的なフォローアップが必要となります。
水頭症の予防方法
水頭症の原因は様々であり、先天的なものも含め、すべてを予防することはできません。
しかし、一部の後天的な水頭症については、予防することができる場合があります。
1.転倒や外傷を予防する
外傷が原因で水頭症が起こることがあるため、転倒や外傷を予防することが大切です。
特に子供や高齢者は、転倒や外傷による水頭症のリスクが高くなります。
2.頭部の感染症を予防する
細菌やウイルスによる感染症が原因で水頭症が起こることがあるため、適切な手洗いやマスクの着用など、感染症の予防に努めることが大切です。
3.脳出血や脳腫瘍などの早期発見・治療
水頭症は、脳出血や脳腫瘍などが原因で起こることがあります。
これらの疾患については、早期に発見・治療することが大切です。
4.妊娠中の適切なケア
妊娠中に母体に何らかの問題が生じると、赤ちゃんにも影響が出ることがあります。
水頭症も、妊娠中の母体の病気や生活習慣によって引き起こされることがあります。妊娠中は、定期的な健康診断を受け、適切なケアを行うことが大切です。
以上のような予防方法を実践することで、一部の水頭症を予防することができます。
しかし、水頭症は様々な原因によって引き起こされるため、必ずしも予防できるわけではありません。何らかの症状が現れた場合には、早期に医師の診断を受けることが大切です。
まとめ
水頭症は小児、成人、高齢者によって起きる症状が異なります。症状が身体的変化と似ている症状もあります。
症状が現れた場合には、早期に医師の診断を受けて早期の発見と適切なタイミングで治療を行うことが重要です。
定期的な健康診断や適切な治療を受けることが大切です。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師