手足口病の症状、原因、予防方法について詳しく解説

  • クリニックブログ
2023/06/07

手足口病の症状、原因、予防方法について詳しく解説

手足口病とは

手足口病とは、主に夏の間に子どもに流行するウイルス性の感染症です。6〜8月頃に流行する3大夏風邪のひとつと呼ばれていますが、秋から冬にかけても発症数が多くなることがあります。手足口病は1950年頃に世界で知られはじめた病気で、1960年代後半に日本で認識されました。
口の中や手、足の裏に水ぶくれの皮疹がでるのが特徴です。コクサッキーウイルスとエンテロウイルスが原因です。2歳以下での発症が半数以上であり、4歳頃を中心に発症しますが、大人も感染することがあるので注意が必要です。



 

手足口病の原因は

手足口病の原因は、コクサッキーウイルスとエンテロウイルスが原因です。一度同じウイルスにかかると抗体ができて二度とかかりません。しかし、これらのウイルスにはさまざまなタイプがあるので、一度のシーズンに何度も手足口病を発症することがあります。
手足口病は、接触感染と飛沫感染をします。接触感染とは、ウイルスがついた手すりや吊り革、リモコン、携帯電話などに触れるほか、便の中にいるウイルスが指についてしまって鼻や口に触れることで感染します。飛沫感染では、ウイルスに感染した方のくしゃみや咳の飛沫が顔や口にかかったりすると感染します。

感染経路

飛沫感染:手足口病に感染した人の咳やくしゃみなどの飛沫に含まれるウイルスを吸い込むことで感染します。
接触感染:感染者の唾液や鼻水がついたものを介して、手が触れることで感染します。また、水疱の内容物に触れることでも感染する可能性があります。
糞口感染:感染者の便に含まれるウイルスが口に入ることで感染します。
 
特に注意が必要なのは、保育施設や幼稚園などの子どもたちが集団生活をしている環境です。これらの場所では、子ども同士の生活距離が近く、濃厚な接触が生じやすいため、集団感染が起こりやすくなります。
最も感染力が強いのは急性期、つまり症状がある間です。
また、症状が治まった後も2〜4週間程度便などからウイルスが排泄されることがあり、感染しても発病せずにウイルスを排泄している場合もあるため、注意が必要です。


 
 

手足口病の症状は

手足口病の症状は、病気の名前の通り、手のひらや足の裏や甲、口の中に数ミリ大の水ぶくれの発疹が出てくることが特徴です。特に口の中の水ぶくれはつぶれやすく、口内炎になることがあり、痛くてご飯が食べにくくなります。水も飲めなくなれば、脱水になってしまうので、食事や飲水状況には注意してください。手のひらや足の裏の水ぶくれが破れると手や足がただれてしまうこともあります。
3人に1人ぐらいの割合で発熱しますが、38℃以上の高熱にはなりにくいです。水ぶくれは3〜7日で消えて、あとにはかさぶたも残りません。入院が必要なほどに重症になることは少ないです。場合によっては、1〜2ヶ月後に手足の爪がはがれてしまうことがありますが、直ちに新しい爪が生えてくることが多いです。
手足口病の合併症として、心筋炎や急性脳炎、無菌性髄膜炎などがあります。動悸がする、息が苦しい、高熱が続く、頭痛や吐き気がするなどがあれば、病院を受診するようにしてください。


 


 

早期発見のポイント

手のひら、足の裏や甲、口の中に2〜3mmの水疱ができるなどの特徴的な発疹が現れた場合は手足口病かもしれません。
手足口病は主に5歳以下の乳幼児に多く見られます。特に2歳以下が半数を占めるため、この年齢層の子どもには特に注意が必要です。保育施設や幼稚園などの集団生活をしている環境では、感染リスクが高くなります。

手足口病かなと思ったら

1.症状の確認
手のひら、足の裏や甲、口の中に2〜3mm程度の小さな赤い発疹や水疱が現れていないかを確認します。これらの症状は手足口病の特徴的な兆候です。
 
2.発熱の有無
多くの場合それほど高熱にはなりませんが、手足口病では発熱を伴うことがあります。
 
3.口内の痛みや食欲不振
口の中の痛みや食欲不振が初期症状として現れることがあります。
 
4.周囲で手足口病にかかった人がいないかを確認
集団生活をしている場合は、感染リスクが高くなります。周囲で手足口病にかかった人がいないかを確認しましょう。
 
手足口病は多くの場合軽症で済みますが、適切な対応と注意深い観察が重要です。初期症状がある場合は、上記の内容を確認して、内科・小児科などの医療機関を受診し、専門医の診断を受けることをお勧めします。

 
 

検査方法と検査ができる時期/潜伏期間

一般的には、特別な検査はせず、問診や視診、自覚症状などから診断します。まれに診断に迷う時に、血液中の病原体を検出することで診断することがあります。問診では、周りで手足口病が流行していないかどうかや、いつから熱や水ぶくれが出てきたのかを聞きます。気づいた症状に関しては、きちんと記録しておくと診断の助けになります。
視診では、発疹が水ぶくれかどうか、どこに水ぶくれがあるかチェックするとともに、口内炎で脱水になっていないかどうかを確かめます。症状が出てからの食事量や飲水量の変化には気をつけてください。
また、感染してから3〜6日間は潜伏期間として何の症状も出ません。手足病がうつったかもしれないと心当たりがある場合は、数日後に発症することがあるので注意してください。

 

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手足口病の治療は?

手足口病は、ウイルス感染症であり、特別な治療法はありません。それぞれの症状に対しての治療をして自分の免疫力でウイルスと戦っていきます。特に問題になるのが口内炎による痛みです。口の中に水ぶくれができて口内炎になると、食事や水がとりにくくなり脱水になる恐れがあります。
脱水にならないように、口内炎の治療として、粘膜保護剤の軟膏を塗ったり、鎮痛剤を飲んだりするのがおすすめです。飲み物は、オレンジジュースや熱い飲み物は口内炎を刺激して痛みが増すので避けるようにしてください。常温のお茶や少し冷えたスープや牛乳などがおすすめです。
食べ物は、熱いもの、冷たいもの、辛いもの、酸っぱいもの、塩辛いものは口内炎の痛みが強くなるので食べないようにしてください。豆腐や柔らかいうどん、ゼリー、プリン、ヨーグルトなど、口の中を刺激しにくく、あまりかまなくても食べられるものを選ぶのがおすすめです。
 


対処法

手足口病に特効薬はありませんが、症状に応じた対症療法を行うことで症状を緩和し、合併症のリスクを軽減することができます。
 

1. 痛みの緩和

鎮痛薬の使用:喉の痛みや口内炎の痛みに対して、医師の指示に従い鎮痛薬を使用します。
粘膜保護剤の軟膏:口内炎の痛みを緩和するために、医師の指示に従い粘膜保護剤の軟膏を使用します。

 

2. 食事と水分摂取の工夫

刺激の強い食べ物を避ける:辛いものや酸味の強い食べ物は避けましょう。
のどごしの良い、柔らかい食べ物を選ぶ:冷たい飲み物やアイスクリーム、ゼリーなどが適しています。
刺激の少ない飲み物を摂取する:麦茶や牛乳など、刺激の少ない飲み物を選びましょう。
少量ずつ頻繁に水分を摂取する:脱水症状を防ぐために、少量ずつ頻繁に水分を摂取しましょう。

 

3. 安静

体力を消耗させないように安静に過ごし、免疫力を高めましょう。

 

4. 医療機関を受診

痛みが強い、高熱が続く、嘔吐を繰り返す、頭痛がひどい、呼吸が浅くて速いなどの症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

 
個々の症状や状況に応じて、適切な対応を心がけることが重要です。

 

 

手足口病の予防方法は?

手足口病を予防するための専用の予防接種はありません。他のウイルス感染症にも言えることですが、手足口病は飛沫感染や接触感染をするので、予防には手洗いやうがい、マスクが効果的です。
外から自宅に帰ってきた時や、食事を食べる時などは必ず手洗いとうがいをするようにしてください。マスクは、他の人に自分がかかっているウイルスをうつさないという効果があります。くしゃみをしている方でマスクをしていない方のつばなどがかからないように注意してください。
また、手足口病の症状が改善した後も、感染した方がした便には約2~4週間、口などの呼吸器には1〜2週間の間ウイルスが住み着いていると報告されています。手足口病が治ってもマスクは必要ですし、子どものおむつを交換し、お尻をふいた後には、1ヶ月程度はハンドソープや石けんでしっかりと必ず手洗いをするようにしてください。これが原因で大人に感染してしまうことがあるので要注意です。

 


 

大人の手足口病

大人も手足口病に感染する可能性がありますが、子供に比べて発症率は低くなります。特に、小さな子供と同居している大人は感染リスクが高くなります。
 
【大人が手足口病にかかった場合の特徴】
◇症状の強さ
大人は子供よりも発疹による痛みが強く出やすい傾向があります。特に手のひらや足の裏の痛みが激しく、歩行が困難になるケースもあります。
◇発疹の特徴
発疹の数自体は子供の方が多い傾向にありますが、大人の場合は痛みが強く感じられます。
◇のどの痛み
発疹が少ない場合でも、のどの痛みが非常に強く出ることがあります。通常の食事が困難になるほどの痛みを伴うこともあります。
◇全身症状
発熱や全身倦怠感などの全身症状も、大人の方が強く現れる可能性があります。
◇日常生活への影響
症状の強さにより、仕事や日常生活に支障をきたす可能性が高くなります。
◇合併症のリスク
まれに髄膜炎や脳炎、小脳失調症などの合併症を引き起こすリスクがあります。
 
手足口病は大人がかかると子供よりも症状が重くなる傾向があり、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。ただし、症状の程度には個人差があり、すべての大人が重症化するわけではありません。
 
大人が手足口病(5類感染症)にかかった場合、法的な出勤停止期間は決められていません。多くの会社では、学生に適用される学校保健安全法にならって、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」を出勤停止期間として運用しているようです。
 
発熱や強い痛みがある場合は会社を休むことが推奨されます。感染力が強いため、周囲への感染を防ぐためにも、症状が改善するまで休養を取り、適切な感染予防策を講じることが重要です。

 
 

よくある質問

手足口病は一度かかると二度とかからないのですか?

手足口病は複数の種類のウイルスによって引き起こされます。一度ある型のウイルスに感染して免疫ができても、別の型のウイルスによって再び手足口病にかかる可能性があります。
 
毎年流行するウイルスが異なるため、以前かかったことのない型のウイルスに感染して発症することがあります。
 

手足口病にかかった場合、入浴は可能ですか?

手足口病に感染しても、基本的にお風呂に入ることは可能です。お風呂に入ることで症状が悪化することはあまりありませんが、発熱や体調不良がある場合は無理をせず、安静にすることが大切です。
 

  • 《入浴時の注意点》
  • ●他の家族が入った後に入浴する
  • ●同じタオルを使わない
  • ●体をやさしく洗う
  • ●湯船に一緒に入らない

 

妊婦が手足口病にかかったら危険ですか?

妊娠中は免疫力が低下するため、感染しやすくなる可能性があります。
手足口病は多くの場合軽症で済みますが、妊婦の場合は念のため医師の指示に従い、適切な管理を行うことが大切です。特に高熱や脱水症状には注意が必要です。
手洗いやうがい、タオルの共用を避けるなどの基本的な感染予防策を徹底することが推奨されます。

 
 

まとめ

手足口病は、4歳以下の子どもに多い、夏場に流行する病気です。潜伏期は3〜6日間であり、その後に口の中や手、足の甲や裏に水ぶくれの皮疹がでるのが特徴です。少し熱が出る時もあります。
症状の中では、口内炎の痛みに悩まされる場合が多く、脱水にならないように食事内容や飲み物には注意してください。刺激が強いものを避けて、しっかりと水分をとるのがおすすめです。口内炎がひどい場合には、塗り薬や鎮痛剤を使ったりします。
手足口病は、コクサッキーウイルスとエンテロウイルスが、接触感染や飛沫感染することで感染します。感染を予防するために、基本的な手洗いやうがい、マスクをするのが有効です。
また、確率は低いですが、心筋炎や急性脳炎、無菌性髄膜炎という重大な合併症が起こることがあります。胸のあたりがしんどい、呼吸するのが苦しい、高熱が続く、頭が痛い、吐き気がするなどの症状があれば、医療機関に相談するようにしてください。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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