
肺炎球菌ワクチン(Pneumococcal Disease)
肺炎球菌ワクチンとは
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)という細菌による感染症を予防するためのワクチンです。ガイドラインでも接種が推奨されており、年齢や健康状態に応じて種類や接種間隔が決められています。出典:日本感染症学会の公式ガイドライン
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=51
肺炎球菌感染症の特徴・症状

肺炎球菌は、気道の分泌物を介して飛沫感染します。乳児(赤ちゃん)では20〜50%の高頻度で、高齢者は約3~5%が鼻や喉に常在菌として保有しています。この菌が体力低下や基礎疾患などをきっかけに発症すると、以下のような疾患を引き起こします。
- ●肺炎(特に高齢者の重症肺炎の主因)
- ●気管支炎
- ●中耳炎
- ●副鼻腔炎
- ●髄膜炎
- ●敗血症
肺炎は日本の死亡原因の上位であり、成人肺炎の 約20%が肺炎球菌によるものです。
重症化すると命に関わることもあり、特に高齢者や基礎疾患のある方、免疫力が低下している方で重症化リスクが高まります。
肺炎球菌感染症が流行している地域・時期
肺炎球菌感染症は世界中で発生しており、特定の地域や季節に限定されません。日本を含む先進国でも高齢化の進行に伴い、肺炎球菌による重症肺炎や侵襲性感染症(血液や髄液など本来菌が存在しない部位への感染)が問題となっています。
特に冬季はインフルエンザなど他の呼吸器感染症が流行しやすく、それに続発して肺炎球菌感染症が増加する傾向があります。また、高齢者施設や病院など集団生活の場では、感染拡大のリスクが高まります。
肺炎球菌ワクチンの概要と種類
製剤の特性・概要
日本で主に使用されている肺炎球菌ワクチンは、以下の2種類です。- ●ニューモバックスNP(PPSV23)
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン。23種類の血清型に対応し、成人・高齢者向けに定期接種で使用されています。 - ●プレベナー13(PCV13)
13価肺炎球菌結合型ワクチン。小児や一部の成人に使用され、13種類の血清型に対応します。
これらのワクチンは、肺炎球菌の主要な血清型をカバーし、重症化や侵襲性感染症の予防に効果があります。
接種対象と推奨年齢(接種スケジュール)
定期接種の対象(日本)
- ●65歳の方
- ●60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器に重度の障害がある方、またはヒト免疫不全ウイルス感染による高度な免疫障害がある方
接種スケジュール
- ●PPSV23(ニューモバックスNP):原則1回接種。再接種は5年以上あけて任意接種として行うことが可能です。
- ●PCV13(プレベナー13):小児では複数回接種のスケジュールが組まれています。成人での使用は医師と相談の上決定します。
接種方法・注意点
- ●筋肉注射または皮下注射で接種します。
- ●接種後、抵抗力がつくまでに約3週間かかります。
- ●1回の接種で5年以上効果が持続するとされています。
- ●過去5年以内に同じワクチンを接種した場合、副反応が強く出ることがあるため注意が必要です。
他のワクチンとの同時接種の可否
インフルエンザワクチンなど他のワクチンと同時接種が可能です。特に高齢者では、インフルエンザとの重複感染による重症化を防ぐため、同時接種が推奨される場合があります。接種を避けるべき人(禁忌・慎重投与)
- ●明らかな発熱や重篤な急性疾患がある場合
- ●過去にワクチン成分でアナフィラキシー等の重篤なアレルギー反応を起こしたことがある場合
- ●その他、医師が不適当と判断した場合
肺炎球菌ワクチンの効果と安全性
ワクチンの効果(有効性)
PPSV23(ニューモバックスNP)は、23種類の血清型による侵襲性肺炎球菌感染症の約4~5割をカバーし、これらの感染症を約4割予防する効果があります。65歳以上の高齢者において、すべての肺炎球菌性肺炎に対する効果は約27.4%、ワクチン血清型の肺炎球菌性肺炎に対する効果は約33.5%と報告されています。
ワクチン接種により重症化や死亡リスクを低減することが証明されています。
副反応
- ●接種部位の痛み、発赤、腫脹が比較的多くみられます。
- ●頭痛、筋肉痛、倦怠感、悪寒、発熱などの全身症状もありますが、通常は軽度で数日中に消失します。
- ●まれにアナフィラキシー、血小板減少、知覚異常、ギラン・バレー症候群、蜂巣炎様反応など重篤な副反応が報告されています。
- ●過去5年以内に同じワクチンを接種した場合、副反応が強く出ることがあるので注意が必要です。
その他の留意点
- ●すべての肺炎や肺炎球菌感染症を完全に防げるわけではありません。
- ●ワクチンでカバーされていない血清型による感染(血清型置換)が起こる場合があります。
- ●基礎疾患がある場合や免疫力が低下している場合は、ワクチン接種の効果が十分に得られないこともあります。
接種にかかる費用
- ●自治体による助成がある場合、自己負担額は2,000~3,000円程度が一般的です。
- ●助成がない場合や任意接種の場合は、医療機関ごとに異なりますが、5,000円程度かかることもあります。
- ●生活保護世帯などは無料となる場合があります(要申請)。
国内外の接種状況(接種率や導入時期)
日本国内の状況
厚生労働省等の最新データによると、65歳以上の高齢者における肺炎球菌ワクチンの接種率は約55.1%で、年々上昇しているものの依然として十分とは言えない状況です。特に慢性疾患を持つ19~64歳の成人では接種率が低く、19~49歳で約12.4%、50~59歳ではさらに低い水準となっています。現在の高齢者定期接種では、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23=ニューモバックスNP)が中心ですが、2024年8月に承認された20価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV20)の使用も拡大しつつあり、将来的な定期接種への導入も検討されています。
海外の状況
米国や英国では、結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7、PCV13、PCV15、PCV20)が早期に導入され、高齢者やハイリスク者の接種率は日本より高い水準を維持しています。また、定期的な追加接種(ブースター接種)も実施されており、感染症予防効果の維持が図られています。出典:厚生労働省 高齢者の肺炎球菌ワクチン(定期接種)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/pneumococcus-senior/index.html
日本感染症学会 最新ガイドライン(2024年9月版)
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=56
肺炎球菌ワクチンの最新動向
研究開発や改良の動き
既存のPPSV23やPCV13に加え、より多くの血清型をカバーする20価結合型ワクチン(PCV20)など新しいワクチンが開発・導入が世界的に進んでいます。血清型置換への対応や、免疫原性の向上を目指したワクチンの改良も進んでいます。
2024年8月には、日本でPCV20が高齢者とハイリスク者に対して薬事承認されました。これを受け、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の合同委員会が、最新のガイドライン(第6版)を同年9月に公開しています。この改訂では、65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方が更新され、PCV20の導入を踏まえた内容となっています。
高齢者向けの定期接種は引き続き23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23=ニューモバックスNP)が中心ですが、PCV20の使用拡大も見込まれています。60〜64歳で日常生活が著しく制限される基礎疾患を持つ方も定期接種の対象となるなど、対象範囲も見直されました。また、プレベナー15(PCV15)やプレベナー20(PCV20)も成人のハイリスク者への利用が進む方向です。さらに、複数の肺炎球菌ワクチンを適切に組み合わせる「Life-course immunization」戦略が強調されています。
出典:厚生労働省「高齢者の肺炎球菌ワクチン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/pneumococcus-senior/index.html
日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=56
最新の知見・ニュース
日本でも今後、PCV20など新しいワクチンの導入が検討されています。ワクチンの普及により、ワクチンがカバーしていない血清型による感染症が増加する「血清型置換」が課題となっており、引き続き動きを注意深く見ていくことが大切です。
肺炎球菌ワクチンに関するよくある質問
いつから接種できますか?
ニューモバックスNP(PPSV23)の接種は、基本的に65歳の誕生日を迎えた年から可能です。さらに、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能障害があり日常生活が極度に制限される方や、免疫機能障害がある方も接種対象となります。2024年4月以降の定期接種はこの65歳以上の方が中心となっています。
何回接種すればいいですか?
基本はニューモバックスNPを1回接種します。接種から5年以上経過した場合、必要に応じて再接種することがあります。再接種は通常1~3回程度行われるケースが多いです。
何年ごとに接種すればいいですか?
PPSV23(ニューモバックスNP)は1回の接種で5年以上効果が持続するとされています。再接種は5年以上あけて任意接種として行います。
インフルエンザワクチンと同時に接種できますか?
可能です。高齢者や基礎疾患のある方は同時接種が推奨される場合もあります。
すべての肺炎を防げますか?
いいえ。肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による肺炎や感染症の重症化を防ぎますが、他の原因による肺炎やすべての肺炎球菌型を完全に防ぐことはできません。
副反応が心配ですが、安全ですか?
一般的な副反応は軽度で数日中に消失しますが、まれに重篤な副反応も報告されています。不安な場合は医師に相談してください。
肺炎球菌ワクチンを接種した後、どのくらいで効果が現れますか?
通常、接種後2~3週間ほどで十分な免疫がつきはじめます。
ご予約から接種後の流れ
- ご予約
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- ・ワクチン仮申込フォームを入力し送信してください。 24時間以内(土日・祝日を除く)に、当院からお電話もしくはメールでご連絡を差し上げ、ご予約確定となります。 ※英文証明書をご希望の場合、来院希望日時は申込日から5日後以降の日程をご選択ください。
- ・事前に接種を希望されるワクチンの問診票を下記よりダウンロードしていただきご記入ください。
- ご来院・接種
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●お持ち物 問診票・母子手帳・接種証明書・ワクチン手帳(ある方)
- ・37.5度以上の発熱があるなどの体調不良時には予防接種を受けることができません。
- ・当院以外でも予防接種をおこなう場合は、ワクチンの接種間隔にご注意ください。
- 接種後
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- ・接種後15~30分間は体調変化の経過観察をしてください。
- ・次回のワクチン接種予定がある方は、接種計画(ワクチンの種類・スケジュール)を確認してからご帰宅ください。
- ・接種当日の激しい運動は避けてください。
- ・シャワーや入浴は可能ですが、長風呂は避けてください。
- ・1週間以内に接種部位が赤くなったり痛みが出たりなど、何らかの副反応が生じる場合がありますが、ほとんどの場合は数日以内に自然に軽快します。 日常生活に支障をきたすような症状がある場合、気になる症状がある場合は、当院までお問い合わせください。
注意事項 ※必ず事前にご確認ください。
- ●初回は必ずワクチン仮申込フォームでの事前お申し込みが必要です。 下記「ワクチン仮申込フォーム」をご入力ください。
- ●原則、事前のワクチン確保が必要なため、完全予約制です。 当日の接種をご希望の場合は事前に当院へご連絡ください。
- ●英文証明書をご希望の場合、事前に当院での対応可否を確認しております。 ワクチン仮申込フォームより英文接種証明書をご希望いただき、別途事前にFAXにて記載箇所を明示の上ご送付ください。
- ●証明書は発行までに数日程度お時間をいただく場合もございますのでスケジュールに余裕をもってお問い合わせください。
- ●無断キャンセルはキャンセル料を頂く場合がございますので、予約のご変更はお早めにお電話くださいませ。
- ●中学生以下の方の接種は、小児科医不在のためお断りしております。
- ●高校生~未成年(20歳未満)の方の接種には保護者同席をお願いしております。
問診票について
予防接種時には問診票の記入が必要です。事前に下記より問診票をダウンロードし、ご記入の上お持ちいただくと当日スムーズにご案内可能です。
(当日の状況次第では、お待ち時間が発生する可能性がございます。)
未成年の方の予防接種には、保護者の方の同意が必要です。
保護者の方が予防接種時に付き添えない場合には、事前に問診票をダウンロードしていただき、保護者の方のサインをご記入の上ご持参くださいませ。
医師問診の際に、保護者の方にオンラインでお繋ぎいただくことによって未成年の方は予防接種可能となります。
※医師の判断により、予防接種を中止することがございます。
あらかじめご了承ください。
各種証明書
証明書の種類と料金
証明書の種類 | 料金 |
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当院書式【日本語】 | 3,300円(税込) |
予診票コピー【日本語】 | ― |
領収書【日本語】 | ― |
当院書式【英語】 | 5,500円(税込) |
当院以外の指定書式【英語※事前相談必須】 | 5,500円(税込) |
「国際基準」のワクチン接種記録手帳

当院で接種されたワクチンについては、WHO(国際保健機構)の手帳に記載いたします。 1冊あたり3,300円(税込)です。
各院の診療時間・アクセスは
下記よりご確認ください。