脂肪変性とは?種類や症状、原因と予防方法をわかりやすく解説

  • クリニックブログ
2025/01/24

脂肪変性とは?種類や症状、原因と予防方法をわかりやすく解説

体内の組織に脂肪が過剰に蓄積される「脂肪変性」は、肝臓や筋肉など、様々な部位で起こる可能性があります。現代社会では生活習慣の乱れやストレスの増加により、脂肪変性のリスクが高まっています。
 
脂肪変性は早期発見と対策が重要です。進行すると肝臓では肝硬変や肝がんのリスクが高まり、筋肉では姿勢の維持が困難になるなど、様々な健康問題につながる可能性があります。また、糖尿病や高血圧といった生活習慣病とも密接な関係があることがわかっています。
 
この記事では、脂肪変性の種類や症状、原因から予防方法まで、詳しく解説していきます。自分の健康を守るために、ぜひ理解を深めていただければと思います。

 
 

脂肪変性の種類

体内の組織や細胞に脂肪が過剰に蓄積される脂肪変性は、様々な臓器で発生する可能性があります。通常、脂肪は皮下組織などの特定の場所に蓄積されるものですが、異常な状態では本来脂肪が存在しない、あるいは少ない場所にも蓄積されてしまいます。これは体の異常のサインとして捉える必要があり、早期発見と対策が望まれます。
 

肝臓における脂肪変性

肝臓の脂肪変性は、肝細胞の5%以上に中性脂肪が蓄積した状態を指します。肝臓は通常、体内の脂質代謝において重要な役割を果たしていますが、過剰な脂肪が蓄積されると、その機能が低下してしまいます。
 
 

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この状態が続くと、一部の患者では炎症が起き、肝細胞が風船のように膨らんで弱ってしまいます。さらに進行すると、壊れた肝細胞を修復しようとして線維化が始まり、最終的には肝硬変や肝がんに発展する恐れがあります。日本では約2000万人が脂肪肝に罹患していると推定され、そのうち約25%が炎症を伴う状態に進行すると考えられています。
 

心臓における脂肪変性

心臓の脂肪変性は、主に不整脈源性右室心筋症として知られる深刻な病態です。これは、心筋組織が脂肪組織に置き換わり、特に右心室から変性が始まる進行性の疾患です。発症頻度は5000人に1人程度で、30歳前後の若年層での発症が目立ちます。
 
心筋が脂肪化することで心臓の拡大や収縮機能の低下が起こり、心室頻拍や心室細動などの命に関わる不整脈を引き起こす可能性があります。また、病状が進行すると心不全を併発することもあります。
 

筋肉における脂肪変性

筋肉の脂肪変性は、運動不足や加齢により筋肉組織が脂肪に置き換わる現象です。特に抗重力筋(姿勢維持筋)で起こると、姿勢の維持が困難になることがあります。また、骨格筋への脂肪蓄積はインスリンの働きを低下させ、糖尿病のリスクを高める要因となります。
 
 

脂肪変性の症状

脂肪変性は自覚症状が乏しいですが、体内の様々な部位で起こる変化は、長期的には健康に深刻な影響をもたらす可能性があります。各部位での症状を理解し、早期発見につなげることが大切です。体調の変化に気を配り、小さな違和感も見逃さないようにしましょう。
 

初期段階の症状と気づきにくさ

脂肪変性の初期段階では、ほとんど自覚症状がありません。肝臓の脂肪変性では、疲労感や腹部のわずかな不快感が生じる程度です。筋肉の脂肪変性では、徐々に力が入りにくくなったり、姿勢が維持しづらくなったりしますが、加齢による体力低下と混同されやすいため、気づかないうちに進行することがあります。自覚症状がないからといって安心せず、定期的な検査で状態を確認することが望ましいでしょう。
 

進行した場合の典型的な症状

脂肪変性が進行すると、より明確な症状が現れ始めます。肝臓では、肝機能の低下による倦怠感や食欲不振、腹部の膨満感などが生じます。筋肉の脂肪変性が進むと、特に首や背中の筋肉では、姿勢の維持が困難になり、首下がり症などの症状が現れ始めます。また、腰部の筋肉が影響を受けると、腰痛や歩行時のふらつきなどが表れ、日常生活に支障をきたすようになることもあります。
 

見逃しやすい症状とチェックポイント

脂肪変性の初期症状は非常に軽微で、日常的な体調の変化と区別がつきにくいものですが、サインが無いわけではありません。主な症状をまとめました。
 

部位 日常生活での気づきやすい症状
肝臓
・右上腹部のもたつき感
・食後の胃もたれ
・疲れやすさ
・だるさが取れにくい
筋肉
・階段で手すりが必要になった
・椅子から立つ時に膝に手をつく
・長時間の同じ姿勢で首や腰が疲れる
・背筋を伸ばしていられない
心臓
・少し早歩きで息が切れる
・寝返り時のめまい
・夜間の急な息苦しさ
・階段昇降での疲労感が増えた

 

これらの症状は、一つだけでは必ずしも脂肪変性を意味するわけではありません。しかし、複数の症状が重なる場合や、症状が継続する場合は、医療機関での検査を検討すると良いでしょう。また、自覚症状がなくても、定期的な健康診断を受けることで、早期発見につながります。
 
 

脂肪変性の原因

脂肪変性は増加傾向にあります。その背景には、食生活の欧米化や運動不足、加齢による代謝の変化など、複数の要因が絡み合っています。また、遺伝的な要因や基礎疾患の影響も無視できません。
 

不適切な食生活

脂肪変性の主要な原因の一つは、食生活の乱れです。過剰なエネルギー摂取は、体内で余分な脂肪として蓄積されます。油物の摂取過多だけでなく、糖分や炭水化物の過剰摂取も脂肪変性を引き起こす可能性があります。
 

 
体内では、余分な糖質が中性脂肪に変換され、肝臓などの臓器に蓄積されます。清涼飲料水や果物の過剰摂取も、果糖の過剰摂取につながり、脂肪変性のリスクを高める要因となります。
 

運動不足と生活習慣

運動不足は脂肪変性を引き起こす大きな要因です。特に筋肉の脂肪変性には、運動不足が直接的に影響しており、筋肉を使わない状態が続くと、筋組織が脂肪組織に置き換わっていきます。
 
また、不規則な生活リズムや睡眠不足、過度なストレスなども、体内の代謝バランスを崩す原因となります。同じ姿勢での長時間作業も、特定の筋肉への負担を増やし、その部位の脂肪変性を促進する可能性があります。
 

遺伝的要因

脂肪変性には遺伝的な要因も関係します。特に非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)では、PNPLA3という遺伝子の影響が知られています。この遺伝子が働きにくい遺伝子型を持つ人は、日本人では約30%存在すると推定され、肥満でなくても脂肪肝を発症する可能性があるため、日本人のNAFLD患者の約20%が非肥満者であることの一因となっています。
 

基礎疾患や薬剤の影響

 

 
脂肪変性は、様々な基礎疾患や薬剤によっても引き起こされます。
 
糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は、脂肪変性のリスクを高めます。例えば肝臓では、糖尿病患者の血糖コントロールが不良な期間が長いほど、肝臓の脂肪変性が進行しやすくなることが知られています。また、ステロイド薬やタモキシフェンなどの特定の薬剤も、肝臓での脂肪変性を引き起こす可能性があります。
 
 

脂肪変性を予防する方法

脂肪変性の予防には、日常生活における継続的な取り組みが欠かせません。一時的な対策だけでなく、長期的な視点での生活習慣の改善が必要です。体重管理、運動習慣の確立、食生活の見直しなど、複数のアプローチを組み合わせると、より効果です。また、定期的な健康診断で早期発見することも大切です。
 

バランスの良い食事のポイント

食事改善では、極端な制限をするのではなく、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。過剰なカロリー摂取を避けながら、必要な栄養素を十分に摂取します。
 
緑黄色野菜からのビタミンやミネラルの摂取に加えて、食物繊維も十分に摂取しましょう。食物繊維には、満腹感を高め、糖質の吸収を緩やかにする働きがあり、肝臓への負担を軽減します。
 
清涼飲料水や果物などの糖分には注意が必要です。
 

日常生活に運動を取り入れるコツ

 

 
運動は週に150分以上行うことが望ましいとされています。ただし、一度に長時間行う必要はなく、1日5分や10分の運動から始めるとよいでしょう。有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで、より効果が期待できます。腰や膝に問題がある場合は、椅子に座って行う上半身の運動から始めるのもよいでしょう。
 

定期的な健康診断の重要性

脂肪変性は初期症状が乏しいため、定期的な健康診断による早期発見が非常に大切です。特に肝臓の脂肪変性は、通常の血液検査だけでは見逃される可能性があるため、腹部超音波検査を受けると良いでしょう。超音波検査では、脂肪の蓄積により肝臓が白く映し出され、正常な肝臓との違いを確認できます。
 
また、最新の超音波装置では、脂肪化の程度を数値で示すことも可能になってきました。健診結果で異常を指摘された場合は、早めに専門医への相談を検討しましょう。
 
 

まとめ

脂肪変性は、現代社会において増加傾向にある健康課題です。特に肝臓や筋肉における脂肪変性は、生活習慣病との関連が強く、放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
 
しかし、適切な生活習慣の改善により、予防や改善が可能な状態でもあります。食事のバランスを整え、適度な運動を習慣化し、定期的な健康診断を受けることで、脂肪変性のリスクを低減できます。
 
脂肪変性は誰にでも起こりうる可能性がありますが、正しい知識と予防的な取り組みにより、健康的な生活を維持することができます。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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