肺結核とはどんな病気?疾患の概要や治療方法について解説します

  • クリニックブログ
2024/09/20

肺結核とはどんな病気?疾患の概要や治療方法について解説します

 

 

肺結核は「昔に流行した疾患」というイメージがあるかもしれません。
しかし、日本でも年間で1万人以上の方が新たに結核と診断されるなど、現在でも患者数が少ないとはいえない疾患です。
 
今回の記事では、結核の原因や診断・治療方法などについて解説していきます。

 
 

肺結核ってどんな病気?

病名自体の認知度は高い結核ですが、どのように感染・発症する疾患なのでしょうか。
また、感染力は強いのでしょうか。
まずは、疾患の概要と主な症状についてみてみましょう。

肺結核の原因は?どのように感染する?

肺結核の原因は「結核菌」という細菌による感染症です。
細菌の中には虫に媒介されるものや皮膚の表面でも繁殖するものなどがありますが、結核菌は基本的に感染した方の体内にのみ繁殖します。
 
体内で繁殖した菌が咳などにより体外へ排出された際に、その菌を他者が大量に吸い込むと菌が肺胞のなかで繁殖し感染に至ります。
 

肺結核になるとどのような症状が出る?

咳や痰・微熱・倦怠感・寝汗・体重減少などが代表的な症状です。
いずれも特異的な症状ではなく、風邪を引いた際に見られる感冒症状と似ています。
 
風邪と異なる点としては、のどの痛み・鼻汁はあまりみられないことが挙げられます。
また、症状が2週間以上続く・血痰がみられるなどの場合も医療機関に相談することをおすすめします。
 
 

 血痰についてはこちら

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肺結核はうつりやすい?患者数はどれくらい?

感染経路は飛沫感染・空気感染です。
患者さんが咳やくしゃみをした瞬間だけでなく、空気中を細菌が漂っているあいだは菌を吸い込んで感染する可能性があります。
そのため、感染者数自体は減少傾向にあるものの、まだまだ少ない疾患とはいえません。
 
ただし、感染しても発症することが少ない疾患です。
感染者のうち、感染から1年以内に発症する方は10%前後とされています。
残りの約80~90%の方は、生涯のうちに発症しないことが多く、一部は高齢になり免疫力が下がったタイミングなどで発症することもあります。
 
患者さんの約半数は高齢者ですが、インターネットカフェ・ゲームセンターなど不特定多数が集まる場所での若い世代の感染例が増加しています。

 
 
 

肺結核の診断方法

診察では、まず実際に感じている症状のほかに結核患者との接触歴などを確認します。
ではその問診の結果、肺結核の疑いがあると判断された場合にはどのような検査を行うのでしょうか。

画像検査で分かること

肺の様子を確認するために、レントゲンやCT検査での画像診断を行います。
CT検査では病巣が空洞陰影・小結節陰影として写ることが多いですが、肺炎に似た画像となるケースもあり画像のみでの診断は難しいといえるでしょう。
 
 

 肺の結節影についてはこちら

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その他の検査にはどのようなものがある?

画像の診断に加えて行うのが、痰・気管支の洗浄液・胃液などの培養検査です。
分泌物・体液などに結核菌が存在するか確認することで診断が確定します。

 
 
 

肺結核の治療

以前は根治が難しいとされた時期もありましたが、早期に治療を始めれば治癒する可能性が高い疾患となっています。
では、実際に診断されてからはどのような治療が始まるのでしょうか。

内服薬での治療が中心

治療の中心は、抗菌薬を使用した薬物療法です。
複数の薬を併用し、効果や副作用を観察しながら薬の内容を調整する場合が多いでしょう。
 
肺結核の治療期間中に治療を中断すると、結核の再発や薬剤耐性菌の発生などが懸念されるため、治療計画を正確に守ることが重要です。
 

外来の通院で治療できる?

治療には少なくとも半年ほどを要するため「その間ずっと入院していなければならないのだろうか」と心配している方もいらっしゃるでしょう。
 
排菌の状況や全身状態によりますが、薬による治療で菌の活動が停止すれば、治癒する前であっても通院での治療に切り替えることが可能です。
 

入院が必要になるのはどのような場合?

感染が確認されても菌の排出がない状況であれば通院で治療できる疾患です。
しかし、下記のようなケースでは入院が必要となります。
 

  • ●感染力のある菌が排出されている場合
  • ●喀痰のなかに菌が確認された場合
  • ●培養検査・PCR検査陽性で呼吸器症状がある場合
  • ●大量排菌が予測される場合
  • ●多剤耐性菌が原因と考えられる場合

 
結核は2類感染症に該当するため、診断した医療機関から市町村の保健所への届出が必要です。
保健所は届出を受けて、患者さんへの入院指示・入院先の選定などを行います。
 

治療費には公的補助が使えることも

結核は、本人の希望に関わらず入院治療などを求められることがある疾患です。
そのため、居住区の保健所に所定の手続きを行い申請が承認されることで、症状・所得に応じた治療費の公的補助を受けることができます。
 
ただし、結核治療のために必要となった費用については、入院・通院ともに対象となりますが「結核の治療に必要な費用」以外は対象となりません。
たとえば、診断までに負担した費用・結核以外の病気に関する医療費などは補助の対象外です。

 
 
 

肺結核はどのような経過をたどる?治療後の生活は?

結核は治癒の可能性が高い疾患となりましたが、治療期間は長期にわたります。
先が見えず不安に感じる方もいるかもしれませんが、平均的な治療期間や経過について解説していきます。

結核の経過

診断後は、まず保健所が選定した医療機関に入院することが多いでしょう。
治療の中心は薬剤療法で、内服を始めて感染力がないと判断されれば、治療中であっても通院での治療が可能です。
平均的な入院期間は2ヶ月程度とされています。
 
しかし、退院してからの期間も含めると、治療全体にかかる期間は少なくとも半年程度かかります。
また、薬の副作用がみられたり多剤耐性菌の可能性が考えられたりする場合には、薬の調整を繰り返すこともあり治療に数年間を要するケースもあります。
 

 

生活上の注意点

診断後、内服を始めると菌の活動が抑えられ、症状は比較的早期に落ち着くことも多いです。
しかし、内服を忘れたり自己判断で中断したりすることは、再発のリスクを高めるだけでなく薬剤耐性菌を発生させることにもつながります。
 
そのため、症状をあまり感じなくなった後も決められた時間・期間を守って薬をしっかりと飲み続けることが重要です。
また、確率は低いですが治癒後でも再発することがあります。
再発した場合に早期発見・治療ができるよう、治癒後も定期的な受診を続けていきましょう。
 

結核は予防できる?

結核は、感染から発症まで数年間かかることもあり、また進行が緩やかなため患者自身も発症に気が付いていない可能性があります。
そのため、感染する前の乳児期にBCGの接種を受けることが有効な予防方法となります。
 
加えて、感染しても免疫力が正常に機能している方では発症する確率がかなり低い疾患です。
そのため、規則正しい生活・健康的な食習慣・運動習慣などを心がけて免疫力を上げることが発症予防となるでしょう。
 
さらに「自分が感染しているかも」と感じたら、可能な限り早期に受診して治療を始めることが周囲への感染予防となります。

 
 
 

まとめ

かつては命にかかわる疾患だった「肺結核」ですが、現在は薬の開発なども進み、早期に発見・治療することで完治を目指すことができる疾患となりました。
 
ただし、効果的な治療を行うためには、早期に治療を開始することや、医師の指示に従い根気強く内服を続けることが重要です。
 
もし「肺結核かも?」と感じる症状に気付いたら、まずは呼吸器を専門とする病院を早めに受診することをおすすめします。

 
 

 
 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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