食欲不振の原因とは?症状・治療法とあわせて徹底解説!
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食欲不振の原因とは?症状・治療法とあわせて徹底解説!
「食欲不振になる原因はなに? 病気が関係していることもある?」
「食欲不振が続いているけど治療受けたほうがいいのかな?」
食欲不振は誰にでも起こりえる症状で、一過性のものであることは少なくありません。
しかし、なかには重篤な病気が潜んでいることもあります。
本記事では、食欲不振の原因、症状や治療法について解説します。
食欲不振の症状とは?
食欲不振とはどのような状態なのか、続いた場合どうなるのか、症状について解説します。
食欲不振とは?
食欲不振は、食べ物を摂取したいという生理的な欲求が低下したり喪失したりした状態です。食欲低下、食欲減退、食思不振といった呼ばれ方もします。
原因は、病気や食生活、薬の副作用などさまざまです。放置すると症状は徐々に進行し、命に関わるケースもあるため、早めに対処しましょう。
食欲不振が続いた場合どうなるの?
食欲不振により十分な食事ができない状態が続くと、栄養状態が悪くなりさまざまな不調があらわれます。
たとえば、鉄分が不足すると貧血症状が出たり、ビタミンDが不足すると骨粗しょう症を招き骨折しやすくなったりします。また、亜鉛や銅などのミネラル類の不足は、食欲不振を悪化させる要因です。
食欲不振は、食べていないにもかかわらず食欲がわかない状態なだけであり、けっして食べなくてもいいという訳ではありません。健やかなからだを保つためにも、食事による栄養摂取は欠かせないのです。
食欲不振の症状について
「有害事象共通用語規準v4.0 日本語訳JCOG版」では、食欲不振の症状をグレード1からグレード5に分類しています。グレード1は軽症に該当し、グレードが上がるにつれて症状が進行していると判断します。グレード4になると命を落とす危険性があり、最終段階のグレード5は死亡した状態です。
グレード1:軽症
食生活に変化をもたらすほどの症状ではない場合に該当します。
「なんとなく食欲がわかない」と感じる程度です。
グレード2:中等症
著しい体重減少や栄養失調はみられないけれど摂食量に変化がある場合に該当します。
経口栄養剤による栄養補給を必要とする程度です。
グレード3:重症だが命には別状なし
著しい体重減少や栄養失調がみられるけれど、命には別状ない場合に該当します。
具体的にはカロリーや水分が不足している状態です。
静脈内輸液、経管栄養、中心静脈栄養を必要とします。
グレード4・5:生命の危機
グレード4は、命を落とす可能性があり、危険な状態である場合に該当します。
さらにグレード5まで進行すると、命を落とします。
コロナ禍による神経性食欲不振症とは
コロナの流行により、子どもの神経性食欲不振が増加していることが、子どもの心の実態調査によりわかりました。
2020年度では、神経性食欲不振症による初診患者数が約1.6倍、新入院患者数が約1.4倍増加しており、コロナ禍による不安やストレスが関連している可能性が示唆されています。
また、2021年度に行われた子どもの心の実態調査でも、男女ともに減少は見られず高止まり状態です。
食欲不振の原因について
食欲不振の原因は、大きく精神的要因と病的要因に分類できます。
ただし、短期間であらわれる食欲不振は急性疾患、慢性的な食欲不振はエイズやがん、臓器不全などの基礎疾患により発症するのが一般的です。
病気による原因
食欲不振の症状がよくみられる代表的な疾患は、以下のとおりです。
- ●胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- ●甲状腺機能低下症
- ●感染性胃腸炎
- ●うつ病
- ●慢性腎臓病
- ●がん
食欲不振との関連や主な症状、原因を解説します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸が慢性的な炎症や消化酵素、胃酸の刺激で欠損やただれが起きている状態です。
主な原因には、ピロリ菌感染やストレス、非ステロイド系の解熱鎮痛剤の使用などがあります。
主な症状は吐き気や嘔吐、痛み、胸焼けですが、閉塞(胃の出口や十二指腸が狭くなる)を起こすと、食欲不振があらわれるケースがあります。
甲状腺機能低下症(橋本病)
甲状腺ホルモンの分泌が低下する疾患が原因であらわれる症状です。
主な原因は、甲状腺を攻撃する自己抗体を作り出す「橋本病」です。
甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、新陳代謝の低下や肝臓機能が低下し、食欲不振やむくみ、脱毛などさまざまな症状を引き起こします。
胃腸炎
胃腸炎は、胃腸がなんらかの原因で粘膜炎症を起こしている状態です。
原因はウイルスや細菌の感染、寄生虫、薬の副作用、水銀などの化学的毒性物質などがあります。また、酸性の食材であるトマトや柑橘類の食べ過ぎが原因となることもあり、注意が必要です。
典型的な症状は下痢や吐き気、嘔吐、腹痛ですが、食欲不振を伴うケースがあります。
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うつ病
うつ病は、セロトニンやノルアドレナリンが減少し、精神の不安定や無気力といったうつ症状を起こす精神疾患です。
うつ病の原因となるものはさまざまあり、ペットや家族の死、パートナーとの別れ、仕事がうまくいかないなどの深い悲しみやショック、過度なストレスが挙げられます。
典型的な症状は、食欲不振、睡眠障害、興味の喪失、喜びの感情が湧かない、集中力や思考力の低下などです。
慢性腎臓病
慢性腎臓病とは、慢性的な腎機能の低下や尿タンパクが継続的に排出される病気です。
進行すると末期腎不全となり、人工透析や腎移植をしなければなりません。
発症原因は、糖尿病や高血圧、高尿酸血症などの生活習慣病、喫煙といった生活習慣に関連しています。
慢性腎臓病の初期はほとんど自覚症状がありませんが、進行すると食欲低下やむくみ、全身の倦怠感などがあらわれます。
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がん
がんによる食欲不振は、大きく分けて2つのパターンがあります。
- ●がんそのものが食欲不振を起こすケース
- ●治療の副作用が食欲不振を起こすケース
消化器官や膵がん、肺がんをはじめとするすべてのがんで、食欲不振があらわれる可能性があるため、少しでもおかしいと思ったら病院を受診しましょう。
また、抗がん剤や手術、放射線治療など、治療の副作用により食欲不振になる可能性があります。
病気以外の原因
病気以外でも、以下のような理由により食欲不振を起こすケースがあります。
- ●ストレス
- ●加齢
- ●生活習慣の乱れ
- ●過度なアルコール摂取
食欲不振を招くメカニズムや原因を解説します。
ストレス
継続的に精神的なストレスを感じると、うつ病になったり摂食中枢の機能が低下したりして食欲を感じにくくなります。
食欲不振のほかに、睡眠障害や気分の変化がみられる方はストレスが溜まっている可能性があるでしょう。
加齢
加齢によって食欲不振を招くメカニズムは以下のとおりです。
- ●嚥下機能の低下
- ●味覚・嗅覚の低下
- ●消化器官の疾患
- ●消化器官の機能低下
嚥下機能が低下により持続的に1回の食事量が減ると、食欲低下に繋がるケースがあります。
また、味覚・嗅覚の低下は脳に刺激がいかなくなるため食欲が低下すると考えられています。
消化器官の疾患や老化による消化器官の機能低下は、消化に時間がかかり満腹感が続くことが食欲不振の原因の一つです。
過度なアルコール摂取
過度なアルコール摂取を習慣にすると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、アルコール性肝障害を起こし、食欲不振を起こすことがあります。
アルコールそのものは「食前酒」という食事前にお酒を飲むことで、消化酵素の分泌が促され食欲増進につながることが知られています。
ただし、飲み過ぎは食欲不振を招く疾患の原因となるため、摂取量には注意が必要です。
食欲不振が見られる場合の検査方法と治療法
食欲不振の症状がみられる場合の検査方法と治療法を解説します。
検査方法
食欲不振がみられる場合は、機能の低下または疾患が原因なのかをはっきりさせるため、次のような検査を行います。
- ●血液検査
- ●嚥下造影検査
- ●レントゲン検査
- ●CT検査
- ●胃・大腸カメラ検査
- ●超音波検査 など
上記すべてを行うわけではなく、医師が必要に応じて選択し検査を行います。
治療法
食欲不振の治療法は大きく分けて2つです。
- ●疾患に沿った治療
- ●生活習慣を整える
それぞれで行われる治療内容と必要性を解説します。
疾患に沿った治療(病気が原因である場合)
食欲不振の原因は、がんや消化器潰瘍、うつ病、甲状腺機能低下症などがあります。
各疾患によって治療方法は異なるため、原因を明らかにしたうえで内服治療や手術療法、放射線治療などを行います。
生活習慣を整える
ストレスが原因である場合は、ストレスを定期的に発散することが大切です。
加えて、生活習慣を整えることは自律神経のバランスを整えることにつながり、自律神経の乱れで起こった胃腸機能の低下による食欲減退にも効果があります。
自分でできる対処法
食欲不振を起こしている場合、消化器官が弱っているケースが多いため、胃腸をいたわりましょう。
たとえば、唐辛子などの香辛料、酢の物といった刺激物を食べない、消化にいいものを食べるなどです。
消化にいいものは以下があります。
- ●おかゆ
- ●脂肪が少ない鶏肉・豚肉・牛肉
- ●キャベツやほうれん草などの緑黄色野菜
- ●りんご など
消化に悪いものは、以下のとおりです。
- ●食物繊維の多いごぼう、きのこ類、コーンなど
- ●脂肪の多いベーコン、ハム、バラ肉
- ●固いもの
- ●スパゲティー、焼きそば、玄米 など
食欲不振が落ち着くまで上記を参考に食材を選びましょう。
まとめ
食欲不振は、精神的要因と病的要因によっておこります。
自己判断をすると、実は病気が原因だったということもありますので、早めに病院に受診しましょう。
MYメディカルクリニックでは、消化器外来を受け付けております。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師