LSILと診断されたら?報告数やがんの可能性、治療法を解説
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LSILと診断されたら?報告数やがんの可能性、治療法を解説
「LSILと診断されたら、これからどうなるの?」
「がんの可能性はどのくらい?」
LSILと診断され、このような不安を抱えていませんか?
結論からお伝えすると、LSILの状態でがんである可能性は極めて低いです。ただし、今後の経過でがんになるリスクはあります。
本記事では、LSILがどのような状態でこれからどうなっていくのかを解説します。
LSILとは?子宮頸がんになることはある?
LSILとはどのような状態なのか、報告数、子宮頸がんになる可能性と経過について解説します。
LSILについて
検査の結果、軽度の扁平上皮病変が見受けられHPV感染が疑われる状態です。具体的にいえば、細胞の状態を顕微鏡で見ると、異常形成や「コイロサイト」と呼ばれる細胞周辺の空洞化や核異型を併せ持つ状態になっています。
判定区分はC1であり精密検査が必要ですが、現在の状況が子宮頸がんというわけではありません。
LSILの報告数
「東京産婦人科医会との協力による子宮がん細胞診」によると、2016年に実施された子宮がん細胞診の結果、LISLとそれに相当する症状があることが発表されました。
468例中、異形成が認められたのは74.6%に相当する349例でした。前年度は66.3%であるため、8.3%増えています。LSILに相当する軽度異形成は、57.7%に相当する270例で見られ、そのうち上皮内腺がんが1例見受けられました。
(出典: 東京産婦人科医会との協力による子宮がん細胞診「子宮がん精密検診センターの実施成績」https://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/nenpo/pdf/2023/24.pdf)
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がんになる可能性とがんまでの経過
LISLがこれからがんになる可能性は、極めて低いといえるでしょう。
理由は、HPV感染を起こしても9割は一過性であり、完治する可能性があるためです。正常に免疫機能が働いていれば、2年以内にHPVが排除されます。
しかし、1割の確率でウイルスが消滅せず持続感染を起こし、がんまで進行する可能性があります。つまり、低悪性度の扁平上皮内病変であるLISLは、扁平上皮がんになる前段階といえるのです。
LISLからHPVのDNAが組み込まれたHSILに進み、がんを抑制する遺伝子の不活性化が進むとがんへと進行します。
LSILを発症する原因と感染経路
LSILを発症する原因と、原因となるウイルスの感染経路について解説します。
発症原因であるHPVとは
HPVは、Human(ヒューマン)papillomavirus(パピローマウイルス)の略称です。
このウイルスは100以上もの種類があり、粘膜感染するタイプと皮膚感染するタイプとに分類されます。そのうち一部のHPVが、子宮頸がんを引き起こすリスクがあるのです。
がんと関連性があることから、低リスク型と高リスク型に分けられています。
例えば、尖圭コンジローマを引き起こすHPVは低リスク型、子宮頸がんを引き起こすHPVは高リスク型に分けられます。なお、高リスク型は31、33、35、52、58など10種類以上あり、特にがん化しやすいのは16、18の2つです。
婦人科検査 結果表の見方についてはこちら
感染経路
子宮頸がんを起こすHPVの感染経路は、主に性交渉です。一度性交渉を経験したことがある方であれば、ほとんどの確率で感染しているといわれており、その確率は50%以上とされています。
性行為などの性的な接触回数が多いほどリスクが高まるため、コンドームなどの避妊器具を使用すれば感染リスクは抑えられます。
しかし、ピルの服用では感染を抑制できないので注意が必要です。
LSILと診断されたらどうすればいい?治療法は?
もし、LSILと診断された場合、どのように過ごしていけばよいのでしょうか。
治療法と併せてお伝えします。
基本的に経過観察
LSILと診断された場合は、急いで治療する必要性がないため基本的に経過観察で様子を見ることになります。それは、ウイルスが進行することがほとんどなく、多くが自然に消滅するためです。
しかし、1年半程度経過観察を続けて改善が見られない場合は治療することもあります。
治療を必要とする場合について
治療を必要とするケースに該当するのは、進行したHSILが持続する場合です。HSILに進行し病変が持続する場合は、がんへの進行を防ぐため手術によって治療を行います。
手術の方針としては、子宮を温存する必要性がないと診断された場合は子宮を全摘出します。
とはいえ、近年の症例としては「円錐切除」と呼ばれる術式が適用されることが増えていますので、過度に心配する必要はないでしょう。
LSILの治療法の種類
LSILの治療法の種類は以下の3つです。
- ●レーザー蒸散
- ●円錐切除
- ●単純子宮全摘
治療法の特徴と、適用される症状を解説します。
治療法①レーザー蒸散
レーザー蒸散とは、軽度から中程度までの異形成に適用される治療法です、局所麻酔を行ってから手術します。
適用できるのは、明らかに進行していない症状にのみです。
病巣部分を蒸発させるため、中程度以上に適用させると浸潤がんを見落とすリスクがあるためです。
上皮内がんが疑われる場合は、LEEP切除+レーザー蒸散という術式で手術を行います。
治療法②円錐切除
脊髄麻酔を行ってから病原がある箇所を円錐形に切除する手術法です。
病理検査もできるため、悪性なのか良性なのかを診断することもできます。
ただしデメリットもあり、頸部の一部を喪失するため妊娠や出産のリスクが若干高まります。
また、100%除去できないこともあり、そのような場合は手術後に追加で治療が必要です。
治療法③単純子宮全摘
単純子宮全摘とは、一部ではなく子宮の全部分を摘出する手術です。
全身麻酔で行う大きな手術のため、1週間程度の入院が必要です。
全摘方法は、腹腔鏡手術、開腹手術、膣からアプローチする術式があります。
子宮頸がんのリスクはなくなりますが、妊娠や出産ができないのがデメリットです。
子宮頸がんの予防法と治療法
子宮頸がんの予防法と、子宮頸がんに進行してしまった場合に行われる治療法について解説します。
予防法はワクチンの接種
がんの発症リスクを抑えるには、ワクチン接種が有効です。
HPVワクチンには不活化ワクチンがあり、定期接種として小学6年生〜高校1年生くらいまでに受けることが推奨されています。
定期接種ができなかった、1997年4月2日〜2006年4月1日生まれの女性を対象に2025年3月末までキャッチアップを実施しています。
治療法
子宮頸がんになってしまった場合、ステージによって手術療法で治療を行います。がんが進行した場合は、子宮頸部やリンパ節を広範囲に切除する「広汎子宮全摘出術」が行われます。しかし、術後合併症を起こすリスクが高い上に体へのダメージも大きいのがデメリットです。
まとめ
LSILと診断されて、恐怖を感じるかもしれません。しかし、がんに進行するまでに病変を見つけられたことは幸いといえます。
早期発見すれば、広汎子宮全摘出術を避けてリスクの少ない手術療法で治療できます。
婦人科の検診(子宮・卵巣)についてはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師