強くいきむのは危険!直腸粘膜脱症候群の原因・症状と治療・予防について解説

  • クリニックブログ
2024/05/01

強くいきむのは危険!直腸粘膜脱症候群の原因・症状と治療・予防について解説

便がなかなか出なくて、排便時につい強くいきんでしまう人は多いかもしれません。しかし、その強いいきみが習慣化すると、直腸粘膜脱症候群という状態になる恐れがあります。「直腸粘膜脱症候群って何?」「直腸粘膜脱症候群になりやすい人は?」「直腸粘膜脱症候群は治療できる?」という疑問を持つ方は多いことでしょう。
 
そこで今回は、直腸粘膜脱症候群の原因や症状、直腸粘膜脱症候群になりやすい人の特徴、直腸粘膜脱症候群の治療法と予防について解説します。

 

直腸粘膜脱症候群とは

直腸粘膜脱症候群は、直腸の肛門付近にできる良性の病変を総称したものです。排便時に強くいきむことなどがきっかけとなり、粘膜脱が引き起こされます。直腸粘膜脱症候群は、隆起型・潰瘍型・平坦型の3種類に分類され、最も多いのは盛り上がりができる隆起型です。
 
直腸粘膜脱症候群が進行すると、頻便や残便感などの症状があり、出血することもあります。

 
 

直腸粘膜脱症候群の原因

直腸粘膜脱症候群が引き起こされる主な原因は、排便時の強いいきみです。日常的に強くいきむことを繰り返していると、直腸粘膜がたるんでしまって粘膜脱が引き起こされやすくなります。具体的には、無理ないきみにより恥骨直腸筋や外肛門括約筋が正常ではない収縮を起こしてしまうことで、粘膜が排便時に肛門管に押し付けられることが続くと、粘膜脱を起こしやすくなるようです。
 
また、加齢によって筋力が低下することも原因の一つと考えられます。骨盤を支える筋肉が衰えることで直腸が下がりやすくなって負担がかかり、直腸粘膜脱症候群になることもあります。

 
 

直腸粘膜脱症候群になりやすい人の特徴

直腸粘膜脱症候群は、20~30代男性に多い傾向にあるとされるものの、比較的幅広い年齢層で見られます。
 
排便時にいきみ癖がある人は、直腸粘膜脱症候群になりやすい傾向にあります。前述の通り、強くいきむことで粘膜がたるんでしまいやすくなるためです。粘膜がたるむと、残便感が出てすっきりしにくくなります。そのため、さらに強くいきむようになって粘膜のたるみが進むという悪循環が起こります。その結果として、粘膜の血流が悪化して隆起や潰瘍などができてしまい、直腸粘膜脱症候群になってしまうのです。そのため、いきみの力が強い20~30代男性に多く見られやすい傾向にあると考えられます。
 
また、生まれつき直腸を支える組織が弱い人、筋力が低下しやすい高齢者の人、便秘になりやすい女性(いきみやすい)なども、直腸粘膜脱症候群に注意が必要です。


 
 

直腸粘膜脱症候群の症状

直腸粘膜脱症候群になると、主に以下のような症状が出ます。
 

  • ● 残便感・頻便
  • ● 肛門からの出血
  • ● 肛門のかゆみ
  • ● 排便困難

 
前述の通り、残便感があるとさらにいきんでしまいやすく、直腸粘膜脱症候群を悪化させる可能性があります。また肛門のかゆみ・出血も放置すると悪化する可能性があります。そのため、違和感があればなるべく早く病院を受診することをおすすめします。


 
 

直腸粘膜脱症候群の検査と診断

まずは問診によりどのような自覚症状があるのか、排便時に強くいきむ癖があるかなどを確認します。その上でX線検査や内視鏡検査により、直腸粘膜脱症候群と思われる病変があるかを確認します。
 
また、隆起しているケースでは直腸がんやポリープ、潰瘍性のものは大腸がんや炎症性腸疾患などとの区別が難しいことがあります。そのため、粘膜の一部を採取して詳しく調べる病理検査を行うこともあります。


 

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直腸粘膜脱症候群の治療法

直腸粘膜脱症候群の治療では、まず保存療法を行います。保存療法とは、身体を傷つけることなく薬物・運動などによって症状の改善・緩和を目指す治療法です。簡単に言えば、手術以外の治療法のことです。
 
直腸粘膜脱症候群の治療では、その原因である「強いいきみ」の習慣を改善することが第一となります。たとえば、以下のようなことを行います。
 

  • ● 強くいきまないように心がける
  • ● トイレの時間を最小限に留める
  • ● 便秘薬で排便しやすくする

 
また、生活習慣や食生活の改善によって、便を出やすくするアプローチも行います。たとえば、食物繊維を多く摂取したり、睡眠をしっかり取ったり、毎日同じ時間に排便する習慣をつけたりするといったものです。生活習慣や食生活を改善することで排便がスムーズになれば、強くいきむ必要がなくなるため、結果的に直腸粘膜脱症候群の症状の改善につながります。
 
このように、さまざまなアプローチによって、便を出しやすくしたり、いきみ癖・習慣を改善したりすることで、直腸粘膜脱症候群の症状を改善・緩和させていきます。しかし、こうした保存療法によっても改善が見られない、または大きなポリープ状の隆起ができている場合は、外科手術による治療を検討することもあります。


 
 

直腸粘膜脱症候群の予防

それでは、直腸粘膜脱症候群を予防するにはどうしたらいいのでしょうか。直腸粘膜脱症候群の主な原因は排便時の「強いいきみ」です。つまり、強くいきまないようにすることが何よりも効果的な予防となります。直腸粘膜脱症候群の保存療法の繰り返しとなりますが、予防においても排便時にいきまないようにすることが大切です。そして、便秘にならないような生活習慣・食生活を心がけるようにしましょう。
 
また、筋力低下が直腸粘膜脱症候群の原因になることもあります。適度な運動や体操によって骨盤底筋を鍛えるのも予防には効果的かもしれません。


 
 

まとめ

直腸粘膜脱症候群は、強いいきみが原因で引き起こされる、肛門周辺の良性の病変です。肛門のかゆみや出血、残便感・頻便などの症状があります。残便感があることからよりいきみやすくなり、さらに直腸粘膜脱症候群を悪化させる悪循環に陥ることがあるため注意が必要です。
 
悪化することで、直腸粘膜脱、直腸脱といった状態にまで進行することもあり、手術する以外の治療が選択できなくなることもあります。気になる症状や違和感があれば、なるべく早く病院を受診しましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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