バレット食道とは?その原因・症状やなりやすい人と食道がんとの関係性について解説
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バレット食道とは?その原因・症状やなりやすい人と食道がんとの関係性について解説
「バレット食道」という言葉を聞いたことがある人はそれほど多くないかもしれません。バレット食道とは、食道の粘膜細胞が、胃の粘膜細胞と置き換わってしまうという状態です。バレット食道そのものに症状はありませんが、実は食道がんとの関係が指摘されています。「どうして置き換わるの?」「バレット食道になりやすい人は?」「治す方法を知りたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、バレット食道の原因や症状、バレット食道になりやすい人、バレット食道の治療法、バレット食道と食道がんの関係について解説します。
バレット食道とは
本来、食道の粘膜は扁平上皮という細胞によってできています。しかし、何らかの原因により扁平上皮が胃の粘膜細胞である円柱上皮に置き換わってしまうことがあります。バレット食道とは、この扁平上皮から円柱上皮に置き換わってしまった状態のことです。バレット食道の原因は逆流性食道炎とされ、胸焼けや吐き気、喉の違和感などの症状が見られます。
しかし、無症状の人も多くいます。バレット食道そのものは命にかかわるものではないとされるものの、食道がんとの関連性が指摘されています。そのため、バレット食道だとわかったら、定期的に検査を受けることをおすすめします。
バレット食道の原因
バレット食道とは、食道粘膜を多く扁平上皮から、胃の粘膜細胞である円柱上皮に置き換わる状態のことです。では、なぜそのような現象が起きてしまうのでしょうか。
バレット食道になる原因は逆流性食道炎であると考えられています。胃酸など胃の内容物が食道に逆流および停滞すると、食道の粘膜がびらんや潰瘍などの炎症を起こします。こうした炎症は次第に治癒しますが、その過程において食道粘膜を覆う扁平上皮ではなく、胃の粘膜細胞である円柱上皮に置き換わってしまうのです。
このようなことから、逆流性食道炎がバレット食道の主な原因とされているのです。
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バレット食道になりやすい人の特徴
バレット食道の主な原因は前述の通り、逆流性食道炎です。そのため、逆流性食道炎になっている人は、ほぼバレット食道になると考えられます。他にも、以下のようなリスク因子があるといわれています。
- ● 肥満傾向にある人
- ● 喫煙者
- ● 暴飲暴食してしまう
- ● 早食い・大食い傾向にある
- ● 脂っこい食事が好き
- ● アルコールが好き
- ● 辛いものなど刺激物が好き
- ● 喫煙をしている
- ● 食道裂孔ヘルニアである
他にもリスク因子として考えられるものはさまざまあります。
バレット食道の症状
バレット食道そのものには症状はないものの、その原因である逆流性食道炎による症状が出ることはあります。たとえば、胸焼け・吐き気・げっぷ・喉の痛みや違和感・食べ物が詰まる・呑酸(胃酸の酸っぱいものが喉や口にまで上がってくる)といったものです。ただし、無症状のケースも少なくありません。
バレット食道の検査と診断
バレット食道は逆流性食道炎が主な原因です。そのため、定期検診や逆流性食道炎で受診した際にバレット食道であることが発覚することが少なくありません。逆流性食道炎の場合は、その症状や問診によってある程度診断できます。しかし、バレット食道であるかどうかは、実際に身体の内部を診てみないことにはわかりません。
バレット食道かどうか確認するためには、内視鏡などを用いて胃や食道を検査します。食道に扁平上皮よりも赤みがある円柱上皮のようなものがある場合、組織を採取することでより詳しく調べます。また、バレット食道がんでないかどうかも検査により明らかにします。
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バレット食道の治療法
扁平上皮から円柱上皮に置き換わるバレット食道そのものを治す治療法はありません。バレット食道自体を治すような手術法も存在していません。そのため、バレット食道の治療では逆流性食道炎の症状を抑えるため、胃酸の分泌抑制や生活習慣の改善が中心で行われます。
たとえば、脂質や刺激物を摂りすぎないように食事改善をしたり、適度な運動により肥満を改善したりすることで、逆流性食道炎の症状を抑えます。他にも、禁煙する・アルコールを控える・食べた後にすぐ横にならない・早食いや大食いをしないといったことも効果的です。
また、胃酸を抑える効果のある薬を服用することもあります。
バレット食道とがんの関係性
バレット食道は扁平上皮から円柱上皮に置き換わってしまう状態のことであり、その状態そのものに症状はありませんし、生命にかかわることもありません。しかし、バレット食道は食道がんの発生母地(がんが最初に発生する場所)になる可能性があるとされています。バレット食道の人の罹患率はそれほど多くないとされているものの、ゼロというわけではないため注意が必要です。
バレット食道と食道がんはこうした関係性があることから、診断された場合は定期的な内視鏡検査の実施が推奨されます。粘膜内にとどまっている早期のがんは、リンパ節転移をしないとされています。つまり、食道がんを早期発見・早期治療できれば、大きな問題になることはありません。バレット食道といわれても過度に心配せず、まずは定期的な検査と経過観察を行っていきましょう。
まとめ
バレット食道は、食道を覆う扁平上皮という細胞が逆流性食道炎を主な原因として円柱上皮に置き換わってしまう状態のことです。バレット食道そのものに症状はありませんが、逆流性食道炎に伴う胸焼けや吐き気、喉の違和感、膨満感、げっぷが出るといった症状が出ることがあります。しかし、バレット食道であっても無症状である人も少なくありません。また、バレット食道そのものは改善できないため、治療は逆流性食道炎の症状を抑えることを中心に行います。
バレット食道で気をつけたいのは、食道がんの発生母地になる可能性があることです。バレット食道から食道がんが発生するケースはそれほど多くはありませんが、まったくのゼロではありません。そのため、バレット食道と診断された場合は、定期検診を受けることが大切です。食道がんを過度に不安がる必要はなく、あくまでも早期発見・早期治療のためと考えてバレット食道とつきあっていきましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師