僧帽弁閉鎖不全症とは?原因・症状と治療法・治療後の注意点を解説

  • クリニックブログ
2024/05/01

僧帽弁閉鎖不全症とは?原因・症状と治療法・治療後の注意点を解説

「胸が痛い」「息苦しい」もしかしたらその症状は、僧帽弁閉鎖不全症かもしれません。僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁という心臓の弁の働きが悪くなって、血液が逆流してしまう病気です。「血液が逆流するなんて怖い…」「治療して治る?」「何が原因で発症する?」など疑問や不安を抱く方も多いのではないでしょうか。
 
今回は、僧帽弁閉鎖不全症の原因や症状、僧帽弁閉鎖不全症の治療法と治療後の注意点について解説します。

 

僧帽弁閉鎖不全症とは

僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓にある4つの弁のうち「僧帽弁」が正しく閉じなくなる病気のことです。僧帽弁は左心房と左心室の間にある弁で、正しく閉じなくなってしまうと血液が左心室に逆流します。その結果、左心房・左心室それぞれに負担がかかって肥大するだけでなく、大動脈へと送られる血液も減ってしまうのです。こうした問題が生じることで、息切れや呼吸困難をはじめとしたさまざまな症状が生じます。

 
 

僧帽弁閉鎖不全症の原因

僧帽弁は腱索というひものような組織が付いている前尖と、乳頭筋が付いている後尖という2つの弁尖によって成り立つ弁です。心臓にあるその他3つの弁は、弁尖が3つありますので、僧帽弁だけ特殊といえます。僧帽弁閉鎖不全症は、前尖や後尖または腱索や乳頭筋の異常、弁輪(弁の外周)の拡張、左心室の拡大によって引き起こされる病気です。
 
これら僧帽弁に関する問題は、大きく分けて器質性・機能性の2つに分けられます。

器質性

器質性僧帽弁不全症は、僧帽弁そのものに異常が発生することが原因で弁の閉じる機能に障害が出るものです。僧帽弁が逸脱する、腱索が断裂する、リウマチ熱の後遺症などが原因となります。

 

機能性

左心室が大きく拡大してしまい、それに僧帽弁が引っ張られることで弁が閉じなくなってしまう状態を機能性僧帽弁閉鎖不全と呼びます。心筋梗塞や心不全などがその原因になるとされています。

 

 心不全について詳しくはこちら

詳しくはこちら

 

僧帽弁閉鎖不全症の症状

僧帽弁閉鎖不全症の発生初期はほとんどのケースで自覚症状はありません。これは、僧房弁に問題が生じているものの、心臓はポンプ機能を維持するために代償機構(別の部位を活用するなどして生命維持に必要な血液量を維持するもの)が働くためです。しかしあくまでも一時的なものであり、僧帽弁閉鎖不全症は徐々に進行していき、さまざまな症状が出てきます。主な症状は以下の通りです。
 

  • ● 階段や坂道で息切れする
  • ● 服を着替えるだけで息が切れる
  • ● 夜間にトイレに行きたくなる

 
さらに症状が進行すると以下のような症状もみられます。
 

  • ● 就寝時に呼吸しづらくて苦しい(夜間発作性呼吸困難)
  • ● 身体を横にしただけで息苦しい(起座呼吸)
  • ● 咳や血が混じったような痰が出る
  • ● 胸の痛みがある

 
他にも、心房細動(不整脈の一種)を併発して以下のような症状が出ることもあります。
 

  • ● 動悸
  • ● 胸部不快感
  • ● 立ち眩み
  • ● だるさ(全身倦怠感)

 
こうした心房細動の症状が併発する場合、脳梗塞を引き起こす可能性があります。脳梗塞は生命に関わる病気です。僧帽弁閉鎖不全症の症状が出ていない場合でも、心房細動の症状があるならば速やかに病院を受診すべきです。


 

 心房細動について詳しくはこちら

詳しくはこちら

 

僧帽弁閉鎖不全症の検査方法

僧帽弁閉鎖不全症は、聴診や胸部X線検査、心エコー検査などにより診断するのが一般的です。特に聴診は重要で、僧帽弁閉鎖不全症である場合は、症状がほとんどない初期段階のうちから心雑音が聞こえます。胸部X線検査では心拡大や肺うっ血を確認できます。心エコー検査では超音波により左心房・左心室の大きさ、僧帽弁の状態、どのくらい逆流しているかなどを知ることができる重要な検査です。


 
 

僧帽弁閉鎖不全症の治療方法

僧帽弁閉鎖不全症はその重症度によって治療法が異なります。

軽症から中等度

検査により数値が低く軽症であると判断される場合は、内服治療を行います。利尿薬や血管拡張薬などを服用し、心臓の負担を減らしたり不整脈や血栓を予防したりします。対症療法ですので、僧帽弁そのものを治療するわけではありませんが、症状や合併症リスクを抑えるのにつながります。ただし、徐々に進行して悪化する可能性があるため、定期的な検査は欠かせません。
 

中等度から重度

呼吸困難などの症状が出ている、心臓に強い負担がかかっていることが明らかである場合は手術を実施します。僧帽弁を人工弁に置き換える弁置換術、弁を外科処置により修復する弁形成術などがあります。心房細動が出ている場合は、それを抑える手術も実施検討します。


 
 

僧帽弁閉鎖不全症の治療後の注意点

僧帽弁閉鎖不全症の治療後にはどのようなことに注意すべきなのか、以下で解説します。

治療後は安静に過ごす

僧帽弁閉鎖不全症の手術後は、ある程度の期間は安静に過ごさなければなりません。これは僧帽弁閉鎖不全症が心臓に大きな負担をかけてしまうためです。僧帽弁閉鎖不全症になると、血液が逆流するため心臓の働きは弱まります。しかし手術をすれば心臓はまたしっかり機能するようになり、手術前よりも負担がかかるのです。特に、逆流していた量が多い方ほど負担も大きくなりますので、術後は安静にしましょう。

 

薬をしっかり飲む

僧帽弁閉鎖不全症の手術後、薬をしっかり飲み切ることも大切です。状態によって処方される薬はさまざまありますが、弁置換術を行った場合は抗凝固薬が処方されます。血液を固まらないようにする薬なので、しっかり飲むようにしましょう。
 

僧帽弁閉鎖不全症が軽度である場合は、自覚症状もなく日常生活にはほぼ支障はありません。薬を処方された場合はそれをしっかり飲むことが必要ですが、適度な運動などは行えます。ただし、中度・重度の僧帽弁閉鎖不全症の場合は、肉体を使う重労働や激しいスポーツは控えるべきです。


 
 

まとめ

僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁の働きが悪くなることで血液が逆流してしまう病気です。初期の自覚症状はありませんが、じっくり確実に進行して、呼吸困難などの症状が出てから初めて気がつくことがほとんどです。
軽症であれば手術は不要ですが、お薬では完治できませんので、定期的な検査が必要です。中等度から重度の場合は手術が必要です。術後は安静に過ごすなどの注意点がありますので、医師の指示に従いましょう。


 

 僧帽弁閉鎖不全症について関連記事はこちら

詳しくはこちら

 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
一覧に戻る