脳梗塞や心筋梗塞も併発しやすい「閉塞性動脈硬化症」とは
- クリニックブログ
脳梗塞や心筋梗塞も併発しやすい「閉塞性動脈硬化症」とは
動脈硬化という言葉は耳にしたことがある方も、「閉塞性動脈硬化症」という病気についてはご存じないケースが多いのではないでしょうか。まだ認知が進んでいない閉塞性動脈硬化症ですが、脳梗塞や心筋梗塞などと同様に動脈硬化によって発症する病気です。
今回は閉塞性動脈硬化症の原因や症状、治療法などについてご説明します。
閉塞性動脈硬化症とは
動脈硬化が進むと、血管が細くなったり、血栓が詰まったりします。動脈硬化によって脳の動脈に血栓が詰まった場合、脳梗塞になり、心臓の冠動脈に血栓が詰まった場合は心筋梗塞を発症します。閉塞性動脈硬化症は、手や足の動脈が狭くなったり、血栓が詰まったりすることで手先や足先に血流が巡らず、筋肉の痛みなどが生じる症状で、末梢動脈疾患とも呼ばれます。
50歳以上の男性に多く見られ、閉塞性動脈硬化症が進行すると手足に潰瘍ができて壊死するケースもあり、その場合は切断が必要となります。
動脈硬化症について詳しくはこちら
閉塞性動脈硬化症の原因
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が原因で発症します。喫煙の習慣がある人や肥満の人、糖尿病、慢性腎不全、脂質異常症などの病気を持つ人は、動脈硬化が進行しやすく、閉塞性動脈硬化症を発症しやすくなります。また、動脈硬化によって血栓が生じやすくなるため、脳梗塞や心筋梗塞などを併発する確率も高くなっています。
閉塞性動脈硬化症の症状
閉塞性動脈硬化症の症状は、4つの段階に分けられ、動脈の狭窄や閉塞が進むと症状も段階的に悪化します。
第1期
手足に血液が巡らなくなるため、足先や指先が冷たくなったり、しびれてきたりします。また、血流が悪化し、手や足が青白く見えることもあります。
第2期
間欠性跛行(かんけつせいはいこう)が見られるようになります。間欠性跛行とは、歩き始めは何の症状もないものの、少し歩くと足にしびれや痛みが出る症状です。そして、少し休むと再び歩けるようになるといった症状を繰り返します。間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症以外の原因でも発症するため、検査によって原因を特定することが大切です。
第3期
閉塞性動脈硬化症が進行すると、歩いているときだけでなく、何もしていない安静状態でも足や手に痛みを感じるようになります。
第4期
足や手の先への血流が不足することで小さな傷などがつくと、傷から潰瘍ができ、壊死するようになります。
閉塞性動脈硬化症の検査・診断
閉塞性動脈硬化症の場合、次のような検査を行い、重症度や動脈が狭窄・閉塞している場所を特定します。
ABI検査
ABI(足関節上腕血圧比)検査は、両腕、両足の血圧を同時に測定し、狭窄や閉塞の程度を調べるものです。ABIが0.9以下、または1.4以上の場合に閉塞性動脈硬化症が疑われます。
動脈超音波検査
足や腕の動脈に超音波を当て、狭窄や閉塞の状態を調べます。
CT検査
造影剤を用いたCT検査によって、動脈の狭窄や閉塞の状態を調べます。また、動脈瘤の有無や血管壁の石灰化なども確認することができます。
血管造影検査
狭窄や閉塞のある箇所の近くからカテーテルを挿入し、造影剤を注入して詳しく狭窄や閉塞の状態を調べる検査です。細い血管閉塞部位なども特定でき、治療法を決定するうえで重要な役割を果たします。
閉塞性動脈硬化症の治療法
閉塞性動脈硬化症の治療法は、症状の度合いによって変わります。
第1期の治療法
手足が冷たくなったり、しびれが出たりといった症状の場合は、経過観察をします。歩くと足の細い血管に血流が増えるため、症状が緩和されます。そのため、第1期の状態の場合はできるだけ歩くこと、靴下などで足を保温すること、入浴をすることなどで足の血流改善を目指します。また、喫煙習慣のある場合は禁煙をし、生活習慣も改善します。
第2期の治療法
間欠性跛行が見られる場合は、血管拡張剤や抗血小板剤などの薬物療法と生活習慣の改善、運動療法を併用します。足に痛みが出る場合でも、歩くことで血流が改善し、症状は緩和されていくため、トレッドミル歩行やトラック歩行などが推奨されます。
また、薬物療法と運動療法を続けても症状が改善しない場合には、血行再建術を検討します。
第3期・4期の治療法
閉塞性動脈硬化症が進行した場合、感染症を併発すると全身状態が悪化する可能性があります。そのため、血行再建術を行いますが、動脈硬化が進んでいる場合には患部の切断が必要になるケースもあります。
血行再建術とは、狭窄や閉塞が生じている箇所で、血液を上流から下流に流すようにする治療です。血行再建術にはカテーテルを動脈内に挿入し、狭窄や閉塞している箇所をバルーンやステントグラフトで拡張する方法のほか、人工血管や静脈を用いたバイパス手術を行う方法、硬くなった血管の内膜を取り除く血栓内膜摘除術などがあります。
カテーテル治療は傷口が小さく、患者さんの負担も少ない治療法ですが、狭窄や閉塞の場所や血管の状態などによっては、カテーテルでの治療が難しいケースもあります。その場合は、血栓内膜摘除術やバイパス手術が行われます。
閉塞性動脈硬化症と診断された場合の注意点
閉塞性動脈硬化症の場合、靴擦れが起きたり、爪を深く切りすぎたりして足に傷ができるとそこから細菌などに感染する恐れがあります。細菌感染によって組織が壊死してしまう可能性があるため、足は常に清潔に保つように気をつけ、傷を作らないように注意することが大切です。
まとめ
閉塞性動脈硬化症は、足や手の動脈に起こる動脈硬化です。初期段階では手足がしびれたり、冷たくなったりしますが、症状が進むと歩行が困難になったり、安静時にも痛みを感じるようになります。また、小さな傷から細菌に感染すると細胞が壊死し、手足を切断しなければならないケースもあります。
閉塞性動脈硬化症の人は、多くの場合、全身の血管で動脈硬化が進んでおり、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクも高くなります。足や手のしびれを感じる場合や歩行中にふくらはぎに痛みを感じるような場合、糖尿病や脂質異常症などの病気がある場合は、医療機関の受診をおすすめします。
閉塞性動脈硬化症について関連記事はこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師