お口の粘膜にできる「口腔がん」の種類と治療法

  • クリニックブログ
2024/04/30

お口の粘膜にできる「口腔がん」の種類と治療法

がんは、さまざまな部位に発生する病気ですが、口の中に発生するがんを総称して「口腔がん」といいます。口腔がんのほとんどは、口腔内の粘膜上に発生します。そのため、口腔がんは体の中にできる他のがんと比べて、ご自身でチェックすることが可能です。
 
今回は、口腔がんの症状や治療法などについてご説明します。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談をしましょう。

 

口腔がんとは

口腔がんとは、口の中にできるがんの総称です。口腔内は、扁平上皮と呼ばれる粘膜で覆われており、口腔がんのほとんどは粘膜に悪性腫瘍ができる扁平上皮がんに分類されます。口腔がんの患者数は、がん患者全体の1%程度とそれほど多いがんではありません。しかし、女性より男性の患者が多く、罹患率と死亡率が上昇傾向にあります。

 
 

口腔がんの種類

口腔がんには、次のような種類があります。

舌がん

舌に腫瘍ができるがんです。日本では最も多い口腔がんで、口腔がんと診断される方の半数以上を占めています。
 

上歯肉がん、下歯肉がん

歯茎にできるがんです。上の歯茎にできるものを上歯肉がん、下歯肉がんといいます。
 

頬粘膜がん

頬の内側の粘膜にできるがんです。
 

口腔底がん

舌の下の部分にあたる下顎の粘膜にできるがんです。
 

硬口蓋がん

上顎の天井部分の粘膜にできるがんです。
 

口唇がん

唇にできるがんです。


 
 

口腔がんの症状

口腔がんでは、次のような症状が見られます。ただし、初期段階では痛みが表れにくいため、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。少しでも口の中に違和感があれば、鏡を使って口の中をよく確認するようにしましょう。

がんができた部位が赤くなったり、白くなったり、変色する

  • ● 硬いしこりができる
  • ● 粘膜がただれる
  • ● 口内炎が治らない
  • ● 歯がぐらついてくる
  • ● 入れ歯が合わなくなる
  • ● 歯茎から出血している
  • ● 口が開けにくい
  • ● 食べものを飲み込みにくい


 

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口腔がんの検査・診断

口腔がんが疑われる場合、次のような検査を行います。

問診

口腔がんの発症には生活習慣が関わっており、喫煙や飲酒の習慣がある人、歯磨きの習慣がなく、口腔内が不衛生な状態な人は、口腔がんの罹患リスクが高くなります。また、虫歯を治療しないまま放置している人や歯肉炎、歯周病などに罹患している人も口腔がんを発症しやすい傾向にあります。
 
問診では、普段の生活習慣や虫歯などの状態について確認をします。

 

視診・触診

口腔内を確認し、舌や粘膜が白っぽくなったり、赤みが強くなったり、変色をしていないかを確認します。また、口腔内に指を入れ、粘膜にしこりができていないか、腫れている部分がないかを調べます。また、口腔がんは首のリンパ節に転移するケースが多いため、首の触診もします。
 

生検・細胞診

口腔がんが疑われる部位の細胞や粘膜組織を採取し、顕微鏡で確認することで、がんであるかどうかを確認します。
 

画像診断

画像診断にはいくつかの方法があります。
 

超音波検査

腫瘍のある部位や頸部にプローブを当て、がんの大きさや広がり、転移などを確認します。
 

パノラマX線検査

歯肉がんが骨に浸潤していないか、転移をしていないかを確認するために、口腔全体を撮影します。
 

CT検査

がんの位置や大きさ、広がり、転移の状態などを3次元で確認します。
 

MRI検査

強力な磁石を用いて体内の状態を画像化します。がんの大きさや位置、骨や歯との位置、リンパ節への転移などを確認できます。
 

PET検査

がん細胞は、正常な細胞よりもブドウ糖を多く取り込む性質があります。PET検査はこの性質を利用し、ブドウ糖に近い成分の検査薬を体内に注入した後に全身を撮影し、がん細胞の有無を確認する検査です。


 
 

口腔がんのステージ

口腔がんのステージは、がんの大きさや広がりなどから判断し、TNM分類に基づいて決定します。T分類では原発腫瘍(最初に発生した病変)の大きさや状態からがんの進行度合いを判断し、N分類ではリンパ節の転移の状況から進行度を判断します。またM分類は、遠隔転移の有無を表す分類です。

<T分類>

 

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内がん
T1 がんの最大径が2cm以下、深達度が5mm以下
T2 ・がんの最大径が2cm以下、深達度が5mm以上
・がんの最大径が2~4cm以下、深達度が10mm以下
T3 ・がんの最大径が4cm以下、深達度が10mm以上
・がんの最大径が4cm以上、深達度が10mm以下
T4a 口唇
・がんが下顎の骨を貫通しているか、下歯槽神経、口腔底、(オトガイ部または外鼻の)皮膚に広がっている

口腔
・がんの最大径が4cm以上、深達度が10mm以上
・がんが下顎もしくは上顎の骨を貫通するか、上顎洞に広がっている
・がんが顔の皮膚にまで広がっている

T4b ・がんが咀嚼筋間隙、翌状突起、頭蓋底に広がっている
・がんが内頚動脈を取り囲んでいる

 

<N分類>

 

NX リンパ節転移の評価ができない
N0 リンパ節への転移がない
N1 がんと同じ側のリンパ節に最大径3cm以下の転移が1つのみでリンパ節の外への浸潤がない
N2a がんと同じ側のリンパ節に最大径3~6cmの転移が1つのみでリンパ節の外への浸潤がない
N2b がんと同じ側のリンパ節に最大径6cm以下の転移が2つ以上あり、リンパ節の外への浸潤がない
N2c 両側またはがんと反対側のリンパ節に最大径6cm以下の転移があり、リンパ節の外への浸潤がない
N3a リンパ節に最大径6cm以上の転移があり、リンパ節の外への浸潤がない
N3b リンパ節に1つ以上の転移があり、リンパ節の外への浸潤が認められる

 

<M分類>

 

M0 遠隔転移がない
M1 遠隔転移が認められる

 

口腔がんのステージ

進展度 N0 N1 N2 N3 M1
Tis 0
T1 ⅣA ⅣB ⅣC
T2 ⅣA ⅣB ⅣC
T3 ⅣA ⅣB ⅣC
T4a ⅣA ⅣA ⅣA ⅣB ⅣC
T4b ⅣB ⅣB ⅣB ⅣB ⅣC


 
 

口腔がんの治療法

口腔がんの治療法は、がんが発生した部位や進行度合いによって変わります。

外科手術

がんを取り除く手術です。がんができた部位や広がり度合いによって切除する範囲は変わります。切除により欠損が大きくなる場合は、再建手術を行います。
 

放射線治療・化学療法

手術でがんを取り切れない場合や頸部リンパ節への転移が認められる場合、がんが進行している場合は、放射線治療と化学療法を併用し、がんの進行を遅らせます。


 
 

まとめ

口腔がんは、口腔内に発生するがんです。口腔がんは早期に発見すれば、再発のリスクを抑えられ、切除も小さい範囲にとどめることができます。日ごろから口腔内をチェックする習慣をつけ、粘膜が赤くなっていたり、白っぽく変色していたりした場合には、早めに医療機関を受診し、相談するようにしましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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