STDとは?主な原因と治療法、予防法をまとめて解説

  • クリニックブログ
2024/02/26

STDとは?主な原因と治療法、予防法をまとめて解説

近年はインターネットの普及により性病や性感染症(STD)に関する正しい知識が広く認知されるようになってきましたが、STDの中には感染後でも症状が目立たないケースもあります。たとえ症状がない場合でも感染力は存在するため、本人の知らぬ間に拡散してしまう恐れがある点が脅威です。
 
STDは不妊の原因となるだけでなく、妊娠・出産時の母子感染といった形で産まれてくる子どもにも悪影響を及ぼす危険性があります。感染の疑いがある場合には早めに検査や治療を受けること、日常生活においては適切に予防しておくことが大切です。
 
本記事では、臨床医の視点から性感染症の総称であるSTDの概要や原因、特徴や治療法、予防方法に関して解説していきます。

 

 

STDとは

「STD」とは、英語の「Sexually Transmitted Diseases」から頭文字をとったものであり、性行為によって感染する病気の総称です。性感染症には多くの種類があり、主に口や性器などの粘膜や皮膚から性的接触によって感染します。

【主な性感染症】

  • ● 梅毒
  • ● HIV/エイズ
  • ● 性器クラミジア感染症
  • ● 淋菌感染症
  • ● 性器ヘルペスウイルス感染症
  • ● 尖圭コンジローマ
  • ● トリコモナス症
  • ● 性器カンジダ症

 
STDと似た用語にSTI(Sexually Transmitted Infection)があります。日本ではどちらも「性感染症」という意味で使われます。STDは症状が出現し病気となった状態、STIは感染が成立した時点の状態(自覚症状なし)と正確には区分けされますが、日本で使い分けられることは稀です。

 
 

STDの原因

STDの感染は、何かしらの性感染症に感染した人の精液や膣分泌液など、感染力をもった状態の分泌液が、性行為等によって相手の性器、泌尿器、口腔、肛門等の粘膜や皮膚に触れることが原因です。性行為だけでなく、コンドームやシーツなどに付着した分泌液に性器が接触するだけでも感染するリスクがあります。
 
感染の成立には感染源(感染している人)・感染経路・宿主(相手)の3つの要素がそろうことが条件となるため、予防の段階でこれら3つのうちいずれかを分断することで発症の確率を減らせます。

 
 

STDの症状

STDは感染する病気によって症状が異なります。クラミジアのように感染しても自覚症状が乏しい場合もあれば、淋病のように激しい排尿痛を伴うものもあります。その他、HIV、梅毒、B型肝炎、尖圭コンジローマなど、感染症によって症状や身体への影響は様々です。感染した当初は症状が軽微でも、不適切な対処により悪化するケースが散見されるため治療を始めるタイミングにも注意が必要です。
 
一般的には皮膚の症状が先行して自覚することが多く、例えば梅毒や性器ヘルペスウイルス感染症では、性器や口の中に小豆から指先くらいのサイズのしこりなどが出現します。初発症状としては痛みやかゆみを伴わない発疹が身体の一部に出るため、感染症であるという認識が遅れてしまう傾向にあります。


 
 

STDの診断と検査

STDは皮膚症状が先行することが多いため、最初は皮膚科を受診するケースが多く見られますが、性病の心当たりがある場合には男性は泌尿器科、女性は産婦人科を受診するのが一般的です。
 
診断にあたっては、まず感染源を特定するための問診が行われ、直近の行動について確認していくことで、感染の原因を特定していきます。検査については、分泌物や血液を採取して原因となる病原体の検索を行います。多くの場合、全身状態を知るために採血が行われます。
 
医療機関ではあらゆる性感染症の検査を受けられ、保健所でも匿名かつ無料でHIVや梅毒など特定の性感染症についての検査が可能です。また、STDはパートナーも治療を行わなければ感染経路を完全に断つことができず、「相互感染(ピンポン感染)」につながってしまいます。感染経路を完全に断つためには、パートナーも一緒に治療を進めましょう。


 

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STDの治療方法

罹患するウイルスや病原菌によって、治療方法はさまざまです。淋菌感染症のように抗生剤投与で完全に治る場合もあれば、梅毒のように長期間のフォローアップが必要となるものがあります。
 
治療の際には、医師側から本人に感染症の危険性を伝え、以後の行動を慎重に選択していただくようお伝えしています。治療が不十分なまま終診すると、感染拡大のリスクが残ってしまうからです。STDに感染してしまうと、治療によって数日で一時的に治る場合もありますが、完治までは数か月かかることもあるため長期戦を覚悟しましょう。


 
 

STDの予防方法

STDの予防のためには、以下のような取り組みが重要です。

コンドーム着用とパートナーを限定する

コンドームは代表的な避妊具ですが、感染経路を断つための役割も果たします。性行為の際には必ず使用することを心掛けましょう。また、不特定多数のパートナーと性行為を営むことで感染リスクが増大します。性感染のリスクを抑えるためにも、パートナーを限定する必要があることも覚えておきましょう。

 

清潔な環境下での性行為を意識する

感染の予防のためには、性行為の前の入浴や寝具を清潔に保つなど、可能な限り清潔な環境を整えておくことが大切です。
 

免疫力が低下しているときは性行為を控える

重症化するかどうかは、感染した側の免疫力が大いに関係します。肉体の疲労やストレスが強いときは感染症に罹患する確率が高くなるため、性行為は控えましょう。
 

予防のためのワクチンを接種する

ヒトパピローマウイルス(HPV)やB型肝炎など、ワクチンのある感染症に対して事前に接種しておくことは、予防策として有効な手段となります。


 
 

STDに関するよくある質問と回答

Q.STDの人と同室で過ごすと感染しますか?

A.STDは性行為が感染の主な経路となるため、空気感染や飛沫感染などでは感染しません。
 

Q.オーラルセックスでもうつりますか?

A.感染する可能性があります。粘膜を通じた接触感染は、感染経路として広く知られています。
 

Q.HPVワクチンは大人になってから打っても意味がないですか?

A.一般的なワクチンは、罹患すると重症化する可能性がある感染症に対して個人の判断で接種するものとされています。厚生労働省では、HPVワクチンを接種する年齢について、「16歳頃までに接種するのが最も効果が高いが、それ以上の年齢で接種しても、ある程度の有効性があることが国内外の研究で示されている」とコメントしています。
 
ワクチンの効果と年齢の上限は報告によりさまざまであるため、まずは婦人科を受診し、相談してみることをおすすめします。


 
 

まとめ

STDの予防のためには、以下のような取り組みが重要です。
STDは誰もが罹患する可能性がある病気です。早い段階で適切な教育を受けて、病気への正しい理解が望まれます。早期の発見と治療の開始がポイントとなることを覚えておきましょう。


 

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吉川 博昭医師

執筆

吉川 博昭 Dr. Yoshikawa Hiroaki

自己紹介

  • 大阪府出身。
    都内医学部を卒業し、医師免許取得後は麻酔科やペインクリニックを専攻し、医療機関で臨床業務に携わっている。
    近年は内科診療・予防医学・心療内科などの生活に密着した御相談にも診療幅を広げ、「健康を通じたハッピーな生活をお手伝いしたい」ことをテーマとしている。
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