おたふく風邪はワクチンで予防できる!診断や治療法について解説
- クリニックブログ
おたふく風邪はワクチンで予防できる!診断や治療法について解説
おたふく風邪は、子供の頃にかかる病気の代表とされています。また大人になってからだと重症化しやすいのも特徴で、後遺症などが出てしまうこともあるなど非常に危険な病気です。
今回は、おたふく風邪について解説いたします。ワクチンのおすすめ接種時期、診断と治療についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
おたふく風邪とは?
それではまず、おたふく風邪とは何かということについて解説いたします。
ムンプスウイルスによる感染症
おたふく風邪は、耳の付け根の前部分あたりにある耳下腺と呼ばれるところが炎症を起こして腫れることから、正式な呼び名を「流行性耳下腺炎」といいます。これはムンプスウイルスというウイルスによる感染症で、特に3〜6歳程度の幼稚園や小学校の子供によくみられます。
耳下腺だけでなく舌の下部や喉の上部分にある唾液を作る唾液腺が腫れることもあり、主な症状は発熱や頭痛といったものです。一度発症するとその後再び発症することは滅多にありませんが、大人になってから発症すると重症化や合併症を引き起こしてしまうおそれがあります。
1~2週間、発熱などが続く
ムンプスウイルスの多くが唾液などに潜んでいるため、感染経路は主にくしゃみや咳による飛沫といった同じ空間にいたことによる空気感染です。ウイルスが体内に潜伏する期間はおよそ2〜3週間とされており、発症すると喉の痛みや発熱を起こします。
発症してから、およそ1〜2週間程度で熱や喉の腫れといったものは落ち着いていきますが、大人が発症してしまった場合は重症化し、難聴などの後遺症が残ってしまうおそれがあります。また、なかには感染しているのに熱や唾液腺などが腫れるなどの症状が出ない「不顕性感染」というケースもあり、感染者の約3割はこの「不顕性感染」であるとされています。
合併症が出ることもある
おたふく風邪の多くは軽症で済むことが多く、入院に至ることはほとんどありません。ただし、まれに髄膜炎や髄膜脳炎、睾丸や卵巣に炎症が起こる睾丸炎や卵巣炎などが起きたり、かなり低い確率で不妊になってしまったりすることがあります。何度も嘔吐が続いたり、ひどい頭痛が起きるといった場合は合併症の疑いがあるため、医師と相談することが大切です。
また耳下腺が腫れることで内耳にも影響を与えてしまい、難聴になってしまうこともあります。この難聴は「ムンプス難聴」と呼ばれており、年間で約2,300人の方が患っているとされています。
一度発症した後は免疫ができる?
おたふく風邪は一度発症すると抗体を獲得することができますが、再発することがあります。かつておたふく風邪は一度かかると終生抗体が体内で作られるとして、二度と再発することはないと言われていました。しかし、近年では何度も再発してしまうおそれのある病気だとして、認識が改められてきています。
抗体が不十分であった場合は再発のおそれがあるため、1度しか予防接種を受けていなかったり、過去におたふく風邪にかかったからといって安心していたりすると、再び発症してしまうかもしれません。
おたふくワクチンについてはこちら
ワクチンで予防ができる
現在、おたふく風邪に最も有効な予防方法としてワクチンによる予防接種がすすめられています。ここでは、ワクチンが受けられる年齢や時期などについて解説いたします。
子供は1歳から接種できる
おたふく風邪の予防接種であるムンプスワクチンは、1歳から受けることが可能です。一度ワクチンを受けると、およそ90%の確率で抗体を作ることができるとされています。また他の水痘や麻疹などの予防接種を同時に受けることで、1歳前後に発症することが多いと言われる無菌性髄膜炎になる可能性を減らせていることが判明しています。
おたふく風邪は予防接種が義務化されていないため、任意で受ける必要がありますが、将来重症化してしまう可能性を減らすためにも、予防接種はきちんと受けておくのがおすすめです。
おすすめ接種時期は1歳の検診と小学校入学前
おたふく風邪の予防接種として最適なのは、1歳前後に1回目の予防接種を行い、5〜6年後の小学校入学前に再度行うことです。義務化されているMRワクチンとの同時接種することで、ワクチンを1度しか受けられていないといった漏れを防ぐことができます。
母子手帳にワクチンの接種履歴があるため、2回目の予防接種を受けたか不確かな場合は、母子手帳を確認するようにしましょう。
思春期以降は重症化しやすい
おたふく風邪は小児によくみられる病気ですが、思春期までかからなかった場合は、それ以降に発症した際に重症化してしまうおそれがあります。後の障害として残りかねない睾丸炎や卵巣炎、完治が困難とされるムンプス難聴になる可能性を上げてしまいかねません。
大人でも体調不良やストレスによって免疫が落ちた際に感染してしまうおそれがあるため、重篤な症状にならないよう予防接種を受けておくことが大切です。
妊婦がかかると流産の危険がある
妊娠初期におたふく風邪になってしまった場合、流産してしまう可能性があるなど、大変危険です。妊婦は通常の薬の使用が禁じられていたり、副作用が出てしまったりするおそれもあるため、流行時期にはなるべく出歩かないように心がけましょう。
ただし、おたふく風邪がお腹の中の赤ちゃんへ影響を及ぼしてしまい、奇形として生まれてくるということはないとされています。
ワクチンの副反応は
まれにワクチンの副反応で、接種後14日間ほど経った後に発熱することがあります。しかし、高熱になることはほとんどなく、通常は自然に治癒します。
4万人に1人の割合で無菌性髄膜炎になることもありますが、おたふく風邪の重症化に伴うものよりも程度は軽いとされています。またアレルギー反応であるアナフィラキシーの症状が出ることがまれにあります。
おたふく風邪の治療方法とは
最後に、おたふく風邪の診断と治療について解説いたします。
おたふく風邪の診断と検査方法は
おたふく風邪の診断は、耳下腺や唾液腺の腫れを診て、おたふく風邪が周囲で流行しているかどうかも加味して行います。流行時期でない場合や予防接種を受けていない場合は他の病気である可能性も考えられるため、確定診断として血液検査を行うことがあります。
血液検査は主にペア血清と呼ばれる抗体調査方法です。血液内の抗体の量を調査して抗体の量が増えていることが確認できたら、おたふく風邪であると診断されます。
根本的な治療方法はない
おたふく風邪には未だ有効とされる治療方法が確立されていないため、基本は対処療法です。解熱剤の処方を行ったり、脱水症状がみられる場合は点滴などを投与したりすることでおたふく風邪が早く収まるように他の症状を抑えます。
また喉の痛みがひどい場合は硬いものは避け、喉通りの良いものを食べるようにしましょう。あまりに食べられない場合は、点滴などで補うこともあります。
まとめ
今回は、おたふく風邪についてとワクチンの予防について解説いたしました。おたふく風邪は一度かかれば抗体がつくため再発がしにくいとされています。一方で、思春期よりも後に発症すると重症化する傾向があるため、抗体を作っておくことが重要です。
おたふく風邪の治療方法は基本的に対処療法が中心となるため、しっかりと療養するようにしましょう。
おたふくワクチンについてはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師