むくみの原因とは?症状や解消法などとあわせて徹底解説
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むくみの原因とは?症状や解消法などとあわせて徹底解説
むくみは健康な方にも起こる症状で、日本人の約3割もの方が「足のむくみ・だるさ」に関する悩みを抱えています。
そこで今回は、多くの方が経験したことのあるむくみの原因や対策について詳しく解説いたします。
むくみと仕事環境についても解説いたしますので、「家ではむくみが出ないけれど職場ではむくみが出て悩んでいる」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
むくみの原因
私たちの身体を構成する細胞と細胞のあいだには、間質液という液体があります。
間質液は、血液と細胞のあいだでの老廃物や栄養のやり取りを担う存在です。
しかし、水分の調節機能が低下してバランスが崩れると、過剰な間質液が皮下組織に溜まりむくみが起こります。
では、どのようなときにこの水分調整のバランスが崩れてしまうのでしょうか?
一過性のむくみの原因
むくみのなかには、一度症状があらわれても一定の時間が過ぎることで改善するものがあります。
一過性のむくみにはどのような原因があるのでしょうか?
長時間同じ姿勢でいたこと
血流が悪くなることは一過性のむくみの大きな原因です。
健康な方でも、長時間同じ姿勢のまま動かないと血流が悪くなり、脚などがむくみやすくなるでしょう。
特に、女性の方は筋肉量が少ない傾向にあるため、同じ時間動かずにいた場合は男性よりもむくみの症状が出やすいとされています。
水分・塩分の摂りすぎ
体内の水分調整機能が正常に働いていても、身体の中で水分量自体が増えると調整しきれずにむくみが起こることがあります。
水分・塩分(ナトリウム)を多量に摂ると、身体が水分を溜め込みやすい状態になり、むくみの症状が出やすくなってしまうのです。
アルコール
アルコールを多量に摂取すると、血管内の水分が失われて血液の濃度が高くなります。
これを正常な状態に戻すために血液が水分を取り込もうとすることも、むくみを引き起こす原因の一つです。
ホルモンの変化
女性ホルモンの1つである「黄体ホルモン」は身体に水を溜め込む作用があるといわれています。
黄体ホルモンは月経前・妊娠中に増加するため、こうした時期にはむくみが起こりやすいといえるでしょう。
運動・睡眠不足
ふくらはぎなどの筋肉が動くことで、筋肉がポンプのように血管を圧迫し血流を促進します。
そのため、運動不足により筋肉が衰えると血流が滞りむくみの原因となるでしょう。
また、水分量・体温・血圧など、体内の様々な調整には自律神経が関わっています。
この自律神経のバランスが、睡眠不足・ストレスなどにより崩れることも、むくみの原因です。
慢性的なむくみの原因
ここまでは生活習慣やホルモンの変化によって起こる一過性のむくみについて解説いたしました。
しかし、むくみが慢性化している場合には、病気が原因の可能性があるため注意が必要です。ここからは、慢性的なむくみを引き起こす病気について解説します。
臓器の疾患
むくみの症状が長く続く場合に疑われるのが心臓・腎臓・肝臓の病気です。
まず、心不全などにより心臓が血液を送り出す機能が低下すると、血流が滞りむくみが起こります。
また、体内の水分量の調整に深くかかわっているのがアルブミンというたんぱく質です。
しかし、病気により腎臓や肝臓の機能が低下するとアルブミンも減少し、水分量の調整がうまくいかなくなってしまうため、むくみが起こります。
心不全について詳しくはこちら
下肢静脈瘤
静脈には弁が付いているため、低い位置にある脚の血管からも血液は逆流することなく心臓に戻っていきます。
しかし、この弁が壊れて脚の静脈に血液が溜まった状態になる病気が下肢静脈瘤です。
下肢の血流が滞ることで、水分も溜まりやすくなりむくみがみられることがあります。
下肢静脈瘤について詳しくはこちら
深部静脈血栓症
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)は、長時間同じ姿勢でいたことにより血流が滞り脚の静脈に血栓ができる病気です。血栓は脳梗塞や肺塞栓症など重篤な病気につながることが知られていますが、身体への影響はそれだけではありません。
下肢静脈の血液の流れが血栓によりせき止められたことで脚がむくむ可能性もあります。
エコノミークラス症候群について詳しくはこちら
リンパ浮腫
リンパ浮腫は、がんの治療で転移が疑われるリンパ節を郭清した場合に起こる症状です。
リンパ節は取り除いても大きな支障のない器官とされていますが、腋窩(わきの下)付近のリンパ節を郭清した場合は腕が、鼠径部・骨盤付近のリンパ節を郭清した場合は下肢がむくむことがあります。
むくみの症状
むくみが起こると、なんとなくはれぼったく感じたり、指でむくんだ場所を圧迫するとすぐには戻らず指の跡が残ったりするなどの症状があらわれます。
症状は脚だけでなくさまざまな場所に出るため、それぞれの部位で起こる場合についてみてみましょう。
足のむくみ
健康な方にとって、むくみといえば「脚に起こる症状」というイメージがあるのではないでしょうか。
実際に、脚は立位・座位いずれの姿勢でも最も低い位置にあるため、特に症状が出やすい部位です。
また、一過性のむくみだけでなく病気が原因のむくみも脚に出やすい傾向があります。
顔のむくみ
日中に顔がむくむことは稀ですが寝ているあいだは顔が足や心臓とほぼ同じ高さになるため、寝起きに「顔がむくんでいる」と感じる方もいるでしょう。
特に、たくさん飲酒をした翌日はむくみが出やすいため注意が必要です。
全身性のむくみ
一般的には、症状がよく見られる部位といえば脚です。
しかし、寝たきりなど横になっていることが多い方の場合や、心不全・腎不全の悪化によりむくみが強い場合などは全身がむくむこともあり得ます。
注意すべきむくみとは
むくみ自体は珍しい症状ではありませんが、全身性のむくみがみられたり、むくみ以外にも症状を感じたりする場合は、大きな病気が原因となっている可能性があります。
そのほか、今回の記事の最後に紹介する「むくみを解消する方法」などを試しても改善がみられない場合も注意が必要です。このような場合は、医療機関を受診して相談することをおすすめします。
むくみが起こりやすい仕事環境とは
むくみは場所や時間帯に関わらずあらわれる症状ですが、姿勢・気温・食事などを自分の都合だけで変えることができない仕事中は特に症状が出やすいタイミングです。
具体的にどのような仕事環境が原因となるのでしょうか?
立ち仕事とむくみ
立ち仕事は、脚から心臓までの高低差が大きいため、むくみが起こりやすい状況といえます。
また、歩く・しゃがむなどの動作が少ない立ち仕事の場合は、血行が滞りやすいため、特に症状が出やすくなっています。
デスクワークとむくみ
座った姿勢は立ち仕事と同様に脚の位置が低くなり、また立ち仕事以上に脚の筋肉を使う機会が少なくなります。
また、脚を組む癖がある方は膝裏・大腿部の血管が圧迫され血行が悪くなりやすいという点にも注意が必要です。
空調とむくみ
オフィスなどでは自分の都合で空調の設定温度・風向などを調整できず、脚や身体が冷えてしまうこともあるでしょう。
冷えは血管を収縮させ血行を悪くする原因となります。
また、身体が冷えると筋肉がこわばりむくみが改善しにくくなるため、ひざ掛けを使用するなど可能な限り身体を冷やさない工夫をすることが大切です。
外食とむくみ
職種によっては、仕事に関連する外食が多いという方もいるのではないでしょうか。
特に、お酒を飲みながらの食事は塩分が多くなる傾向があり、またアルコール自体もむくみの原因となります。
むくみを解消する方法
慢性的なむくみを解消するためには原因となっている病気の治療が重要です。
では、一過性のむくみにはどのような解消法があるのでしょうか? 自宅でも行うことができる対策をご紹介します。
食事での工夫
むくみを解消するためには、体内に過剰な水分を貯めないことが重要です。
そのため、カリウムを豊富に含む食材・利尿作用のある食材を積極的に摂りましょう。
カリウムを多く含む食べ物としては、海藻類・大豆・イモ類・アボカド・バナナ・リンゴなどが挙げられます。
特に、海藻類にはカリウムを増やすアルギン酸が含まれるため効果的といえるでしょう。
また、利尿作用のある食べ物としてはキュウリ・スイカ・冬瓜などのウリ類、サポニンが豊富な小豆などが挙げられます。
姿勢を変えてみる
同じ姿勢を続けることが多い方は、仕事の休憩時間に脚を高くする時間を取るなど姿勢を変えるだけでも症状の軽減が期待できます。
自宅で仕事をしている方は、タイマーなどを利用して一定の時間が経過したら少し歩いたり、ベッドやソファーで脚を上げて休憩を取ったりするのも良いでしょう。
マッサージやストレッチ
血流の改善はむくみの解消に役立つため、温める・マッサージをする・ストレッチをすることも効果的です。
日常生活のなかでは、入浴後にマッサージやストレッチを行うとより効果的と考えられます。
ただし、熱すぎる湯船につかると血管が収縮して血行が悪くなるため、38〜40度程度が推奨されます。
まとめ
むくみは、環境や疲労など一時的な原因から健康な方にも起こる症状です。
このような一過性のむくみは食事・運動習慣の改善により軽減されることが多いでしょう。
しかし、むくみが何日も続いたり・ひどくむくんだりする場合は、病気のサインとしてむくみがあらわれている可能性があるため注意が必要です。
日常的な症状だからと放置せず、むくみの症状が酷い場合には医療機関を受診して原因を調べることをおすすめします。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師