じん肺症は職業病?原因・治療や医療費保障について解説します

  • クリニックブログ
2023/12/29

じん肺症は職業病?原因・治療や医療費保障について解説します

じん肺症という病名はニュースで耳にすることもあり、また「職業柄じん肺にならないか不安」と感じている方もいるかもしれません。
 
今回の記事では、じん肺症の原因や、病気の進行度を把握するための「管理区分」について解説します。
治療方法や生活上での注意点もまとめたので、ぜひ参考になさってください。

 

じん肺症の原因と症状

じん肺症とは、無機物の粒子により肺が傷つき、炎症を起こすことで肺組織が柔軟性を失う病気です。
この状態になった肺を「じん肺」と呼びますが、このじん肺には具体的にどのような原因があるのでしょうか?

じん肺の原因

石材や珪藻土などを加工する過程で出る細かい粒子や、細かい繊維状の鉱物を長期間にわたり多量に吸い込むことがじん肺の原因です。
有機物の粉塵は体内で分解され、吸い込んでも大きな影響がないとされていますが、鉱物などの無機物は体内で分解することができません。
 
そのため、一度じん肺になると原因を取り除くことができず、状態を改善することは難しいと考えられます。

 

じん肺の症状

じん肺になると、肺が炎症を起こすため、咳・痰などの症状が現れることが多いでしょう。
 
また、炎症によって肺組織が硬くなった状態を「線維化」と呼び、線維化が進むと息苦しさや呼吸困難などが起こります。
これは、線維化した肺では酸素と二酸化炭素の交換効率が下がり、これまでと同じように息を吸っても十分な酸素を取り込むことができなくなるためです。

 
 

じん肺症は職業病?管理区分とは?

日常生活の中で、じん肺症になるほどの無機粉塵を吸い込む可能性は少ないと考えられ、じん肺の発症は職業と深く関連していると考えられます。
このような背景から、特定の職業においてじん肺症の重症度を管理するために作られた尺度が「管理区分」です。
 
じん肺症のリスクが高いのはどのような職業なのか、管理区分とはどのようなものなのか見てみましょう。

じん肺は職業性呼吸器疾患

じん肺は建築業や金属・石材関係の製造業、溶接作業を伴う業務など特定の職業でのリスクが極端に高い「職業性呼吸器疾患」の一種です。
炭鉱の採掘・建築現場などで働く方に多くみられましたが、近年は歯科技工士など今までのイメージとは異なる業種でもじん肺のリスクが上がることが分かってきました。
 

じん肺健診と「じん肺管理区分」

無機粉塵を吸い込む可能性の高い「粉塵作業」のために従業員を雇用している事業者には、じん肺健康診断を行うことが義務付けられています。
じん肺健診は胸部のX線写真による検査のほか、必要に応じて呼吸機能検査・臨床検査などを行う健診です。
この健診の結果を労働局に提出することで、肺の状態に応じた1~4の管理区分が決定し通知されます。
 
この管理区分の目的は、通知された区分に応じて粉塵作業への従事制限を行うことで、塵肺の重症化を抑え従事者の健康を管理することです。

 

じん肺の医療費は補償される?

じん肺と診断された場合、上記の管理区分ごとに休業保証給付や療養補償給付、健診の費用保証などの取り決めがあります。
補償の範囲や内容は管理区分や合併症の有無により変わるため、申請・補償内容については事業主または医師などに確認しましょう。

 
 

じん肺症の治療と合併症

記事の前半で「じん肺症は根治が難しい病気」とお伝えしましたが、じん肺症と診断された場合どのような治療を行うのでしょうか?

薬剤療法

じん肺症の原因となった粉塵を取り除いたり、すでに線維化した肺組織を元に戻す方法は見つかっていません。
そのため、抗炎症剤を使用して新たな肺の炎症を防ぎ線維化の進行を抑えたり、去痰剤・咳止めなど対症的な薬を使用することが治療の中心です。
 
また、近年は線維化の進行自体を抑制する「抗線維化薬」が認可されたため、抗炎症剤と併せて抗線維化薬を使用することもあります。
 

酸素療法

じん肺の症状が進行すると、息苦しさを感じる方もいます。
体内の酸素濃度を一定以上に保つことが難しい場合に酸素の吸入を行う治療法が酸素療法です。
 
酸素療法では、外気よりも高い濃度の酸素をボンベなどから吸入することで体内の酸素濃度を保ち、肺や全身の負担を軽減します。
 

じん肺症の合併症

じん肺症の患者さんは、健康な方よりも呼吸器疾患を発症しやすいといわれています。
合併症として代表的なものは、肺結核・結核性胸膜炎・続発性気胸・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・原発性肺がんです。
合併症は呼吸機能の低下をさらに進行させる可能性が高いため、可能な限り予防・早期発見することが望ましいとされています。

 
 

じん肺症といわれたら?日常生活での注意点

じん肺症は緩やかに進行することが多い病気ですが、感染症や合併症をきっかけに症状が急激に悪化することがあります。
こうした急激な悪化(急性増悪)を防ぐために、日常生活で注意すべきことはあるのでしょうか?

禁煙

喫煙は新たな炎症をおこす原因にもなり、肺がんなど新たな呼吸器疾患のリスクにもなるため、禁煙をおすすめします。
また、患者さんに喫煙習慣がない場合でも、家族など身近な方に喫煙習慣があれば受動喫煙を防ぐ工夫が必要です。
 

風邪・感染症の予防

可能な限り風邪や感染症になる確率を下げるために、日頃からマスクの着用・手洗いなど感染対策に努めましょう。
また、インフルエンザ・肺炎球菌・新型コロナウイルス感染症などの予防接種を受けることも推奨されます。

 

受診は早めに

じん肺症の悪化を抑えるためには、新たな肺の炎症・状態の変化を早期に発見し対応することが大切です。
もし咳や感冒症状、以前より強い疲労感など体調の変化を自覚したら「このくらい様子を見ていれば治るのでは」と思わずに早めの受診に努めましょう。


 
 

まとめ

「じん肺症」は無機粉塵を多量に吸い込む生活を続けることで発症し、一度発症すると根治は難しいとされる病気です。
粉塵作業従事者に起こることが多いため、健診の義務化や「管理区分」の認定など職業上でも重症化防止の努力が続けられています。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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