股関節が痛くなる原因とは?疾患や治療法、対処法について解説
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股関節が痛くなる原因とは?疾患や治療法、対処法について解説
股関節は体の中でいちばん大きな関節で、歩いたり立ったりなどの動作を支えています。
股関節が痛くなると、動くのが大変になり日常生活を送るのが難しくなるかもしれません。
本記事では
● 股関節痛が起きる疾患や治療法
● 日常生活で気をつけるべきこと
● 避けるべき運動や姿勢
について解説します。
股関節痛の症状と痛む場所
股関節が痛いときの症状や、痛みが起きやすい場所について説明します。
症状
股関節が痛いとき、下記症状が起きることが多い傾向にあります。
- ● 立ち上がるときに痛む
- ● 歩き出しに足の付け根が痛む
- ● 痛みで正座ができない、または正座するのがつらい
これらの症状が現れたときは、股関節に炎症が起きているかもしれません。
痛みを放置せず、医療機関を受診するようにしましょう。
痛む場所
痛みが起きる場所は、主に鼠径部(太ももの付け根)です。
また、太ももの前側に痛みを感じる人も少なくありません。
痛みは両側に出ることもあれば、左右どちらかだけに出ることもあります。
股関節が痛くなる疾患
股関節が痛くなる疾患の代表例として下記4つの疾患をご紹介します。
- ● 変形性股関節症
- ● リウマチ性股関節症
- ● 骨頭壊死
- ● 大腿骨頸部骨折
それぞれどのような疾患なのか、解説します。
変形性股関節症
股関節痛の多くは、変形性股関節症が原因とされています。
変形性股関節症は、股関節の骨や軟骨、靱帯などが変形してしまい、痛みや機能障害をおこす疾患です。
女性に多く、変形性股関節症の原因の約80%は股関節の形成不全だと言われています。
リウマチ性股関節症
関節リウマチが股関節に起きた状態のことを、リウマチ性股関節症と呼びます。
関節リウマチは、免疫の異常により関節に炎症が起こり、関節の痛みや腫れが生じる病気のことです。
リウマチ性股関節症は関節リウマチが股関節に起きているので、関節リウマチと同様の症状が股関節に現れます。
リウマチ性股関節症に現れる症状は、股関節の痛みや腫れ、朝のこわばりなどです。
進行していくと関節が脱臼したり変形したりすることも少なくありません。
関節リウマチについては詳しくはこちら
骨頭壊死
骨頭壊死とは、大腿骨の上端部の部分が壊死した状態のことです。
病気やケガで骨に血液が流れなくなることで、骨の細胞が死んでいき軟骨が劣化します。
骨の細胞が死んだ部分がつぶれることで痛みが発生するのです。
発症初期は、歩行や階段昇降の際に痛みを感じる程度ですが、進行して股関節の変性が進むと正常に歩けなくなってしまいます。
大腿骨頸部骨折
大腿骨の上部の丸い部分は骨頭といい、骨頭が骨盤にはまっています。
骨頭のすぐ下のくびれて細くなっている部分は頸部と言われています。
大腿骨頸部骨折は、頸部が骨折している状態のことです。
大腿骨頸部骨折は高齢者に多い傾向にありますが、若い人でも受傷します。
高齢者に多い理由は、骨が弱くなっているからです。
そのため、転倒しただけで骨折してしまうのです。
頸部骨折をしたことで、足の付け根に痛みが生じ、立つ・歩くなどの動作が困難になってしまうことも少なくありません。
変形性股関節症の治療法
変形性股関節症の治療は、年齢や股関節の状態、生活習慣を考慮して決めていきます。
主な治療法は、手術、薬物療法、運動療法です。
手術
変形性股関節症の手術では、2つの手術が選択肢となります。
- ● 骨切り術(初期)
- ● 人工股関節置換術(進行している場合)
全員が手術対象になるわけではありません。
年齢や痛みの状態、悪化する可能性などを考え、総合的に判断します。
薬物療法
薬物療法では、痛み止めを使用します。
しかし、痛み止めを使用するのは急性で痛みが強いときのみです。
毎日服用するような状態であれば、手術を検討します。
運動療法
股関節の痛みによって、安静にしている時間が長くなると筋力が低下したり、関節が硬くなったりします。
筋力低下や関節が硬くなるのを防ぐために、運動療法を実施します。
運動療法は、ストレッチや筋力トレーニングが中心です。
痛みが生じる可能性があるため、低強度から始めていき徐々に強度を上げていきます。
股関節が痛いときに日常生活で気をつけるべきこと
股関節が痛いときに普段の生活で気をつけるべきことがあります。
どのようなことに気をつけるべきか説明します。
冷え予防
関節痛がおきた関節は冷やさず、温めましょう。
捻挫や脱臼などの急性の場合は、冷やすことが大切です。
しかし、変形性股関節症など慢性の痛みのときは冷やさないほうがいいでしょう。
冷やすことで血管が縮まり、筋肉の緊張が高まります。血管が縮まると必要な栄養素が十分に届かなくなり、痛みを発生させる物質が作られ痛みが強くなります。
この悪循環を断つため、身体を温めることが大切です。
体重管理
股関節には大きな負担をかけており、歩行時には体重の3〜4倍の負荷がかかると言われています。そのため、太っているとより股関節に負荷がかかり痛みが生じやすくなります。
股間節への負担を減らすためにも、太りすぎないように体重管理をしっかり行うことが大切です。
生活スタイルを見直す
股関節に負担がかかるような姿勢になるのを避けるため、生活環境を見直してみましょう。
特に生活様式が和式の人は洋式に変えるのをおすすめします。
正座やあぐら、和式トイレなどは股関節を深く曲げるため負荷が大きくなります。
少しでも負担を減らすため、イスに座ったりベッドで寝たり、洋式トイレに変更したりするのがいいでしょう。
股関節痛を予防する運動
股関節が痛いからといって、安静にしていると股関節が固まってしまい余計痛みが生じやすくなります。
また、動かないと筋力低下を起こし、立ったり歩いたりすることが難しくなってしまうかもしれません。そうならないために、無理のない範囲の運動を継続していくことが大切です。
ウォーキング
ウォーキングは手軽にできる運動なので、おすすめです。
しかし、間違った歩き方は逆に股関節の負担となり痛めてしまうかもしれません。
早歩きではなく、ゆっくり自分のペースで休憩をはさみながら歩くようにしましょう。
痛みがひどいときは、無理をしないことがいちばんです。
陸地でのウォーキングだと痛みが強い場合は、水中ウォーキングにしてみるのもひとつの方法です。水中であれば浮力があるので、陸地よりも負荷が少ない状態で運動ができます。
ストレッチ
股関節痛を予防するためには、ストレッチも効果的です。
ストレッチをすることで、股関節周囲の筋肉の柔軟性アップにつながります。
ただし、勢いよく痛みを我慢して行うストレッチは逆効果です。
呼吸を整えながらゆっくり伸ばすようにしましょう。
股関節が痛い方がやってはいけないこと
股関節が痛い方は避けた方がいい運動や姿勢が存在します。
- ● どのような運動や姿勢をやらないほうがいいのか
- ● やらないほうがいい運動や姿勢を続けた場合、どうなるのか
上記2つについて説明します。
股関節が痛い方がやってはいけない運動や姿勢
禁忌となる運動や姿勢として
- ● 股関節を曲げた状態での運動・激しい運動
- ● 正座やあぐら・しゃがむ動作
- ● 飲酒や喫煙
が挙げられます。
股関節を曲げた状態での運動・激しい運動
股関節を曲げた状態で運動したり、激しい運動をするのはやめましょう。
スクワットは効果的ですが、負荷が大きいので痛みが強いときは避けた方がいいでしょう。
正座やあぐら・しゃがむ動作
股関節を深く曲げたり、内側に入れる動作は股関節の負担が大きい動作です。
そのため、正座やあぐら・しゃがむ動作は避けましょう。
和式スタイルの生活だと禁忌姿勢になることが多いので、洋式スタイルに変えた方が股関節への負担が少なく生活できます。
飲酒や喫煙
飲酒と喫煙を続けることで、骨頭壊死になりやすくなるかもしれません。
また、股関節の痛みだけでなく体に悪影響を及ぼします。
飲酒や喫煙は、がんや心臓病などの発症リスクを高めます。
股関節の痛みを予防するだけでなく、体の健康を保つためにも飲酒と喫煙は控えた方がいいでしょう。
股関節が痛い方がやってはいけないことを続けるとどうなる?
股関節が痛い方がやってはいけないことを続けると、病状が悪化したり日常生活に影響が出たりします。
病態が悪化する
股関節に負荷のかかる運動や姿勢を続けると、大腿骨と骨盤の間にある軟骨がすり減って症状の悪化につながります。
病状が悪化することで、痛みがひかなくなってしまうかもしれません。
歩行困難など日常生活に影響が出る
やってはいけない運動や姿勢を繰り返すと、日常生活に影響を及ぼします。
今までは難なくできていた家事や日常生活動作が、痛みによってできなくなるかもしれません。
それだけでなく、歩くことも難しくなるかもしれません。
日常生活を今まで通り送るためにも、股関節に負荷のかかる運動や姿勢は避けるようにしましょう。
まとめ
股関節は、立ったり歩いたり体を支えたりするのに欠かせない関節です。
股関節の痛みを放置すると、日常生活を送るのが困難になってしまうかもしれません。そうならないためにも、股関節の痛みが気になるようになったらすぐに医療機関を受診しましょう。
また、股関節の痛みが生じないように生活様式を洋式に変えたり、運動を継続したりすることも大切です。日常生活を自分の力で送れるよう、股関節を大切にしていきましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師