人が狂犬病に感染しても速やかな治療で助かる可能性
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人が狂犬病に感染しても速やかな治療で助かる可能性
これから海外に旅行や出張をする予定の方が気をつけなければならないのが、狂犬病の存在です。
狂犬病は、昔から発症すると命を落とす確率が高い恐ろしい病気といわれてきました。
たしかに発症すると危険ですが、予防をしたり感染後にすみやかな治療を受けることにより、命が助かる可能性は高くなります。
そこで本記事では、狂犬病の概要、予防法と治療法について解説します。
海外へ渡航する予定のある方は、ぜひ参考にしてください。
狂犬病とは
狂犬病とはどのような感染症なのか、特徴や発症原因、感染経路を解説します。
概要
すべての哺乳類が感染することで知られる感染症です。
狂犬病ウイルスの感染が原因であり、発症すると致死率は約100%にものぼります。
感染源となる主な動物は、犬や猫、コウモリなどです。
感染経路
狂犬病ウイルスを保有する動物の唾液に潜んでいます。
そのため、傷口や目・口といった粘膜部分をなめられたり、咬まれたり、引っ掻かれたりすると感染します。
動物から人への感染は認められていますが、人から人への直接的な感染や空気感染はありません。
しかし、過去には角膜移植で狂犬病ウイルスに感染した例があり、絶対に人から人への感染がないわけでもありません。
人が狂犬病に感染するとどうなる?治療法は?
人と動物とでは、発症したときにあらわれる症状が異なります。
以降では、人が狂犬病に感染し発症するまでの潜伏期間や症状、治療法や診断方法について解説します。
潜伏期間
潜伏期間は、基本的に1~3か月です。
なかには、発症するまで1週間未満から数年を要したケースも確認されています。
潜伏期間は1~3か月と猶予はありますが、速やかに治療を受けなければ発症リスクは高くなるため注意が必要です。
症状
主な症状は、以下のとおりです。
- ● 発熱
- ● 頭痛
- ● 嘔吐
- ● 倦怠感
- ● 筋肉痛
- ● 疲労感
- ● 興奮
- ● 不安
- ● 錯乱
- ● 幻覚
- ● 攻撃的状態
- ● けいれん
- ● 恐水・恐風症
- ● 昏睡
- ● 呼吸停止
初期段階は、発熱、頭痛、嘔吐、倦怠感といった風邪のような症状です。
進行し脳が炎症を起こすと、興奮や不安、錯乱や幻覚、攻撃的になる、恐水症・恐風症といった症状があらわれるようになります。
最終的には昏睡状態に入り、やがて呼吸が止まって命を落とします。
ちなみに、恐水症とは液体を飲むことで起きる筋肉のけいれんを怖がり、水に恐怖心を覚える症状のことです。
治療法
海外で哺乳動物から傷を受けた場合は、すぐに医療機関へ受診し治療を受けてください。
ワクチンをすぐに打つことで、発症リスクの抑制が可能です。
暴露後接種とは、受傷後に発症予防を目的としてワクチンを打つことです。
MYメディカルクリニックでは、下記の接種スケジュールとなっております。
- ● 暴露後 接種:5回接種(0、3、7、14、28日)
※創部が深かったり紹介状を海外から持ってきたりして途中からの場合には、6回接種(0、3、7、14、30、90日) - ● 暴露後【過去に接種を完了している方】:2回接種(0、3日)
※1回目接種日を0日とする
海外では、接種方法や接種回数が異なることがありますので、ワクチンの種類など情報を確認しておくことが大事です。
また、傷を受けたあとの応急処置として、すぐに流水と石けんで傷口を洗い、消毒液で殺菌して狂犬病ウイルスを弱めましょう。
診断
狂犬病は、残念ながら発症前に診断することはできません。
潜伏期間中に診断できる検査方法がまだ見つかっていないためです。
また、発症しなければ見た目などの異変も確認できないため、臨床診断も困難となっております。
検査を確定させるには、生検か死亡解剖を行う必要があります。
生検とは病変が疑われる組織の一部を切り取り、顕微鏡でウイルスを探す検査です。
狂犬病についての予防接種はこちら
日本国内・海外の狂犬病発生状況
日本国内と海外の狂犬病発生状況を紹介します。
海外渡航予定の方は、ワクチン接種が必要かどうかの判断材料にもなりますので、ぜひ参考にしてください。
日本国内の発生状況
1950年以前の日本では、まだ狂犬病予防法が制定されていなかったため発生していました。
1950年以降になると、狂犬病予防法の施行により犬の登録や予防接種が義務化され、また野犬などの抑留も徹底されました。
その結果、わずか7年で発症がゼロになり、現在に至るまで発症は確認されていません。(輸入感染例は除く)
海外の発生状況
海外では、未だワクチンが普及していない国では狂犬病の発症が見受けられます。
日本以外の自浄国はヨーロッパ、オセアニア地域などほんの一部です。
日本から近い中国や台湾でも発症例があるため、渡航前にはワクチンでの予防が必須といえます。
狂犬病の発生がある国に行く場合はワクチンで接種を
狂犬病が発生している国に出張や旅行でいく場合は、ワクチンで予防することが大切です。
むやみやたらに動物に触れない、離れておくことも予防のために大切ですが、たまたま遭遇し、急に襲われてしまう可能性もあります。
そのような可能性も考えると、やはりワクチンでの予防対策が効果的でしょう。
以降では、国内で使用されているワクチンや接種にかかる費用を紹介します。
国内で使用されているワクチン
国内で使用されているワクチンは、以下のとおりです。
症状
主な症状は、以下のとおりです。
- ● 組織培養不活化狂犬病ワクチン
- ● ラビピュール筋注用
- ● Verorab®(国内未承認)
組織培養不活化狂犬病ワクチンとラビピュール筋注用は、国からの使用承認がおりており、安全性も認められています。
一方で、Verorab®は国内未承認であるため、接種をする際は副作用を起こした際の公的な保証は受けられません。
もし、ワクチンを摂取するのであれば、国から認可されたものを取り扱っている医療機関をおすすめします。
ワクチンの費用
ワクチンの費用は定価がなく自由診療であるため、医療機関によって異なります。
よって、詳しいワクチンの費用を知りたい場合は、予防接種を受ける予定の医療機関に問い合わせましょう。
MYメディカルクリニックでは、1回につき19,800円です。
まとめ
海外ではまだまだ狂犬病が発症しており、海外旅行や海外出張に行く方は渡航先の情報を知っておく必要があります。
もし行き先が自浄国ではない場合は、ワクチン接種を受けましょう。
MYメディカルクリニックでは、渡航前ワクチンを受け付けております。
下記の診察・サービスにて予約できますので、お気軽にご来院ください。
当院で取り扱っている各種ワクチンについて詳しくはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師