てんかんとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/29

てんかんとは?原因、症状、治療法について解説

てんかんとは

脳の神経細胞(ニューロン)の数は数百億ともいわれます。ニューロンは電気的活動を行っています。そのため、強い電気刺激により異常で過剰な電気活動(電気発射)を起こす性質があります。
てんかんは、この異常で過剰な電気活動によるてんかん発作をくりかえし起こすことを特徴とする病気です。 
 
てんかん発作とは、ニューロンの異常な電気活動により引き起こされる発作のことで、電気発射が外部からの刺激なしに自発的に起こる現象を指します。 
また突発的に運動神経、感覚神経、自律神経、意識、高次脳機能などの神経系が異常に活動することで様々な症状が出現します。 
 

<発症時期>

乳幼児から高齢者のいずれの年齢層でも発症しますが、特に小児と高齢者で発症率が高いといわれています。
 

<種類>

てんかんは、原因が不明で小児期に発病し数年に一度程度の発作で成人になれば完治してしまう良性の「特発性てんかん」と、頭部外傷や脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病など原因が明らかで頻繁に発作をくりかえし様々な脳機能障害が進行する難治性の「症候性てんかん」に分けられます。


 

てんかんの原因

脳の構造の異常、代謝異常症、遺伝子の異常など生まれつきの原因もありますが、その他にも頭部外傷や中枢神経感染症、自己免疫性脳炎、脳卒中、認知症等のさまざまな脳の疾患が原因となることもあります。


 

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てんかんの症状

てんかんの症状は、異常な電気活動を起こしている脳の部位や範囲に応じた様々な症状が出現します。
運動神経、感覚神経、自律神経などそれぞれの神経系に対応し、体の一部または全身が固くなる、手足がしびれたり耳鳴りがしたりする、動悸や吐き気を生じる、意識を失う、言葉が出にくくなる(高次脳機能)などのさまざまな症状を生じます。

<部分発作>

単純部分発作と複雑部分発作があります。
 
単純部分発作とは脳の一部で電気活動の異常が起こった場合で、光がチカチカ見える、手がピクピク動くなど、罹患者自身が感じられるような症状を示すことがあります。 
複雑部分発作とは異常な電気活動の範囲がさらに広がり、罹患者自身は発作の間、意識がなくなり周囲の状況がわからない状態で、突然反応がなくなり数秒間だけ宙を見つめるような症状があります。 
この場合は転倒したり痙攣したりすることもないため、他者からは気づかれないこともあります。 
 

<全般発作>

異常な電気活動の範囲が脳全体に広がると、脳全体が一気に興奮します。
この場合、強直間代発作や体の一部あるいは全体が一瞬ピクンと動くミオクロニー発作、突然体の力が抜けて倒れる脱力発作、ボーっとする欠神発作などの症状が起きます。 
 
上記の部分発作から全般発作に移行する二次性全般化発作もあります。 
また、てんかん発作はほとんどの場合、数秒~数分間で終わりますが、時には数時間以上続くてんかん重積状態も起こります。この場合は生命に危険を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。

 
 

てんかんの検査方法

てんかんは一度診断されると、その後は長期間服薬を必要とすることが多いため、初期診断で見極めることが大切です。
てんかんの診断には何よりも発作症状がてんかん発作として矛盾しないか、部分発作なのか全般発作なのかといった発作症状に関する問診を詳しく行うことが重要です。 
 
そのため、本人だけではなく発作を目撃した人からの情報も診察には重要となります。 
問診以外にも脳波及びMRI検査を行い、てんかんの診断と原因を確認します。脳波検査では棘波と呼ばれる異常な波がみられ、診断に用いられる1つの検査方法です。


  

てんかんの治療方法

てんかんの治療は、てんかん発作の抑制(生活に支障を与える発作の回数を減らす)が主な治療目標となります。
治療方法としては、具体的に抗てんかん薬の調整が基本です。発作を防ぐうえで重要なことは自己判断で薬を中断しないことです。 
中には外科的治療で完治を期待できる場合もあるため、症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。 
 

<抗てんかん薬>

抗てんかん薬では、てんかんの原因を取り除くことはできませんが、てんかん発作の抑制をします。 
抗てんかん薬には様々な種類があり、発作の種類やその他の状況(年齢、性別、副作用など)により、使用する抗てんかん薬は異なります。 
抗てんかん薬を内服することで大部分の方は発作が抑制され、さらに数年後には薬をやめることができるようになる方もいらっしゃいます。
 

<外科的治療>

抗てんかん薬を内服しても発作が充分に抑えられない場合には、外科手術により発作が抑制されることもあります。
その他にも、食事療法や迷走神経刺激術といった治療により発作が軽減する方もいます。 
 
全体としては、60~70%の方は抗てんかん薬の服用で発作が抑制されることが多く、大半の患者さんは支障なく通常の社会生活をおくることができます。

 
 

てんかん罹患者と周囲の人へ

てんかんをもつ人にとって、発作が起こっている時間は通常数秒~数分間にすぎないため、発作が起こっていないほとんどの時間は普通の社会生活を送ることができます。
そのため、病気の特性を周囲の人がよく理解することが大切です。罹患者よりてんかんであることを伝えられた場合は、事前に発作症状などを理解しておき、実際に症状が出現した際に対応できるようにしておくとよいでしょう。


  

まとめ

てんかんとは、てんかん発作を繰り返し引き起こす病気です。
このてんかん発作とは脳神経の異常な電気活動により引き起こされ、異常な電気活動が起こる部位や範囲により症状は多種多様です。 
 
症状に対しては抗てんかん薬を使用することでほとんどの方が発作を抑制することが可能です。 
副作用や薬の効果が表れにくい場合は外科的治療でも治療可能な場合もあります。医療機関を受診する際は、どのような症状がどのくらいの時間で起こったのか、症状出現の頻度はどの程度か、意識消失を伴う症状の場合は家族など周囲の人の情報も重要となります。
 
発作の時間は数秒~数分間であることが多いため、発作時以外は通常の生活を送ることが可能です。 
そのためには周囲の理解も必要となりますので、診断された場合は周囲に伝えておくことで、発作時に伴う外傷の予防や発作状況の観察が可能となります。てんかんの症状を感じた場合は、てんかんの検査や治療が可能な医療機関を受診しましょう。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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