川崎病とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/19

川崎病とは?原因、症状、治療法について解説

川崎病とは

川崎病は1967年に小児科の川崎富作先生が最初に報告した原因不明の急性熱性疾患です。4歳以下の乳幼児(特に1歳前後)に多くみられ、主に皮膚、粘膜、リンパ節など全身の血管に炎症がおきていろいろな症状が出ます。
日本人など東アジア系人に多いといわれており、現在も日本では1年間に約1万人の発症が報告されています。


 

川崎病の原因

原因について、様々な研究が行われていますが、まだはっきりと分かってはいません。細菌やウイルスの感染、なんらかの環境物質による刺激などがいわれています。

  

川崎病の症状

川崎病を発症すると以下の特徴的な症状が現れます。
 

  • ①5日以上続く高熱(39~40℃)
  • ②不定形発疹(全身の発赤、BCG部位が赤く腫れる)
  • ③ 両側眼球結膜充血
  • ④首のリンパ節の腫れ
  • ⑤手背・足背の腫れ、解熱後、手足の皮がむける
  • ⑥口唇の腫れ、イチゴ舌

 
これらの6つのうち5つ当てはまると川崎病の診断となります。しかし川崎病の代表的な6つの症状は、かぜなどの病気でも起こることがあるため、見逃しやすいものです。
また、5つ当てはまらなくても不定型型川崎病として診断されることもあるため、気になる症状がある場合ははやめに医療機関を受診しましょう。

川崎病の経過として、以下の経過を辿るとされています。
 

・急性期:発症から10日目ぐらいまで

多くの主要症状が現れる時期。この時期に全身の炎症を抑える治療をすることが大切です。
 

・回復期:発症10日目〜約1か月後

解熱し、主要症状が軽快するとともに、手足の皮が剥けるなど、新しい症状が出てきます。
 

・遠隔期:1か月後〜

症状はなくなり、合併症を抑えるために継続的な内服が必要となります。
  
川崎病の合併症として冠動脈瘤を引き起こすことがあります。
冠動脈瘤とは、心臓の筋肉に血液を送っている冠動脈という血管に強い炎症が生じると、血圧に耐えられなくなって血管が広がり瘤をつくることがあります。この状態は川崎病の心臓合併症と言われています。
瘤が大きいと血栓ができやすくなり、血管につまると、心臓の筋肉に十分な血液を送ることができなくなります。血栓により冠動脈が詰まると心筋梗塞や狭心症を起こす危険性が高まります。
そのため、確実に内服治療をすること、定期的な検査が必要となります。

  

川崎病の検査方法

・問診、診察

川崎病の症状があるか診察をして確認する必要があります。
 

・心臓超音波法(断層心エコー図)

心エコーで心臓や冠動脈の状態、冠動脈瘤の有無を調べます。X線被ばくなどの負担もありません。川崎病が重症化すればするほど、冠動脈瘤は大きくなり、数も多くなると報告されています。
 

・心電図検査

心筋の酸素不足がないか、心筋梗塞を起こしていないかなどを調べます。
 

・血液検査

川崎病の血管炎の程度、いろいろな臓器のダメージ、血液のかたまりやすさや血栓の有無を調べることができます。
 

  
そのほか場合によっては胸部Ⅹ線検査や心臓CT検査、心臓MRI検査、心筋シンチグラム検査、心臓カテーテル検査などを行うこともあります。


  

川崎病の治療方法

川崎病の治療では炎症反応を早期に終息させる、冠動脈瘤ができないようにすることが最も大切であり、熱が出ている日数が長ければ長いほど後遺症が残る可能性が高くなるため、ただ熱が下がるのを待っていてはいけません。
具体的な治療としては免疫グロブリン療法、アスピリン療法、ステロイド治療が行われます。
 

・免疫グロブリン療法

免疫グロブリン製剤という薬を静脈内に点滴し、全身の炎症を抑えて冠動脈瘤ができるのを防ぎます。約12~24時間かけて点滴で注入します。
薬が効き川崎病の症状が治っていることを確認する必要があるため、5~7日程度の入院治療が必要となります。
 

・アスピリン療法

アスピリンという薬を内服する治療法です。血管の炎症を抑えたり、熱を下げたり、血液を固まりにくくすることにより血栓ができる、冠動脈瘤ができるのを防ぐ効果があります。
退院後も2~3か月は自宅で服用を続けます。副作用として出血時に血が止まりにくくなることがあります。アスピリンに苦味はないですが、水に溶けないため適切に内服する必要があります。
免疫グロブリンとアスピリンの併用により、数日以内に熱が下がり、ほかの症状も治まってきます。その結果、冠動脈瘤も予防することができます。
 

・ステロイド治療

全身の炎症を抑える為にステロイド治療を行います。はじめは点滴から開始し徐々に内服治療へ移行します。ステロイドは苦味が強く嫌がることが多いためアスピリン同様内服方法を検討する必要があります。
 
退院後の生活は、冠動脈に後遺症がなかった場合でも予防的に2〜3か月内服を続ける必要がありますが、日常生活で気をつけることは特にありません。運動も制限する必要はありません。
後遺症として冠動脈瘤が残った場合は、血を固まりにくくする治療がしばらく続きます。
心臓の酸素不足の症状や検査所見がある患者さんは、心臓カテーテル治療や手術が必要になる場合もあります。

  

川崎病の予防方法

川崎病は人から人へと伝染する病気ではありません。そのため予防方法はありません。早期治療が必要となります。

  

まとめ

以前、川崎病は亡くなってしまうことがある恐ろしい病気とされていました。しかし、現在の医療では治療法が確立されていること、冠動脈瘤の早期発見ができることで亡くなるリスクが大幅に下がっています。
しかし、川崎病の症状が落ち着いていても定期的な検査、適切な内服治療が必要となってくるため、本人が継続できる内服方法を考えることが重要です。様々な方法があるため色々な方法を試してみましょう。

また、風邪をひいた時は2〜3日で熱が下がり、熱が下がると機嫌が落ち着くことも多いですが、川崎病は熱が下がらず、血管に炎症が起きているため痛みを伴い不機嫌になることが多いです。
小さい子どもはよく熱を出すものですが、原因不明の熱が続く場合には、熱以外に川崎病に特徴的な症状がないか十分に気をつけ、普段のお子さんの様子と様子が違うと感じた場合は小児専門の医療機関を受診するようにしましょう。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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