インフルエンザとは?原因、症状、治療法について解説
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インフルエンザとは?原因、症状、治療法について解説
「インフルエンザにはいろいろな種類があるけどどう違うの?」
「合併症を起こすって本当?」
「何か予防方法はあるの?」
このようなお悩みや疑問はありませんか?
インフルエンザは新型コロナウイルスが流行するずっと昔からある感染症です。
季節型感染症ともいわれ、毎年同じ時期にピークが見られるのが特徴です。
一時は治療薬のタミフルの安全性が問題視されることもありました。
本記事では、そんな昔からあるインフルエンザ感染症について解説していきます。
インフルエンザとは
インフルエンザは他のかぜとはどう違うのでしょうか。
ここでは、特徴やかぜとの違い、タイプごとの特徴について解説していきます。
インフルエンザとは
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染することで、喉が痛かったりせきが出たりとさまざまな症状が出る感染症です。
通常は、数日で少しずつ症状が治まっていきますが、小さい子どもや高齢者、重症な疾患をお持ちの方などの免疫が弱い方は重症化して命に関わる場合もあります。
インフルエンザは、秋くらいから少しずつ増え始め、冬にピークを迎えます。
春になり暖かくなってくると流行が落ち着きます。
感染力が強く、学校では学級閉鎖になることが多いです。
かぜとの違い
インフルエンザとかぜは、どちらも呼吸器に影響を及ぼす病気のため、似ている症状がある病気です。
しかし、症状や発症の仕方に大きな違いがある部分もあります。
ここでは、それぞれの病気の特徴と違いについて詳しく解説していきます。
<インフルエンザ>
インフルエンザの主な症状は下記です。
- ●高熱
- ●頭痛
- ●関節痛
- ●筋肉痛
- ●せき
- ●喉の痛み
- ●鼻水 など
インフルエンザは特に高熱が出ることが多く、全身の倦怠感を感じることが特徴です。
呼吸器症状だけでなく全身に症状が現れることが特徴ですので、喉や鼻のみといった部分的な症状を感じることはありません。
症状発症のタイミングは予想できず、突然発症することが多いです。そのため、突然強い体調不良を感じ、さまざまな症状が一度に現れるのが一般的です。
<かぜ>
かぜの症状は下記です。
- ●喉の痛み
- ●鼻水
- ●鼻づまり
- ●くしゃみ
- ●せき など
発熱も見られる場合がありますが、成人では高熱が出ないこともあります。
かぜの症状は、鼻や喉など局所的であることが多く、インフルエンザに比べると全身の症状は軽いです。
そのため、インフルエンザの症状の一つである関節痛や筋肉痛を感じることは基本的にないでしょう。
また、インフルエンザとかぜを比較すると、かぜのほうが発症タイミングや進行スピードは比較的ゆっくりなので、症状が比較的軽い傾向にあります。
かぜをひいたときは、初めに軽い症状から始まり、次第に悪化するのが一般的です。
もし、症状が急激に悪化したり、高熱が続いたり、関節が痛かったりする場合は、インフルエンザが疑われます。
感染力が強いため、感染を広げないためにも医療機関を受診することが重要です。
インフルエンザA型とB型とは
インフルエンザのA型とB型の違いを解説していきます。
A型とは
インフルエンザA型は、インフルエンザウイルスの中でももっとも流行しやすいのが特徴で、人だけでなく哺乳類や鳥類などの動物にも感染します。
また、A型は140種類以上の亜型があり、毎年ウイルスが変異し続けるため新型ウイルスが次々に現れます。
そのため、過去に得た免疫が効果を発揮しにくく、ワクチンの予測は困難です。
A型の主な症状は下記です。
- ●高熱
- ●頭痛
- ●関節痛
- ●筋肉痛
- ●強い倦怠感
- ●せき
- ●喉の痛み
- ●鼻水 など
インフルエンザA型は強い症状を引き起こしやすいため、流行期には特に注意が必要です。
B型とは
B型には山形型とビクトリア型の2種類があり、それぞれがさらに細かい型に分かれます。
また、インフルエンザB型は人にのみ感染するため、A型に比べて流行の予測が立てやすいです。
インフルエンザB型は、A型と同様にインフルエンザの典型的な症状を引き起こします。
1~3日の潜伏期間を経て、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、喉の痛み、鼻汁、せきなどの症状が現れます。
流行時期はA型よりも遅く、冬の終わりから春にかけて多く見られます。
C型とは
インフルエンザC型はA型やB型とは異なり、一度感染すると免疫がつき、再び感染する確率はないに等しい点が特徴です。
感染者の多くは子どもで、大人の感染例は少ないです。
流行期は1~6月と長く、A型やB型の主な感染時期である12~3月とは異なります。
インフルエンザC型の症状は、発熱、せき、鼻水が主で、38℃台の熱が2日程度続いた後に解熱します。
通常のかぜと似ているため、気付かれずに治ることが多く、検査できる医療機関も少ないです。
症状はA型やB型に比べて軽い傾向があります。
インフルエンザC型は流行を引き起こしにくく、重篤な症状が出ることも少ないため、あまり注目されませんが、長期間の予防が必要です。
疑わしい症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
インフルエンザの感染経路
インフルエンザは人から人にくしゃみや鼻水、せきなどを通じて感染します。
また、電車のつり革やドアノブに付いたインフルエンザウイルスを手で触り、それが目や口、鼻の粘膜から体の中に侵入します。
手で触れるだけでは感染しないので、感染しないためには手洗いなどが重要です。
インフルエンザの症状と潜伏期間
インフルエンザの症状と潜伏期間について解説していきます。
主な症状
インフルエンザの症状は、突然の38℃以上の発熱、節々の痛み、筋肉痛、頭痛、だるさなどが特徴です。
インフルエンザウイルスに感染してすぐに発症するのではなく、1~3日程度の潜伏期間を経て症状が現れてきます。
その他にも、鼻水が出る、鼻が詰まる、喉が痛い、せきが出る、たんが絡むなどの呼吸器症状が出ます。
インフルエンザは通常、数日から7日程度で症状が改善していきます。
その一方で、高齢者、妊婦、肥満の方、乳幼児、免疫不全の方、慢性疾患がある方は重症化しやすいと報告されています。
味覚障害が現れる場合もある
インフルエンザに感染すると、味覚障害が現れることがあります。
原因は、インフルエンザそのものと、薬の影響です。
ここでは、インフルエンザ感染後に味覚障害が現れる原因を解説していきます。
原因1:インフルエンザ
インフルエンザによる味覚障害は、主に鼻詰まりと感冒後嗅覚障害が原因です。
インフルエンザで鼻詰まりが生じると、嗅覚が低下します。
嗅覚と味覚が連携して風味を感じるため、嗅覚の低下によって味が分からなくなってしまうのです。
加えて、インフルエンザやかぜの後に「感冒後嗅覚障害」が現れることがあります。
この障害は、ウイルスによる神経組織の直接的な障害や、免疫応答による炎症が原因で引き起こされます。
後遺症のような形で、インフルエンザが治っても数週間にわたり味覚障害が続く場合があるでしょう。
原因2:薬の副作用
味覚障害はインフルエンザだけでなく、薬の副作用によっても起こることがあります。
例えば、降圧薬、脳循環改善薬、抗腫瘍薬、抗うつ薬などが原因です。
また、薬の影響で亜鉛不足になり味覚障害を発症することがあります。
キレート作用を持つ薬剤を長期間服用すると、尿から亜鉛が多く排出されて体内の亜鉛が不足するのです。
さらに、薬の成分と結び付いて体内に取り込まれにくくなることで、味覚障害が起こることもあります。
亜鉛が不足すると、味蕾の細胞の新陳代謝がうまくできなくなるため、細胞の数が減少します。
細胞が減るほど味覚を感じにくくなるため、対策として亜鉛をしっかり摂取することが大切です。
なおこの症状は、服用後2~6週間で現れる傾向があります。
また、薬が直接、味蕾や味を伝達する神経の働きを阻害する場合もあります。
潜伏期間について
感染してから発症するまでの潜伏期間は、およそ1~3日ほどです。
なお、感染力がもっとも強いといわれているのが、発症前24時間~発病後3日程度です。
このピークの期間は感染を広めてしまう恐れがあるため、流行時は常にマスクを着用し、もし感染していたとしても広めないための工夫が必要です。
インフルエンザによる合併症
インフルエンザによって引き起こされる可能性がある合併症は以下のとおりです。
- ●インフルエンザ脳症
- ●肺炎
- ●気管支炎
- ●結膜炎
- ●中耳炎
では、一つずつ解説していきます。
要注意な合併症1:インフルエンザ脳症
インフルエンザ脳症は、30%が命を落とし、25%に後遺症が残り、後遺症なく回復するのは約4割に過ぎないという、恐ろしい合併症です。
異常行動が早期に現れることが多く、脳症の前触れである可能性があります。
なお、主に5歳以下の乳幼児が発症します。
症状
インフルエンザ脳症は、発熱後1日以内にけいれんや意識障害が見受けられるため、早い段階で脳症が疑われる症状が見られます。
最終的には全身の臓器障害が進行して、ショックや心肺停止に至ります。
具体的な異常行動としては「食べ物と食べられない物の区別がつかなくなる」「幻視・幻覚が見える」「おびえや恐怖感の訴え」などがあります。
これらの症状は熱せん妄と区別が困難なため、慎重に観察し、異常が見られた場合は早急に医療機関を受診することが重要です。
メカニズム
2024年5月7日、大阪大学大学院医学系研究科感染症・免疫学講座 ウイルス学の木村志保子特任助教が、インフルエンザ脳症発症のメカニズムを解明したと発表しました。
発表によると、脳症を発症する原因となっているのは、インフルエンザウイルスの脳血管内皮細胞への感染と、ウイルス蛋白の蓄積とのことです。
脳でのウイルス粒子の産生そのものは、脳症を必ずしも発症させるものではないことも判明しています。
治療法
このウイルス蛋白の蓄積を阻害する薬を使って治療することにより、脳症の発症予防や脳浮腫の進行の抑制ができる可能性が浮上しました。
そして、同じウイルス感染症でも、どこのどの細胞に感染するかで効果のある薬剤が異なることも明らかとなったようです。
現在メインとして考えられている方法もあります。
抗ウイルス剤をはじめ、γ-グロブリン大量療法やステロイドパルス(+抗凝固)療法、低体温療法、血漿交換療法、AT3大量療法、シクロスポリン療法が候補として挙がっているのです。
まだ研究段階であり確実ではありませんが、治療法は少しずつ進歩しています。
要注意な合併症2:肺炎
インフルエンザの合併症として引き起こる肺炎には、インフルエンザによる肺炎と、肺炎球菌をはじめとする細菌感染による肺炎の2つのパターンがあります。
65歳以上の高齢者になると、インフルエンザの感染によって肺炎を引き起こしてしまう可能性が高まります。
二次性細菌性肺炎を発症する割合は、全体の1~2%、65歳以上では2.5%、健康な成人で0.5%です。
なお、インフルエンザの流行時期に肺炎で入院した方の病原体は、肺炎球菌がもっとも多いという報告があります。
症状
インフルエンザウイルスによる肺炎と、二次性細菌性肺炎どちらも、ひどいせきや発熱が続くのが特徴です。
メカニズム
発症メカニズムを解説していきます。
インフルエンザウイルスは、気道の表面の細胞を破壊するため、肺炎球菌などの細菌が肺に入りやすくなることで肺炎を起こしやすくなります。
加えて、全身で炎症を起こす物質が増加するため、炎症が起こり、細菌に感染しやすくなることも発症する原因の一つです。
治療法
インフルエンザウイルスに対抗するために、タミフル(オセルタミビル)やリレンザ(ザナミビル)などの抗ウイルス薬が使用されます。
これらの薬は、発症から48時間以内に使用すると効果的です。
インフルエンザウイルスによる肺炎は通常ウイルス性ですが、二次性細菌性肺炎が併発することもあります。
細菌感染が確認された場合は、細菌の種類に合った抗生物質が処方されます。
要注意な合併症3:気管支炎
急性気管支炎は気管支が感染によって炎症を起こし、せきやたんなどのかぜ症状が現れる病気です。
多くの場合、ウイルスが原因で治療は主に対症療法となります。
せきを抑える薬やたんを出やすくする薬の服用と、十分な休養が推奨されます。
原因特定は難しいことが多く、インフルエンザやアデノウイルス、RSウイルスの流行状況から検査が進められることがあります。
急性気管支炎の症状は通常数日から数週間続き、90日まで続くこともあります。
90日を超える場合は慢性気管支炎とされ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である場合もあります。
症状
急性気管支炎はかぜ症状と似ており、鼻水、喉の痛み、倦怠感などが現れます。
インフルエンザウイルスによるものは急激な発熱や倦怠感が強く、場合によっては肺炎を引き起こすこともあります。
肺炎を併発するのは、主に高齢者や免疫に問題のある方です。
たんの色が変わるのは、細菌やウイルスの排出によるもので、悪化を示すものではありません。
気道が狭くなることでヒュウヒュウ音がすることがあり、この場合は早めの受診が必要です。
治療法
治療方法は、抗インフルエンザ薬を使います。
気管支炎の原因となる病気を改善することで、気管支炎も治るためです。
なお、発症後48時間以内であれば抗インフルエンザの効果が期待できます。
要注意な合併症4:結膜炎
インフルエンザによる結膜炎は「感染性結膜炎」と呼びます。
感染症結膜炎は細菌やウイルスが結膜に炎症を引き起こす病気です。
主な原因となるウイルスはインフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌です。
インフルエンザ菌によるものは乳幼児や子どもに多く、冬にかぜとともに発症しやすいです。
症状
感染性結膜炎の主な症状は、涙が出る、目がゴロゴロする、目やにが出る、目が赤くなる(充血)などがあります。
ウイルスに対する抵抗力がつくにつれて徐々に改善し、3週間~1カ月程度で完治します。
治療法
ウイルス性結膜炎に対しては有効な治療がありません。
ただ、眼の不快な症状を緩和するために、炎症を鎮める非ステロイド性抗炎症点眼薬やステロイド点眼薬による治療があります。
また、抵抗力が落ちている結膜に他の細菌が感染することを予防するため、抗菌作用がある点眼薬を使用する方法もあります。
検査方法と検査ができる時期
インフルエンザの検査、診断は、現在迅速診断キットによって行われています。
従来は、インフルエンザウイルスを血液などから分離したり、血液中のインフルエンザウイルスに対する抗体があるかどうかを調べたりしており、結果が出るまでにかなりの時間が必要でした。
迅速診断キットでは、10~20分で結果が出るので現場で用いるのに非常に役に立ちます。
迅速診断キットは、インフルエンザウイルス量によって陽性か陰性かを判断しています。
つまり、インフルエンザウイルス量が少ない状態で検査をしても、実際はインフルエンザにかかっているのに、検査上は陰性という結果になることがあります。
発熱してから12~24時間程度経過すれば、十分なウイルス量になると考えられているので、検査をする際には発症してからの時間に注意が必要です。
また、迅速診断キットで、実際にインフルエンザウイルスに感染している人で、検査上も陽性となるのは、10人に8人程度です。
反対に、インフルエンザに感染していない状態でも迅速検査キットで陽性と判定されるのは、10人に1人程度います。
このように迅速診断キットだけではインフルエンザと誤って診断してしまう可能性や、インフルエンザを見逃してしまう場合もあります。
インフルエンザは、迅速診断キットだけではなく、周りの流行や、インフルエンザらしい症状などを組み合わせて総合的に診断することが多いです。
インフルエンザの治療方法
インフルエンザの治療方法は、薬物療法と対症療法とがあります。
薬物療法では、インフルエンザウイルスそのものの数を減らすのではなく、それ以上ウイルスが増えないようにするのを目的としています。
そのため、ウイルス量が増加しきる前に薬物療法を開始しないと効果がありません。
目安として、症状が出てから48時間以内に服薬を始めるのがよいとされています。
薬物療法は、錠剤、吸入、点滴などの種類があり、個々の患者様の状態に応じて使い分けます。
また、もともと健康な方は、インフルエンザの薬を使わなくても自分の免疫で自然と治ります。
対症療法としては、発熱やせき、たんの絡み、喉の痛み、関節痛などに対して症状を和らげるために薬を使います。
インフルエンザの予防方法
インフルエンザを予防するには、普段から気をつけることと、ワクチンがあります。日常生活では、こまめな手洗い、うがい、喉を乾燥させない、人が多く集まる場所に行かない、バランスの良い食生活と充分な睡眠で体調を整える、などがあります。
インフルエンザワクチンは、インフルエンザを発症しにくくさせるだけではなく、発症した後に重症化するリスクを減らします。
インフルエンザにかかると多くの方は7日程度で少しずつ治りますが、中には肺炎や脳症などの合併症が起きることがあります。ワクチンはこのような合併症を起こしにくくします。
13歳以上の方は原則として1回、13歳未満の方は原則2回接種します。
インフルエンザ予防接種について詳しくはこちら
まとめ
インフルエンザは、秋から冬にかけて流行する感染症で、インフルエンザウイルスが原因となるウイルスです。
インフルエンザウイルスは、タイプを変えることで毎年のように感染してしまう可能性があります。
インフルエンザの診断は、迅速診断キットと流行や症状を組み合わせて行います。
インフルエンザに感染すると数日間の潜伏期間が経ってから、突然の高熱や全身の関節痛、筋肉痛に加えて、せきや鼻水、咽頭痛などの呼吸器症状が出ます。
健康な方であれば、1週間程度で自然と治っていきますが、高齢者や乳幼児など免疫が弱い方は、肺炎や脳症などの合併症が起きてしまうことがあります。
インフルエンザの治療方法として、インフルエンザウイルスを増やさないようにするお薬と、対症療法のお薬を使います。
発症してからできるだけ早く使うのが大切です。
インフルエンザを予防するには、予防接種と、普段から免疫状態を高めて感染しないように行動することが大切です。
当院でのインフルエンザの検査・治療方法はこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師