椎間板ヘルニアとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/05/24

椎間板ヘルニアとは?原因、症状、治療法について解説

椎間板ヘルニアって何?

人体の背骨はそれぞれ7個の椎体から成る頸椎、12個の椎体から成る胸椎、5個の椎体から成る腰椎と尾骨から成り立っています。これら椎体同士の間には椎間板と呼ばれる軟骨が存在し、椎体同士のクッションの役割を担っています。また、椎間板の内部には髄核と呼ばれるゼリー状の軟骨が存在しています。椎間板ヘルニアとは、背骨を構成する骨(椎骨)の間にあるクッション(椎間板)が変性し、組織の一部が飛びだす病気です。外部の強い刺激など、何らかの原因で椎体が圧迫されると、クッションである椎間板が椎体外に飛び出します。これらが付近にある神経を刺激し、激しい痛みやしびれなどの症状を起こします。一般的にこの症状を坐骨神経痛と呼び、椎間板ヘルニアにおいて主な症状のうちのひとつとなっています。

椎間板ヘルニアは生じる場所によって首付近に生じる頚椎椎間板ヘルニア、背中付近に生じる胸椎椎間板ヘルニア、腰付近に生じる腰椎椎間板ヘルニアに分けられます。頚椎椎間板ヘルニアは、動きの大きい第3頚椎と第4頚椎の間から第6頚椎第7頚椎の間の中下位部分に生じることが一般的です。腰椎椎間板ヘルニアは、第4腰椎と第5腰椎、その下にある仙骨の間に多く生じる傾向があります。この中でも特に腰椎椎間板ヘルニアの発生頻度が高い傾向にあります。安静にしていれば症状が落ち着くこともありますが、痛みを我慢して体を動かせば症状悪化につながる恐れがあるので注意が必要です。


 

椎間板ヘルニアの原因って?

椎間板ヘルニアは、椎間板に負荷がかかり、椎間板内部の髄核と呼ばれるゼリー状の軟骨が飛び出して生じることがあります。他にも、スポーツや重いものを持つことにより椎間板に負荷がかかることがあります。
また、姿勢も原因のひとつで、猫背や反り腰など腰に負荷がかかる姿勢を続けると、椎間板への負荷が大きくなりヘルニアの原因になることがあります。若年の方でも発症する恐れがあります。
また、椎間板自体の経年劣化により、水分が失われることでクッション性が低下するため、加齢も原因のひとつとなっています。


 

椎間板ヘルニアの症状って?

1.頚椎椎間板ヘルニア

主な症状は首まわりや背中のしびれや痛み、肩こりなどです。神経圧迫により、尿が出にくい(排尿障害)、転倒しやすくなる(歩行障害)などの症状が出ることもあります。はしが持ちにくい、服のボタンがかけにくいなどの症状が出る場合もあります。

2.胸椎椎間板ヘルニア

主な症状は足や背中のしびれや痛み、力が入りにくいなどです。
症状が進行すると、排尿障害、歩行障害、下肢の筋力低下などの症状が出ます。

3.腰椎椎間板ヘルニア

主な症状は、腰や臀部、下肢のしびれや痛みが生じます。症状が進行すると、排尿障害、便が出にくい、しびれや痛みの範囲が広がったり、歩行障害などの症状が出ます。背筋が伸びていたり横になったりしている状態では症状が軽く、背中を丸めたり、前屈みの状態だと症状が強くなるのが特徴です。


 

椎間板ヘルニアの検査や診断について

椎間板ヘルニアの診断には、実際に椎間板がどの程度飛び出しているか画像で確認する必要があるため、MRIによる画像検査は必須となります。また、CT検査やX線検査(レントゲン検査)では、骨の形状や角度、ぐらつきなどを評価します。それに加え、筋力や感覚の低下などの情報も加え総合的に評価します。MRIは磁気共鳴により検査をするため、検査による被ばくはありません。一方、CT検査やX線検査(レントゲン検査)はX線を使うため、多少の被ばくを伴います。

 


 

椎間板ヘルニアの治療は?

腰椎椎間板ヘルニアの治療は第一に保存治療(安静療養、鎮痛薬などの薬物治療、理学療法、注射療法など)が選択されます。
神経の炎症を抑え、痛みを軽減させる方法として抗炎症薬やステロイドの内服や注射といった方法があります。リハビリ(理学療法)や内服薬、ブロック注射などの治療を行います。通常約8〜9割の方はこれにより症状が改善するといわれています。

1.神経ブロック

ステロイド薬、局所麻酔等を用い痛みを抑えます。

2.薬物療法

ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛薬や筋弛緩薬を使って痛みを抑えます。

3.理学療法

症状が落ち着いたら、リハビリによって筋肉を強化したり、専用の器具で身体を牽引することなどが行われます。
  
しかし、既に髄核が飛び出している場合、保存治療で症状が改善しない場合、排尿障害や運動障害が出ている場合には手術が選択されます。
根本的に神経に当たっている髄核を摘出するには手術以外に方法はありません。手術は術用顕微鏡や内視鏡を用い、負担がなるべく少ない方法で行うのが一般的な方法となっています。傷口は18mm程度で手術翌日から歩行可能です。術後3日〜5日程で退院可能です。
また、椎間板内酵素注入療法が新たに保険適用になり選択の幅が広がりました。椎間板内酸素注入療法とは、髄核の水分を抑制する薬剤を椎間板内に注入する治療法です。髄核の水分を抑制することで、近くにある神経の圧迫を軽減することができます。これによって、ヘルニア特有の痺れや痛み、その他症状の軽減を目的とします。

 
 

まとめ

椎間板ヘルニアは日頃の生活習慣によって予防することが大切です。反り腰や猫背などの姿勢改善や同じ姿勢を長時間とることのないように姿勢を変えることが大切です。長時間の運転なども適度に休憩し、同じ姿勢をとり続けることのないように工夫しましょう。体重が重い場合も、その分椎体にかかる負荷が大きいため、適正体重を保ちダイエットしましょう。
また日頃よりストレッチを行い、柔軟性を高めたり、筋力トレーニングによって体幹を鍛え、椎体にかかる負担を減らすことも有用です。どうしても重いものを持たなければいけない場合などはなるべく腰が痛まない方法をとってみましょう。椎間板ヘルニアは若年の方でも発症するので注意が必要です。日頃より首や背中、腰にしびれなどの違和感を感じたり、痛み出る場合は放置すると排尿や排便障害、その他しびれや痛みの悪化を招く恐れがあるため、なるべく早い段階で病院や整形外科クリニックなど医療機関を受診しましょう。

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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