口唇ヘルペスとは?原因、症状、治療法について解説
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口唇ヘルペスとは?原因、症状、治療法について解説
「口唇ヘルペスってよく耳にするけれど、どのような病気?」
「誰かに移すことはある?」
「帯状疱疹から発症することはある?」
口唇ヘルペスはありふれた病気であり、誰がなってもおかしくありません。
そのため、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
感染力が強い病気ですので、発症している間は他人との関わり方を配慮する必要があります。
また、帯状疱疹とは異なる病気のため、帯状疱疹から発症することはありません。
口唇ヘルペスの発症のメカニズムや原因、治療法などを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
口唇ヘルペスとは?
口唇ヘルペスがどのような病気なのか知りたい方に向けて、特徴や原因、ウイルス、感染経路、なりやすい方の特徴を解説します。
本内容を知ることで、どのようなことに気を付けなければならないのか、またどう過ごすべきなのかがわかるでしょう。
口唇ヘルペスとは?
口唇ヘルペスは、ヘルペスウイルスに感染することで起きる感染症です。
唇の周辺に痛みがあらわれたり、水疱や潰瘍ができたりするため、自己診断しやすいでしょう。
一度発症すると、再発しやすい傾向にあります。
感染すると、完全にウイルスを体外に排除したり消滅させたりできないため、免疫力が落ちると再びウイルスが活性化する可能性があるためです。
なお、ヘルペスウイルスには「単純ヘルペス1型(HSV-1」と「単純ヘルペス2型(HSV-2)」の2種類があります。
口唇ヘルペスを引き起こすのは、単純ヘルペスウイルス1型の感染によるものです。
原因とは?
口唇ヘルペスの原因は、ヘルペスウイルスの感染と免疫力の低下です。
ヘルペスウイルスのなかでも感染力が強い「単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)」に感染すると、口唇ヘルペスを引き起こすことがあります。
ヘルペスウイルスは、感染経路が複数あり、なおかつ日常生活の中に潜んでいるため、誰しもが感染しうるものですが、感染したとしても、免疫力が高ければ発症しにくいです。
免疫力とは、白血球などの免疫細胞が体内に侵入した害悪な細菌やウイルスを排除する力です。
発症する方と発症しない方がいるのは、免疫力の強さが影響していると考えられます。
単純ヘルペス1型(HSV-1)とは?
単純ヘルペス1型(HSV-1)は、ヒトヘルペスウイルスのなかでも長い歴史を持つものです。
ヘルペスの感染症は、すでに古代ギリシャ時代から知られ「蛇が這うような症状が出る」と記録されていました。
19世紀に入るとウイルス学が確立され、研究が進み、あらゆる疾患から分離され、特徴が徐々に判明します。
たとえば、ウイルスには3種類の亜科があり、そのうちの一つ「アルファヘルペスウイルス亜科」は神経細胞に潜伏できることがわかりました。
今回取り上げている単純ヘルペス1型(HSV-1)は、この「アルファヘルペスウイルス亜科」に含まれます。
このような歴史をもつ単純ヘルペス1型(HSV-1)は、小児期にほとんどの方が感染していると考えられています。
世界的に日常のなかで存在するウイルスであるため、感染していない方は珍しいかもしれません。
感染経路は?
感染経路は「直接感染」と「間接感染」があります。
直接感染とは、直接感染、発症している方とキスをしたり、性交渉したりして感染するルートです。
一方、間接感染とは、共用しているアイテムを媒介して感染するルートで、発症している方が使用したタオルやコップ、食器を共用した際に感染します。
ヘルペスウイルスは、水疱や潰瘍部分だけに存在しているわけではありません。
唾液や皮膚、粘膜にも存在しています。
そのため、直接の接触がなくても感染する可能性があります。
なりやすい人の特徴は?
口唇ヘルペスは、一般的に健康な成人でも発症することがありますが、免疫力が低下している方が主に発症します。
なお、幼児、高齢者などは重症化しやすいです。
免疫力が低下する原因は多くあります。
- ●睡眠不足の蓄積
- ●運動不足
- ●ストレスの蓄積
- ●疾患にかかっている など
<睡眠不足の蓄積>
睡眠不足が続くと疲労を蓄積させるため、免疫力が落ちます。
<運動不足>
運動不足はNK細胞の活発性を低下させたり、血行不良によりからだが冷えたりして免疫力の低下を招きます。
<ストレスの蓄積>
ストレスの蓄積は、自律神経のバランスが乱れを招きます。
その結果、ストレスホルモンが増加して免疫システムの働きが抑制され、免疫力の低下につながります。
<疾患にかかっている>
何かしらの疾患にかかると、ますます体は弱ります。
それにより、免疫力もさらに低下して口唇ヘルペスの発症リスクが高まります。
口唇ヘルペスの症状
口唇ヘルペスの症状は、前兆があることが特徴です。
主な症状や経過に加えて、前駆症状や再発する理由・メカニズムを解説します。
前駆症状
個人差はありますが、主症状が現れる前に前触れとなる症状が見受けられます。この症状を前駆症状と言います。
前駆症状は、唇周辺のピリピリとした痛み、ムズムズとした感覚、ほてり感などがあり、数分〜数時間にわたって続くのが一般的です。
神経細胞に潜伏しているため、このような神経にかかわる症状が見られます。
症状と一般的な経過
前駆症状が見けられた場合、半日程度経過すると赤みのある腫れの症状や水疱が現れます。
ただし、人によっては腫れや水疱が見られない場合もあるため、何かしらの違和感を覚えた時点で受診することをおすすめします。
水疱ができた後、1〜2週間で次第にかさぶたができ、回復に向かいます。
再発する理由とは?
口唇ヘルペスは再発する可能性があることをお伝えしてきましたが、以降でそのメカニズムと原因を解説します。
再発する原因
単純ヘルペス1型(HSV-1)の特性が再発を引き起こす原因です。
このウイルスは死滅することがない不死身のウイルスです。
発症がないのは、活性化を抑え込めているからであり、死滅したわけではありません。
神経細胞に侵入した後そのまま潜伏し、活性化の条件が揃うと再び活動的になって再発を起こします。
再発のメカニズム
死滅することのない単純ヘルペス1型(HSV-1)が発症しないのは、免疫力機能により抑え込めているためです。
そのため、疲労やストレスなどで免疫力が低下すると抑え込むことができず、再びウイルスが増殖しヘルペスが再発します。
帯状疱疹との違い(症状・原因・感染経路・人への感染)
帯状疱疹との違いを、症状・原因・感染経路・人への感染の有無で比較します。ぜひご覧ください。
症状の違い
帯状疱疹の症状は、神経が通っているところに沿って発疹や水疱ができます。
そのため、頭や顔面、背中、脇腹などあらゆるところで帯状に発症するのが特徴です。
ヘルペスのように局所的に発症するわけではありません。
また、後遺症が残りやすいのもヘルペスとの違いです。
原因の違い
帯状疱疹の発症原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス」で、原因となるウイルスが全く異なります。
ヘルペスウイルスのカテゴリーには入っているのですが、細分化されたカテゴリーとしては別のウイルスです。
免疫力が低下して発症するメカニズムや、神経細胞に潜伏する特徴は同じです。
感染経路の違い
帯状疱疹のウイルスはもともと水疱瘡のウイルスです。
飛沫感染や接触感染、空気感染により水疱瘡のウイルスに感染し、水疱瘡に一度かかった方が発症するものですので、ウイルスの感染経路はありません。
一方、単純ヘルペス1型(HSV-1)は、空気感染や飛沫感染はしません。
人に感染するかの違い
帯状疱疹は、ウイルス感染はありません。
水疱瘡にかかったことがない方にウイルスを感染させてしまった場合は水疱瘡になることはあります。
一方で、口唇ヘルペスは、ヘルペスの症状としてウイルスを感染させます。
感染した場所によって、口唇ヘルペスの場合もあれば性器ヘルペスの場合もあります。
口唇ヘルペスの検査や診断について
口唇ヘルペスの検査項目には、以下のものがあります。
1.臨床症状の確認
口唇ヘルペスの診断は、主に臨床症状によって行われます。水疱や痛み、かゆみ、腫れなどの症状が現れた場合、口唇ヘルペスの可能性があるため、医師による診察が必要です。
2.血液検査
抗体検査によって、ウイルスに感染したことがあるかどうかを調べることができます。
血液中に存在するHSVに対する抗体の量を測定することで、感染しているかどうかを判定することができます。
3.PCR検査
水疱からの液体採取によって、HSVの遺伝子を検出することができます。PCR検査は、感度が高いため、感染が疑われる場合には、症状が現れてから数日以内に行われることが望ましいです。
4.ウイルス抗原検査
水疱や潰瘍から採取したサンプルにより、HSVのタンパク質であるウイルス抗原を検出することができます。この検査は、感度がPCR検査に比べて低いため、症状が現れてから数日以内に行うことが推奨されます。
また、症状が現れた後数日が経過すると、抗体の量が増加して検出しやすくなるため、この時期に血液検査や細胞検査を行うことも多いです。
口唇ヘルペスの治療は?
口唇ヘルペスの治療方法には、以下のような方法があります。
1.抗ウイルス薬の使用
アシクロビル、バラシクロビル、バロキサビルなどの抗ウイルス薬を処方することがあります。これらの薬剤は、ウイルスの増殖を抑えることで症状を緩和する薬剤です。
2.症状の緩和に向けた薬剤の使用
痛みやかゆみを緩和するために、鎮痛剤や抗炎症薬を処方することがあります。
3.再発予防の薬剤の使用
手洗いや口の周りの清潔を保つことが感染防止になります。
家族が口唇ヘルペスにかかった場合は、タオルや食器などの共有物を使わないようにすることも重要です。
口唇ヘルペスの潜伏期間は、感染の状況や個人差によって異なりますが、一般的に感染後2〜12日程度とされています。
潜伏期間中は、症状が現れないため、感染していることに気づかずに他人に感染させる可能性が少なくありません。
唇や口周りに症状が現れた場合は、速やかに医師の診察を受け、適切な治療を行うことが大切です。
口唇ヘルペスの予防方法は?
口唇ヘルペスの予防方法には、以下のような方法があります。
1.免疫力を高めること
健康的な食生活、適度な運動、ストレス管理、十分な睡眠などで免疫力を高めましょう。
2.感染予防
感染を招く可能性がある場合には、口や顔を触った手で目や鼻を触らないようにし、他人と共有する飲食物や用具は避けましょう。
3.乾燥を避けること
口唇周囲の皮膚が乾燥すると、ヘルペスウイルスが感染しやすくなります。
保湿クリームを使い、必要に応じてリップクリームを使用し、口唇周囲の皮膚を保湿しましょう。
4.清潔の維持
手洗いや口の周りを清潔に保つことで、ヘルペスウイルスの感染をある程度防止できます。特に手洗いは徹底し、タオルの共有は避けましょう。
5.早期の治療
症状が現れたら、早期に医師に相談し、適切な治療を行いましょう。治療が早ければ、症状を軽減することができます。
まとめ
口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペス1型(HSV-1)は、日常的に存在しています。感染力は強く、幼少期に感染している方がほとんどです。
一度感染すると体内にウイルスが残るため、ストレスや免疫力の低下、日光や風などの外的要因、月経周期など様々な要因によって再発するとされています。
再発を予防するためには、健康的な生活習慣の維持として、ストレスを避け、バランスの良い食事や十分な睡眠をとることが重要です。
口唇ヘルペスはウイルス感染症であるため、完全に治すことはできませんが、適切な治療や予防策を取ることで、症状の緩和や再発予防ができます。
治療方法や薬剤の使用については、医師に相談することが大切です。
ヘルペスについて詳しくはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師