蜂窩織炎とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/05/01

蜂窩織炎とは?原因、症状、治療法について解説

蜂窩織炎って何?

蜂窩織炎とはなんらかの原因で菌が皮膚や皮下組織(真皮深層から皮下組織・筋膜という深い部分)に入ることによって引き起こされる急性化膿性炎症です。原因菌の多くは黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌の2種類ですが、他にも原因となる菌がいくつかあります。
症状としては顔や足でよくみられ、患部の皮膚にまだら状に赤みがでたり、患部には熱感や痛みが出現し、急速に広がります。感染による全身症状として、発熱や悪寒、倦怠感などを伴うことも多くあります。重症化すると敗血症へと進行してしまい、重篤化することも稀にあります。

足の腫れ


蜂窩織炎を放置していると、患部の近くのリンパ節も炎症をおこし、発熱や悪寒、リンパ浮腫などの症状を伴うこともあるため、放置せずきちんとした対応を行う必要がある疾患であるといえます。
ただ、蜂窩織炎は人から人へと伝染する病気ではないため、近づいたからといって感染する病気ではありません。

 

蜂窩織炎の原因って?

先述した通り、蜂窩織炎とは何らかの原因で菌が皮膚や皮下組織に入ることによって引き起こされる急性化膿性炎症です。
菌として多いのが、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌、大腸菌や嫌気性菌(広がるのに酸素が必要ないもの)などの菌が原因となることがあります。

また、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの多剤耐性菌が入り込んでしまうと使用できる抗生剤に限りがでてしまうため、原因菌の特定も場合によっては必要なことがあります。
菌が皮膚に入り込んでしまう原因としては、免疫力の低下、火傷や手術痕などの傷からの侵入が考えられます。
他にも乳がんや子宮がんなど術後リンパ浮腫の方やふだんからむくみやすい人は、リンパの流れが悪く蜂窩織炎になりやすいとされています。


 

蜂窩織炎の症状って?

症状としては、患部の皮膚にまだら状に赤みがでたり、オレンジの皮の様にゴツゴツしたり、蚊に刺されたような赤みが出てくることがあります。
それに伴って患部に熱感、痛みが出現し急速に広がり、ひどい場合には、患部が何倍にも腫れ上がることもあります。
全身どこにでもできますが、よくできる箇所としては膝下が多く、はじめは「虫刺されかな?」程度に感じる人もいますが、虫刺されとの違いとして境界線がわかりにくいことが特徴です。

中には、全身症状として発熱や悪寒、倦怠感や関節痛などをひきおこすこともあり、皮膚病としては救急搬送される人が最も多い疾患となっています。
またリンパ浮腫と併発する場合もありますが、症状や範囲の拡大に繋がってしまうため、リンパマッサージやリンパソックスなどの着用は中止する必要があります。普段の状態と比較して赤みや熱感があると感じた場合は、マッサージやリンパソックスなどは中止を検討することをおすすめします。

蜂窩織炎を疑う症状が見られた際には、早期に皮膚科を受診し正しい治療を行うことで悪化の防止や早期回復につながります。自己判断せずに、ご心配の場合は早めの受診をおすすめします。

 

蜂窩織炎の検査や診断について

1: 病歴聴取

今までに発症した病気の中で、蜂窩織炎をおこすリスクのある疾患(たとえば乳がんや子宮がん術後、人工関節置換術後など)に罹っていないかなどの聞き取りを行います。まずは、ご本人の身体の状態を確認し、必要な検査につなげるためです。

診察をする山本医師

2: 全身状態の観察

患部の状態を確認し、熱感や範囲、皮膚の状態などを確認します。その後の経過観察のために、患部の状態などを写真に残しておいたりすることで、治療の評価を行うこともあります。

3: 採血検査

身体の中で炎症が起きると、白血球(身体の中に侵入した菌などに対して攻撃する組織)の数値が上がったり、CRP値が上がったりと採血結果でも炎症の程度をはかることができます。そのため、見た目の評価だけではなく、身体の中の反応も血液検査を通して確認します。

採血


 

蜂窩織炎の治療は?

基本的には抗菌剤を内服もしくは点滴をして投与を行う治療が一般的です。先述したように、主な原因菌は黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌であるため、この様な菌に対しては約1週間〜2週間程度の抗生剤投与を行います。
しかし、菌の種類や患者さんの状態に応じて抗生剤の種類や期間などを調整する必要があり、軽度の場合には飲み薬による通院での治療となりますが、重症な場合には入院が必要となることもあります。

薬を飲む


 

糖尿病などの基礎疾患を持っている方や、自己免疫疾患に対してステロイド剤などを内服している方については、免疫力の低下などが考えられるため、慎重な治療が必要となります。また、、最初は飲み薬で治療を開始した方でも患部の状態や血液検査の結果次第では、点滴治療などへ移行する可能性もあるため、医師の指示に従って継続した治療が必要となります。

蜂窩織炎の予防方法は?

繰り返しにはなりますが、蜂窩織炎とは何らかの原因で菌が皮膚や皮下組織に入ることによって引き起こされる急性化膿性炎症です。
皮膚からの侵入を防ぐためには、傷を作らないようにすることが大切です。仮に皮膚にひっかき傷や火傷などを負った場合には、清潔な状態を保つ様に心がけ、菌を皮膚の深部まで侵入させないようにする必要があります。また、免疫力が低下した方も発症しやすいため、免疫力UPと先述したようなリスクを回避しなければなりません。


 

まとめ

蜂窩織炎は誰にでも発症する可能性があり、原因であるブドウ球菌とレンサ球菌は人の髪の毛や皮膚、喉などによくいるため、発症のリスクは誰にでもあるといえます。
発症を疑う場合には、適切な処置と治療を早急に行う必要があり、放置すると重篤な状態となり、ひどい場合には敗血症となることもあります。どんな病気にも共通しますが、早期の発見や早期の治療が悪化防止の近道となっています。なかなか聞き慣れない病気かとは思いますが、ご心配の場合は近くの病院での診察をおすすめします。

当院では腹部造影CT検査や腹部超音波検査といった画像検査や血液検査などをうけることができますので、ご心配な方は一度ご相談ください。

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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