検査と診断方法
Testing / diagnostic methods
鼠径ヘルニアの診断には視診・触診が基本ですが、超音波・CT・MRI などの画像診断が補助的に行われることもあります。
- 1.視診・触診:立位・臥位で膨らみの有無を確認します
- 2.超音波検査(エコー):腸の突出の範囲を確認します
- 3.CT・MRI検査:診断が難しい場合に追加検査として行われます
鼠径ヘルニアの手術には「開腹手術」と「腹腔鏡手術」の2種類があります。
鼠径ヘルニアの治療法選択においては、患者様の状態、ヘルニアの種類や大きさ、
医師の経験などを総合的に考慮して決定されます。
腹腔鏡手術
鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術は、患者への負担が少なく、早期回復が可能な優れた手術方法です。現在は腹腔鏡手術が主流で、再発率も低いとされています。
一般的に、腹部に3か所の小さな穴(5〜12mm程度)を開け、そこから腹腔鏡カメラと手術器具を挿入して行います。
手術の手順としては、まず腹部に開けた穴から二酸化炭素を注入して腹腔を膨らませます。これにより、術者の視野が確保され、手術操作のスペースが確保されます。次に、腹腔鏡カメラを挿入し、腹腔内の様子をモニターに映し出します。術者はこのモニター画面を見ながら、他の穴から挿入した鉗子や電気メスなどの器具を操作して手術を進めます。
腹腔鏡手術の利点として、傷が小さいため術後の痛みが少なく、回復が早いことが挙げられます。また、拡大視野で手術を行うため、より精密な操作が可能となり、出血量も少なくなります。さらに、美容面でも優れており、術後の傷跡が目立ちにくいという特徴があります。
手術の目的は、ヘルニアの原因となっている腹壁の弱い部分やすき間を補強し、臓器が飛び出さないようにすることです。多くの場合、人工補強材(メッシュ)を用いて修復を行います。
ただし、腹腔鏡手術は技術的に難度が高く、経験豊富な外科医が行う必要があります。また、全身麻酔が必要となるため、患者の状態によっては従来の鼠径部切開法が選択される場合もあります。
術後は通常1〜2日程度で退院が可能で、術後3時間程度で歩行や飲食が可能となります。ただし、メッシュが体になじむまでの2〜3週間は、腹圧をかけるような動作を控える必要があります。また、再発や合併症のリスクがあるため、半年程度は定期的な経過観察が行われます。
前方アプローチ
(鼠径部切開)
一般的に鼠径部切開法と呼ばれる手術方法は、従来から広く行われてきた治療法です。この手術では、足の付け根にあたる鼠径部に5〜6cm程度の切開を加えて直接アプローチします。
手術の主な目的は、ヘルニアの原因となっている腹壁の弱い部分を補強し、内臓の脱出を防ぐことです。成人の場合、多くはメッシュと呼ばれる人工補強材を用いて修復を行います。代表的な術式としては、Lichtenstein法、Mesh plug法、Kugel法、Direct Kugel法などがあり、これらはメッシュの配置方法によって区別されます。
開腹手術の利点として、局所麻酔下で実施可能なことが挙げられます。これにより、全身麻酔に伴うリスクを避けられるため、高齢者や合併症のある患者にも適用しやすいという特徴があります。また、直接的にヘルニアの部位を確認し、修復できるため、確実な治療が可能です。
一方で、腹腔鏡手術と比較すると、術後の痛みがやや強く、回復に時間がかかる傾向があります。また、傷跡が比較的大きくなるため、美容面での懸念もあります。
しかし、再発率に関しては腹腔鏡手術と同等であることが複数の研究で示されています。また、手術時間が腹腔鏡手術よりも短いという利点もあります。
術後は、適切なケアと生活指導に従うことで、多くの患者が日常生活に早期に復帰できます。ただし、再発のリスクを最小限に抑えるため、過度な腹圧上昇を避けるなど、一定期間の注意が必要です。
違和感や軽い痛み
鼠径部に違和感や軽度の痛みを感じることがあり、これらの症状は長時間の立ち仕事や運動後に顕著になる傾向があります。
腸が戻らなくなる(嵌頓:かんとん)
症状が進行すると、腸が戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という危険な状態に陥ることがあります。嵌頓は緊急手術を要する深刻な合併症であり、早期の医療介入が必要です。
鼠径部(足の付け根)の膨らみ
鼠径ヘルニアの主な症状は、足の付け根にあたる鼠径部の膨らみです。この膨らみは、立位時や力を入れた際に特に顕著になります。
寝ると膨らみが消える
初期段階では、横になると膨らみが自然に消失したり、手で押すと戻ったりすることがあります。
嵌頓(かんとん)とは?
嵌頓とは、腸が飛び出したまま戻らなくなり、血流が遮断される状態です。激しい痛み・腸閉塞・腸壊死を引き起こすため、緊急手術が必要になります。
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鼠径部のしこりが硬くなり、押しても戻らない
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激しい痛み・吐き気・嘔吐を伴う
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発熱(炎症や腸の壊死のサイン)