NILMの意味とは?がんと診断された場合の結果表記を解説
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NILMの意味とは?がんと診断された場合の結果表記を解説
「NILMと診断されたけれどよく分からない」
「悪性腫瘍があるということ? 意味を知りたい」
このような疑問はありませんか?この診断結果がどのような意味を示しているのか分からないと、不安になるのは当然のことです。
NILM(ニルム)は、医療業界の専門用語ですので、医療従事者でなければ聞いたことがない方が多いでしょう。
以降では、診断結果や悪性腫瘍があると診断された場合の結果表記について解説します。各がん疾患の特徴や治療法なども解説していますので、気になる方は最後までご覧ください。
NILM(ニルム)とは?がんではないの?
診断結果の表記の一つ「NILM」が指す意味や、炎症ありと診断される原因について解説します。
NILM(ニルム)とは?
結論からお伝えすると「異常はない」という意味です。とても長いですが、NILMは「Negative for Intraepithelial Lesion or Malignancy」を略した言葉です。
これは悪性腫瘍らしきものも含めて見つからないという診断結果であり、「定期的に検診を受けてください」という意味も込められています。
NILM(ニルム)で炎症ありと診断される原因は?
異常なしと診断されたものの、炎症が見受けられると診断されることがあります。このような場合も、悪性腫瘍らしき所見があるわけではありません。
しかし、HPV感染以外の要因で炎症が確認されたり、すでに治っているが跡が残っている状態が見受けられたりすると、診断結果が炎症ありと下ります。
がんに該当する診断結果は?
がんに該当する診断結果の表記は以下の通りです。
- ●HSIL クラスIV
- ●SCC
- ●AGC
- ●AIS
- ●Adenocarcinoma
- ●other mailing
では、以降でそれぞれがんの意味と特徴、症状、治療法について解説します。
HSIL クラスIV(上皮内がん)
HSIL クラスIVと表記された場合は「上皮内がん」が認められる所見があります。HSILには他にも2つの表記があり「クラスⅢa」と「クラスⅢb」があります。
クラスⅢaは、中等度の細胞の異形成が認められ、クラスⅢbはさらに進んだ異形成が見られる状態です。そして、最終段階がクラスIVの上皮内がんとなっています。
子宮頸部異形成についてはこちら
上皮内がんは通常は悪性新生物として扱わない
がんと名前に入っていますが、実は悪性新生物すなわちがんの扱いではありません。浸潤が認められる場合にがんとされますが、上皮内がんには浸潤がないためがんの扱いにはならないのです。
しかし、前がん病変の異形成とよく共存しており、はっきりと鑑別できないため上皮内がんと呼ばれています。
SCC(扁平上皮がん)
SCCは、扁平上皮がんが認められる所見があることを示しています。よく見受けられる悪性腫瘍の一つです。
この場合、速やかに精密検査を行い、本当にSCCかどうかを確認しなければなりません。
扁平上皮がんとは?
扁平上皮がんとは、子宮頸部の入り口の粘膜にできる悪性腫瘍です。組織学的において、扁平上皮がんは約75%を占めています。
前がん状態の場合、もしくは浸潤し始めくらいのタイミングでは初期症状が基本的にないため、気付かないでしょう。症状を感じるとすれば、性交痛です。進行すると腰痛や血尿、血便が見られるようになります。
治療法について
治療方法は、放射線療法や手術療法、抗がん剤治療のいずれかです。悪性腫瘍を切除する手術療法が行われるのが一般的です。
ただし、年齢や進行度合いに合わせて選択されます。そのため、まずは抗がん剤治療からスタートする場合もあります。
AGC(腺異型あるいは腺がん疑い)
AGCと表記されている場合は、腺異型あるいは腺がんの可能性がある所見が認められます。はっきりとはまだ分からないため、詳しく検査しなければなりません。
AIS(上皮内腺がん)
AISと表記されている場合、上皮内腺がんと思われる所見が認められます。精密検査を行い、より詳しく状態を知る必要があります。
上皮内腺がんとは?
子宮内の上皮細胞に悪性腫瘍ができる病気です。発症原因は幅広く、遺伝や環境、生活習慣などがあります。
特にリスクを高める要因として、喫煙やアルコール飲料の摂取、栄養が偏った食事、遺伝が挙げられます。
症状は進行度合いによって異なります。
治療法について
治療法には、抗がん剤治療、手術療法、放射線治療があります。進行具合や年齢によってどの方法を用いるかが選択されます。
ADENOCARCINOMA(腺がん)
もし、診断結果にAdenocarcinomaと表記されている場合、腺がんである可能性が高い所見が認められます。精密検査で詳しく検査をする必要があります。
腺がんとは?
腺がんは、子宮体部近くにある腺組織にできる悪性腫瘍です。組織学的において約23%占めています。
検診では見つけられないことがある上に、転移するリスクが高いため厄介です。予後もあまりよくありません。
海外では扁平上皮がんがよく見られるものの、日本ではこの腺がんの患者数が多いです。
治療法について
腺がんは進行するとリンパへの転移が見られるため、早期に治療しなければなりません。手術でがん化した細胞をきれいに取り除くのがベストですが、骨盤内にまで浸潤している場合は手術では対応できません。
よって、その場合は放射線治療を行います。
OTHER MAILING(その他悪性腫瘍)
other mailingと表記される場合は、これまでご紹介した以外の悪性腫瘍が所見として認められています。この段階では詳しいことが分からないため、詳しく検査を行い、疾患を突き止める作業に入ります。
婦人科検査 結果表の見方についてはこちら
子宮がんの5年生存率とは
子宮がんは早く見つけ治療を開始するほど生存率が高くなります。
本当の初期の場合は100%の確率で完治させられます。しかし、早期発見に至らず進行が見られた場合の、子宮体がんと子宮頸がんそれぞれの5年生存率は以下です。
子宮体がん | 子宮頸がん | |
---|---|---|
80%超え | 80%超え | |
70%超え | 60%超え | |
40%超え | 40% | |
20%未満 | 20%未満 |
上記から、どれだけ早期発見が重要かが分かるでしょう。また、上記の表から子宮体がんのほうが、子宮頸がんに比べて若干予後が良いことも分かります。
NILM以外は早めの受診が重要
NILM以外の表記がある場合は、精密検査となるためできる限り早く受けましょう。精密検査を強いられる状態は必ず悪性腫瘍という結び付けはできません。あくまで、原因がはっきりと分からない、もしくは疑われる状態ということです。
しかし、もし本当に悪性腫瘍だった場合は早く治療をしなければ命に関わります。忙しいと後回しにしがちですが、ご自身の体のことですので優先して検査を受けましょう。
まとめ
異常なしという診断結果であるため、心配しなくても大丈夫です。
しかし、いつ悪性腫瘍ができるか分かりません。
定期的に検診を受け、早期発見につなげることが大切です。
婦人科の検診(子宮・卵巣)についてはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師