尿たんぱく検査で陽性になったら?原因や治療、高血圧との関係を解説
- クリニックブログ
尿たんぱく検査で陽性になったら?原因や治療、高血圧との関係を解説
「尿たんぱく検査が陽性になった原因を知りたい」
「怖い病気が隠れていたらどうしよう」
このように、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
尿にたんぱく質が混じることは、基本的にありません。混じっていることが確認されるということは、腎臓に何かしらの異常がある可能性が高まります。
病気が原因の場合もあれば、妊娠中にたんぱく質が一時的に混じることもあり、要因やタイミングが幅広いです。
以降では、尿たんぱく検査で分かること、たんぱく尿と尿たんぱくの特徴、たんぱく質と高血圧の関係性について解説します。
尿たんぱく検査で分かることは?
尿たんぱく検査で分かることは、たんぱく質が混じっているかどうかと、混じっている量です。基本的には混じっているかどうかの検査のみが行われ、量を測定するのは再検査とする場合のみとなっています。
まず、一般的に行われるのは試験紙での検査です。
採取した尿に試験紙を入れ、陽性反応が出ればたんぱく質が混じっており再検査が必要となります。
再検査を受けた後、次に24時間分の尿を採取し、定量検査を実施します。試験紙での検査はアルカリ性に傾いていると擬陽性が出ることがあり、もしこの定量検査で30mg/dl以下であれば擬陽性判定です。
ただし、30mg/dlを超えると陽性結果に確信が得られます。
たんぱく尿と尿たんぱくとは?
表現として「たんぱく尿」と「尿たんぱく」があり、混同する方もいらっしゃるでしょう。
そこで、最初に違いについて解説した後、基準値や原因、症状などを解説します。
尿たんぱく・たんぱく尿の違いとは?
尿たんぱくとは、尿の中に含まれるたんぱく質そのものを指します。それに対してたんぱく尿とは、異常な数値のたんぱく質が検出され、病的な状態のことです。
尿たんぱくが検出されただけであれば、軽度や擬陽性もあり心配する必要はない段階です。しかし、異常値でたんぱく尿であると診断を受けた場合は、何かしらの疾患が隠れている場合があるため注意しなければなりません。
たんぱく尿の基準値
たんぱく尿の基準値は以下の通りです。
基準値 | 結果 |
---|---|
正常 | |
軽度 | |
高度 |
症状について
尿たんぱくが出たとしても、基本的に自覚症状はほとんど現れません。そのため、知らない間に病状が進行している恐れもあります。
もし、むくみが出るようになった場合、非常に進行している状態です。よって、透析が必要とされる状態になっていることもあります。
原因について
代表的な尿たんぱくが出る腎臓疾患には以下に挙げる疾患などがあります。
- ●慢性糸球体腎炎
- ●糖尿病性腎症
- ●腎硬化症
特徴や症状、原因、治療法について解説します。
慢性糸球体腎炎
糸球体とは、血液をろ過して尿を作っている重要な部位です。その糸球体が炎症を起こし、徐々に機能が低下して健康な尿が作られにくくなる慢性疾患を「慢性糸球体腎炎」と呼びます。
見受けられる症状には、たんぱく尿や血尿、むくみ、めまい、肩こりなどがあります。引き起こす原因はまだはっきりとは分かっていませんが、慢性糸球体腎炎を引き起こしやすい疾患として「IgA腎症」が挙げられます。
「IgA腎症」は原因が定かではないため、まだ確立された治療法はありません。主な治療方法として、薬物療法と食事療法があります。
糖尿病性腎症
糖尿病の関係で血液のろ過を行う腎臓機能が低下する疾患です。糖尿病の治療が進まず、血管にダメージが蓄積することが原因です。
初期症状はほとんどなく、むくみや高血圧、貧血などが見られるようになるとすでに進行しています。
最終的には透析を行わなければなりません。
腎硬化症
腎臓の血流の低下により腎間質が線維化し、さらに進行して糸球体が硬化し、腎臓が硬化する疾患です。長期間高血圧が持続することで起きる動脈硬化が原因です。高齢者に多く見られます。
初期症状は軽度なたんぱく尿があります。
治療方法は、降圧薬の投与です。改善というよりも進行を抑制する目的で行われます。
生理的たんぱく尿との違いとは?
生理的たんぱく尿とは、原因が病気ではないものです。
例えば、たんぱく質のとりすぎで一時的にたんぱく量が増えている場合が当てはまります。また、激しい運動によりたんぱく質が過剰生成される場合や妊娠中、ストレスや疲労がたまっている場合にも見られます。
治療法と最近の薬について
たんぱく尿と診断された場合の治療についてお伝えします。
基本的に行うのは、たんぱく尿を引き起こしている原因疾患の治療です。例えば、糖尿病の場合は血糖値を下げるための治療を、腎炎の場合は副腎皮質ホルモンや免疫抑制薬での治療を行います。
実は、糖尿病に使用されるSGLT2阻害薬は、血糖値の改善だけでなく尿たんぱくを減らす効果があることも判明しました。よって、糖尿病がなくても腎臓の薬として使用することが許可されています。
また、たんぱく尿を改善する効果が期待できる薬として「アルドステロン拮抗薬」が追加で登場しました。ただし副作用として高カリウム血症が起こることがあるため、使用には注意しなければなりません。
たんぱく質と高血圧の関係性
実は、尿中にたんぱく質が出現することと高血圧には密接な関係性があります。
高血圧との関係性
高血圧になるメカニズムをお伝えします。尿たんぱくが尿中に混じる状態になっていると、腎臓の血管が細くなり血流量が減少している可能性があります。
すると、腎臓は正常な血流量を保とうとするため血圧を上げるホルモンを分泌するのです。また、血流量の減少を体の水分量が減少したと勘違いし、尿として排出しなければならない水分や塩分をため込むようにも働いてしまいます。
高血圧と合併するリスク
高血圧になると、腎臓内の血管のダメージが蓄積されるため、病状の進行につながります。腎臓の機能低下が進むと透析が欠かせない状態になってしまうため、高血圧を合併させないよう速やかな治療が重要です。
透析治療まで進まないようにするためには
尿検査や健康診断などで腎臓の機能低下や疾患が見つかった場合、早期に治療すれば腎臓機能は回復します。治療が遅れるほど腎臓機能を戻すことは困難になり、最終的に透析治療にまで進んでしまうでしょう。
まとめ
尿たんぱくが見られる場合、問題ない場合もありますが危険な疾患が原因の場合もあります。
腎臓は、早期発見できない限り一度機能が低下すると元に戻すことはできません。もし、再検査が必要と診断を受けたら、速やかに受けて原因を突き止めましょう。
尿たんぱくに関連する記事はこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師