食道がんにかかる費用について。復職のタイミングもご紹介
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食道がんにかかる費用について。復職のタイミングもご紹介
がんは日本でも死亡率の高い恐ろしい病気であると知られています。体のあらゆる部位にできるため、思わぬところにできてしまったということも少なくありません。
今回は「食道がん」についてご紹介します。食道がんの症状や検査、治療などにかかる費用と退院後の社会復帰のタイミングなども解説します。ぜひ最後までご覧ください。
食道がんについて
食道がんは、口の中から胃に通じるまでの細長い管のような臓器にできるがんのことを示します。食道は3つの部位から構成されていて、口に一番近い上の部位を頸部食道、その下を胸部食道、胃に最も近い部位を食道胃接合部領域と呼びます。
食道がんの原因
食道がんの原因は喫煙と飲酒です。飲酒をすると、発がん性があるアセトアルデヒドという物質が体内に生じます。アセトアルデヒドを代謝しにくい体質の人は食道がんになりやすい傾向があり、さらに喫煙の習慣があると食道がんになる確率が上がるとされています。
また、日頃から野菜や果物を食べる習慣がなく、ビタミン不足だったり栄養が偏っていたりする人も、食道がんのリスクが高まります。
食道の粘膜にできる食道がん
食道がんの半数以上は、食道の中央辺りの粘膜の表面にできます。早期の食道がんは、筒状になっている食道内壁の粘膜表面にできますが、進行すると粘膜の表面から粘膜下層へと広がってしまいます。がんが粘膜内の深い部分に達することを浸潤(しんじゅん)といい、大きくなると粘膜の外側にまで広がり、他の臓器に転移します。
臓器の内側から現れる扁平上皮がん
食道がんは、がんの種類で分類されます。体の臓器には内側が空洞になっているものがありますが、食道もそのひとつです。これらの臓器の粘膜の表面は、魚のうろこのように薄くて平らな形の細胞が集まり組織を作り、この細胞は扁平上皮と呼ばれています。扁平上皮にできるがんが扁平上皮がんです。
食道がんは約90%程度が扁平上皮にできます。
細胞組織から現れる腺がん
扁平上皮がん以外の食道がんの約7%は、臓器の内側の粘膜からできるタイプではなく、細胞組織からできる腺がんとよばれるタイプのがんです。腺がんの場合は扁平上皮がんとは違い、逆流性食道炎などにより胃酸で食道がただれることが原因で、食道下方の食道胃接合部領域にがんができます。
日本人で食道がんを発症する人の多くは扁平上皮がんです。
食道がんで現れる主な症状
食道がんの初期症状はほとんど自覚できず、異常に気づかないことが多いです。しかし、進行するとがんが大きくなって食道内を塞いでしまうため、食事のときなどに食べ物や飲み物がつっかかり、胸に違和感を覚えるという自覚症状が現れます。
ほかにも咳、胸や背中の痛み、声のかすれ、体重減少などの症状が現れます。進行状態によって現れる症状を以下にまとめます。
食道がんの最初の自覚症状
- ● 飲食時のつっかかり感と胸のつかえ
進行した際の自覚症状
- ● 咳
- ● 胸や背中の痛み
- ● 声のかすれ
- ● 体重減少
食道がんになりやすい人の特徴
食道がんは、飲酒と喫煙が関与するため50歳以上の中高年男性がなりやすく、特に70歳代になると最も食道がんのリスクが高くなります。高脂肪の食事、運動不足、熱い食べ物を好む人も要注意です。
食道がん患者の男女比は、圧倒的に男性が多く約5.4:1となっています。特にお酒を飲んで顔が赤くなる人は、アセトアルデヒドを代謝しにくい人なので注意が必要です。日本人の約40%程度の人が該当します。
食道がんのリスクが高い人の特徴を以下にまとめます。
- ● 50歳以上の中高年男性(特に70歳代以上)
- ● 揚げ物など高脂肪食を好む
- ● 運動不足
- ● 熱い食べ物を好む
- ● 飲酒で顔が赤くなる人
食道がんの検査と費用は
自分が食道がんにかかっているかもと不安に思った方や、もし食道がんにかかったら何をするのか疑問に思った方もいるのではないでしょうか。食道がんの検査で何をするのか、費用はどれくらいかかるのか、見ていきましょう。
食道がんを確定する検査
食道がんの疑いがある人は、主に上部消化管内視鏡検査を受けて、食道内の色や異常な細胞があるかなどの状態を直接検査します。2種類の検査のほかにも必要に応じて、超音波内視鏡検査、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、PET検査、血液による腫瘍マーカーも行なうことがあります。
この検査を行うことで、初期の食道がんを発見でき、早期発見することができるのです。
食道がんの進行を見る検査と費用
食道がんと診断されたら、次に進行度はどれくらいなのかを検査します。食道がんの進行度はがんの深さ、食道周辺臓器へどの程度浸潤しているか、リンパ節、肺、肝臓など他の遠隔臓器へ転移しているかなどを検査します。
進行度を見るための検査は必要に応じて、超音波内視鏡検査、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査、PET検査、血液による腫瘍マーカー検査を行います。食道がんの進行度の検査費用は、保険適応や撮影部位ばどにもよりますが、目安は以下の通りです。
検査方法 | 費用 |
---|---|
超音波内視鏡検査 | 3,000~20,000円程 |
超音波(エコー)検査 | 3,000円程度 |
CT検査 | 9,000~30,000円程度 |
MRI検査 | 13,000~30,000円程度 |
PET検査 | 150,000円程度 |
腫瘍マーカー(CEA) | 2,000円程度/td> |
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食道がんの治療は
食道がんの治療は初期段階のものであれば、内視鏡的切除を行います。進行しているものは、ステージに応じて外科的手術、放射線療法、化学療法などを併用します。
外科的手術を行なった場合の合併症には、主に次のような症状が見られます。
- ● 縫合不全(手術部分のつなぎ目のほころび)
- ● 肺炎
- ● 声のかすれ
- ● 肝臓、腎臓、心臓などの臓器の障害 など
これらの合併症が死亡につながるリスクは2〜3%程度といわれています。
治療はがんの進行具合によって変わる
食道がんの治療は、進行度合いを診断するステージや、食道がんの性質で内容が異なります。一般的には内視鏡的治療、外科的手術、放射線療法、化学療法があり、これら4種類の治療を食道がんのステージにより併用します。全ステージの治療は日本食道学会の食道癌診療ガイドラインに基づき、新たな治療方法が見つかると改定されます。
食道がんの見た目は初期段階では淡く赤いです。その赤い部分に、白い粒状の隆起や濃い赤に変色した部分、デコボコが見られるようになります。その後、食道がんが進行すると食道を塞いでしまいます。
食道がんの治療には公的補助の利用もできる
食道がんの治療は高額になるため、1ヶ月以内の自己負担額が一定額を超えた場合、自己負担額を超えた額の払い戻しを受けられる高度療養費制度が利用できます。また、医師に「治癒が困難である」と判断された方は介護保険が適用されることもあり、1割負担で介護サービスが受けられます。
食道がんの復職のタイミングは
食道がんの治療が終わったら、社会復帰のための食事プログラムやリハビリなど入院前の生活に少しずつ戻す過程があります。食道がんの治療後は適切な食事や適度な運動で体力をつけることも大切です。
さらに、退院後は定期的な通院が必要になります。再発のリスクもあるので正しい情報を知って、生活習慣に気を付けることも大切です。
退院したら適度な運動と食事のリハビリをする
食道がんの人は退院後に好きな物を食べることはできますが、なるべく食べ物のサイズを小さくしたり、消化が悪い食べ物や乾燥してパサパサした食べ物を避けたりするという注意点があるので、必ず医師の指示に従いましょう。
飲み物についても誤嚥防止のため、とろみをつけたり、熱いものは避けたりしましょう。体力をつけるために散歩など軽く運動することも大切です。
退院後も通院が必要となるケースが多い
退院後の1年間は、外来診療で最初は1ヶ月に1度、その後は2ヶ月に1度程度の通院による定期検診をする医療施設がほとんどです。1年を過ぎると5年目までは年に3回程度、通院と検査が必要です。
定期検診ではCT検査と採血検査、内視鏡検査を行い、必要に応じてビタミンB12製剤や十全大補湯という漢方薬の処方も行ないます。
会社に治療のスケジュールなどを伝えておくと良い
食道がんの治療は職場の方の協力が不可欠です。上司や人事には食道がんで治療や通院が必要になることを告げ、治療や通院スケジュールを伝えておくと、周囲の協力も得られやすくなります。同僚や部下、取引先には病名の告知は必要ありません。
がん支援制度を導入している企業もあるので、就業規則を確認したり総務や人事に相談したりしてみましょう。
食道がんの再発率
食道がんの再発率は30~50%といわれており、ほとんどが初回の治療から1年以内で見つかるといわれています。再発部位は、頸部リンパ節や最初にがんができた部位、あるいはその近くに食道がんができる局所再発が20~70%、肺、肝臓、骨、脳への遠隔臓器再発が10~50%、これらの両方が複合して再発するリスクが7%~27%になっています。
まとめ
ここまで「食道がん」について検査・治療にかかる費用や復職のタイミングについてご紹介してきました。がんは進行度合いによって、治療方針を患者と相談しつつ決定します。治療方針が定まったら、まず会社の上司などに治療スケジュールなどを伝えて相談しておきましょう。企業のなかには大病の手当を出してくれるところもあります。
費用に不安があれば、公的補助を受けられる可能性もあるため、市役所や医師に相談するのがおすすめです。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師