エコノミークラス症候群の原因とは?症状や危険性、予防法とあわせて解説
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エコノミークラス症候群の原因とは?症状や危険性、予防法とあわせて解説
長時間の飛行機や電車での移動で同じ姿勢を取ることによって引き起こされるエコノミークラス症候群が、実は重症化すると命の危険を及ぼすこともある意外と恐ろしい病気であることはご存知でしょうか?
この記事では、エコノミークラス症候群の症状や危険因子、予防のための基本的な知識について詳しくご紹介していきます。
エコノミークラス症候群について不安のある方はぜひ参考にしてみてください。
エコノミークラス症候群とは?
文字通り、エコノミークラスの飛行機などに乗る際に心配するべき病気などとして名前を聞くこともある、エコノミークラス症候群ですが、具体的にどういう原因でどんな症状が見られるのか解説いたします。
エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)を発症する原因
長距離の乗車やフライトなど、食事や水分を十分に取らない状態で狭い座席に長時間座っていて足を動かさないでいると、血行不良により血液が固まり、血栓ができてしまいます。
その結果、血栓が血管の中を流れ、右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれ、血管に詰まる病気のことをエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)といいます。
エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)の症状
小さな血栓の場合は特にこれといった症状が見られないこともありますが、ある程度の大きさの血栓では、息苦しさや息を吸った際の胸痛、冷汗、失神、動悸といった症状がみられるようになります。
また、立ち上がった際に血栓が肺に到達することで血管が詰まり、呼吸困難や意識障害などの症状を起こして倒れてしまうケースもあります。
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エコノミークラス症候群の危険因子
以下では、エコノミークラス症候群における3つの危険因子、エコノミークラス症候群を起こしやすい方、死亡率について説明していきます。
エコノミークラス症候群における3つの危険因子
静脈内に血栓が生じるのには、原因として以下の3つが関係していると言われています。
①静脈の血液の流れが停滞している、流れが悪い
- ・長時間同じ姿勢でいる(寝たきり、長距離旅行)
- ・肥満
- ・妊娠
- ・高齢者
- ・心疾患
- ・下肢麻痺
- ・下肢静脈瘤
②血液が固まりやすい状態になっている
- ・抗リン脂質抗体症候群
- ・経口避妊薬
- ・ホルモン剤
- ・脱水
- ・がん(悪性腫瘍が血液を固まりやすくするものがある)
③静脈の血管が傷ついている
- ・手術などによる血管損傷
- ・カテーテル検査
- ・静脈炎
- ・糖尿病
- ・喫煙など
エコノミークラス症候群を発症しやすい方
以下のような特徴・危険因子をお持ちの方は、他の方に比べエコノミークラス症候群を発症しやすいため、よく注意しましょう。
- ● 血流が滞りやすい人、血管が傷ついている
- ● 肥満
- ● 高齢
- ● がんの治療歴がある
- ● 経口避妊薬(ピル)を使用している
また、乗り物での移動で長時間同じ姿勢でいることや、災害時の車中避難(車中泊)にも注意が必要になります。
エコノミー症候群の死亡率
エコノミークラス症候群における発症早期の死亡率は約10〜30%と言われています。
しかし何より怖いのは、別の静脈血栓が再度血管に詰まるというエコノミークラス症候群の「再発」です。
再発した場合には急死する可能性も少なくないため、すぐに入院し必要な治療を受けるようにしましょう。
エコノミークラス症候群の検査と治療、予防方法
エコノミークラス症候群の症状や危険因子について説明していきましたが、どのような検査や治療が行われるか、そして予防方法についても紹介していきます。
エコノミークラス症候群の検査方法
症状によって検査方法は異なりますが、基本的に以下の検査が行われます。
血液検査
血液が固まりやすい体質か、D-ダイマーという凝固マーカーを使って血液検査を行います。
新鮮な血栓が体の中にできた場合、指標の値が上昇します。
心電図検査
心電図検査でエコノミークラス症候群かどうかを確定させることはありませんが、心電図から右心負荷所見を読み取ることで、診断の一助としています。
X線検査
低酸素の原因となる所見がないか、血管影の減少・肺動脈主幹の拡張・梗塞などの所見がみられるかを検査します。
エコー(超音波)検査
血行動態の不安定な、原因のはっきりしない呼吸困難、失神、右心不全の鑑別診断ではエコー検査が有効とされています。
エコノミークラス症候群の治療方法
エコノミークラス症候群の治療では「抗凝固薬」が使用されています。
しかし、動脈血栓症と静脈血栓症では生成される血栓が異なるため、それぞれに異なる治療剤を使用します。
- ● 動脈血栓症に生成される血栓は「血小板血栓(血流の速い血管で生成されやすい血栓)」のため、治療薬は抗血小板薬などを使用
- ● 静脈血栓症に生成される血栓は「フィブリン血栓(血流の遅い血管で生成されやすい血栓)のため、治療薬は抗凝固剤などを使用
また、血栓を取り除く外科手術と、肺動脈を拡張する薬の内服、「バルーンカテーテル」で血管を拡張するカテーテル治療があります。
一般的に、肺動脈の中でも心臓に近い太い血管にある血栓には外科手術が、心臓から遠い細い血管には薬やカテーテル治療が向いていると言われています。
エコノミークラス症候群の予防方法
エコノミークラス症候群はときに命に関わる病気を引き起こすこともあります。
以下に予防方法を紹介していきます。
- ● 長時間同じ姿勢にならないように心がけましょう。
→飛行機や車内に長時間滞在する場合は、足首や足の指だけでも動かして血流を良くすることが予防に繋がります。 - ● 脱水を起こさないように適量の水分摂取を取りましょう。
- ● バランスの良い食事をとり、生活習慣の改善を心がけましょう。
- ● 期臥床を余儀なくされる場合、長時間の手術を行う場合は早期から弾性ストッキングを着用しましょう。
- ● 血栓症のリスクが高い方は主治医に相談し予防的に薬による抗凝固療法を検討しましょう。
エコノミークラス症候群に効果的なマッサージ
エコノミークラス症候群を予防する方法の一つとして着席時のふくらはぎマッサージというものがあります。
マッサージの手順は以下のとおりです。
- ● 片足の甲で反対側の足を叩く
- ● 心臓に向かって下から骨に沿ってさする
- ● ふくらはぎを心臓に向かって揉む
エコノミークラス症候群は、下肢の血流が悪くなることが大きな要因の一つとなっているため、血流が悪くならないようにマッサージを行うことが予防につながるのです。
まとめ
本記事では「エコノミークラス症候群」について詳しく解説いたしました。
エコノミークラス症候群はその程度によって生命を脅かすこともある危険な病気です。
少しでも身体に異常を感じた時はすぐにかかりつけ医に相談することが大切です。
症状からエコノミークラス症候群が疑われる場合は、呼吸器科、内科、循環器科、心臓血管外科を受診するようにしましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師