片頭痛とは?原因、症状、治療法について解説
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片頭痛とは?原因、症状、治療法について解説
「体質だから片頭痛が治らないのは仕方ない」
「頭が痛くなるのはいつものことだから、鎮痛薬を飲めば大丈夫」
このように我慢し、鎮痛剤に頼る日々を過ごしている方は多いのではないでしょうか。
「片頭痛持ち」という言葉があるように、片頭痛は体質的なものとして捉えられやすいです。
そのため、治らないとあきらめて鎮痛薬を持ち歩くことが習慣になっているケースも少なくありません。。
しかし、体質ではなく、発症をうながす起因はあり、治療することも可能です。
また、鎮痛薬を過度に使用すると危険な副作用を引き起こす要因にもなるため、根本的な改善が望ましいです。
根本的改善に向けて、片頭痛の要因や予防・治療法を解説しますのでぜひ参考にしてください。
片頭痛とは
頭の片側または両側のこめかみあたりに痛みを感じ、吐き気を伴うことがあるのが特徴の頭痛です。
仕事や家事ができないほどの痛みや吐き気が、月に1〜2回、多い方は週に1回〜2回の頻度で定期的に発症する傾向にあります。
そのメカニズムはいまだ解明されていません。
しかし、現時点では、光や音、においなど様々なことがきっかけで神経伝達物質が分泌され、硬膜の神経と血管まわりが炎症を起こすためだと考えられています。
血管説や神経説、三叉神経血管説なども検討されていますが、研究が進むなかで血管説は有力でないという論文が発表されています。
片頭痛には前兆があるタイプとないタイプがあり、細かく分類され痛み方や頻度、原因などもそれぞれ異なります。
以降で特徴を解説しますので、どの症状に近いかチェックしてみましょう。
片頭痛のタイプ
片頭痛のタイプは4種類あります。
- ●緊張型頭痛
- ●群発頭痛
- ●家族性片麻痺性片頭痛
- ●慢性片頭痛
一つずつ解説します。
緊張型頭痛
月に15日未満の「反復性」と、月に15日以上または3か月を超える「慢性」とで分類され、さらに圧痛があるかどうかでも分類されています。
圧迫感もしくは締め付けられるような感覚の痛みが、30分から長い時は7日間程度続くのが特徴です。
症状の程度は軽度〜中等度のため、動けないほどの頭痛になることはあまりありません。
群発頭痛
数週間から数か月の期間に頭痛が群発するタイプです。
痛みは激しく、眼の周囲や前頭部、側頭部で痛みを感じます。
発作を起こす頻度は少ない場合で2日に1回、多い場合で1日に8回程度ですが、15分〜180分でおさまるためほかのタイプと比べると発作時間は短めです。
症状が強いうえに発作頻度が高いため、生活に支障をきたしやすいタイプの頭痛と言えます。
寛解する時期があるのも特徴ですが、なかには寛解の時期がない方や3か月程度と短いケースもあり、慢性タイプに移行しやすいです。
20〜30才の男性に多い傾向でしたが、最近では女性の発症率も上がっていることが、欧米の調査結果でわかっています。
家族性片麻痺性片頭痛
家族性片麻痺性片頭痛は稀なタイプで、体の片側のみが筋力低下を起こすのが特徴です。
染色体の1番・2番、もしくは19番に異常があると発症することが知られています。
症状は、同じ家系でも個人レベルで異なることがあります。
頭痛がなく前兆の症状だけが見られたり、回転性めまいや片麻痺が主な症状であったり、頭痛が主な症状であったりとさまざまです。
慢性片頭痛
月の半分以上に加えて3か月以上頭痛がある場合、ほかの頭痛のタイプと混合した慢性片頭痛の可能性が高いです。
人によっては、毎日頭痛発作が起きる「慢性連日性頭痛」に悩まされている場合もあります。
発症の原因とは?
4種類の頭痛タイプがあることをお伝えしましたが、発症の原因は以下があります。
- ●遺伝的要因
- ●環境的要因
- ●神経伝達物質の異常
- ●月経周期
- ●食べ物
では、一つずつ解説します。
遺伝的要因
片頭痛は、家族歴のある人により多く発生する傾向があります。
遺伝子の変異が、片頭痛を引き起こす可能性があるとされています。
環境的要因
環境的な要因とは、
例えば強い光や気候の変化、ストレスなどです。
強い光は網膜細胞や脳の神経、自律神経に影響を及ぼし、痛みを引き起こすと考えられています。
気候の変化は自律神経の乱れを起こし、血管が収縮されたり拡張されたりすることが原因です。
ストレスも筋肉の緊張や自律神経の乱れを誘発し、血管が収縮されて血行不良に陥ることが頭痛を起こす要因と考えられます。
神経伝達物質の異常
片頭痛を引き起こすきっかけとして、神経伝達物質の異常分泌が原因であることが指摘されています。
神経説とも呼ばれています。
三叉神経が何かしらの原因で刺激されると、血管の運動に作用する物質などが放出され、神経原性炎症を引き起こすことが原因であるという考えです。
三叉神経が受けた刺激が脳幹の神経核に伝導する過程で、自律神経の活性化や悪心や嘔吐の症状が見受けられます。
片頭痛でも吐き気や嘔吐が見られるケースがあるため、可能性があると考えられています。
関連しているとされている神経伝達物質は、セロトニンやドーパミン、GABA、CGRPなど複数挙げられています。
月経周期
女性ホルモンであるエストロゲンは、片頭痛との関連性があると考えられています。
濃度が上がったり変動したりしやすい思春期や月経前後・最中に、片頭痛の発生率が高まるためです。
エストロゲンの濃度が安定しやすい妊娠中期や後期では片頭痛が起こりにくく、重症度も下がる一方で、エストロゲンの濃度変動が著しい産後は悪化しやすい傾向があります。
食べ物・飲み物
もちろん個人差はありますが、以下の食べ物が痛みを引き起こすトリガーになっていると報告されています。
- ●チラミンを含む食べ物(そら豆、サラミ、魚の干物・燻製、熟成チーズなど)
- ●硝酸を含む食べ物(ランチョンミート、ホットドッグなど)
- ●カフェイン(紅茶・コーヒー・緑茶など)
- ●グルタミン酸ナトリウムを含む食べ物(ブイヨン・香辛料・調味料・うみ味調味料)
あくまで頭痛のリスクがあるというだけであり、必ずしもこれらが原因とは言い切れません。
過剰に心配して飲食を一切避けるのではなく、摂り過ぎないようにするという捉え方でよいでしょう。
その他の頭痛
その他の頭痛の原因として考えられるのが、眼精疲労やうつ病や不安障害、脳の疾患です。
眼精疲労は、視神経を酷使するため眼が疲れ、頭や頸部の筋肉に負荷がかかるため頭痛を引き起こすと考えられています。
うつ病・不安障害に関しては、統計的に頭痛を発症しやすいとされています。
頭痛を引き起こす脳疾患の代表例は、出血性の疾患や脳腫瘍などです。
頭痛があまりにもひどく倒れてしまうほどである場合、脳疾患と予想できるため早めの受診が必要です。
血管拡張は原因ではない可能性が出ている
長年、血管の拡張が片頭痛を引き起こしていると考えられてきました。
理由は、痛みの感じ方が拍動性であること、頭痛が浅側頭動脈の拍動に一致して増強していることが観察されているためです。
しかし、片頭痛を起こしている患者さんの様子を観察したところ、血流の増加がみられましたが、そのタイミングと頭痛発作のタイミングにずれが生じていました。
よって、血管の拡張が片頭痛を引き起こしている説は有力ではない可能性があると指摘されています。
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片頭痛の症状
片頭痛の症状は、頭痛を引き起こす前に予兆期、前兆・前駆期があります。
予兆期
予兆期は必ずしも来るものではありませんが、以下のような症状があらわれることがあります。
- ●気分の変動(イライラ・集中力できないなど)
- ●首の痛み
- ●食欲増加もしくは食欲低下
- ●吐き気
- ●倦怠感
- ●眠気 など
なお、これらの症状があらわれた場合は、数時間後に発作が起きやすいです。
前兆・前駆期
前兆・前駆期として、片頭痛に悩む方の約25%が体に異変を感じているといわれています。
具体的には、以下のような症状が見受けられます。
- ●光がギザギザに走る
- ●視野の一部に欠けがある
- ●チカチカとした光が見える
- ●平衡感覚がなくなる
- ●腕や脚の力が抜ける など
代表的な症状は、視界・視覚の異変です。
平衡感覚や脱力感などの症状はそれほど多くありません。
これらの症状は、数分から1時間程度続くのが一般的です。
しかし、ときには発作がはじまってもそのまま続くこともあります。
主な症状
片頭痛の症状には、以下のようなものがあります。
- ①頭の一部、または全体が痛む。
- ②鈍痛や鋭い痛み、重圧感、ピリピリ感、刺すような痛みなど様々な症状がある。
- ③痛みが頻繁に起こり、長時間続く場合がある。
- ④光や音、においなどに過敏に反応する場合がある。
- ⑤吐き気、嘔吐、めまいなどの症状が合わさることがある。
- ⑥体力の低下、集中力の低下、イライラ感などの症状がある場合もある。
上記のように、種類によって様々な症状があります。
痛みの性質や場所、合わせて他の症状も観察することで、その種類を判断することができます。
片頭痛の検査方法
頭痛の原因を特定するためには、以下のような検査があります。
それぞれの検査方法について紹介していきます。
①病歴や身体検査
痛みの部位や性質、他の症状、日常生活や仕事のストレスなどの情報を聞き取り、身体検査を行います。
②血液検査
頭痛の原因に応じて、血液中の炎症や感染症の指標、貧血や異常な血糖値などを調べます。
③脳神経画像検査
MRIやCTスキャンなどの画像検査を行い、頭部に何らかの異常がないか調べます。
④眼底検査
眼底を観察することで、脳に影響を与える疾患を発見することができます。
⑤脳波検査
脳波を測定することで、てんかんや脳波異常があるかどうかを調べることができます。
これらの検査は、医師が頭痛の原因を正確に特定するために行われます。
頭痛が繰り返し発生する場合は、専門の医療機関で受診することが重要です。
片頭痛の治療方法
頭痛の治療方法には、以下のようなものがあります。
①薬物療法
薬物療法は対症療法です。
抗炎症薬や鎮静剤、吐き気止めなどの薬を使用して症状の緩和、進行の阻害を行います。
軽度の痛みには、鎮痛剤が効果的です。
なお、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンを処方されることがあります。
また、症状の強さや頻度の高さによっては予防薬を処方します。
発作が起きそうなときに飲むと効果が高いです。
②緩和療法
リラックス効果や血行促進効果がある方法を取り入れます。
具体的には、マッサージやアロマセラピーなどです。
頭痛の原因の一つとして、筋肉の緊張で血管が収縮され、血行不良が起きることが挙げられるため、筋肉の緊張をほぐし血行を促すことで症状が緩和される可能性を期待して行います。
③頭痛の原因に応じた治療
頭痛の原因が特定できれば、その原因に対して適切な治療を行います。例えば、歯科治療や眼科治療、神経内科や脳外科の手術などが考えられます。
ただし、頭痛に対する治療は、痛みの原因や種類によって異なるため、自己判断で治療を行うことは避けるべきです。
適切な診断と治療を受けるために、医師の指示に従って適切な処置を行うことが大切です。
④薬物乱用頭痛の治療
片頭痛の原因には、トリプタン系の薬物乱用が原因となることもあります。
慢性頭痛に悩まされ、高頻度で長期的に頭痛薬を服用すると薬物乱用頭痛を引き起こすのです。
この治療では、服用している薬の服用中断、予防薬の投与、服用中断により起こる頭痛への対処を行います。
片頭痛の予防方法
片頭痛はある程度予防可能です。
具体的な予防方法には、以下が挙げられます。
- 1.適度な運動
- 2.ストレスの軽減
- 3.適切な姿勢の保持
- 4.適度な水分補給
- 5.薬物乱用の回避
- 6.片頭痛を和らげる食事
一つずつ解説します。
1.適度な運動
適度な運動は、片頭痛の発症予防のひとつです。
理由は詳しくわかっていませんが、血行が促されること、ストレス発散効果があることが関係しているとみられます。
実際に、有酸素運動によって片頭痛の発症日数が減少し、痛みの程度が小~中にまで軽減されたという調査結果が報告されています。
代表的な有酸素運動を挙げますので参考にしてください。
- ●ウォーキング
- ●水泳
- ●なわとび
- ●昇降運動(踏み台・階段の上り下り)
- ●ヨガ
- ●サイクリング
- ●ジョギング
- ●ステッパー など
運動習慣がない方は、習慣化しやすい時間と強度で無理のない範囲で行いましょう。
2.ストレスの軽減
ストレスの軽減は頭痛発作の予防に期待ができると考えられています。
理由は、ストレスによる筋肉の緊張を防ぐことで、血行不良による頭痛を防ぐ可能性があるからです。
ストレスを軽減する方法には以下のようなものがあります。
- ●日光浴
- ●軽い運動・散歩をする
- ●映画鑑賞をする
- ●塗り絵やプラモデル制作などの集中できることをする
- ●湯船につかってゆったり過ごす
- ●しっかり睡眠時間を確保する
ストレスを解消するには、心身を休めること、気分をリフレッシュさせることが重要です。
上記のように、ご自身が心身を回復させリフレッシュできる方法を見つけましょう。
3.適切な姿勢の保持
デスクワーク時や食事の際の座る姿勢を正したり、立ち姿勢や歩く姿勢を正したりすることも頭痛発作の予防に効果的と考えられています。
筋肉への偏った負荷による血行障害を予防できたり、体の負担を軽減できたりするためです。
正しい座り姿勢は、まずかかとを床につけ、膝は90度の角度に保ち、背筋をまっすぐにした姿勢です。
正しい姿勢を保つには、インナーマッスルや体幹の強化も必要ですので、プランクなどのトレーニングも併せて行うと良いでしょう。
4.適度な水分補給
脱水も血液循環を悪くさせ頭痛を引き起こす原因ですので、適度な水分補給は効果的です。
食べ物からでも水分は補給できますが、それだけでは足りません。
お茶やミネラルウォーター、経口補水液からも水分を摂りましょう。
なお、コーヒーや緑茶、紅茶といったカフェイン類、アルコール飲料は水分を排出させるため、水分の補給にはなりません。
5.薬物乱用の回避
過剰な薬物使用は、頭痛の悪化を引き起こす可能性があります。
頭痛の症状が出たときに、薬物を適切な用法・用量で服用してください。
6.片頭痛を和らげる食事
片頭痛を和らげる食材を使った食事を摂るのも有効です。片頭痛に効果的な食材として、以下のようなものがあります。
- ●ビタミンA(卵黄、にんじん、ほうれん草など)
- ●ビタミンB2(豚肉、卵、大豆、うなぎなど)
- ●ビタミンC(イチゴ、じゃがいもなど)
- ●ビタミンE(うなぎ、しじみ、大豆など)
- ●マグネシウム(ほうれん草、大豆製品、魚介類など)
- ●トリプトファン(牛乳、大豆、果物など)
雨や台風などの低気圧の日、ストレスの蓄積を感じる時など、頭痛を起こしそうな時に積極的に取り入れてみましょう。
まとめ
片頭痛の主な原因には、ストレスや眼精疲労、悪い姿勢の保持、強い光の刺激などがあります。
遺伝的要因などもあり、原因を突き止めるのはそう簡単ではありません。
定期的な頭痛に悩まされている方は、生活習慣の見直しを行いつつ、頭痛外来や脳神経外科・内科などを受診してみましょう。
市販薬の鎮痛剤は便利ですが、なかには薬物乱用頭痛を引き起こすものもありますので、慎重に選ぶことが大切です。
自分に適した治療を受けるためにも、片頭痛で悩んでいる方は一度医療機関に相談することをおすすめします。
片頭痛についての詳しい内容はこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師