手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)とは?手の半分だけが痺れる不思議な症状について解説

  • クリニックブログ
2023/11/14

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)とは?手の半分だけが痺れる不思議な症状について解説

通常、手が痺れるというと手のひらから指先まで全体が痺れる状態を思い浮かべるでしょう。しかし「手根管症候群」では、手の甲は痺れていないにも関わらず指先だけが痺れるという症状がみられます。
 
今回はそんな手根管症候群の原因、症状、治療法などについて解説いたします。

院内写真
 
 

手根管症候群とは

まず、手根管とは「手のひらの手首の真ん中にある筒(トンネル状)」のことです。
手根管には正中神経という神経が通っています。
この正中神経は、親指、人差し指、中指、薬指の4本の指に向かう神経です。
 
この手根管が何らかの原因で狭くなり圧迫されると、中の正中神経も圧迫されます。
それが、親指、人差し指、中指、薬指(薬指は親指の半分)の痺れという症状として表れるのです。
 

手根管症候群の原因

手根管症候群の多くは突発性のものであり、明確な原因は未だにハッキリしていませんが、スポーツや仕事などで「手首を使いすぎている方」が多く発症しているといわれています。
また手根管が何らかの原因で狭くなったり、神経が圧迫されることで発症するともいわれています。
 

手根管症候群と腱鞘炎とばね指の違い

手や手首の痺れや痛みだと、他の疾患である可能性もあります。
腱鞘炎や他の疾患との違いは以下の通りです。
 

  • ● 手根管症候群は、手根管が圧迫されることによる「神経障害」
  • ● 腱鞘炎は、腱鞘腱がこすれ合って起こる「腱鞘の炎症」
  • ● ばね指とは、手のひらの指の付け根の腱の腱鞘炎でよく見られる症状の1つで、親指や中指がまるでバネのようなカクカク、ガックンとしたぎこちない動きになってしまう症状です。

 
 

手根管症候群の症状

先述のとおり、手根管症候群は指先だけが痺れる病気ですが、より具体的にはどんな特徴があるのでしょうか。
また手根管症候群になりやすい方についても解説いたします。
 

手根管症候群のとても特徴的な症状

手根管症候群の症状は、主に親指、人差し指、中指、薬指の痺れや痛みです。
そして、とても特徴的なのは、薬指の痺れが「親指側の半分」であることです。
 
症状が酷いと、手のひら全体、手首まで痺れが広がることもあります。
悪化すると、親指の付け根の筋肉が痩せ、ものを掴む・つまむなどの日常的な動作に支障をきたす状態になります。
 

手根管症候群になりやすい方とは

原因は不明とされていながらも、手根管症候群を発症するのは女性が多いとされています。
家事・育児に限らず、手首を酷使するスポーツや仕事をされる方も手根管症候群になりやすいと言われています。

 
 

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手根管症候群の検査方法・治療方法

では、手根管症候群はどのように治療してもらえるのでしょうか。
また手根管症候群と判断するために、どんな検査が行われるのか解説いたします。
 

手根管症候群の検査

まず、手根管症候群が疑われる際に受診するべきは整形外科です。
診察室で医師から以下のような簡単な検査が行われます。
 

  • ● ティネル様サイン
    →手首を打腱器で叩いた時に痺れ感、痛みが指先まで響くかチェックします。
  • ● ファレンテスト
     →手首を90度(直角)に曲げて、手の甲同士を合わせ続けます。60秒間以内に痺れ感、痛みが悪化するかをチェックします。

 
その他にも、「指でOKサインをしてみてください。」と言われることがあります。手根管症候群が悪化すると母指球(親指の付け根の筋肉)が痩せ、OKの「O」の形が上手く作れなくなるのです。
 
さらに、他の疾患と区別したり、他の疾患も併発してないかを調べるため、以下の検査も行います。手根管症候群であると確定診断をするための検査です。
 

神経伝導検査

神経伝導検査では、正中神経の伝導速度を測定します。皮膚の上に電極をつけ、電気刺激を与えます。手根管症候群では、手首の部分で神経が伝わる速度が通常より遅くなります。
 

筋電図検査

筋電図検査では、針を筋肉に刺すことで筋肉が発する活動電位を計測し、筋肉の麻痺がないか検査します。
 

その他の検査

腫瘤があって手根管を圧迫していることがありそうな場合は、超音波検査(エコー検査)、単純X線、CT、MRIなどの腫瘍や手根管の状態を画像を見る検査が行われます。(超音波検査は臨床検査の生理検査室で臨床検査技師、その他は放射線科の放射線検査室で診療放射線技師が行います)
 

手根管症候群の治療法

手根管症候群の治療では、保存的療法が基本です。
また、末梢神経痛の改善のためのビタミンB12や、痛み止めとして消炎鎮痛剤などの飲み薬、塗り薬、塗布薬も処方されます。
 
さらに、手首の運動、仕事、家事の軽減をし、シーネやサポーターなどで手首に負担をかけないような状態にさせます。
手首の滑膜のむくみを取るために、手根管内注射をすることもあります。
 
痺れ・痛みが引かない場合や、母指球(親指の付け根の筋肉)の痩せが著しいもの、腫瘤がある場合などは手術をすることもあります。
以前は、手のひらから腕(前腕)にかけて切るという手術が行われていましたが、現在は内視鏡を使って行う皮膚に小さな穴を開けるだけの「鏡視下手根管開放術」や、皮膚を小さく切るだけの「直視下手根管開放術」を行うのが一般的です。
手術施設のないクリニックなどにかかっている場合は、医師に診療情報提供書を出してもらいます。
 

気になる方は早めに整形外科を受診しましょう

手の指先だけに痺れを覚え、朝方に痛みを感じる場合、それは手根管症候群かもしれません。軽症の場合は自然治癒で治ることもありますが、すべての手根管症候群が放置していることで治るわけではありません。
 
手根管症候群が悪化し、親指の付け根の筋肉が痩せてくると、握力も弱まってしまいます。
そして症状が進行すれば、手を使った細かい作業全般ができなくなってしまうでしょう。
症状が悪化すると仕事・育児・スポーツで欠かせない動作ができなくなってしまうため、楽観視せず、症状が進行しないうちに整形外科を受診しましょう。

 
 

まとめ

今回は手根管症候群について解説いたしました。
指先が痺れるだけの病気と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、治療することなく放置したことで悪化してしまうと、握力が弱くなったり、細かいものが掴めなくなったりと、日常生活にも多大な影響を及ぼすおそれがあるのです。
 
手根管症候群は必ずしも自然治癒するとは限らないため、気になる方は早めに治療を受けるようにしましょう。

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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