乳腺嚢胞は放置しても大丈夫?がんになる可能性や類似疾患を解説
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乳腺嚢胞は放置しても大丈夫?がんになる可能性や類似疾患を解説
「乳腺嚢胞はがんになる可能性があるのでは?」と不安になっていませんか?
乳がんは転移するリスクがあるため、発症すると怖いと感じる方は少なくないでしょう。
結論からお伝えすると、乳腺嚢胞はがんではありませんし、がんになることもありません。
以降で詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
乳腺嚢胞の症状や原因・治療法について
乳腺嚢胞とは?症状やがんの可能性
乳管の分泌物がたまった袋状のもので、35歳〜50代の女性によく見られます。なお、たまっているものは液体のため、がんではありません。
また、悪性腫瘍に変わることもありません。がんは、がん化した組織を作り出す場合は液体にはならず、硬いしこりを作ります。
発症原因
発症する原因は、実はよく分かっていません。しかし、発症傾向から読み取ると、女性ホルモンのバランスが関係していると考えられています。
嚢胞が大きくなったり小さくなったりするタイミングが、毎月女性ホルモンの濃度が変化するタイミングに重なるためです。
治療法について
嚢胞があることにより圧痛を感じる方は、液体成分を抜いてもらうことで楽になります。
液体を抜くのは注射で行います。通常の採血と同じくらいの痛みですので麻酔は必要ありませんが、乳輪付近は痛みが強くなりやすいです。
女性ホルモンを整える方法
女性ホルモンによって発症すると考えられているため、予防のためにはホルモンバランスを整えることが大切とされています。
ホルモンバランスを整える方法には、例えば以下があります。
- ●軽い運動を取り入れる
- ●食事の栄養バランスを意識する
- ●良質な睡眠をとる
では、詳しく解説します。
軽い運動を取り入れる
軽い運動とは以下のようなものをいいます。
- ●散歩
- ●ウォーキング
- ●軽いジョギング
- ●エアロバイク
- ●ストレッチ など
疲れすぎて動けなくなるような運動は、習慣にすることは困難です。運動は習慣化させるのが望ましいため、ご自身が心地良いと思うレベルの運動量で行いましょう。
食事の栄養バランスを意識する
ダイエットで極端な食事制限を行うことや、普段から炭水化物だけ、脂質が多いなどの偏った食事をするのはよくありません。
健康にもよくないことはもちろんのこと、ホルモンバランスを乱しやすくなります。
タンパク質、ミネラル、ビタミンもしっかり摂取するように心掛けましょう。
良質な睡眠をとる
良質な睡眠とは、朝スッキリ起きられることや、日中に眠気を感じないほどの睡眠がとれることを指します。
睡眠の質を高めるためには、睡眠時間を6〜8時間と十分に確保することが大切です。加えて、起床後の日光浴で体内時計を整えたり、寝る前にブルーライトを浴びないようにしたりする方法もあります。
乳腺嚢胞の類似疾患
乳腺嚢胞によく似ている疾患をご紹介します。
類似疾患には以下があります。
- ●乳腺症
- ●線維腺種
- ●乳管内乳頭腫
- ●葉状腫瘍
- ●乳がん
では、一つずつ症状や治療法をお伝えします。
乳腺症
乳腺症とは、30〜50代によく見られるものです。
厳密にいうと疾患ではありません。画像診断の所見にて乳がんと似ている所見が認められ、見分けがつきにくい場合があります。
症状
主な症状は、乳房の痛みや分泌液の発生、しこりの発生です。我慢できないほど強い痛みを感じる方もいれば、ほとんど無痛に近い方もいます。
これらの症状は乳がんにも見られるため、不安になる方もいらっしゃいます。乳房に異常を感じた場合は、速やかに受診することが大切です。
治療
基本的に治療はせず経過観察となります。ただし、強い痛みがある場合はホルモン分泌を抑える薬が処方されることがあります。
乳房の痛みの原因についてはこちら
線維腺種
線維腺種とは良性腫瘍の疾患で、25歳以下の女性によく見られます。マンモグラフィでしこりと周りの皮膚組織との境が分かりやすい形で映るのが特徴です。
症状
症状は基本的に現れないため、知らないまま過ごしている方が多い傾向にあります。中には腫瘍があることに気付く方もいます。
なお、しこりは徐々に大きくなるのが一般的です。
しかし、成長はゆっくりであり、30代以降になるとその成長はストップします。人によっては加齢によりしこりが徐々に小さくなることもあります。
治療
しこりが小さい場合は特に問題がないため、治療する必要はありません。大きくなった場合は見た目に変化をもたらすこともあるため、そのような場合は手術で取り除くケースもあります。
乳管内乳頭腫
乳管内乳頭腫は良性腫瘍疾患の一つです。30~50代でよく見受けられます。
マンモグラフィによってしこりと周りの皮膚組織との境が分かりやすい形で写るのが特徴です。なお、発症原因はまだ分かっていません。
症状
特徴的な症状として乳頭分泌としこりがあります。
分泌物は、血液混じりのものや薄い黄色、透明のものまであり、乳がんに似ているのが特徴です。分泌量は個人差があり、大量に分泌されるケースもあればごくわずかなケースもあります。
治療
良性のため基本的に治療は必要ありません。しかし、悪性腫瘍に変わることがあるため、定期的に乳がん検診を受ける必要があります。
葉状腫瘍
乳房に発生する腫瘍疾患であり、良性と悪性があります。35~55歳でよく見られる疾患ですが、特に見られるのが40代です。 線維腺腫とよく似ているため、丁寧な診察で鑑別しなければなりません。
症状
特徴的な症状として、腫瘍の成長スピードが速いことが挙げられます。2~3カ月程度と短期間で急速に大きくなると高確率で葉状腫瘍が疑われます。
再発を繰り返すことがあり、そのような場合は悪性腫瘍になりやすい傾向にあるため要注意です。
治療
基本的に、葉状腫瘍が確定となれば手術で腫瘍を除去します。サイズが大きくない場合は経過観察でも問題はありませんが、摘出手術での治療が推奨されています。
乳がん
乳腺の組織に悪性腫瘍ができる疾患です。胸にはリンパ腺がたくさんあるため、転移しやすい傾向にあります。
リンパ腺に入ると、骨や肺、肝臓、脳に転移することがあります。
症状
分かりやすいのはしこりです。触るとグリグリとした硬い種のようなものを感じます。他にも、乳頭や乳輪がただれたり、分泌物が出たりすることもあります。
治療
治療方法は、手術療法、薬物療法、放射線治療があります。進行度によって選択される方法は異なります。
乳がんについてはこちら
まとめ
乳腺嚢胞と診断された場合は安心していただいて構いません。
しかし、また別に乳がんや葉状腫瘍などの疾患を発症する可能性はありますので、定期的に検診を受けることをおすすめします。
婦人科検査 健康診断結果表の見方についてはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師