声帯ポリープとは?症状や治療法、がんとの関係性を解説
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声帯ポリープとは?症状や治療法、がんとの関係性を解説
声の調子が悪い、喉に違和感があるというときは、風邪かもしれないと思う方もいるかもしれません。しかし、その喉の違和感は声帯ポリープの可能性もあります。ポリープのなかにはがん化するものもあるので、声帯ポリープも放置していたら、そのうちがんになるのではないかと心配になる方もいるでしょう。
本記事では、声帯ポリープとはどういう病気なのか、症状と治療方法、さらにがんとの関係性についてくわしく解説します。
声帯の機能と声帯ポリープについて
まずは、声帯の構造と機能、そして声帯ポリープという病気について解説します。自分が声帯ポリープなのか気になるという方はまず、以下を参考にしてみてください。
声帯の機能
声帯ポリープについて知る前に、まずは声帯が私たちの身体でどういった役割をする部分であるのかについて解説します。声帯は、のどぼとけを形成する甲状軟骨の中にある器官です。その大きさは日本人の大人では、前後長が男性で24~25mm、女性で16~17mmとされています。発声中は基本的に周波数によって声帯の長さは伸びたり縮んだりして長さが変わります。
声帯の主な役割は声を出すことです。発声のとき、声帯は適度な強さで閉じ、吐く息によって左右2本の声帯を振動させながら声を出します。
声帯ポリープとは
声帯ポリープとは声帯の固有層や声帯の表面の毛細血管が損傷することで腫瘤、いわゆるできものができた状態です。基本的には左右2本ある声帯のうち片側のみにできるという特徴があり、その大きさは米粒大~栗粒大のサイズになります。
発症早期には赤い血豆ができたような状態となっていますが、時間がたつにつれて透明になってくるという特徴があり、医療機関でも比較的容易に診断をつけやすい病気です。ポリープができることで、声帯が震えにくくなるため、声にまつわるさまざまな症状が出現します。
声帯ポリープになりやすい方
声帯ポリープになりやすいのは声をよく出して、喉を酷使している方です。そのため、教師や歌手といった職業の方は声帯ポリープができやすい傾向にあるといわれています。また、仕事として慢性的に喉を酷使していなくても、単発的に喉を酷使した場合においても声帯ポリープを発症します。
例えばカラオケで声を出し過ぎた、行事やスポーツなどでいつも以上に声を出し過ぎた、風邪をひいているのに無理やり声を出したり咳を出し続けていたりするという場合にも声帯ポリープができやすいです。
さらに、声帯ポリープは喫煙によっても発生することが特徴です。喫煙によってタバコに含まれる成分が声帯に炎症を引き起こした結果、声帯ポリープを発症するとされています。一般的に40〜50歳代に発症者が多く、女性よりも男性に多い傾向にあります。
声帯ポリープの原因
声帯ポリープの原因はこれまでご紹介したように声帯の慢性的なあるいは急性の損傷です。無理に大きな声を出し続けたり、喫煙をしたりと声帯にダメージを与え続けていると、声帯の粘膜が腫れて充血します。充血した状態でさらに大声を出したり、喫煙をしたりとダメージを与え続けると、腫れあがった声帯粘膜の血管が破れて内出血が起こるのですが、この出血が徐々に固まってくると血腫になります。
血腫ができた状態でも声帯がダメージを受け続けると、血腫がポリープとなるのです。カラオケの翌日に声帯ポリープができたという方の場合はこの過程が1日で行われているということになります。
声帯ポリープの症状
声帯ポリープになったときに起こる症状はほかの喉の病気であっても起こる可能性が高いといえるでしょう。そのため、素人ではなかなか症状のみで声帯ポリープになっているかどうかを見極めにくいです。
しかし、症状を知っておくことで、医療機関への受診目安となるでしょう。声帯ポリープになったときに起こる症状を解説します。
嗄声(させい)
声帯ポリープになると必ず起こる症状です。嗄声とは声がかれたり、かすれたりする状態のことをいいます。嗄声といっても声の出方はさまざまです。粗ぞう性嗄声といってがらがらな声になる場合や、気息性嗄声といって、息がもれような声になる場合もあります。
また、失声といって全く声が出なくなる場合もあります。ポリープがあることで、声帯が震えにくくなったり、ポリープが声門にはさまってうまく閉じなくなったりしてしまうため、その結果、嗄声が起こるのです。
ただし、声帯ポリープ以外でも声帯に関する病気になると嗄声が起こるため、嗄声のみでは声帯ポリープであるかどうかを判断するのは難しいといえるでしょう。
喉の違和感
声帯ポリープになったときにまずは喉に違和感を感じるという方が多い傾向にあります。喉がイガイガする、喉に異物があるように感じるという場合には、声帯ポリープができはじめているともいえるので、この時点で早めに対処するのが良いでしょう。
また、普段よりも声が出しづらいといった違和感によって声帯ポリープに気づくこともあります。
会話中の疲労感
声帯ポリープになると、声帯が声門にはさまり、空気が抜けてしまうため、声がうまく出なくなることがあります。すると、一生懸命声を出そうとするため、会話をするといつもより疲労感を感じるケースもあります。
また、いつもは難なく歌えていた歌が歌えなくなったり、歌っていて疲労感を覚えることもあるでしょう。
声帯ポリープの治療法
ここからは声帯ポリープとなったときに行われる治療方法について3つ解説します。どのような治療をするかわからず不安という方はぜひ参考にしてみてください。
沈黙療法
声帯ポリープの初期に行われる治療方法です。沈黙によって声帯を安静にすることで、ポリープの縮小化を図るというのがこの治療の目的です。薬物療法とあわせて保存療法と呼ばれることもあります。
また、腹式呼吸や正しい発声方法も医師から指導を受けます。特に、声を出す職業の方は、声を全く出さずに生活していくことが不可能な場合もありますが、喉を休めながら正しい発声方法を取得し、発声をすることで、声帯ポリープを悪化させず、改善できるケースもあるのです。
薬物療法
沈黙療法とあわせて薬物療法も行います。喉に炎症が起こっているため、炎症を抑える目的の薬やステロイドホルモンの吸入薬を使います。痰が絡んでいる場合には、去痰剤を使って痰を出しやすくすることで、痰を喀出するための咳をせずに済み、喉への負担を抑えられるでしょう。
薬物療法をいつまで行うか知りたいという方もいるかもしれません。これには明確なガイドラインが無いため、薬剤を処方した医師が喉の調子を見ながら判断していくことが多いです。
手術
沈黙療法や薬物療法をしていても効果が見られなかった場合や、ポリープが大きい場合には手術が選択されます。声帯ポリープの手術は入院が必要で、全身麻酔下で顕微鏡を使って行われます。手術時間は10~20分程度と短いことが特徴です。
問題なければ1週間程度で退院できますが、退院後も1週間は沈黙療法を継続して行う必要があります。
声帯ポリープの予後
治療をした方、もしくは声帯ポリープになったけれど医療機関に行かずに放置しているという方のなかにはその後、声帯ポリープががん化しないのか、命にリスクを脅かさないかなど気になる方もいるかもしれません。
声帯ポリープの予後について詳しく解説します。
治療をしてもポリープは残る
声帯ポリープを放置すると、声帯ポリープがどんどん大きくなる可能性があります。放置しなければ沈黙療法や薬物療法で治癒できたものが手術をしなければならなくなるかもしれません。また、声帯にできる腫瘍や腫瘤にはほかにも声帯結節やポリープ様声帯、声帯肉芽腫や声帯がんなどがあります。もしもがんだった場合には放置することによってがんが大きくなる可能性もあります。
ほかにも声帯ポリープが大きくなりすぎると空気の通り道をふさぎ、呼吸困難となる場合もあるため、声帯ポリープの症状が出た場合には早めに医療機関を受診して診察を受けると良いでしょう。
声帯ポリープはがん化する?
声帯ポリープは、声帯の酷使によって起こるものです。がんとは発生理由が異なるため、声帯ポリープががん化することは基本的にありません。ただし、声帯ポリープかがんなのかは手術で声帯ポリープを切除して生体検査しなければわかりません。そのため、声帯ポリープだと思っていたものががんだったということはあるかもしれません。
まとめ
喉の使い過ぎ、喫煙など声帯にダメージを加えることで起こる声帯ポリープは教師や歌手などの職業の方に多い傾向にあります。ほかにもカラオケで歌い過ぎた次の日やスポーツ応援の次の日に起こることもあり、身近な疾患であるといえるでしょう。初期で治療をすれば回復する可能性があるため、嗄声や喉の違和感を感じたら医療機関へ相談しましょう。
声帯ポリープは一般的にがん化することはないといわれているものの、声帯に起こる病気は症状が酷似しています。そのため、声帯ポリープだと思っていたものががんだったということはあるかもしれません。
がんなのか気になるという方は手術を受けて切除したポリープを生体検査に出してみるのも良いでしょう。日常的に声帯に負担をかけないようにし、ポリープの発生を予防しましょう。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師